METライブビューイングでフィリップ・グラスのオペラ「サティアグラハ」を観た。今年11月19日のメトロポリタン歌劇場における公演。
このオペラはインド独立の父マハトマ・ガンディーの青年時代を描いている。ガンディー(1869~1948)は、ロンドンで法律を学んだ後、1893年に南アフリカで弁護士の仕事に就いた。当地で経験したインド人への差別と、それにたいする抵抗運動が、ガンディーの思想の核となった。このオペラはその時期のガンディーを描いたもの。
サティアグラハSatyagrahaとはサンスクリット語で「真理の把握」を意味する(メトロポリタン歌劇場のホームページ上の日本語版「あらすじ」による。英語版では“truth force”or“holding onto the truth”と説明されている。)。ガンディーの思想の根幹をなすものだ。
全3幕。第1幕と第2幕はそれぞれ3場に分かれる。第3幕は1場。各幕各場が当時のガンディーの重要な出来事を描いている。
ユニークな点は、物語の展開と、歌手によって歌われる歌詞とが、各々独立していることだ。物語の展開はホームページ上の「あらすじ」で周知され、さらに舞台上でも字幕によって紹介される。一方、歌詞はヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター」の言葉がそのまま使われる。つまりサンスクリット語だ。ホームページには英訳が載っているし、舞台上でも字幕が出る。その内容は興味深い。でも聞いただけでわかる人はほとんどいない。それでよいのだ。サンスクリット語がフィリップ・グラスの音楽に乗っているのを聴けばよいという趣向だ。
グラスの音楽は美しかった。小さなフレーズが無限に繰り返される下地の上に、息の長い抒情的なラインが伸びていく。フレーズの繰り返しには時々小さな変化が生じるが、繰り返しの波は乱れない。どこまでも続くその波に乗っているうちに、一種のトランス状態になる。この音楽は冒頭からわたしの琴線にふれた。
ガンディー役はリチャード・クロフト。テノールの澄んだ声がガンディーの心情を表現し、またグラスの音楽の美しさを伝えていた。合唱団の圧倒的な迫力も特筆ものだった。
特徴的なことは、The Skills Ensembleという即興的なパフォーマンス集団が参加していることだ。巨大な人形によるパフォーマンスや、大量の新聞紙(当時のインディアン・オピニオン紙)によるパフォーマンスで楽しませてくれた。
(2011.12.13.東劇)
このオペラはインド独立の父マハトマ・ガンディーの青年時代を描いている。ガンディー(1869~1948)は、ロンドンで法律を学んだ後、1893年に南アフリカで弁護士の仕事に就いた。当地で経験したインド人への差別と、それにたいする抵抗運動が、ガンディーの思想の核となった。このオペラはその時期のガンディーを描いたもの。
サティアグラハSatyagrahaとはサンスクリット語で「真理の把握」を意味する(メトロポリタン歌劇場のホームページ上の日本語版「あらすじ」による。英語版では“truth force”or“holding onto the truth”と説明されている。)。ガンディーの思想の根幹をなすものだ。
全3幕。第1幕と第2幕はそれぞれ3場に分かれる。第3幕は1場。各幕各場が当時のガンディーの重要な出来事を描いている。
ユニークな点は、物語の展開と、歌手によって歌われる歌詞とが、各々独立していることだ。物語の展開はホームページ上の「あらすじ」で周知され、さらに舞台上でも字幕によって紹介される。一方、歌詞はヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター」の言葉がそのまま使われる。つまりサンスクリット語だ。ホームページには英訳が載っているし、舞台上でも字幕が出る。その内容は興味深い。でも聞いただけでわかる人はほとんどいない。それでよいのだ。サンスクリット語がフィリップ・グラスの音楽に乗っているのを聴けばよいという趣向だ。
グラスの音楽は美しかった。小さなフレーズが無限に繰り返される下地の上に、息の長い抒情的なラインが伸びていく。フレーズの繰り返しには時々小さな変化が生じるが、繰り返しの波は乱れない。どこまでも続くその波に乗っているうちに、一種のトランス状態になる。この音楽は冒頭からわたしの琴線にふれた。
ガンディー役はリチャード・クロフト。テノールの澄んだ声がガンディーの心情を表現し、またグラスの音楽の美しさを伝えていた。合唱団の圧倒的な迫力も特筆ものだった。
特徴的なことは、The Skills Ensembleという即興的なパフォーマンス集団が参加していることだ。巨大な人形によるパフォーマンスや、大量の新聞紙(当時のインディアン・オピニオン紙)によるパフォーマンスで楽しませてくれた。
(2011.12.13.東劇)