木工芸・漆・道具        

 木肌の美しさに惹かれ、指物の伝統技術と道具に魅せられて・・・・・ 木工芸 市川 (宇治市炭山)

磨きろくろ

2010-07-04 23:23:46 | 木工
普段使うための漆塗りの椀を作りたい・・・それは、漆をはじめた頃から思い描いていたことでした。
そのために、木地を挽いてもらおうと、信州へ帰省した折に十国峠を越えて群馬県上野村のろくろ師を訪ねたこともありました。
それから20数年。
漆の美しさや強さを知ってもらうためにも、日常生活の中で気軽に使えるお椀を作りたい。
黒田乾吉さんや豊島さんに漆について教えていただいたことを生かし、丈夫で美しいお椀を作りたい・・・と最近制作しているのがこの椀。


すなわち、黒田流?拭漆の技法である、錆を使わず漆のみで下地を固め、その上に中塗り・上塗りと塗り重ねていく。
その中塗り、上塗りには自分でなやし・クロメ・クロメ返しをした日本産の漆を使う、というものです。
木地は欅。問題は、下地作りのための研ぎです。
欅の太い導管をすべて漆で埋め、しっかりした下地を作るためには、生漆を摺り込んで乾かして水研ぎ、これを4~5回繰り返さねばなりません。
この作業がなかなか大変で、特に椀の内側は椀の丸みに沿って手首のスナップをきかせて研がねばなりません。
1つ2つなら良いのですが、多くの数を一度にしようとすると腱鞘炎まちがいなしです。

いろいろ考え、陶芸用の電動ロクロに固定して回して磨けば良いのでは、と思いつきました。
ここ炭山は陶芸の里、炭山陶芸の笹谷さんを訪ね相談してみました。
すると、なんと、それ専用の「磨きろくろ」というものがあり、実物を見せていただきました。


そこまでしなくてももっと簡単なものでできないだろうかと、使っておられない刃物研ぎ機をお借りしました。


それに塩ビの太いパイプを取り付け、縁にゴムを巻いて、お椀を嵌めると・・・バッチリ。


小さなお椀用には、トイレの詰まりをとるラバーカップ(もちろん新品です)のゴム部を嵌めて・・・
早速お椀をはめ込み、スイッチオン。芯もほぼ正確に出て、なかなか良い感じで研げます。
これで問題解決・・・と思いきや・・・底は良かったものの、縁に沿って研ぎ上がると・・・突然お椀が・・・カンコロコン!
やはり、もっとしっかり固定ができないと無理でした。

がっくり来て、磨きろくろの製造会社に尋ねてみると、この磨きろくろはすでに14~15年前に製造中止になっており、現在入手は不可能とのこと。

半分あきらめ、インターネットで「磨きろくろ」を検索していると・・・な、なんと、オークションに出品されているではありませんか。しかも、14~15年前に製造中止になったものが新品で。
これは、私のために出品してくれたに違いありません。
もちろん落札させてもらいました。


これがその「磨きろくろ」。一見普通の陶芸用の電動ロクロのようですが・・・。


真空ポンプがつき、円盤の中心の穴から空気を吸い、吸着します。


漆器を固定する「シッタ」は塩ビパイプのつなぎとゴムで自作。ワンタッチで芯が出せるようにしました。


裏も簡単に固定できます。


いろいろ調整しながらでしたが、20個の椀があっという間?に研げました。しかもきれいに。


漆をしっかりしみ込ませて乾かします。

コメント
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