
八十代の祖母が「死ぬ前にロンドンにお姫様のような旅をしたい」と言ったことから始まる、著者と祖母のロンドン5泊8日の豪華旅行。
とにかく一流好みで贅沢な祖母、ファーストクラスで飛び、一流ホテルのジュニアスィートに連泊し、大英博物館、ロンドン塔、ハロッズ、フォートナム&メイソン、ロンドン三越にオリエント急行(旅行はかなり前のことらしい)。
5つ星ホテルのおもてなし、そして憧れのアフタヌーンティー。
イギリス留学経験があって英語には苦労しないが自己肯定感の低い著者が、お姫様のような自信と威厳に満ちた祖母に振り回されるという、漫画のような旅行記です。
ホテル名は記されていませんが、リッツかな、クラリッジかな?
大金をはたけば、こんなにも丁寧に接客して貰えるのねえ、という世界。
無論それだけではなく、この祖母という人の愛すべきキャラクターによるものでしょうが。
大英博物館のあのミイラやロゼッタストーンを「干物や石ばかり見せられても」と切り捨て、ハロッズで上等なカシミヤのコートが欲しいと、何人もの店員にあれこれと注文をして試着しまくり、襟やボタンのデザインまで換えさせ、堂々と自分の好みのコートを手に入れる祖母姫、あっぱれ!
「どうしてお祖母ちゃんはいつもそう自信満々でいられるのかなーって。絶対迷わないやん?いつも断言するし、自分のことそうやって美人だと思ってるし、凄い才能だと思うんだよね。そのつよつよ遺伝子、引き継ぎたかったわ~」中略
「あんたはそうやって、最初から諦めているから不細工さんのまま、ゼロどころか、日焼けして、お手入れをさぼって、お洒落もしないで、マイナス5にも10にもなっているんと違いますか?」中略
「もっと綺麗になれる、もっと上手になれる、もっと賢くなれる、自分を信じて努力して、その結果生まれるのが、自信よ」
「祖母姫」というタイトルが納得の銀髪のおばあちゃまの発言、なんともお見事。
暑苦しい夜、寝る前に軽く読むのにピッタリの本です。