【社説・12.03】:塩川でも土砂搬出 一方的再開は混乱招く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.03】:塩川でも土砂搬出 一方的再開は混乱招く
一方的な対応だ。十分な安全策が示されないままの搬出再開は、現場の混乱を招くだけである。
名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局が本部港塩川地区での土砂運搬作業を再開した。
安和桟橋で6月に起きたダンプカーによる交通死傷事故を受け中断されていた。
県は塩川地区での再開の条件として、防衛局に対し安全対策を講じることや事故原因の究明などを求めていた。
だが、再開の通告に際し防衛局が示したのは警備の強化と、進行中の車両の動きを止めるなどの行為を「妨害行為」として通報することだった。
作業はきのう再開。抗議する市民らがダンプの前を牛歩し、工事関係者が「妨害行為はおやめください」と呼びかけるなど現場は騒然とした。
中断前まで本部地区では1日当たりダンプ500~700台分の土砂が運び込まれていた。抗議活動を「妨害行為」として対決姿勢を前面に出せば、現場の緊張感が高まり再び事故が起きかねない。
安和の事故後、県は防衛局に対し、安全対策が講じられるまでの運搬作業の中止を申し入れた。
しかし、防衛局はまず8月に安和桟橋での作業を再開。県への通告は再開の前日で、防衛局が独自に講じた安全対策を一方的に説明するというものだった。
県と防衛局の協議が始まったのは9月に入ってからである。それも調わぬまままたも再開が強行された。
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安全対策について双方の主張は平行線だ。
防衛局は事故の原因が抗議活動にあるとして、桟橋入り口にガードレールの設置を求めている。県は歩行を妨げるため設置は認められないとし、代わりにポールの設置などを提案している。
そうした中、防衛局が再開に踏み切った形だ。
現場の安全確保は一義的には事業者の責任であり、協議が進展しないことを理由にした見切り発車は本末転倒だろう。
安和桟橋では事故後、警備員がネットフェンスを持ち車両前面への進入を防ぐ対策をとる。
ただ、警備業法には「(警備に当たり)他人の権利・自由を侵害し、個人や団体の正当な活動に干渉してはならない」とある。公道での平和的な活動を規制できるのか。法にのっとった対応が求められる。
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防衛局は先月新たに中城湾港での土砂搬出も開始した。港湾全体を管理する県には使用申請を出さず、同じ国の機関が一時的に使用し、管理権を持つ区域を拠点にする手段をとった。
国が埋め立てありきで、県との十分な話し合いに応じなければ、さらに県民の反発を招きかねない。
そもそも事故がなぜ起きたのか。検証や原因究明も進んでいないのである。
命が失われる事故は二度とあってはならない。
防衛局は県との協議が調うまで作業を中止すべきだ。
元稿:沖縄タイムス社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 04:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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