【社説・11.21】:フリーランス法/多様な働き方守る一歩に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.21】:フリーランス法/多様な働き方守る一歩に
企業や団体に所属せずに個人で仕事を請け負う人を保護する「フリーランス新法」が施行された。働き方は多様化している。立場の弱い個人が安心して働けるよう、環境整備を着実に進めねばならない。
「フリーランス・事業者間取引適正化等法」とも呼ばれる。仕事を発注した事業者側に、きちんと報酬を支払うことやハラスメント対策などを義務付けた。
法成立は昨年4月だが、まだ十分に知られていない。政府の調査によると、新法の内容を知らないフリーランスは76%、発注側の事業者は54%に上る。兵庫県内では兵庫労働局が説明会を開き、相談を受け付けている。周知を徹底してほしい。
フリーランスで働く人は、政府推計で400万人を超える。IT技術者やデザイナー、建設、食事宅配サービスの配達員、芸能など分野は幅広い。企業での定年後にフリーランスになる人も増えている。
自由な働き方に魅力を感じる人は多い。その半面、一方的に仕事を取り消されるといったトラブルが後を絶たない。泣き寝入りをした人も少なくないとされ、働き手を保護する必要性が高まっていた。
新法は、「取引の是正」と「就業環境の整備」の2本柱からなる。仕事の発注側は、業務の内容や報酬などの取引条件を書面やメールで明示し、業務完了から60日以内に報酬を支払わなければならない。ハラスメントの相談体制を整えることも求められる。
フリーランスへの業務委託が1カ月以上に及ぶ場合は、発注した成果物の受け取りを理由なく拒否することや、報酬を不当に低くする「買いたたき」といった七つの禁止行為を定めた。取引が6カ月以上になれば、発注側はフリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう配慮義務を負う。
違反した場合は、公正取引員会が発注元に勧告や命令を出し、事業者名を公表する。命令に従わなければ50万円以下の罰金が科される。取引の実態を監視し、フリーランスのセーフティーネット(安全網)としての実効性を高める必要がある。
しかし、残された課題は多い。フリーランスは労災保険に特別加入できるが、保険料は全額自己負担となる。最低賃金の保障はなく、労働時間の規制も及ばないなど、極めて不安定な立場に変わりはない。加えて、発注側の指示を受け、雇用に近いにもかかわらず、労働法令で守られない「名ばかりフリーランス」の救済が急がれる。
発注側はもちろん、フリーランスで働く人は自分を守るために新法を理解し、活用することが重要だ。
元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます