その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

クリストファー・ノーセル (著), 武舎広幸・武舎るみ (翻訳) 『ツールからエージェントへ。弱いAIのデザイン - 人工知能時代のインタフェース設計論』 ビー・エヌ・エヌ新社、2017

2018-12-06 07:30:00 | 



 今までに読んだことのないタイプの本だった。内容をBookデータベースからそのまま引用すると、「人間のために働く、執事のような“エージェント”をどう設計するか?自動運転、掃除ロボット「ルンバ」、IBMの人工知能「ワトソン」を使ったアプリ・・・。IoTとともに、世の中を便利に面白くしている「弱いAI(特化型AI)」。そのなかでも、人間に代わって作業を進めてくれる「エージェント」型技術のコンセプトを打ち出した、人工知能時代のプロダクト/サービス開発において実用的なアイデアが得られる一冊。」

 自分からはきっと読むことは無かったと思うが、上司の「おすすめ」で読んだ。ピンとこないところも多々あるが、どうやって役に立つエージェントを設計していくかなど考えたことも無かったから、新鮮さを感じるところが多い。この世の中、こういう書籍が出るほど、AI、エージェントの世界が当たり前になってきたということに驚きを禁じ得ない。

 米国西海岸へ出張に行くといつも感じることだが、ITの世界は気が付かないところで急速に変化中で、我々の個人の生活、企業活動に大きな影響を及ぼしている。ここから目を反らし、逃げることはできないと思う。そんなことを実感する一冊だった。


【目次】
日本語版に寄せて
日本語版まえがき:渡邊恵太
まえがき:フィル・ギルバート
はじめに

パートI 新たな視点

第1章 サーモスタットの進化
温度調節のための道具
ドレベルの「サーモスタット」
ネスト・ラーニング・サーモスタット
この章のまとめ―ツールからエージェントへ

第2章 エージェント型技術の到来
物理的な労働の削減
情報処理作業の軽減
エージェントは物理的な作業と情報処理をまとめて行う
「エージェント型技術」の実践的定義
エージェント型技術の範囲
この章のまとめ―エージェントとは永続的に裏方に徹する助っ人だ

第3章 エージェント型技術が世界を変える
「瞬間」から「興味」へ
不得意な作業をエージェントに任せる
エージェントは人間がやりたくないことを引き受けてくれる
エージェントは人には頼みにくいことをやってくれる
エージェントに任せきりにすべきものとそうでないもの
エージェントは「ドリフト」で「発見」を促す
エージェントは最小限の努力での目的達成を助ける
シナリオは生涯に及ぶ
エージェント同士の競争も
エージェントはインフラに影響を与えるほど拡大中
エージェントは場所やものに結びつく
エージェントは人間の弱点を克服するのにも役立つ
エージェントを介して世界をプログラムする
エージェントは人類の未来を大きく左右する(かもしれない)
この章のまとめ―そう、世界が変わるのだ

第4章 エージェント研究の歴史から学ぶべき6つのこと
神話に劣らぬ古さ
コンピュータは主導権を取れる
なかなか思いどおりにならないオートメーション
肝心なのはフィードバック
エージェントは水物
エージェント型と支援型の境界は今後あいまいに
この章のまとめ―エージェントの先達に学ぶ

パートII 実践

第5章 インタラクションの枠組みの修正
see-think-doループの見直し
エージェントのセットアップ
エージェントが行っていることの把握
エージェントにタスクを実行させる、あるいはエージェントの作業を支援する
エージェントの中断
ルールと例外、トリガーと挙動
検討すべき最先端技術
この章のまとめ― 新たなアプローチ
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第6章 セットアップと始動
性能や機能を伝える
制約を伝える
目標や好みの定義と許可の取得
動作テスト
本番開始
この章のまとめ―セットアップは面倒なものになりがち
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第7章 万事順調に作動中
一時停止と再開
監視
ユーザー自身による並行作業
通知
この章のまとめ―「万事順調に作動中」は扱いが比較的楽な部分
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第8章 例外の処理
インタフェースの今後の行方は?
「信頼のジェットコースター」も要注意
リソースの制限
単純明快な操作
トリガーの調整
ビヘイビアの調整
ハンドオフとテイクバック
中断とユーザーの死
この章のまとめ― 例外処理は「関門」となりがち
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第9章 ハンドオフとテイクバック
つまりAIなど不要?
注意力が持続するのは30分
専門的な知識・技能の劣化
第三者へのハンドオフ
ユーザーへのハンドオフ
テイクバック
この章のまとめ―ハンドオフとテイクバックはエージェント型システムのアキレス腱

第10章 エージェントの評価
エージェントにUIは不要?
評価方法
従来型の部分には従来型のユーザビリティテストを
エージェント部分のヒューリスティックスによる評価
この章のまとめ―ヒューリスティックスを使った評価

パートIII 展望

第11章 プラクティスの進化
コンセプトそのものの売り込みが先決
その上でエージェント型技術に磨きをかける
理想は「徐々に姿を消していくサービス」
この章のまとめ― 最終目標は汎用AI

第12章 ユートピア、ディストピア、ネコ動画
世の中を大きく変えた電球
だがインターネットは?
ジキル博士とエージェント氏
倫理++
超人的な違反
サービスを99%提供するエージェント
ロボットのコンポーネントの寿命
エージェントは何個だと「多すぎる」と感じる?
エージェントに任せると担当者の腕が鈍る?
エージェントは人間の自己認識にどう影響するか?
つまりは汎用AIが求められているということなのか?
この章のまとめ―問題山積の問題

第13章 今後の使命(賛同してもらえれば、だが)

Appendix A エージェント型技術のタッチポイント
Appendix B エージェント型技術の事例一覧
コメント
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