「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

お斉(おとき)と北信流お肴(さかな)

2015-05-29 20:45:20 | Weblog
義弟の葬儀で長野市へニ泊三日の旅をしてきた。最初はお通夜に出て、翌日の告別式に参列、帰京の予定だったが、28日が友引のため、告別式が一日延期され、久しぶりに信州の佛事を体験してきた。

最近、東京では葬儀が簡素化され”近親者だけ”の家族葬が多くなり、極端な場合には、火葬場だけの直葬(じきそう)もあると聞くが、義弟の葬儀は昔ながらの式にのとったものだった。昔、お通夜は東京でも自宅で行われ、近親者とご近所だけが参列したが、最近は家族葬でも式場で行われることが多く、時には日中の告別式より参列者が多いこともあるようになった。しかし、義弟のお通夜は行われた。火葬は28日、近親者で済ませ、29日に葬儀式場で行われた。

驚いたのは平日の10時からの告別式なのに参列者が300人もあったことだ。義弟は病院勤めのサリーマンだったが,町の少年野球の監督を30年やっていた関係で、”教え子”が多く、葬儀のお坊さんまで、昔義弟のノックを受けたことがったという。告別式の後、信州独特の冠婚葬祭の儀式である、お斉(おとき)があった。お斉とは、祭りの主催者が、お世話になった方々に一献差し上げるご馳走である。
僕は長野市生まれの妻と結婚して60年、その間、数々のお斉に参席したが、昔は必ずお斉の席上で北信流の謡が、お肴(魚)と称して披露されたが、今回、義弟の場合にはなかった。もう北信流の謡ができる人間がいなくなってきたのだという。葬儀関係者の話では、義弟の葬儀のお斉だけではないという。葬儀もやがて東京みたいになってしまうのであろうか。