【社説①・12.05】:アマゾン検査 値下げ強要看過できぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.05】:アマゾン検査 値下げ強要看過できぬ
ネット通販大手のアマゾンジャパンが、公正取引委員会から立ち入り検査を受けた。商品を出品した業者に値下げを強要した独占禁止法違反の疑いが持たれている。
アマゾンが優位な立場を利用して取引先に経営上の損害を与えたのなら許し難い。公取委は法令に基づいて厳正に対処すべきだ。
アマゾンの通販サイトには小売業者や個人がさまざまな商品を出品し、販売している。
問題となったのは「カートボックス」と呼ばれる優先枠。消費者がスマートフォンなどでサイトを検索すると「お薦め」が大きく表示される仕組みだ。この枠に入るかどうかは商品の売れ行きを大きく左右する。
公取委は、アマゾンが表示の条件として業者に商品の値下げを要求した例があるとみて、独禁法が禁じる優越的地位の乱用に当たるか否か、調査を進めている。
国内のネット通販市場は約25兆円規模に成長した。その巨大市場で占有率トップを占めるアマゾンの力は絶大だ。業者側はアマゾンに取引を断たれれば販路を失いかねず、不当な要求でも応じざるを得ないのが実態だろう。
力関係に圧倒的な差がある中、アマゾンが取引先の利益を軽視した上に、市場支配のさらなる拡大を狙って不当な要求をしたのなら、見過ごすわけにはいかない。
アマゾンは2016年と18年にも取引先への圧力を巡って独禁法違反の疑いで検査を受けており、今回で3回目。繰り返し検査を受けるようでは、法令順守の姿勢を欠くと指摘されて当然だ。
安価な商品を迅速に購入できるネット通販はもはや暮らしに欠かせないが、出品業者の犠牲の上に成り立つような形で利便性を向上しても長続きはしまい。
自由で公平なネット通販市場の構築には、官民が力を合わせて、消費者利益の確保と取引先の保護を両立しなければならない。
世界規模で広がるネット通販の公正な商習慣の確立に向け、公取委には同様の問題が浮上している欧米各国の関係機関とも連携するよう求めたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 07:49:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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