「いつかカエルになる日まで」栗本薫著
本作品は栗本さんが息子の大介さんのためにと書かれたもの。幼い大介氏とのやり取りから生まれたよう。2009年に亡くなった栗本薫(中島梓)さんが、今までに発表されたことのない「童話」であり、死生観が語られた異色の文芸書として位置付けられています。
4編の童話。
1編目「せかいいち大きなおべんとう」
ある日、大きなおべんとう箱が落ちていた。動物たちみんなで「誰の?」と探し回って、最後に転校生のぞうさんのものと判明。大きいからみんなの分もあるよ。ピクニックに行ってみんなで食べましょうと、そんな感じの内容。「童話だなぁ」と、微笑ましい気持ちになれます。
2編目「いつかかえるになる日まで」
おたまじゃくしが主人公。兄弟よりも成長の遅いぼくは、「ぼくもかえるになれるの?」と不安になる。そんなぼくに、「大丈夫。みんな違って当然なんだから。そのうち、きっと自分の順番がやっていくる。それまでゆっくり成長していけばいいのよ」とお母さんが優しく教え諭す物語。
3編目「おたまじゃくしが死んじゃった」
飼っていたおたまじゃくしが死に、それを悲しみ、死を恐れるだいちゃんに、「死はだれにでもやってくるのよ」とやさしくお母さんが語りかけるお話。
4編目「てんごくへいったざりがに」
ある朝、目覚めたざりがにさんは、いつも一緒にいた夫がいないことに気付く。「私の夫を知りませんか。」と訪ね歩くざりがにさん。最後に出会った神様が、天国にいる夫のざりがにの元に連れて行ってくれるお話。
どれも、「あぁ、栗本さんだなぁ」と思えるものでした。と同時に、息子さんである大介さん(だいちゃん)への深い愛情が、読んでるこちらにも強く伝わってくるようなお話でした。”お母さん”だったんだなぁと、そんなことも思った作品集でした。
最初に、お弁当の持ち主を探すほのぼのとした、ほほえましい童話の世界があって、優しい気持ちになって読む。それがだんだん… 子どもが生まれ、成長していき、やがて… この世に生きるものはいつか必ず死んでいく。そういうことを、幼い子に言って聞かせている著者の姿が偲ばれて、何とも切なくなる。
時や死についての語りが強く印象に残ります。「おたまじゃくし…」は特にかな。
慈愛の眼差しとそれ以上にあふれ出る死のイメージについて、作者が逝ってしまった今となると、一層心打たれるものがありますね。
もしかしたら、多重人格を自身で認めていたかもしれない栗本さんの奥深くにあって、最もゆたかにものを書く人格そのものを統御していた、「母性」で書かれたものなんじゃないかなと思ってしまいます。
「異色」と銘打たれてますけど、むしろ素の栗本薫さんとはこうした作品を書く人なのかなと思ったりもしますが、どうなのでしょうか。
本作品は栗本さんが息子の大介さんのためにと書かれたもの。幼い大介氏とのやり取りから生まれたよう。2009年に亡くなった栗本薫(中島梓)さんが、今までに発表されたことのない「童話」であり、死生観が語られた異色の文芸書として位置付けられています。
内容は全4章構成。
1.せかいいち大きなおべんとう
2.いつかかえるになる日まで
3.おたまじゃくしが死んじゃった
4.てんごくへいったざりがに
4編の童話。
1編目「せかいいち大きなおべんとう」
ある日、大きなおべんとう箱が落ちていた。動物たちみんなで「誰の?」と探し回って、最後に転校生のぞうさんのものと判明。大きいからみんなの分もあるよ。ピクニックに行ってみんなで食べましょうと、そんな感じの内容。「童話だなぁ」と、微笑ましい気持ちになれます。
2編目「いつかかえるになる日まで」
おたまじゃくしが主人公。兄弟よりも成長の遅いぼくは、「ぼくもかえるになれるの?」と不安になる。そんなぼくに、「大丈夫。みんな違って当然なんだから。そのうち、きっと自分の順番がやっていくる。それまでゆっくり成長していけばいいのよ」とお母さんが優しく教え諭す物語。
3編目「おたまじゃくしが死んじゃった」
飼っていたおたまじゃくしが死に、それを悲しみ、死を恐れるだいちゃんに、「死はだれにでもやってくるのよ」とやさしくお母さんが語りかけるお話。
4編目「てんごくへいったざりがに」
ある朝、目覚めたざりがにさんは、いつも一緒にいた夫がいないことに気付く。「私の夫を知りませんか。」と訪ね歩くざりがにさん。最後に出会った神様が、天国にいる夫のざりがにの元に連れて行ってくれるお話。
どれも、「あぁ、栗本さんだなぁ」と思えるものでした。と同時に、息子さんである大介さん(だいちゃん)への深い愛情が、読んでるこちらにも強く伝わってくるようなお話でした。”お母さん”だったんだなぁと、そんなことも思った作品集でした。
最初に、お弁当の持ち主を探すほのぼのとした、ほほえましい童話の世界があって、優しい気持ちになって読む。それがだんだん… 子どもが生まれ、成長していき、やがて… この世に生きるものはいつか必ず死んでいく。そういうことを、幼い子に言って聞かせている著者の姿が偲ばれて、何とも切なくなる。
時や死についての語りが強く印象に残ります。「おたまじゃくし…」は特にかな。
慈愛の眼差しとそれ以上にあふれ出る死のイメージについて、作者が逝ってしまった今となると、一層心打たれるものがありますね。
もしかしたら、多重人格を自身で認めていたかもしれない栗本さんの奥深くにあって、最もゆたかにものを書く人格そのものを統御していた、「母性」で書かれたものなんじゃないかなと思ってしまいます。
「異色」と銘打たれてますけど、むしろ素の栗本薫さんとはこうした作品を書く人なのかなと思ったりもしますが、どうなのでしょうか。