来るアメリカ大統領選挙において、トランプ氏が副大統領候補として指名したJ.D.ヴァンス氏。
弁護士であり投資会社の社長である40歳のヴァンス氏の回顧録が、本書です。
「ラストベルト」(錆びついた工業地帯)と呼ばれ、貧しい労働者階級の白人たちが多く住んでいるアパラチア山脈の北側あたりに生まれた彼は、母と祖父母の家を行ったり来たりして育った。
つまり、きちんと子供を教育する両親には恵まれなかったとうことです。
父は早くに彼の前から去り、母は薬物に溺れ、次から次へと男を変え、暴力をふるう。
時に錯乱して警察が来て、逮捕される。
まだ著者が小さい時に、母親から殺される!と必死に逃げて、知らない人の家に助けを求める場面もあります
母親がそんな酷い状況なので、彼は母方の祖父母の家で過ごすことが多かったのですが、その祖父母というのも大概暴力的なのです。
”祖母のボニー自身も、恐ろしい性格の持ち主として知られていた。数十年経ってから、私は海兵隊の新卒採用担当者から、「君の場合は、自宅にいるより新兵訓練所(ブートキャンプ)にいる方がましだと思う」と言われたほどだ。「海兵隊の新兵訓練教官は手ごわい」と、彼は私に言った。「でも、君のおばあさんほどじゃない」”
薬物中毒の母親が看護師免許を更新するために、高校生であった著者に「クリーンな尿」をくれというくだりには、言葉を失くしました。
”私はついに怒りを爆発させた。「クリーンな小便が欲しいんなら、つまらないことはやめて、自分の膀胱からとれ」そう言ってやった。祖母にも、「祖母ちゃんが甘やかすからいけないんだ、30年前にちゃんとやめておけば、自分の息子にクリーンな小便をせがむようなやつにはならなかったんじゃないのか」と言った。母には「クソみてえな親だ」と言い、祖母にも、「おまえもクソみてえな母親だ」と言い放った。”
「ヒルビリー」とは、「プア・ホワイト」「ホワイト・トラッシュ」「レッド・ネック」あたりと同異義語であるらしい。
そうした人々をテーマにした映画を、随分観て来ました。
近年では「ウィンド・リバー」「スリー・ビルボード」「ガラスの城の約束」など。
それを考えても、ヴァンス氏の育った環境は、想像に絶するものです。
そんな所から、海軍を経てイエール大学のロー・スクールに行った彼は、まさしくアメリカン・ドリームを体現したと言えるのでしょう。
そしてこれだけ華々しく出世したにも関わらず、こうした生い立ちを包み隠さず書き出したということは、多くの同じような境遇の人々にどれだけの勇気と希望を与えたか分からないのでしょうが…
私は、どうにもこの人のナルシズムが鼻についてしまったのでした。
自分はヒルビリー出身でこんなにも苦労したが、これだけの立身出世を果たした、だからヒルビリーは否定できないのだ、といったような。
400ページ強の本書全編において。
母親がそんな酷い状況なので、彼は母方の祖父母の家で過ごすことが多かったのですが、その祖父母というのも大概暴力的なのです。
”祖母のボニー自身も、恐ろしい性格の持ち主として知られていた。数十年経ってから、私は海兵隊の新卒採用担当者から、「君の場合は、自宅にいるより新兵訓練所(ブートキャンプ)にいる方がましだと思う」と言われたほどだ。「海兵隊の新兵訓練教官は手ごわい」と、彼は私に言った。「でも、君のおばあさんほどじゃない」”
薬物中毒の母親が看護師免許を更新するために、高校生であった著者に「クリーンな尿」をくれというくだりには、言葉を失くしました。
”私はついに怒りを爆発させた。「クリーンな小便が欲しいんなら、つまらないことはやめて、自分の膀胱からとれ」そう言ってやった。祖母にも、「祖母ちゃんが甘やかすからいけないんだ、30年前にちゃんとやめておけば、自分の息子にクリーンな小便をせがむようなやつにはならなかったんじゃないのか」と言った。母には「クソみてえな親だ」と言い、祖母にも、「おまえもクソみてえな母親だ」と言い放った。”
「ヒルビリー」とは、「プア・ホワイト」「ホワイト・トラッシュ」「レッド・ネック」あたりと同異義語であるらしい。
そうした人々をテーマにした映画を、随分観て来ました。
近年では「ウィンド・リバー」「スリー・ビルボード」「ガラスの城の約束」など。
それを考えても、ヴァンス氏の育った環境は、想像に絶するものです。
そんな所から、海軍を経てイエール大学のロー・スクールに行った彼は、まさしくアメリカン・ドリームを体現したと言えるのでしょう。
そしてこれだけ華々しく出世したにも関わらず、こうした生い立ちを包み隠さず書き出したということは、多くの同じような境遇の人々にどれだけの勇気と希望を与えたか分からないのでしょうが…
私は、どうにもこの人のナルシズムが鼻についてしまったのでした。
自分はヒルビリー出身でこんなにも苦労したが、これだけの立身出世を果たした、だからヒルビリーは否定できないのだ、といったような。
400ページ強の本書全編において。
これで度肝を抜かれた彼の発言の数々、納得がいきました。
本の内容・・想像を絶するような出来事ですね
アメリカンドリームを代表するような人ですね・・
ご訪問&コメント、ありがとうございます。
この本が出版された頃、ベストセラーになりましたものね。
私はその時に名前を知ったのですが、今回副大統領候補に指名されて驚きました。
慌てて読んでみた次第です。
この本を読むと、アメリカで何故トランプ氏があそこまで支持されるのか分かると
何処かに書いてあったような。
確かに、ほんの少しだけ分かるような気がしました。
多分少しはフィクションもまじっているのかなとは考えます。
それはそれでも、実際にそういう境遇に生きてきた人が成功したというケースもありますし、親と同じ落とし穴に落ちていく人たちもいますね。
ヒルビリーについて。
まず、田舎の方に住んでいる人、っていうのが前提ですよね。ヴァージニアなんかのアパラチア付近って、まあ典型的ですよね。ステレオタイプされそうなぐらいに。
絶対にそうでなければいけないってわけではないと思うんですけど、まあ普通は白人ですよね。
プア・ホワイト。ヒルビリーと違って、必ず田舎に住んでいなければいけないわけではないです。都市部でもありですね。
ホワイト・トラッシュ。明確にこうじゃなきゃいけないっていうわけじゃないけど、普通女性に使うかなぁ。まあ100パーセント白人ですよね。そしてなんというか、貧しい上にトレイラーに住んでるって印象が(トレイラートラッシュとも言うから)。
レッドネック。ほぼほぼ都会の白人には使わないです。本来は農業や畜産業に携わる白人男性を揶揄した言葉なんだけど(下向いてお日様に当たるから日焼けで首がまっかっか)、転じてそういう第一次産業が仕事のひとだけではなくて、田舎者の白人って感じかな。レッドネックは必ずしも貧しくはないんですよ。大金持ちでもないけれどね。聞く音楽は絶対にカントリー。フランネルのシャツとぼろっちいジーンズと、がたがた言ってる古いトラックに乗っているっていうのがステレオタイプ。
あとね、私の家の方だと「フロリダクラッカー」って言うのもありますね。使い方間違えるとやっぱり差別用語になりかねないので(多分ダブルスタンダードなんだと思う)私は軽く口にしちゃだめだと言われました。
ここのコメントを読んで、更に、ね。
正に井の中のくちこ。
ただ、
親に恵まれなかった歪み。
愛されなかった歪み。
これは消し難いとくちこは思っています。
不幸な事に、ね、、、
本人に責任が無くても。
勿論、そこから立ち上がる人は多いけど、
何か大事な所が欠けている?
埋まって無い?
とまあ、井の中のからの発言でした。
ロン・ハワード監督、グレン・クローズ、エイミー・アダムが出演、観たいのですが
TSUTAYA DISCUSにはなし、Amazon primeにもなくて困っています。
ヒルビリー、プア・ホワイト、ホワイト・トラッシュ、レッド・ネックについての詳細な解説をありがとうございます。
そういうのは住んでいる人でないとわかりませんよね。
フロリダ・クラッカーは知りませんでした。
「ヒルビリー」って、自分で言う分にはいいけれど
他人に向かって言ったら、殺されても仕方ない言葉だと何かで読んだことがありますが
そんな感じなのかしらね?
私はまあ、ヒマですし、
本や映画が好きですから、ほんの少し知っていましたが…
この「クソみてえな親」と言われた母親、
共和党大会にヴァンス氏と一緒に出ていたのですよ。
それもアメリカらしいというか…