Zooey's Diary

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「屋根をかける人」

2024年08月24日 | 

門井慶喜という著者の名前、何処かで見たと思ったら「銀河鉄道の父」を書いた人だったのですね。
これは、明治末期にキリスト教布教のために来日したアメリカ人建築家、メレル・ヴォーリズの物語。

明治38年、メレル・ヴォーリズはアメリカから来日、滋賀県近江八幡の商業学校の英語の教師として来日、教職の傍ら熱心にキリスト教を布教した。メレルは建築にも才能を発揮して建築事務所を興し、次々と有名建築物を造る。更に商才もあって、米国から取り寄せたメンソレータムを売り出し、今日の近江兄弟社グループを築いた。

 (明治学院大学礼拝堂)

世の中には本当に凄い人がいるなあと思います。
建築は殆ど独学ながら(コロラドカレッジでは哲学専攻)次々と建築設計をし、メレルが残した建築物は1500に達するのだそうです。
明治期の有名な建築家、あの東京駅を造った辰野金吾の作品数は200だったというのに。
私が知っているヴォーリズの建築物は、例えば明治学院大学の礼拝堂、山の上ホテル、関西学院大学など。

 (山の上ホテル)

メレルは39歳の時に華族令嬢一柳真喜子と結婚し、戦争の最中に敵国人として追放され企業を没収されるのを防ぐために、日本に帰化します。
あれだけキリスト教に身を捧げた宣教師であったのに、その為に神道に改宗までして。
真喜子とは終生仲の良い夫婦であったらしいのですが、日本国籍を取得するために、一旦離婚して真喜子の養子となるという、苦肉の策を取ったと。

 (関西学院大学)

戦後彼は、日本に進駐したマッカーサーと近衛文麿との仲介工作を行ったとされ、その労の為か、昭和22年、天皇と謁見することになります。
”天皇はちょっと目を伏せ、また上げて、
「あなたは橋ですね」
「橋?」
「日本とアメリカを結ぶ橋。どちらにも属さず、どちらにも属する」
メレルは、思わず破顔した。
「違います」
「え?」
「橋ではありません。建築家ですから、私は、双方に、大きな屋根をかけたのです」”

 (一柳夫妻)

タイトルは、ここから取ったと思われます。
ひとつ気になるのは、後書きに、これは事実に基づいたフィクションであるという文言があること。
天皇との会話は、何処までが本当なのか?
メレルは自叙伝を書いているというので、もしかしたらそこから取ったのかもしれません。

コメント (8)
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