【社説・11.22】:宿泊税決定 持続可能な観光の原資に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.22】:宿泊税決定 持続可能な観光の原資に
沖縄のリーディング産業である観光業にとって大きな転換点となる。観光目的税制度(宿泊税)の導入に向けた県の検討委員会が20日、税額は1人1泊当たり宿泊額の2%とした上で徴収の上限額を2千円に定める案を決定した。
2026年度中に導入される予定で、課税免除は修学旅行生やその引率者のみとし、県民からも同様に徴収する。今後条例案をまとめ、2月議会の提出を目指す。課税自主権を行使し独自の財源を確保することは、観光立県・沖縄にとって喫緊の課題である。
コロナ前には年間1千万人を超える観光客が訪れていた沖縄では、オーバーツーリズムの課題が認識されはじめ、交通渋滞やごみの増大・散乱、自然環境の悪化など地域住民の生活や自然環境・景観などへの悪影響を訴える声が上がっていた。
オーバーツーリズムへの対策費の一部を旅行者に負担させる目的で、世界ではハワイやローマ、パリなど多くの観光客が訪れる都市で宿泊税を導入している。
県内で宿泊税導入を目指す議論が始まったのは2010年頃で、議論が本格化したのは18年からである。税額、使途、課税対象者などを主要課題に県や観光業界、市町村など関係者らが導入について議論を重ねてきたが、県が想定していた徴収が可能な「定額制」に対し、海外で一般的な「定率制」の方が公平性が高いとして業界側の議論は長く平行線をたどった。コロナ禍が影響したとはいえ、今回の決定までに時間がかかりすぎた側面は否めない。
利用者に過剰な税負担を強いることのないよう模索した県と、徴収の担い手として客室単価に合った税収の在り方を主張した業者側の双方の言い分はいずれも一理ある。コロナ後、観光客数が回復し早期の対応が求められる中、定率制を採用しつつ上限を設ける案で妥協点を見いだした双方の努力をたたえたい。
国内では既に東京都、大阪府、京都市、石川県金沢市、北海道倶知安町などが宿泊税を導入済みだ。東京都は1人当たりの宿泊料が1泊1万円以上1万5千円未満で100円、1万5千円以上で200円、倶知安町は宿泊料金の2%を徴収している。
沖縄県の試算によると、課税免除なしの場合、宿泊額の2%で税収額が約78億円となるという。26年度中に導入されれば、宿泊税は沖縄の持続可能な観光に向けた原資となろう。利便性や満足度の向上、受け入れ体制の充実・強化といった施策を推進するために使われることになる。
離島県で、宿泊施設を利用する機会の多い県民にも関わりの深い制度だ。将来の物価高騰を見据えた上限額の改定の必要性や具体的な使途など、議論すべき課題は山積している。持続可能な観光立県に向け、事業者だけでなく県民に向けた丁寧な説明を求めたい。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月22日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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