この柿の木は渋柿なので捕る人がおらず、実が落ちるほどに熟すと渋が抜けるのかツグミやヒヨドリがきて啄ばんでいるのをよく見る。この木の周りの畑では少しまでは作物が作られていたが、おじいさんが高齢となり、ついに耕作されなくなってしまった。あまり変化がないように見える谷戸だが、こうして少しずつ変わってゆく。
先々週まであたりを睥睨するように飛んでいたオニヤンマが寿命がつきて、静かに羽を休めていた。この谷戸で羽化して一夏を生き、今同じ谷戸で大地に還ろうとしている。この日は誰にも会うことなく静かな谷戸であったこともあり、一つの命の終わりに感慨深かった。