【天風録・11.22】:いわさきちひろ絵本の秘密
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・11.22】:いわさきちひろ絵本の秘密
ウクライナの首都キーウの町並みを61年前に絶賛した絵本画家がいる。いわさきちひろ。望外だったか、現地から家族に宛てた手紙に「こんなにきれいにできているなんて」と記した
▲彼女の絵本には平和をつくる秘密が隠されている―。そんな文句に誘われ、没後50年展を催す東京・練馬のちひろ美術館を訪ねた。愛らしく、しっとりと淡い水彩の子どもたち。どの絵を見ても、優しい気持ちになる
▲ただ、館内に並べてあった生前最後の絵本「戦火のなかの子どもたち」を手に取って驚いた。鉛筆と墨で描かれた、うつろな表情で立ち尽くす幼い子どもたち。戦争が何を奪うのかを伝えている
▲発刊は、ベトナム戦争真っただ中の1973年。東京で体験した空襲の怖さから、傷つき、死んでいった戦場の子どもたちを思わずにはいられなかったのだろう。晩年、病を押して絵筆を握った制作活動に執念を思う
▲ロシアがウクライナに侵攻を始めて、今週で千日が過ぎた。悲しく絶望的な時間が続く。私たちも。そんな時、「絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして」というメッセージを、ちひろは日記に残している。展示の秘密の「種明かし」のようでもある。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年11月22日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます