その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ついに完結・・・宮本輝 『流転の海 第九部 野の春』(新潮社、2018)

2018-12-02 08:48:06 | 



 ついに終わってしまった。作者自身は足掛け37年、途中から追いかけ始めた私は足かけ30年かけた、松坂熊吾のジェットコースター人生を軸とした、家族・親戚・商売仲間達の生きざま、日本人のうごめく生活史、日本戦後史を描いた物語が終わりとなった。

 最終巻は、終焉に向けて悠々と大河のごとく流れていく。自身が目標とした、息子が20歳となる70歳を迎え、身辺の整理を意識しつつ淡々と流れていく主人公の時間軸と、戦後の高度成長期を迎える日本の早い変化のスピードが絡みつつ、「宿命」の中で生きていく人間たちが描かれる。読みながら、いずれ晩年を迎える自分自身や、主人公同様に倒れて病院で死を迎えた父らの「宿命」や「業」について思いが及んだ。

 作者自身、生きている間に完結するかどうかが不安だっとというが、無事に完結に至ったことを何よりも祝いたい。日本文学史に残るべき物語となるべきだろう。
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