本年最後の観劇。今年の新国立劇場の演劇では、前半に「赤道の下のマクベス」と「1998」という2つの力作を堪能した。9月から新芸術監督に小川絵梨子さんを迎え新シーズンが始まっているが、その小川さんの芸術監督就任後の初演出作品ということで、期待感一杯で新国小劇場へ足を運んだ。
総出演者3名、舞台は2名の会話劇のみで構成される、以前に不倫関係にあった二人の男女を巡る話である。休憩含めて2時間40分たっぷり堪能した。
まずは台本の完成度の高さが印象的だった。不倫男女の過去と現在の時間軸と社会階級(クラス)に起因する価値観軸の2軸が交差する中で、緊張感あふれる会話が展開される。状況こそ全く違うが、身につまされる二人の男女の会話の成り行きは、冷や汗さえ感じた。普段あからさまな形では表面には出ないが、歴然と存在するイギリス/ロンドンのソーシャルクラスの価値観差、地域差も織り込まれて、話に深みを与えている。
また、俳優陣の熱演あってのこの舞台である。特にでずっぱりの蒼井優さんには目が釘付けだった。生で拝見したのは初めてであるし、CMやドラマで時折目にはするものの、女優として蒼井さんを注目して見たのは映画「フラガール」ぐらいで、その外見からほんわりとした癒し系キャラを勝手にイメージしていたのだが、本舞台における彼女は、切れの良い台詞回しと気持ちの入った演技が嵌っていて、女優としての高い存在感に感銘を受けた。ちょっと、これから追っかけさせてもらうかも。男優陣も浅野雅博さんは成り上がったミドルクラスの起業家を上手く演じていた。
会場は中央に舞台を置き、ワインヤード式に観客が舞台を囲むような構成。お蔭で2階のバルコニー席からも良く見えたし、会場の一体感も感じる舞台になっていた。
演劇界には全くのド素人なので深くは知らないが、国立劇場と名の付く劇場が小川さんのような若手演出家を芸術監督に登用するなんて相当ハードル高い意思決定だったのだと想像する。その決断が正しさを示す上々の初演出舞台だったのではないか。今後是非小川さんの演出作品には足を運んでみたい。
《舞台模型》
スタッフ
作:デイヴィッド・ヘア
翻訳:浦辺千鶴
演出:小川絵梨子
美術:二村周作
照明:松本大介
音響:福澤裕之
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:福本伸生
キャスト
蒼井 優 葉山奨之 浅野雅博
Staff
Written David HARE
Translated URABE Chizuru
Directed OGAWA Eriko
Cast
AOI Yu
HAYAMA Shono
ASANO Masahiro