日本フィルの12月定期は、今年4月に来日をキャンセルした指揮者に代わって日本フィルを振った山田和樹さんの再登場。4月にはマーラー2曲とモーツァルトを好演して鮮烈な印象を残した。今回はヴァラエティに富むプログラム。山田さんの「今」を窺い知る興味深い機会だった。
1曲目はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。温かくて甘美な音色は4月のマーラー以来だが、それに加えてここには濃密なドラマがあった。わずか10分程度のこの曲にこれほどのドラマを見出すとは、驚くべき才能だ。山田さんはヨーロッパでの活動が目覚ましいが、それはほかでもない、このような才能が認められているからだろう。
2曲目はモーツァルトの交響曲第31番「パリ」。率直にいって、これはあまり印象に残らなかった。おのずから湧き起こる音楽の愉悦、といったものが不足していた。この曲は練習量が少なかったのではないか。山田さんならもっと愉悦にとんだモーツァルトが期待できるはずだ。
3曲目のベルクの「ルル」組曲は、この日一番の聴きものだった。甘美な音色と濃密なドラマは1曲目のドビュッシーの路線上にあり、これがベルクの官能的な音楽と相俟って、壮大なドラマを形成していた。正直にいって、日本フィルがベルクの音楽をこれほど表現できるとは、嬉しい驚きだった。
ソプラノ独唱は林正子さん。起伏の大きな、思い入れたっぷりの歌唱だった。わたしの好みでは、もう少し軽さがあってもよいと思うが、考えてみると、この曲でそういう歌唱を聴いたことがない。オペラ全曲でならともかく、単独で取り出すと、どうしても力が入ってしまうのかもしれない。なおこの日は、最後のゲシュヴィッツ伯爵令嬢の絶命の部分にも歌が入った。
本作の曲名は、今では「ルル」組曲が定着しているが、昔は「ルル」交響曲という名称も使われた。第3楽章の「ルルの歌」を扇のかなめにして、第2楽章と第4楽章、第1楽章と第5楽章がそれぞれ対応するシンメトリック構造なので、マーラーのような交響曲と考えることにも一理あると思った。なお原題はSymphonische Stuecke aus der Oper“Lulu”(オペラ「ルル」からの交響的断章)。
4曲目はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。1曲目のドビュッシーのモードに立ち返り、そこにダイナミックさを加えた演奏。甘美で容赦のないドラマが渦巻いた。
(2011.12.9.サントリーホール)
1曲目はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。温かくて甘美な音色は4月のマーラー以来だが、それに加えてここには濃密なドラマがあった。わずか10分程度のこの曲にこれほどのドラマを見出すとは、驚くべき才能だ。山田さんはヨーロッパでの活動が目覚ましいが、それはほかでもない、このような才能が認められているからだろう。
2曲目はモーツァルトの交響曲第31番「パリ」。率直にいって、これはあまり印象に残らなかった。おのずから湧き起こる音楽の愉悦、といったものが不足していた。この曲は練習量が少なかったのではないか。山田さんならもっと愉悦にとんだモーツァルトが期待できるはずだ。
3曲目のベルクの「ルル」組曲は、この日一番の聴きものだった。甘美な音色と濃密なドラマは1曲目のドビュッシーの路線上にあり、これがベルクの官能的な音楽と相俟って、壮大なドラマを形成していた。正直にいって、日本フィルがベルクの音楽をこれほど表現できるとは、嬉しい驚きだった。
ソプラノ独唱は林正子さん。起伏の大きな、思い入れたっぷりの歌唱だった。わたしの好みでは、もう少し軽さがあってもよいと思うが、考えてみると、この曲でそういう歌唱を聴いたことがない。オペラ全曲でならともかく、単独で取り出すと、どうしても力が入ってしまうのかもしれない。なおこの日は、最後のゲシュヴィッツ伯爵令嬢の絶命の部分にも歌が入った。
本作の曲名は、今では「ルル」組曲が定着しているが、昔は「ルル」交響曲という名称も使われた。第3楽章の「ルルの歌」を扇のかなめにして、第2楽章と第4楽章、第1楽章と第5楽章がそれぞれ対応するシンメトリック構造なので、マーラーのような交響曲と考えることにも一理あると思った。なお原題はSymphonische Stuecke aus der Oper“Lulu”(オペラ「ルル」からの交響的断章)。
4曲目はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。1曲目のドビュッシーのモードに立ち返り、そこにダイナミックさを加えた演奏。甘美で容赦のないドラマが渦巻いた。
(2011.12.9.サントリーホール)