著者による『原発・正力・CIA』を読んで、さらに戦後史の裏側を除いてみたく、本書を手に取った。こちらも前掲書同様に、米国の中央情報局(CIA)の文書をもとに、CIAが戦後日本の政局や政策決定にいかに関わってきたかを、明らかにしている。戦後日本がいかにCIAの情報戦略に組み込まれていたかが理解できる。
筆者は学者さんであるが、文章の書きっぷりはアカデミックというよりも、どちらかと言うとジャーナリスティックな文体。前掲書は正力松太郎に焦点を絞っていたが、本書は重光葵、野村吉三郎、緒方竹虎等の人物を捉えている。戦後政治については教科書レベルの知識がしか持ち合わせてない私には、個々の事件のディテールに踏み込んだ本書の記述に、木は見ているものの森が見えない感じがして、やや消化不良の感は残った。
それにしても、こうしたアメリカの情報機関は、きっと形やテーマこそ変えても、現代の日本にも大きな影響を及ぼしているに違いない。
目次
序章 記録から歴史の舞台裏を探る
第1章 CIA文書は何を語るのか
第2章 重光葵はなぜ日ソ交渉で失脚したのか
第3章 野村吉三郎と「日本海軍」再建計画
第4章 CIAはなぜ日本テレビ放送網建設支援を中止したか
第5章 緒方竹虎がCIAに送った政治リポート