シムを造るのに際して、我々に依頼されたのは、オブジェクト制作だけである。だが実はもっと重要な制作がある。それがアバターを始め、全てのモノを動かすためのスクリプトである。これがなければ、草本1つ動かすことができない。
通例3DCGソフトで、モノを動かすためにプログラムを書かされると言うことは少ない。あらかじめ決められた動作を、選択すればオブジェクトであれ、画面であれ、フィギャーであり、動いてくれる。ただしそれらの動作は、定められた動作の範囲内という点では限定的である。SLにおいても、いくつかのモノの動作は、予めパッケージとして用意されている。だがもしパッケージの中で、目的に適った動作が見あたらないときは、リンデン社が公開しているLSLというスクリプトをユーザー自身で書けば、より多彩な動作が実現できる。
コンピュータの構文は一緒だから、Java等の言語を勉強してきた人間にとっては、比較的取り組みやすいことだろう。マッキントッシュの登場以来、その背後に置かれていたプログラム[注1]の一部が、SLによって再び前面に登場してきた。プログラム!!その言葉を聞いたとき、私はFORTRANでプログラムを書いていた学生時代を思い出した。あの「カンマ」と「ピリオッド」を打ち間違えただけで、それが原因だと解る迄の1週間を悶々と過ごしていた悪夢の日々。現在は、いわゆる校正機能がついているから、随分楽になったと思うが・・・。
シム制作に話を戻すと、オブジェクト制作上どうしても、スクリプトを必要とする場面があった。例えば多数の映像コンテンツは、グランドレベルに映像視聴範囲と共にリンク先の設定をするのだが、建築内だと数値制御で正確に組み立てた床を、何枚も剥がしてなければならない。映像コンテンツ数が大けれれば、その作業も手間のかかる仕事である。そこで、こうした床をスクリプトで上下できるように設定している。上図の写真は、アトリウムと映像展示とを兼ねた空間としてデザインしたものだが、ここでもスクリプトを書いて、映像展示の際は、周囲の壁と天井をキー操作で床から定位置まで立ち上げ、容易に模様替えができる設定とした。
このようにスクリプトの存在を再度顕在化させたこと自体がSLの特質である。我々は、オブジェクト制作よりも、スクリプト制作の方が重要であると判断している。スクリプトこそがコンピュータの本質そのものだからだ。
注
注1.ここでは、スクリプトは文字列・文字体系と定義し、スクリプト言語を用いて記述されたものをプログラムと定義する。本稿では、同義に解釈して差し支えない。
04
セカンドライフ sonicmart制作記3.
2007年8月19日日曜日
ファーストライフにおいて、我々が見ているシーン毎の風景は、自然の要素や、街や建築や家具といった人工要素とによって構成されている。これらの要素を芝居に例えれば登場人物と読み替えることができる。芝居の登場人物には、先ず主役と脇役という役回りがある。次いで登場人物らの人間関係が設定されている。恋人同士、家族、善人と悪人、支配する側とされる側といった具合に。
例えば 上の写真を、ソニックマート[注1]劇場で行われている、”マナティ・リゾート・アイランド”[注2]という演目の1シーンだとするならば、すべての登場人物が舞台に勢揃いしたところだろう。 登場人物は、山や入り江とヴォードウォーク、入り江に浮かんでいるカラフルなボート群、街路樹や植栽、赤や緑の屋根のコテージ、コテージには暖炉が垣間見える、少し顔をのぞかせているホール、広場に置かれた白いパラソルや黄色いチェア、一寸目立つ青サインボードである。 それぞれのキャストが、役回りの違いを超えてお互いに同じ存在感という関係性を維持しながら、この風景を構成している。
風景をつくる方法がランドスケープデザインである。日本語では「そのをつくる=園を造る=造園」という言葉が近い。我々が制作したシムでは、ランドスケープデザインの手法を応用した。その特徴は、シーン毎に主役と脇役が変わってくる、風景の多様性を実現していることだ。
本ブログでは、マナティ・リゾート・アイランドの中から幾つかの風景を取り上げ、主役と脇役とが変わってゆく様相や関係性を中心に、ランドスケープデザイン手法やシム制作の考え方について、数回程度掲載してゆく。
注
1)ソニックマートは我々の制作場所であるシムの名称。
2) マナティ・リゾート・アイランドは、我々が制作したデザインのコンセプトテーマ。
通例3DCGソフトで、モノを動かすためにプログラムを書かされると言うことは少ない。あらかじめ決められた動作を、選択すればオブジェクトであれ、画面であれ、フィギャーであり、動いてくれる。ただしそれらの動作は、定められた動作の範囲内という点では限定的である。SLにおいても、いくつかのモノの動作は、予めパッケージとして用意されている。だがもしパッケージの中で、目的に適った動作が見あたらないときは、リンデン社が公開しているLSLというスクリプトをユーザー自身で書けば、より多彩な動作が実現できる。
コンピュータの構文は一緒だから、Java等の言語を勉強してきた人間にとっては、比較的取り組みやすいことだろう。マッキントッシュの登場以来、その背後に置かれていたプログラム[注1]の一部が、SLによって再び前面に登場してきた。プログラム!!その言葉を聞いたとき、私はFORTRANでプログラムを書いていた学生時代を思い出した。あの「カンマ」と「ピリオッド」を打ち間違えただけで、それが原因だと解る迄の1週間を悶々と過ごしていた悪夢の日々。現在は、いわゆる校正機能がついているから、随分楽になったと思うが・・・。
シム制作に話を戻すと、オブジェクト制作上どうしても、スクリプトを必要とする場面があった。例えば多数の映像コンテンツは、グランドレベルに映像視聴範囲と共にリンク先の設定をするのだが、建築内だと数値制御で正確に組み立てた床を、何枚も剥がしてなければならない。映像コンテンツ数が大けれれば、その作業も手間のかかる仕事である。そこで、こうした床をスクリプトで上下できるように設定している。上図の写真は、アトリウムと映像展示とを兼ねた空間としてデザインしたものだが、ここでもスクリプトを書いて、映像展示の際は、周囲の壁と天井をキー操作で床から定位置まで立ち上げ、容易に模様替えができる設定とした。
このようにスクリプトの存在を再度顕在化させたこと自体がSLの特質である。我々は、オブジェクト制作よりも、スクリプト制作の方が重要であると判断している。スクリプトこそがコンピュータの本質そのものだからだ。
注
注1.ここでは、スクリプトは文字列・文字体系と定義し、スクリプト言語を用いて記述されたものをプログラムと定義する。本稿では、同義に解釈して差し支えない。
04
セカンドライフ sonicmart制作記3.
2007年8月19日日曜日
ファーストライフにおいて、我々が見ているシーン毎の風景は、自然の要素や、街や建築や家具といった人工要素とによって構成されている。これらの要素を芝居に例えれば登場人物と読み替えることができる。芝居の登場人物には、先ず主役と脇役という役回りがある。次いで登場人物らの人間関係が設定されている。恋人同士、家族、善人と悪人、支配する側とされる側といった具合に。
例えば 上の写真を、ソニックマート[注1]劇場で行われている、”マナティ・リゾート・アイランド”[注2]という演目の1シーンだとするならば、すべての登場人物が舞台に勢揃いしたところだろう。 登場人物は、山や入り江とヴォードウォーク、入り江に浮かんでいるカラフルなボート群、街路樹や植栽、赤や緑の屋根のコテージ、コテージには暖炉が垣間見える、少し顔をのぞかせているホール、広場に置かれた白いパラソルや黄色いチェア、一寸目立つ青サインボードである。 それぞれのキャストが、役回りの違いを超えてお互いに同じ存在感という関係性を維持しながら、この風景を構成している。
風景をつくる方法がランドスケープデザインである。日本語では「そのをつくる=園を造る=造園」という言葉が近い。我々が制作したシムでは、ランドスケープデザインの手法を応用した。その特徴は、シーン毎に主役と脇役が変わってくる、風景の多様性を実現していることだ。
本ブログでは、マナティ・リゾート・アイランドの中から幾つかの風景を取り上げ、主役と脇役とが変わってゆく様相や関係性を中心に、ランドスケープデザイン手法やシム制作の考え方について、数回程度掲載してゆく。
注
1)ソニックマートは我々の制作場所であるシムの名称。
2) マナティ・リゾート・アイランドは、我々が制作したデザインのコンセプトテーマ。