Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パスカル・デュサパンの音楽

2021年05月28日 | 音楽
 毎年恒例の東京オペラシティのコンポ―ジアム2021は、コロナ禍のため、今年の審査員のパスカル・デュサパン(1955‐)による武満徹作曲賞の最終審査はオンラインで行われることになったが、デュサパンの音楽の演奏会は無事開かれた。

 1曲目はチェロ協奏曲「アウトスケイプ」(2015)。チェロ独奏は横坂源。オーケストラは杉山洋一指揮の都響。演奏時間は約27分で単一楽章の曲だ。かなり長いが、終始飽きずに聴くことができた。横坂源の集中力のある演奏のおかげだろう。この曲はシカゴ交響楽団からの委嘱により、チェロ奏者のアリサ・ワイラースタインのために書かれたそうだ。たしかにワイラースタインの演奏を彷彿とさせるような幅広い音域を使った曲だ。横坂源の演奏は、ドスのきいた低音から艶のある高音まで、チェロの音域を極限まで強調するものだった。

 2曲目は弦楽四重奏曲第6番「ヒンターランド」(2008~09)。この曲はサントリー芸術財団のサマーフェスティバル2014でも演奏されたが(そのときはアルディッティ弦楽四重奏団、アレクサンダー・リープライヒ指揮東京交響楽団の演奏だった。言い遅れたが、この曲は弦楽四重奏曲を名乗りながらも、オーケストラがバックにつく)、そのときの演奏よりも今回のほうがおもしろかった。

 今回の弦楽四重奏は、ヴァイオリンが成田達輝と石上真由子、ヴィオラが田原綾子、チェロが山澤慧という若手奏者たち。その生きのいい、アグレッシヴな演奏が、この曲のおもしろさを引き出した。弦楽四重奏というひとつの集団ではなく、4人の精鋭たちの自由奔放な演奏といったらいいか。その結果、この曲が4人のソリストをもつ合奏協奏曲のように聴こえた。

 しかもその合奏協奏曲が、4人のソリストとオーケストラとの対照ではなく、オーケストラも細分化され、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラそしてチェロの各首席奏者が4人のソリストと絡むなど、変幻自在な動きを見せた。弦楽四重奏もオーケストラも、集団という概念を解体して、「個」を取り戻すような新鮮さがあった。

 3曲目は「エクステンソ」(1993~94)。この曲には「オーケストラのためのソロ第2番」という副題がある。オーケストラのための「ソロ」?と訝しく思うが、たしかにオーケストラが一体となって動き、「オーケストラ」という楽器のソロという気がしないでもない。その意味では、弦楽四重奏曲第6番「ヒンターランド」とは真逆なオーケストラの扱いだ。

 演奏は綿密だった。混然一体となったアンサンブルが、ひとつの有機体のように動き、澄んだ響きを聴かせた。
(2021.5.27.東京オペラシティ)
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