その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロイヤル・オペラ・ハウス/ サロメ

2012-06-09 23:41:10 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 見るものを完全に別世界に連れて行ってしまう磁力の強さにおいてサロメに優るオペラはない。この夜も見事にデノケによるサロメの狂気に当てられた。特に、後半20分のヨナハーンの生首を抱えて恍惚の表情で、エクスタシーに浸るサロメには背筋の凍る戦慄を覚える。私にこの趣味はないが、性的倒錯の世界がわかるような気になるから怖い。

 そして、サロメの狂気は、音楽によってえぐり出しているのではと思わせる怒濤の大音響。ここに見事なオーケストラと歌と舞台の融合がある。あっちの世界に行くのにワーグナーのオペラのように4時間も5時間もいらない。

 不満がないわけではなかった。このプロダクションは私には一昨年に続いて2回目だが、7つの踊りの演出は相変わらず地味な上に意味不明だし、オーケストラも音こそ良く出ていたものの、息のあったアンサンブルとは言いがたく各パートが自分の楽譜をこなすので精一杯な感じで統一感には欠ける演奏だった。

 それでも、この作品の持つ魔力は、こうしたあばたを覆い隠した上に吹き飛ばす。終演後も、しばらくは日常の世界に戻って来れなかった。

(この日は歌唱は本調子で無かった気がしたが、演技の迫力が圧倒的だったデノケ)


(左端のヨナハーンのEgils Silinsは地味だが、歌唱は大したものだった。中央は指揮のAndris Nelsons)


(舞台全体イメージ)



Salome

08 June 2012, 8.00pm

Main Stage

Credits
Director David McVicar
Revival Director Bárbara Lluch
Designer Es Devlin
Lighting design Wolfgang Göbbel
Choreography Andrew George
Revival Choreographer Emily Piercy
Video design Mark Grimmer (for 59 Productions)
Video design Leo Warner (for 59 Productions)

Performers
Conductor Andris Nelsons
Salome Angela Denoke
Jokanaan Egils Silins
Narraboth Will Hartmann
Herod Stig Andersen
Herodias Rosalind Plowright
First Soldier Scott Wilde
Second Soldier Alan Ewing
First Jew Peter Bronder
Second Jew Hubert Francis
Third Jew Timothy Robinson
Fourth Jew Pablo Bemsch
Fifth Jew Jeremy White
First Nazarene Andrew Greenan
Second Nazarene ZhengZhong Zhou
Page Sarah Castle
Cappadocian John Cunningham
Slave Madeleine Pierard
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House

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