その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロンドン交響楽団/ マリン・オールソップ / Voices of Light (Richard Einhorn)

2011-11-11 00:08:17 | コンサート (in 欧州)
 今年は15世紀のフランスの英雄ジャンヌダルクの生誕600年にあたるとのことで、バービカンセンターでは先週末にジャンヌダルク企画特集をやっていた。(恥ずかしながら、このコンサートのチケットを買うまで英語のJoan of Arcがジャンヌダルクだとは知らなかった)。金曜日にはオネゲルのオラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」、日曜日にはマリン・オールソップのジャンヌダルクをネタにした講演会、そして、その締めくくりがこのコンサート。1928年製作の白黒無声映画「裁かるゝジャンヌ」(Carl Dreyer監督)という映画にあわせて、1988年にRichard Einhorn というアメリカ人が作曲した「Voices of Light 」とセットで上映上演するというもの。曲は映画に完全に合わせて作られている。

(開演前:ステージ後方に設けられたスクリーン)


 感動的公演だった。白黒映像の力に圧倒された。映画は、裁判から火やぶりの刑に処せられるまでのジャンヌダルクが描かれる。白黒画像に登場人物をアップに大写しにするカメラワーク。無声映画であることが、更に見る者の気持ちを画面に集中させる。主演女優のルイーズ・ルネ・ファルコネッティの熱演に、役80分の上映時間、目と気持ちがスクリーンに引き込まれ離れない。今回はLSOの演奏会なので、メインは演奏とコーラスで、映画は添え物なのだが、映像のメディア力の強さに主役の座を譲らざる得なかった。

 しかし、主役にはなれなかったものの、コーラス、オーケストラの美しさも格別だった。合唱は、独唱部分をシナジーコーラスという6名からなるグループがそれぞれマイクを使って歌ったのだが、その声は透明感があり、思わず背筋を伸ばすような神聖さを感じるものだった。ロンドンシンフォニーコーラスの合唱はいつもながらの上手さ。オーケストラもヴィオリンやチェロの独奏が悲しさを引き立てる。映画を見ながらBGMのようにLSOの生演奏を聴くなんて、なんとも贅沢。

 日曜日の夜に見る公演としては、ちょっとヘビーすぎる内容だったが、それほど日本では知られた映画ではないとおもうが、是非、映画だけも見ておいて損はないと思う。好みは分かれるかもしれないが、お勧め。

(中央は指揮のマリン・オールソップと作曲のRichard Einhorn)


(後ろがンドンシンフォニーコーラス、シナジーコーラスは中央ですが影になって見えない)


 ※なんとこの映画YouTubeで観れます→

London Symphony Orchestra / Marin Alsop
Einhorn Voices of Light and Carl Dreyer’s The Passion of Joan of Arc
6 November 2011 / 19:30
Barbican Hall

Richard Einhorn Voices of Light

Marin Alsop conductor
Synergy Vocals
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

コメント (2)
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