「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           「恋飯島」(レムパン島)

2009-01-14 06:57:28 | Weblog
名古屋居住の見知らぬ方から電話があった。最近は”振り込め”詐欺が横行してい
るので注意しながら電話にでたが、用件は僕が10年ほど前2回出かけた、シンガポ
ール近くのレムパン島にある旧日本軍の慰霊碑についての問い合わせであった。

レムパン島は敗戦直後から21年にかけて、多い時は8万人もの旧陸海軍将兵軍属が
復員までの間、連合軍によって強制移住させられた島だ。島の大部分は珊瑚礁と赤土
で覆われ人跡未踏といわれた孤島だった。将兵たちはジャングルを切り開き、自活
をはじめたが、持参した食糧がなくなると飢えと栄養失調で犠牲者が続出、182人も
なくなっている。将兵たちは、ご飯恋しさに誰いうこともなく「恋飯島」と呼んだ。

この島の南部に、昔、「南千武」と呼んでいた今は小さな船着場がある。昭和56年無事
生還した戦友たちが犠牲者の慰霊碑を建てた。1999年と2000年、僕は2人の生還者と
一緒に慰霊碑を参拝した。それからでも10年の歳月が流れており、不便な場所でもあ
るので僕も碑の保存を気にしていた。

戦争を知らない名古屋の方は、昨年偶然、慰霊碑を訪れ、碑を保存している現地人の家
にあった名刺から僕に電話をかけてきたのだ。レムパン島は今ではシンガポールから1時
間で行けるバタム島と橋で結ばれている。シンガポールに住んでいる日本人は休日には
プレイ代の安いバタム島へゴルフに来るそうだが、多分100%、「恋飯島」のことを知らない。
関係者以外、誰も戦争の悲劇を語り継がないし教えないからだ。

幸いの事に慰霊碑は村民たちによって綺麗に保存されていたとのことである。