その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

オーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトメント 「後宮からの逃走」 (モーツァルト)

2010-11-24 23:03:38 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 モーツァルトのオペラ「後宮からの逃走」の演奏会方式の公演に足を運んだ。指揮はベルナール・ラバディで、オーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトメント(OAE)。このコンサートに行きたいと、一週間ぐらい前に思ったのだけど、チケットは完売だったので諦めていた。そしたら、昨夜、ネットを覗いたら結構リターンチケットが出ていて、思わず衝動買いしてしまった。

 第1幕は、自分がまだ落ち着いてなかったせいか、正直、あまりぱっとしない印象だった。オケもどうものりが悪いし、男性歌手陣も悪いとは思わないけど、特に良いとも思わない。

 ただ2幕から雰囲気がかなり変わった。二人の女性独唱陣が歌い始めてから、がぜん活気が出てきた(ように感じたのはオヤジの気のせいか?)。Konstanze役のソプラノSusan Grittonは張りのある堂々とした歌唱。最高音が多少苦しげではあったが、これはきっと曲が難しすぎるのだろう。召し使いのブロンデ役Malin Christenssonも華があって、美しく、声量も十分な歌唱。オケも、軽快にいかにもモーツァルトらしく歌う。1幕と2幕でこうも違うもんだと驚いた。

 休憩後に始まった第2幕の後半部分と第3幕も良かった。Frédéric Antoun とTilman Lichdi という二人の若手テノールは、声量は其ほどでもないが、優しいとても耳障りの良い声の質でうっとりさせてくれる。ソプラノのSusan Grittonはどんどん調子を上げてくる印象で、今日のメンバーのなかでは実力は少し抜けていると感じられた。オケも調子が良い。指揮者のベルナール・ラバディは、はじめて聴く人だが、バロック音楽が専門分野というだけあって、ツボを押さえながら、とてもおおらかな音楽を作る人だと思った。あと、ナレーションのSimon Butterissさんの艶のある語り口もコンサート式オペラの舞台を盛り上げたと思う。

 残念だったのは、コーラスとオスミン役のバスのTimothy Mirfin。コーラスは前半と後半の1回づつしか出番がないが、パワー的にちょっと不満。後ろの席だったせいかもしれないが、特に最後のフィナーレのコーラスは物足りなかった。バスのTimothy Mirfinは歌もあまり印象に残らなかった上に、5名の独唱陣の中では彼だけが楽譜持ち。別に楽譜を持って歌うのが悪いわけではないが、他の歌手に比べて出番が多いわけでもないのに、どうして彼だけ?と思わざる得なかった。

 終演後のカーテンコールが以外とあっさりと収束してしまったのがわたしとしては、とっても残念だったけど、とっても良質の音楽会で私としてはとっても満足だった。しっとりと贅沢な余韻に浸って、冷たい夜風を頬に受けながら、テムズ川を渡り帰路についた。

※余談だが、今回は後列後ろから5列目で12ポンドの席。このコストパフォーマンスの良さは感動もんだ。



(Malin Christensson とSusan Gritton)



Orchestra of the Age of Enlightenment
Resident at Southbank Centre
24 November 2010, 7:00pm

Queen Elizabeth Hall

Wolfgang Amadeus Mozart: Die Entführung aus dem Serail
(concert performance, sung in German with an English narration and surtitles)

Bernard Labadie conductor
Susan Gritton soprano, Konstanze
Malin Christensson soprano, Blonde
Frédéric Antoun tenor, Belmonte
Tilman Lichdi tenor, Pedrillo
Timothy Mirfin bass, Osmin
Simon Butteriss narrator
Joyful Company of Singers


コメント
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