極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

デジタル砂時計

2014年06月07日 | 新弥生時代

 

 

●史上最大の作戦から70年

 



昨夜は、ノルマンディー上陸作戦(Invasion of Normandy)は、第二次世界大戦中の1944年6月6日
に連合軍によって行われたナチス・ドイツ占領下の北西ヨーロッパへの侵攻作戦が行われてから70
周年記念日だという。なお、上陸からパリ解放までの作戦全体の正式名称は「オーバーロード作戦
Operation Overlord、大領主の意)」という。この作戦は、
最終的に二百万人近い兵員がドーバー
海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディー海岸に上陸した。現在に至るまで最大規
模の上陸作戦である。
本作戦は夜間の落下傘部隊の降下から始まり、続いて上陸予定地への空襲と
艦砲射撃、早朝からの上陸用舟艇による敵前上陸が行われた。上陸作戦に続くノルマンディー地方
の制圧にはドイツ軍の必死の抵抗により2ヶ月以上要したという。さて、映画『史上最大の作戦
は中学生か高校生のどこかの歳で観ている。大変な戦闘であることぐらいの印象しか残っていない
が映画音楽はしっかりと残っている、郷愁を伴い。

 

 

●夢の燃料電池が実現する?

水素と酸素から電気エネルギーを作り出す水素–酸素燃料電池は、廃棄物として水しか排出しないこ
とから、クリーンな次世代発電デバイスとして期待されていたが、電極触媒に高価な希少白金を使
用するため大きなハードルだった。自然界では、水素酵素(ヒドロゲナーゼ)が常温常圧の温和な
条件で水素から電子を取り出すことができれば、その能力は白金をはるかに凌ぎ、ヒドロゲナーゼ
は酸素に不安定である弱点をもっていた。




ところが、4日九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の小江誠司教授らの研究グ
ループが、燃料電池のアノード(上図:燃料電池の概略図。水素を活性化する電極をアノード、酸
素を活性化する電極をカソードと言う。電子はアノードからカソードに流れる)として一般に使用
されている白金触媒の能力をはるかに超える水素酵素(ヒドロゲナーゼ(左下図:自然界に存在す
る水素を活性化する酵素(ヒドロゲナーゼ)の活性中心の構造。ニッケル原子(Ni)と鉄原子(Fe)
がシステイン残基(Cys)のイオウ原子(S)によって架橋され2核構造をしている。X は、休止状
態では水分子(H2O)、水酸化物イオン(OH–)、またはオキソイオン(O2–)であり、活性化状態で
はヒドリドイオン(H–)と考えられている))S-77電極の開発に成功したことを公表。

 

今回、研究グループは、阿蘇山のJ疆酷な環境で生息するヒドロゲナーゼ S-77の酵素は、酸素に安
定で、燃料電池のアノード触媒として白金をはるかに超えること発見する。具体的
には、ヒドロゲ
ナーヤ S-77は白金に比べ、質量活性で637倍、電流密度で1.8倍、電
力密度で1.8倍の能力
を持つが、この酵素
と白金の水素を活性化(切断)するメカニズムが根本的に異なっているという
また、酵素耐性ヒドロゲナーゼの固体高分子燃料電池(PEFC)のアノード触媒への応用は世界初だ。



●水素酵素と白金の活性化の違い


 

以上、今夜のところでは、実用化のための課題が見えないので何とも言えないので、残件扱いとしておく。

 

 

  

 

  羽原がシェエラザードと初めて会ったのは四ヶ月前だ。羽原は北関東の地方小都市にある
 「ハウス」に送られ、近くに住む彼女が「連絡係」として羽原の世話をすることになった。彼
 女の役目は外に出ることのできない羽原のために、食料品や様々な雑貨の買い物をし、それを
 「ハウス」に運ぶことだった。読みたい本や雑誌、聴きたいCDなどを彼の希望に応じて買っ
 てきてくれたりもした。映画のDVDを適当に見つくろって持ってきてくれることもあった
 
 (その選択の基準は羽原には今ひとつ呑み込めなかったのだが)。
 
  そしてシェエラザードは、羽原がそこに落ち着いた翌週から、ほとんど自明のこととして彼
 をベッドに誘った。避妊具も最初から用意されていた。そういうのもあるいは彼女に指示され
 た「支援活動」のひとつなのかもしれない。いずれにせよそれは一連のものごとの流れの中で
 滑らかに、戸惑いもためらいもなく相手から持ち出されたことであり、彼もその手順にあえて
 逆らいはしなかった。誘われるままにベッドに入り、事態の筋道もよくわからないままにシェ
 エラザードの身体を抱いた。
 
  彼女とのセックスは情熱的と呼べるほどのものではなかったが、かといって終始実務的とい
 うのでもなかった。たとえそれが与えられた(あるいは強く示唆された)役目として始められ
 たことであったにせよ、ある時点から彼女はその行為に――たぶん部分的であるにせよ――そ
 れなりの喜びを見いだせるようになったらしかった。彼女の肉体が見せる反応の微妙な変化か
 ら、羽原はそのことを感じとったし、それを少なからず嬉しくも思った。なんといっても彼は
 檻に入れられた荒ぶれた動物ではなく、微妙な感情を具えた一個の人間なのだから。性欲を処 
 理することだけを目的とした性行為は、ある程度必要なこととはいえ、さして心愉しいもので
 はない。とはいえシェエラザードが彼との性行為のどの部分までを自分の職務と見なし、どこ
 からを個人的な領域に属する行動と見なしているのか、その分け目を見定めることが羽原には
 できなかった。
 
  セックスのことだけではない。彼女が羽原のためにやってくれるすべての日常的おこないの、
 どこまでが決められた職務であり、どこからが個人的な好意から発したものなのか(だいたい
 それが好意と呼べるものなのかどうか)、羽原には判断できない。いろんな側面において、シ
 ェエラザードは感情や意図の読み取りにくい女だった。たとえば彼女はだいたいいつもシンプ
 ルな素材の、飾りのない下着をつけていた。普通の三十代の主婦が日常的に身につけるであろ
 う――それまで三十代の主婦と交際した経験を持たない羽原にはあくまで推測するしかないわ
 けだが――種類のものだ。どこかの量販店のセールで買ってきたような品だ。しかし日によっ
 てひどく凝ったデザインの、男を誘うような下着を身につけてくることもあった。どこで買っ
 てくるのかは知らないが、それらはどう見ても高級品のようだった。美しい絹や、精緻なレー
 スや、深い色を使ったデリケートなものだった。そのような極端なまでの落差がいったいどの
 ような目的や事情から生まれるのか、羽原にはさっぱり理解できなかった。
 
  もうひとつ彼を戸惑わせたのは、シェエラザードとの性行為と、彼女の語る物語とが分かち
 がたく繋がり、一対になっているという事実だった。どちらかひとつだけを単体として抜き出
 すことはできなかった。とくに心を惹かれているのでもない相手との、さほど情熱的とも言え
 ない肉体関係に、このようなかたちで自分が深く結びつけられている――あるいはしっかり縫
 いつけられている――というのは、羽原がかつて経験したことのない状況だったし、それは彼
 に軽い混乱をもたらした。
 「十代の頃のことだけど」とある日、シェエラザードはベッドの中で打ち明けるように言った。
 「私はときどきよその家に空き巣に入っていたの」

  羽原は、彼女の話がおおかたの場合そうであるように―――適切な感想を口にすることがで
 きなかった。

 「あなたは空き巣に入ったことってある?」
 「ないと思う」と羽原は乾いた声で言った。
 「あれって、一度やるとけっこうクセになるみたい」
 「でも違法行為だ」
 「そのとおりよ。見つかれば警察に逮捕される。家宅侵入プラス窃盗(あるいは窃盗未遂)と
 いうのは、けっこうな重罪なのよ。でもね、まずいとはわかっていても、病みつきになってし
 まう」

  羽原は黙って話の続きを待った。 
 
 「他人の留守宅に入っていちばん素敵なのは、なんといっても静かなことね。なぜかはわから 
 ないけど、本当にひっそりしているのよ。そこは世界中でいちばん静かな場所かもしれない。
 そんな気がした。そんなしんとした中で、一人で床に腰を下ろしてただじっとしていると、自
 分がやつめうなぎだった頃に自然に立ち戻ることができた」とシェエラザードは言った。「そ
 れは素敵な気分だった。私の前世がやつめうなぎだったっていう話は前にしたわよね、たし
 か?」

 「聞いている」

 「あれと同じなの。私は水底の石に吸盤でぴたりと吸い付いて、尻尾を上にして、ゆらゆらと
 水に揺れている。まわりの水草と同じように。あたりは本当に静かで、物音は何ひとつ聞こえ
 ない。それとも私には耳がついていないのかもしれない。晴れた日には水面から光が、矢のよ
 うにまっすぐ差し込んでくる。その光はときどきプリズムのようにきらきらと割れる。いろん
 な色や形の魚たちが頭上をゆっくりと通り過ぎていく。そして私は何も考えていない。という
 か、やつめうなぎ的な考えしか持っていない。その考えは曇ってはいるけれど、それでいてと
 ても清潔なの。透明ではないけれど、それでいて不純なものはひとつも混じっていない。私は
 私でありながら、私ではない.そしてそういう気持ちの中にいるのは、何かしらとても素晴ら
 しいことなの」 




  シェエラザードが初めて他人の家に侵入したのは、高校二年生のときだった。彼女は地元の
 公立高校の、同じクラスの男の子に恋をしていた。サッカーの選手で、背が高く、成績もよか
 った。とくにハンサムとは言えないが、清潔そうで、ひどく感じがよかった。しかしそれは、
 女子高校生の恋がおおかたそうであるように、報われない恋だった。彼はどうやらクラスの他
 の女の子に好意を持っているようだったし、シェエラザードには目もくれなかった。話しかけ
 られたこともなかったし、彼女が同じクラスにいることにすら気がついていなかったかもしれ
 ない。でも彼女はどうしてもその男の子をあきらめることができなかった。彼の姿を見ている
 と呼吸が苦しくなり、時々ほとんど吐きそうにさえなった。なんとかしないとそのままでは頭
 がおかしくなってしまいそうだった。でも彼に愛の告白をするなんて論外だった。そんなこと
 をしてもうまくいくわけがない。
 
  ある日シェエラザードは無断で学校を休み、その男の子の家に行った。彼の家はシェエラザ
 ードの家から歩いて十五分ほどの距離にあった。彼の家には父親がいない。セメント会社に勤
 めていた父親は、数年前に高速道路の交通事故で亡くなっていた。母親は隣の市の公立中学校
 で国語の教師をしていた。妹は中学生だ。だから昼のあいだ、家は無人になっているはずだ。
 彼女はそのような家庭状況を前もって調べ上げていた。
  玄関のドアにはもちろん鍵がかかっていた。シェエラザードはためしに玄関のマットの下を
 探してみた。鍵はそこに見つかった。のんびりとした地方都市の住宅街で、犯罪みたいなもの
 もほとんどない。だから人々は戸締まりにあまり気を遺わない。鍵を持ち忘れた家族のために、
 玄関マットの下か、近くの植木鉢の下に鍵が隠してあることが多い。


 
  念のためにベルを嗚らし、しばらく待って応答がないことを確かめ、また近所の人々の目が
 ないことを確認してから、シェエラザードは鍵を使って中に入った。そして内側から鍵をかけ
 た。靴を脱ぎ、それをビニール袋に入れ、背負っていたナップザックに入れた。それから足音
 を忍ばせて二階に上がった。




  彼の部屋は思ったとおり二階にあった。小さな木製のベッドは乱れなく整えられている。本
 の詰まった本棚と洋服ダンス、勉強机。本箱の上にはミニコンポと何枚かのCDが置かれてい
 る。壁にはバルセロナのサッカー・チームのカレンダーがあり、チーム・ペナントのようなも
 のがかかっているが、他には装飾らしいものは何ひとつない。写真も絵も飾られていない。た
 だクリーム色の壁があるだけだ。窓には白いカーテンがかかっている。部屋の中はきれいに片
 付けられ、整頓されている。出しっ放しの本もなければ、脱ぎっぱなしの服もない。机の上の
 文具もすべて所定の位置に置かれている。部屋の主の几帳面な性格をよく表している。それと
 も母親が日々丹念に片付けているのかもしれない。その両方かもしれない。そのことはシェエ
 ラザードを緊張させた。もしその部屋がだらしなく散らかっていれば、彼女がそれを多少乱し
 たところで誰も気がつかないだろう。そうであってくれればよかったのに、とシェエラザード
 は思った。とても注意深くならなくてはならない。でもそれと同時に、その部屋が清潔で簡素
 で、乱れなく整頓されていることは、彼女を少なからず喜ばせもした。いかにも彼らしい。

  シェエラザードは勉強机の椅子に腰を下ろし、しばらくそこでただじっとしていた。「彼は
 毎日この椅子に座って勉強しているのだ」、そう考えると心臓がどきどきした。彼女は机の上
 の文具を順番に手に取り、手の中で撫でまわし、匂いを嗅ぎ、口づけした。鉛筆や鋏や物差し
 やホッチキスや卓上カレンダーや、そんなもの何もかもに。それが彼の持ちものであるという
 だけで、普通なら何ということもない品物がなぜか輝かしく見えた。
 


 
                   村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEY Vol.2

                                     この項つづく



 


●デジタル砂時計

デザインの説明ではシャワータイマーだが、いろんなシーンを考えると”デジタルタイマ”とした
方が広がりを持つように想ったが、どうだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

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