木地の仕上がった天板を漆室へ運び、拭漆の準備が完了
栃をきれいに仕上げるには、捨摺りの段階でしっかり木地に漆を吸わせることが大切。
ところが今日のような気温も湿度も高い日は漆の乾きが早すぎ、ちょっとしたコツが要ります。
まず、漆刷毛で漆をたっぷり塗ります。塗ると言うより、木地に漆を置いていくという感じです。
その時、泉清吉作のこの軟らかい胴摺り刷毛は漆をたっぷり含んでくれるので実に使いやすいです。
4面を順に塗って、はじめの面に戻る頃には、生地が漆をほとんど吸ってしまっています。
特に、縮みの逆目に当たる部分が良く漆を吸います。そこで、漆を少し足しながら塗って均します。
これを何度か繰り返し、最後に残った漆をヘラで取ります。
と言っても、ほとんどヘラにはつきませんが・・・。
天板の場合は広いので、とにかくスピードが要求されます。
そこで思い切ってたくさんの漆を刷毛で配ります。ある程度配ったら刷毛で均します。
全面に配り終わりました。
刷毛で均しながら摺り込んでいきます。最後にヘラで余分な漆をしごきますが、ヘラにはほとんどつきません。
捨て摺が完了。今回の捨て摺りだけで、生漆を約360g使いました。栃は本当に良く漆を吸います。
木地が吸った漆が中まで完全に乾かくには、数日~1週間ほどかかります。
今日は午前中で仕事は切り上げ、午後は京都市内へ。
朝から府立病院に通院していた妻と待ち合わせ、「李青」さんで少し遅い昼食。
店内のバンダジの上に飾られたチンシバイ(ニワナナカマド)とその回りの雰囲気が何とも心地よく、写真を撮らせていただきました。
おいしいビビンバをいただいた後、高麗美術館へ。
高麗美術館では、今、特別企画展「浅川伯教、巧が愛した朝鮮美術」が開かれています。
先日お伺いしたTさんから、巧さんの娘さんとの交流のお話などを伺った後だったので、浅川兄弟が少し身近に感じられました。
展示をゆっくり鑑賞し、朝鮮美術の素朴で大らかな美しさもさることながら、あの忌まわしい時代の中で、朝鮮の人と文化を心から愛し敬い、朝鮮の人々と共に生きた、浅川巧の生き様にとても感動しました。
しかも、驚いたことに浅川兄弟の出身地は山梨県の高根町(現北杜市)。
信州への帰省の時にいつも生家の前を通り、浅川家のお墓のすぐ近くの無人販売所で野菜を買って帰っていたのです。
高根町には浅川伯教・巧兄弟の資料館もあることがわかりましたので、この夏帰省する時に是非行ってみたいと思います。
最後は、今日からの「手軽な酒器展」の案内状をいただいた京・町家こっとうギャラリー「婆佐羅」さんへ。
いつもにこやかに迎えてくださる、婆佐羅の☆さんは体調をくずされてお休みでしたが、店長の堀内さんに説明をしていただきながらいろいろ拝見しました。
中国の宋の時代のぐい呑みなど、私好みのものもあったのですが、酒は飲まないのであきらめて・・・
江戸末期の志野鉄絵平茶碗をいただきました。素朴なかにも上品さのある姿がとても気に入りました。
そしてもう一つは、
赤膚焼の向付。ちょっとした小鉢として使い良さそうです。ちょっと大ぶりの湯飲みやとしても使えそうなので、合いそうな朱の目はじき塗りの茶托もいただきました。
また、楽しみが増えました。☆さん、早く元気になってください。