守屋さんに紹介頂いた野田秀樹の芝居「THE BEE」を観に行きました。野田氏が英語で書き下ろし(元ネタは筒井康孝の小説とのこと)、2006年にロンドンで初演されたお芝居だそうです。今回はそのリバイバルで、ニューヨーク、ロンドン、日本とワールドツアーを組んでいます。
会場は、SOHOエリアの北辺にあるSOHOシアター。初めての訪問だが、高校の小視聴覚教室程度の大きさの100名程度収容の小劇場。舞台が手の届くようなところにあり、舞台と観客が一体となるようなシアターです。開演前には満員で、熱気むんむん。観衆は95%は非日本人で、日本人っぽい人は数人見かける程度でほとんどが西洋人でした。
簡単に筋を紹介すると、平凡なサラリーマンは、帰宅途中に脱獄した殺人犯に妻子が拉致され、人質にとられていることを知る。拉致犯の妻に夫の説得を依頼に行ったサラリーマンは、逆にその妻と子供を人質にとって立てこもる。そして、お互いの人質の妻子をターゲットにした残酷な報復の連鎖が始まっていく・・・・
報復の連鎖をテーマにした、笑うに笑えないブラックユーモア満載の風刺劇です。前半の急テンポと後半の一転したスローモーションのようなペース展開や各俳優の特徴的な身裁きが、見るものの集中を舞台から一瞬たりとも離さない、そんなお芝居でした。
野田さんを含めて4名しか出演していませんが、サラリーマン役のキャサリン・ハンターを除いては、一人が何役もこなします。キャサリンハンター(女優さんの男性役)はオリバー賞の受賞暦がある有名な俳優さんらしいですが、さすがと思わせる大きな存在感でした。平凡なサラリーマンから残酷な復讐鬼へ徐々に変化していくさまが素晴らしい。最後には、残虐行為でさえ、ルーティン化すると淡々と日常のなかに溶け込んでしまう様子は、背筋が寒くなるほどの演技でした。また、脱獄囚の妻役を演じる野田さんも、侵入者であったはずのサラリーマンを、いつの間にか夫のように受け入れてしまっている、その変化が興味深かったです。野田さんの英語が上手なのにも驚きました。
タイトルのBEEは文字通り蜂なのですが、何の隠喩だかは良く分かりませんでした。平凡なサラリーマンが蜂の飛ぶ音を聞いて、発作を起こすシーンが2回ほどあるのですが、この報復劇と蜂がどう結びつくのかはわかりません。攻撃する側とされる側の間で、復讐の連鎖が始まった時の左右対称性(やっていることはどちらも同じ)の隠喩のようでもあります。
復讐の連鎖なので当然ハッピーエンドでは終わりません。なので、行き場のないやりきれなさは残る複雑な演劇でありますが、完成度の高いお芝居だと思うので、興味のガル方は足を運ばれることをお奨めいたします。ロンドンでは2月11日までです。
From SOHO Theatre HP
The Bee
By Hideki Noda and Colin Teevan
Tue 24 Jan - Sat 11 Feb 2012
Soho Theatre
Cast
Ido Kathryn Hunter
Anchoku, Ogoro, Ogoro's Son, Reporter Glyn Pritchard
Dodoyama, King of Chefs, Reporter Clive Mendus
Ogoro’s Wife, Reporter Hideki Noda
Company
Director Hideki Noda (Director)
Designer Miriam Buether
Lighting Designer (Original) Rick Fisher
Lighting Designer (Tour) Christoph Wagner
Sound Designer Paul Arditti
Production Manager Nick Ferguson
Technical Stage Manager Nick Hill
Deputy Stage Manager Rebecca James
Assistant Stage Manager Kate Wilson
Sound Engineer Chris Reid
Costume Supervisor Chris Cahill
Props Supervisor Sarah Buik
Assistant to the Director Ragga Dahl Johansen
Artist Coordinator Susan Momoko Hingley Set Build Capital Scenery
会場は、SOHOエリアの北辺にあるSOHOシアター。初めての訪問だが、高校の小視聴覚教室程度の大きさの100名程度収容の小劇場。舞台が手の届くようなところにあり、舞台と観客が一体となるようなシアターです。開演前には満員で、熱気むんむん。観衆は95%は非日本人で、日本人っぽい人は数人見かける程度でほとんどが西洋人でした。
簡単に筋を紹介すると、平凡なサラリーマンは、帰宅途中に脱獄した殺人犯に妻子が拉致され、人質にとられていることを知る。拉致犯の妻に夫の説得を依頼に行ったサラリーマンは、逆にその妻と子供を人質にとって立てこもる。そして、お互いの人質の妻子をターゲットにした残酷な報復の連鎖が始まっていく・・・・
報復の連鎖をテーマにした、笑うに笑えないブラックユーモア満載の風刺劇です。前半の急テンポと後半の一転したスローモーションのようなペース展開や各俳優の特徴的な身裁きが、見るものの集中を舞台から一瞬たりとも離さない、そんなお芝居でした。
野田さんを含めて4名しか出演していませんが、サラリーマン役のキャサリン・ハンターを除いては、一人が何役もこなします。キャサリンハンター(女優さんの男性役)はオリバー賞の受賞暦がある有名な俳優さんらしいですが、さすがと思わせる大きな存在感でした。平凡なサラリーマンから残酷な復讐鬼へ徐々に変化していくさまが素晴らしい。最後には、残虐行為でさえ、ルーティン化すると淡々と日常のなかに溶け込んでしまう様子は、背筋が寒くなるほどの演技でした。また、脱獄囚の妻役を演じる野田さんも、侵入者であったはずのサラリーマンを、いつの間にか夫のように受け入れてしまっている、その変化が興味深かったです。野田さんの英語が上手なのにも驚きました。
タイトルのBEEは文字通り蜂なのですが、何の隠喩だかは良く分かりませんでした。平凡なサラリーマンが蜂の飛ぶ音を聞いて、発作を起こすシーンが2回ほどあるのですが、この報復劇と蜂がどう結びつくのかはわかりません。攻撃する側とされる側の間で、復讐の連鎖が始まった時の左右対称性(やっていることはどちらも同じ)の隠喩のようでもあります。
復讐の連鎖なので当然ハッピーエンドでは終わりません。なので、行き場のないやりきれなさは残る複雑な演劇でありますが、完成度の高いお芝居だと思うので、興味のガル方は足を運ばれることをお奨めいたします。ロンドンでは2月11日までです。
From SOHO Theatre HP
The Bee
By Hideki Noda and Colin Teevan
Tue 24 Jan - Sat 11 Feb 2012
Soho Theatre
Cast
Ido Kathryn Hunter
Anchoku, Ogoro, Ogoro's Son, Reporter Glyn Pritchard
Dodoyama, King of Chefs, Reporter Clive Mendus
Ogoro’s Wife, Reporter Hideki Noda
Company
Director Hideki Noda (Director)
Designer Miriam Buether
Lighting Designer (Original) Rick Fisher
Lighting Designer (Tour) Christoph Wagner
Sound Designer Paul Arditti
Production Manager Nick Ferguson
Technical Stage Manager Nick Hill
Deputy Stage Manager Rebecca James
Assistant Stage Manager Kate Wilson
Sound Engineer Chris Reid
Costume Supervisor Chris Cahill
Props Supervisor Sarah Buik
Assistant to the Director Ragga Dahl Johansen
Artist Coordinator Susan Momoko Hingley Set Build Capital Scenery