在欧3年半だけの経験だが、このオーケストラは本当に面白いオーケストラだと思う。当たり外れが激しいのである。痺れる個性的な演奏を聴かせてくれる時もあれば、本当に腰が抜けた流したような演奏の時もある。幸運にもこれまで4回のウイーンフィルのコンサートに足を運ぶ機会があったが、2010年3月にバービカンで聴いたマゼール指揮のベートーベンの田園は胸が揺さぶられた演奏だった一方で、2009年9月のプロムスのブラームス第4番はがっかりだった。さて、5回目の今日はラトル指揮。どうなるのかとワクワクでバービカンホールへ。
今回のプログラムはいずれもドイツ、オーストリアの作曲家という以外は趣旨が良く分からない。いきなりブラームスの交響曲第3番から始まって、休憩後にウェーベルンの「6つの小品」とシューマンの交響曲第3番「ライン」。選曲に常に意味合いがある必要は無いと思うが、イギリス公演でのこの選曲にはラトルのどんなメッセージがあるのだろうと興味深かった。バランス的にも、ブラームスとシューマンは入れ替えた方が、落ち着きが良いのではないか?とも思ったりしたが、まあこういう前重の配列も無くは無いので良いか。でもラトルのプログラムだと思うと、きっと何か仕掛けがあるに違いないなどと勘繰ったりしてしまう。
さて、演奏のほうだが、冒頭のブラームスが凄かった。重層的で波のようにうねる弦の音色が特徴的で、もう第一楽章から痺れっぱなし。管のアクセントも完璧でオーケストラのレベルの高さを伺わせる。ラトルが激しく求め、オーケストラが必死に応える。2009年プロムスの腰抜け演奏とは全然違う腰の入った素晴らしいブラームス。「この緊張感は何なんだ?」と圧倒されつつ、聴きながら「これは格闘技だ」と思った。より機能的で繊細なベルリンフィルやコンセルトヘボウとは明らかに目指すところ、求めるところが違っているような気がする。第4楽章の前半は怒濤の音の塊の爆発。こんな演奏は滅多に聴けるものではない。
もうこの1曲だけでお腹一杯。もう帰っても良いやと思った休憩時間だった。こりゃ、立ち直るのに時間がかかるぞと思ったら、休憩後のウェーベルンの「6つの小品」は全く趣の異なる20世紀初頭の音楽。初めて聴くのだが、個々の楽器の個性が活かされた曲で、とても楽しめた。特にパーカッションが活躍する第4楽章は、打楽器のうねりが面白かった。
そして、ラストがシューマンの「ライン」。ここでも、ラトルは思い切りオーケストラをあおる。第1楽章の有名なメロディはただただ美しいし、ケルンの大聖堂を念頭に置いたという第4楽章などは雄大で、濃厚なハーモニー。ただ聴き手の私の集中力がここまで持たず自滅。気合いの入った良い演奏だったとは思うのだが、私には均整が取れていない、バラバラ感がある演奏に聞えてしまった。きっと自分の状態がバラバラだったのだろう。もう音楽を受け止めるエネルギーが途切れてしまったのだ。
ラインの第一楽章のメロディが渦巻きながら、フラフラになってバービカンセンターを後にした。
Vienna Philharmonic / Rattle
Music by Brahms, Webern and Schumann
17 June 2012 / 19:30
Barbican Hall
Brahms Symphony No 3
Webern Six Pieces for Orchestra
Schumann Symphony No 3, 'Rhenish'
Vienna Philharmonic Orchestra
Sir Simon Rattle conductor
今回のプログラムはいずれもドイツ、オーストリアの作曲家という以外は趣旨が良く分からない。いきなりブラームスの交響曲第3番から始まって、休憩後にウェーベルンの「6つの小品」とシューマンの交響曲第3番「ライン」。選曲に常に意味合いがある必要は無いと思うが、イギリス公演でのこの選曲にはラトルのどんなメッセージがあるのだろうと興味深かった。バランス的にも、ブラームスとシューマンは入れ替えた方が、落ち着きが良いのではないか?とも思ったりしたが、まあこういう前重の配列も無くは無いので良いか。でもラトルのプログラムだと思うと、きっと何か仕掛けがあるに違いないなどと勘繰ったりしてしまう。
さて、演奏のほうだが、冒頭のブラームスが凄かった。重層的で波のようにうねる弦の音色が特徴的で、もう第一楽章から痺れっぱなし。管のアクセントも完璧でオーケストラのレベルの高さを伺わせる。ラトルが激しく求め、オーケストラが必死に応える。2009年プロムスの腰抜け演奏とは全然違う腰の入った素晴らしいブラームス。「この緊張感は何なんだ?」と圧倒されつつ、聴きながら「これは格闘技だ」と思った。より機能的で繊細なベルリンフィルやコンセルトヘボウとは明らかに目指すところ、求めるところが違っているような気がする。第4楽章の前半は怒濤の音の塊の爆発。こんな演奏は滅多に聴けるものではない。
もうこの1曲だけでお腹一杯。もう帰っても良いやと思った休憩時間だった。こりゃ、立ち直るのに時間がかかるぞと思ったら、休憩後のウェーベルンの「6つの小品」は全く趣の異なる20世紀初頭の音楽。初めて聴くのだが、個々の楽器の個性が活かされた曲で、とても楽しめた。特にパーカッションが活躍する第4楽章は、打楽器のうねりが面白かった。
そして、ラストがシューマンの「ライン」。ここでも、ラトルは思い切りオーケストラをあおる。第1楽章の有名なメロディはただただ美しいし、ケルンの大聖堂を念頭に置いたという第4楽章などは雄大で、濃厚なハーモニー。ただ聴き手の私の集中力がここまで持たず自滅。気合いの入った良い演奏だったとは思うのだが、私には均整が取れていない、バラバラ感がある演奏に聞えてしまった。きっと自分の状態がバラバラだったのだろう。もう音楽を受け止めるエネルギーが途切れてしまったのだ。
ラインの第一楽章のメロディが渦巻きながら、フラフラになってバービカンセンターを後にした。
Vienna Philharmonic / Rattle
Music by Brahms, Webern and Schumann
17 June 2012 / 19:30
Barbican Hall
Brahms Symphony No 3
Webern Six Pieces for Orchestra
Schumann Symphony No 3, 'Rhenish'
Vienna Philharmonic Orchestra
Sir Simon Rattle conductor