英国史上有名な暴君、ヘンリー8世。
離婚を正当化するために英国教会を作り、5人の妻を処刑、追放、出産による死亡などで切り捨てた残虐王。
その6番目の妻となった女性の目線から描く、生き残りをかけた宮廷サバイバル劇。
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横暴な君主ヘンリー8世(ジュード・ロウ)と望まぬ結婚をした、理知的なキャサリン(アリシア・ビカンダー)。
国王と対立する立場であるプロテスタントに肩入れしていることを告発されてしまった彼女は、前妻たちのように首をはねられるのか、それとも病に蝕まれた王が先に死ぬのか?
豪華な調度品に囲まれた薄暗い宮廷の中に、息詰まるような緊張感が漂います。
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カンヌ映画祭でこちらが上映された際、8分間のスタンディング・オベーションが巻き起こったと言いますが、しかしこれ、ヘンリー8世いいとこなしじゃないの?
これでもかと体重を増やしたジュード・ロウが、見事に演じていましたが。
太りすぎのせいか、痛風のせいか、糖尿病のせいか、激痛と足の壊死に苦しんで癇癪を起し、暴れる王。
そんな王に疑いをかけられ、キャサリンはロンドン塔に幽閉されるのですが…
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「ファイアーブランド」(FIREBRAND)とは、火をつける人、扇動者、転じて悪意や情熱を燃やす人という意味があるらしい。
この映画に描かれたヘンリー8世に、ピッタリの言葉でありました。
前妻アン・ブーリンの娘エリザベスが冷めた声でナレーションを担っていましたが、この人が後のエリザベス一世となったようです。
王の権力が絶対だったこの時代に、女性目線から描いたという点で珍しい演出だとは思いますが、何しろ緊張感で疲れました。
公式HP