その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

パウロ コエーリョ (著), 山川 紘矢、山川 亜希子 (翻訳), 『アルケミスト―夢を旅した少年』 (角川文庫)

2011-06-06 22:16:08 | 
 同僚のお薦めの本と言うことで、借りて読んだ。あとがきによると、作者のパウロ・コエーリョと言う人はブラジルの人気作家で、本書はブラジルを初めフランスやイタリアでもベストセラーリストの一位に何回も顔をだし、かつ各国で文学賞も獲得している有名作品らしい。物語は、童話風で、主人公の少年が夢を追い続けて、数々の危険にもあうが、最後には夢をかなえるという、まとめてしまえば、何のたわいもないお話である。ちなみに表題のアルケミストとは、少年を導く錬金術師を指す。

 童話風の物語であり、語り口は「星の王子様」を彷彿させる空想的な、宙に浮いたようなトーンであるが、童話の形をとった強いメッセージ文学と自分には読めた。つまり、「日常の忙しさやしがらみを言い訳にして、本当の夢を追いかけることを忘れるな」ということである。

 なので、いろいろと教訓めいた台詞が顔を出す。例えば・・・

 「まだ若い頃は、すべてがはっきりして、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」・・・「自分の運命を実現することは、人間の唯一の責任なのだ。すべてのものは一つなんだよ。おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ」(pp28-29)

 この物語は、人によって好き嫌いがあると思う。私は物語としては楽しんだけども、どうも説教くささが鼻について、自分の好みとは違っていた。きっと私は、「自分の運命を実現することは不可能だと」思いこんだ人間になってしまったのだろう。
コメント
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