正月休みといっても看護師は世間並みに休まない。そんな夜勤続きのライフスタイルが面白いという少し世間とは違った感覚の持ち主だ。だから翠も二日ほど休んで夜勤から仕事始めだ。いつもの深夜のお茶タイムに晃子さんがやってきた。
晃子「翠ーーー、大晦日から夜勤続きだったよんーーーー」
翠「あら替われば休めるのにーーー」
晃子「だって世間がいつもと違うことを始めると急患が増えるのよ。札幌の彼氏だってドクターヘリで毎日飛んでいたもん。」
翠「まあ食べすぎ、飲み過ぎ、親戚が来てはしゃぎすぎた、の時間だもんね。」
晃子「大晦日の時にテレビの音を小さくして見ている紅白が終わるじゃん。住吉神社で初詣が始まるじゃん。すると急患が増えるな。」
翠「雪で転んだが多くなるよね。いつも神様なんか拝まないのに、突然しないことするからねぇー。」
晃子「ころぶたけならいいんだけど、いたよ!。初詣で転んで運悪く石が置いてあって胯間を殴打して気絶した男性の急患がいたな。」
翠「それってお気の毒様だよねん。」
晃子「小学生の飲み過ぎも急患でやってきた。水と間違えてお酒をグビグビしちゃったんだって。」
翠「正月らしい急患だねえー。(*^▽^*)」
晃子「新春初エッチしたら心臓がバクバクしだしたというじいさんとか・・・。ばあさんがうろたえていた、私が理由を尋ねても夜突然というだけど、何をしていたかがわからない。そんでお薬手帳がありますかって尋ねたら精力剤の名前ばかり。どうもお正月だってんでハッスルしたらしいよ。」
翠「年が変わると普段しないことを突然したくなのが民の心よね。」
晃子「会社の経理をしている楚々としたオールドミスもいたなぁー。」
翠「何それ!。一応分別ありそうな感じだけど。」
晃子「お正月旅行で岩手県の遠野にでかけたんだって。パワースポットの怪しい神社で買った金精様を膣にいれたら取れなくなったわけ・・・。なんかねぇー・・・・唖然。」
翠「遠野って金精様の石がよく置かれているよね。筋肉弛緩剤でも投与するのかなぁー!?」
晃子「石けん水と人力!。私ガヤッタモン。なんでも特大のはり型でさあ、飾りもんがついているのよ。それが膣壁にささったんだよね。まあ赤ん坊大のサイズが入るのは理屈としてはわかるけど・・・。それってパワースポットというかなぁー?。」
翠「つまり神様に嫌われたんだ。」
晃子「神社のお参りなんか普段はしないじゃん。」
翠「神様が怒った。」
晃子「そりゃあ、1年に一度のお参り位じゃ信心のなさに神様も怒るよ。」
翠「それって初詣というのかなぁー!?。いつもお参りしているから、年が変わると初の文字がつくんだけど、いつもお参りなんかしないじゃんさぁー・・・。」
晃子「だから神様も怒った。初詣しかしないのかよ!、
って・・・。」
・・・
みんな普段はしないことをお正月だといってやり出すから、生活のテンポが狂いだして急患が発生する。多忙な夜勤が続く病院である。そんな時間を楽しむぐらいのポジティブな心があるから看護師なんだろう。
小樽の空が明るくなるまでには、まだ随分と時間がある。
日の出が遅くなった真冬の小樽である。