Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ウィーン:オルフェオ

2011年12月28日 | 音楽
 モンテヴェルディの「オルフェオ」の公演では、開演前に劇場責任者がマイクをもって現れた。オルフェオ役のジョン・マーク・エインズリJohn Mark Ainsleyが調子を崩したので、代わりにアポロ役のミルコ・グァダニーニMirko Guadagniniが歌うとのこと。ピットのなかには、黒い服装のオーケストラ団員に交じって、白い服装の人がいる。その人がグァダニーニだ。グァダニーニはピットのなかで歌い、エインズリは舞台で演技をするという段取りだ。

 指揮はアイヴォー・ボルトン。第1幕が始まってしばらくすると、オルフェオの出番になる。グァダニーニが立ち上がって歌い始める。張りがあり、感情のこもった、力強い歌唱だ。ボルトンもグァダニーニにかかりっきりで細かく表情をつけていく。グァダニーニも一心不乱にボルトンを見て、上半身を大きく揺らしながら、劇的に歌っていく。わたしの席は最前列だったので、2人の緊張したやりとりが目の前で飛び交い、圧倒された。

 最後にはアポロの出番がある。そのときはどうするのだろうと思った。劇場責任者はそれも説明したのだが、実はよくわからなかった。さてその場面になると、グァダニーニはピットを離れて舞台に現れ、アポロ役を歌った。代わりに4人の羊飼いのうちの一人がピットに入ってオルフェオ役を歌った。グァダニーニにくらべて非力だが、それは仕方がない。

 舞台上のエインズリは熱演だった。声が出ない分、演技に最善を尽くしていた。

 カーテンコールでエインズリとグァダニーニが肩を組んで登場したとき、客席からは大きな拍手と歓声が起こった。感極まって抱擁する二人。ベテランのエインズリの急場を若いグァダニーニが救った構図が美しかった。

 演奏はフライブルク・バロックオーケストラ。わたしは初めて聴いたが、世評の高い団体だけあって、表情豊かな瑞々しい演奏をする。なるほど、今のピリオド楽器の演奏はこうなのかと瞠目させられた。通奏低音はモンテヴェルディ・コンティヌオ・アンサンブル。アイヴォー・ボルトンが主宰する団体だ。

 演出はクラウス・グート。2階建の屋敷のなかで物語が展開する。三途の川の渡し守カロンテと地獄の王プルトーネは同一人だ(エウリディーチェの父親のように見えた)。オルフェオは大量の薬物を飲んで自殺する。救済は訪れない。いかにもグートらしい演出だった。
(2011.12.20.アン・デア・ウィーン劇場)
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