その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロイヤル・オペラ・ハウス/ トスカ

2011-06-19 20:14:33 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロイヤルオペラにトスカを観にいきました。基本的にこのオペラ、話が、大げさかつあまり品がよろしくないのであんまり好きではありません。どうも警視総監スカルピアを観ていると、水戸黄門に出てくる越後屋とグルになる悪代官を思い出してしまって・・・。日本でセミステージ方式の公演を一度観ましたが、「もうこの作品はいいやあ」と思ってました。しかし、今回のロイヤルオペラの公演はとても素晴らしいものでした。


 この日の席は4階席の舞台真正面。まるで自分の為にこの舞台があるように錯覚するほどの好位置でした。足元に仕切り板があって足の置き場が狭いので、隣の席は150ポンド近くするはずなのですが、この席は60ポンドそこそこ。とってもお買い得席なのです。

 その真正面から、オーケストラピットを見下ろすと、まずそのオーケストラの大編成に驚かされました。見える範囲だけでも、トロンボーンが4名もいて(これが普通なのかしらん?)、他の楽器もピット一杯にオーケストラが詰め込まれていました。そして、この日の立役者の一人は、間違いなく指揮者パッパーノとオケの怒濤の演奏でした。とにかく、大編成にふさわしい重厚感あふれる目茶濃~い演奏で、トスカの愛と情熱、スカルピアの悪、カヴァラドッシの絶望を演奏してくれました。もう、音楽が強烈な引力で、聴く者を舞台に引き込む感じです。

 歌手の皆さんも総じて好かったです。私はトスカの恋人、カヴァラドッシ役のMarcello Giordaniのテノールが美しくて気に入りました。トスカ役のMartina Serafin
も表現がやや一本調子な感じはありましたが、歌声は素晴らしいものでした。あえて言うと、悪代官のJuha Uusitaloはちょっと迫力不足だったかな?

 舞台はスタンダードなものだと思います。暗くて歌手の表情が見にくい難点はありましたが、教会や総監室、そして城の処刑場の雰囲気はよく表れていました。

 しかし、それにしてもピッチーニはホント泣かせますね。言っちゃ悪いですが、トスカなんて、話はしょうもないメロドラマじゃないか、というのが私の受け止めなのですが、この素材を音楽を使って、これほど感動的にしてしまう料理のうまさは感嘆せざる得ません。万人受け狙いの、小説で言えば純文学というより大衆文学風なのですが、私のような庶民の喜怒哀楽のつぼにはまって、コロッといってしまうのです。開演2時間半たったあとには、プッチーニとロイヤルオペラに見事にしてやれらてしまった私がおりました。




※以下ROHのFaceBookページから借用









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Tosca

June 17 7:30 PM

Credits
Director Jonathan Kent
Designer Paul Brown
Lighting design Mark Henderson

Performers
Conductor Antonio Pappano
Tosca Martina Serafin
Cavaradossi Marcello Giordani
Baron Scarpia Juha Uusitalo
Spoletta Hubert Francis
Angelotti Lukas Jakobski§
Sacristan Jeremy White
Sciarrone ZhengZhong Zhou§
コメント
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