極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

男前風ランチ

2014年06月09日 | 創作料理

 

 

【即席ランチ:男前風ナットオムレツ/Pranzo istantanea dell'uomo

最近の食事パターンは土日に昼食は食べるが平日は抜いている。しかし、午前中の作業状態と体調
でいかんで食べている。特に体調が悪い場合、午後二時、三時に卵2個、納豆(大豆がよい)、摺
り下ろしニンニクでオムレツを10分以内で調理して食べる。具材は冷蔵庫にある予備調理したも
の――玉葱のスライスあるいはみじん切り、青ネギのざく切りあるいはみじん切り、いまだと、フ
ェンネルの葉の千切――を使う。場合によればジャガイモを電子レンジで加熱スライスあるいはサ
イコロ切りにしたもの入れるとボリュームがでるがめんどくさいのでほとんどやらない。まず、ボ
ールに卵2個割り入れそこに、オリーブオイル適量、市販のチューブ入りおろしニンニクを適量入
れ、臭い消しをかねて、五香粉を適量(これが加わることで味に深みがでる)あるいは、ローズマ
リー、あじ塩、胡椒を入れかき混ぜる、オリーブオイルを入れた強火加熱したフライパンに、ゆっ
くりと山盛りにして入れ蓋をし、そのまま放置し、ひっくり返し、両面から堅焼きする(形は拘ら
ないのが男前風:下の写真のように綺麗に仕上げない)。焼けたら大きめの白磁製プレートにいれ
酢醤油にマスタード、あるいはワサビ、やったことはないが梅肉やマヨネーズを付けても美味しく
頂けるだろう。ところで、酢醤油をバルサミコを使えば下の写真のようにモデナ風となるので注意
すること。

Frittata di cipolle all'Aceto Balsamico Tradizionale di Modena

わたしの「男前風」の定義は、(1)ざっくり、(2)すばやく、(3)シンプル、(4)スタミ
ナでいて、(5)余り物で、 (6)身体に優しいという6つの条件が満たされば合格。ここでは五
香粉は必須アイテム。 そんなことで、創作料理のテーマは"フェンネル"をいかに使いこなすかに関
心が移っているといわ けで、上下写真のような、フェンネルの葉を素焼き、オイル焼き、燻製処
理したサバ、イワシなど のヒカリモノといわれる比較的沿岸の魚介類を調理し、添え、和えするこ
とを研究?しているわけ で、時宜をみてシリーズとして掲載することに決めた。

  

 

 

 

  

  もし母親が、彼の抽斗の奥に隠されているタンポンを発見したら、いったいどうなるのだろ
 うと、シェエラザードは想像してみた。それを見て母親は何を考えるだろう? そのことで息
 子を直接問い詰めるだろうか? どうしておまえが生理用品なんか持っているの、その理由を
 聞かせて、と。それともそんなことは自分の胸におさめ、暗い推測をあれこれ巡らせるだけだ
 ろうか? そういう場合母親がどういう行動に出るものか、シェエラザードには見当もつかな
 い。でもとにかくタンポンはそのままにしておくことにした。なんといってもそれは彼女の残
 した最初のしるしなのだから。
  
  今回シェエラザードは二つ目のしるしとして、自分の髪を三本置いていくことにした。彼女
 
は前の晩に髪を三本抜き、それをビニールラップにくるみ、小さな封筒に入れて封をしていた。
 彼女はその用意していた封筒をナップサックから取り出し、抽斗の中の古い数学のノ ートの間
 にはさんだ。それほど長くもなく、それほど短くもない、まっすぐな黒髪だ。DNA検査でも
 しないことには、誰のものだかわかりはしない。しかしそれが若い女の髪であることは一目で
 わかる。



 
  彼女はそこを出て、その足で学校に行き、昼休みのあとの授業に出席した。そしてそれから
 の十日ばかりを、また満ち足りた気持ちで過ごした。彼のより多くの部分が自分のものになっ
 たような気がした。でももちろんそれで話がすんなり終わるわけではない。他人の家に空き巣
 に入ることは、シェエラザードも指摘するように、くせになってしまうことなのだ。
  そこまで話してから、シェエラザードは枕元の時計を見た。そして「さあ、もうそろそろ行
 かなくては」と自分に言い聞かせるように言った。そして一人でベッドを出て服を着始めた。
 時計の数字は時刻が四時三十二分であることを告げていた。彼女はほとんど飾りのない実用的
 な白い下着をつけ、ブラジャーのフックを背中でとめ、手早くジーンズをはき、ナイキのマー
 クのついた紺色のスエットシャツを頭からかぶった,洗面所で石鹸を使って丁寧に手を洗い、
 ブラシで髪を簡単に整えてから、青いマツダ車を運転して去って行った。
 
  羽原はあとに一人で残され、とくにすることも思いつかないまま、牛が食物を反側するみた
 いに、彼女がベッドの中で話してくれたことを、ひとつひとつ頭の中で玩味してみた。その話
 がこれからいったいどんな方向に進んでいくのか――彼女のたいていの話かそうであるように
 ――さっぱり見当がつかなかった。だいたいシェエラザードが高校二年生のとき、どんな姿か
 たちの娘だったのか、それもほとんど想像できなかった。その頃、彼女の体型はまだすらりと
 していたのだろうか? 制服を着て、白い靴下を履いて、髪を編んでいたのだろうか?
  まだ食欲はなかったので、料理の支度にかかる前に、読みかけていた本の続きを読もうとし
 たのだが、どうしても読書に神経が集中できなかった。シェエラザードがこっそりとその二階
 家に忍び込む情景が、あるいは彼女が同級生のシャツを顔につけて、その匂いをくんくんと嗅
 いでいる光景が、つい頭に浮かんできてしまうのだ。羽原は一刻も早く話の続きが聞きたかっ
 た。

  次にシェエラザードが「ハウス」にやってきたのは、週末をはさんで三日後たった。彼女は
 いつものように大きな紙袋に詰めて持ってきた食品を整理し、賞味期限をチェックし、冷蔵庫
 の中身の順番を入れ替え、缶詰や瓶詰めの食品の在庫を調べ、調味料の減り具合をチェックし、
 次の買い物のリストを作った。新しいペリエを冷やした。そして新しく持ってきた本とDVD
 をテーブルの上に重ねて置いた。

 「何か足りないものやほしいものはない?」
 「とくに思いつかない」と羽原は答えた。

  それから二人はいつものようにベッドに入って性交をした。彼はほどはどの前戯をしてから、
 避妊其をつけて彼女の中に入り(彼女は医学的な見地から、最初から最後まで一貫して避妊其
 を装着することを彼に要求した)、適度な時間をかけて射精した。その行為は義務的というの
 ではないけれど、とくに心がこもっているというものでもなかった。彼女は基本的に常に、そ
 の行為に過度の情熱が含まれることを警戒しているようだった。自動車教習所の教官が基本的
 に常に、生徒の運転に過度の情熱を期待しないのと同じように。
 
  羽原がしかるべき量の精液を避妊其の中に正しく射精したことを、職業的な目で確認したあ
 とで、シェエラザードは話を始めた。か、そのどちらかだった。家に帰っても、与えられた宿
 題に取り組むような気持ちにはなかなかなれなかった。シェエラザードはもともと成績は悪く
 なかった。トップクラスというのではないが、真面目に勉強をする性格だったし、だいたいい
 つも平均を上回る成績をとっていた。
 だから彼女が授業中に指名されてほとんど何も答えられないとき、教師たちは怒るより前に怪
 冴そうな顔をした。休み時間に職員室に呼び出され、「どうかしたのか? おまえ、何か心配
 事でもあるのか?」と訊かれたこともあった。でも彼女はうまくそれに答えることができなか
 った。ここのところ体調があまり・・・・・と口ごもるしかなかった。実はある男の子が好きになっ
 て、その子の家に昼間ときどき空き巣に入るようになり、鉛筆やバッジを盗んできて、それを
 いじることに夢中になっています、彼のこと以外にはもう何も考えられないのです、みたいな
 ことはもちろん言えない。それは彼女が一人で抱え込んでいるしかない重く暗い秘密なのだ。

 「私は定期的に彼の家に空き巣に入らないではいられないようになってしまった」とシェエラ
 ザードは言った。「わかると思うけど、それはとても危険なことだった。そんな綱渡りをいつ
 までも続けてはいられない。それは自分でもよくわかっていた。いつかは誰かにみつかってし
 まうだろうし、みつかったらきっと警察沙汰になってしまう。それを思うと不安でたまらなか
 った。でもいったん坂を転がり始めた車輪を押しとどめることはできなかった。二度目の〈訪
 問〉の十日後、私の足はまた自然に彼の家に向かってしまった。そうしないことには頭がおか
 しくなってしまいそうだったの。でも今から思えば、私はたぶん実際に頭が少しおかしくなっ  
 ていたのね」

 「学校をそんなにちょくちょく体んで、とくに問題は起きなかったの?」と羽原は尋ねた。
 「うちは商売をしていて、家は仕事が忙しかったし、両親は私にはほとんど注意を向けていな
 かった。私はそれまで一度として問題を起こしたことはなかったし、親の言いつけに正面から
 逆らったこともなかった。だからこの子は放っておいても大丈夫だと思われていたのね。学校
 に出す届けだって簡単に偽造できた。母親の筆跡を真似て学校を休んだ理由を簡単に書き、署
 名し、印鑑を押した。担任の先生には、身体に具合の悪いところがあるので、ときどき病院に
 行くために半日体まなくてはならないことがあると前から言ってあった。クラスには長期不登
 校の子が何人かいて、みんなそちらで頭を悩ませていたから、私がときどき半日休んだところ
 で、誰も気にしなかった」

  シェエラザードはそこで枕元のディジタル時計にちらりと目をやり、それからまた話を続け
 た。

 「私はまた玄関マットの下から鍵を取り、ドアを開けて中に入った。いつもと同じように、い
 や、なぜかいつにも増して家の中はしんとしていた。台所の冷蔵庫のサーモスタットが入った
 り切れたりする音が、大きな動物のため息のように聞こえて、妙にびっくりさせられた。それ
 から途中で一度、電話のベルが鳴り出した。大きく響きわたる耳障りな音で、私の心臓はほと
 んど止まってしまいそうになった。身体中からどっと汗が噴き出した。でもその電話はもちろ
 ん誰の手にも取られることなく、十回ばかり鳴ってから止んだ。ベルが鳴り止んだあと、沈黙
 は前よりもっと深くなった」

  
                                村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEY Vol.2 

                                         この項つづく

 

  

 

 

 

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ソーラー舗装時代

2014年06月08日 | デジタル革命渦論

 

 

 

【スマート道路】 

やっちまった!?この情報を知ったとき、頭に浮かんだのはこの言葉だった(太陽光で発電し
ネットとも連携して各種情報を表示できるスマート道路「Solar Roadways」とは何か
)。それ
というのもこの構想はすでに持っていて、開発テーマとして企業内提案した経験もあり、その
後のブログテーマとして過去何回か提案してきたものだし、福島第一原発事故以降、吹き出し
た日本国民の"脱原発"の声を追い風になり、逆に言えば、原発推進派にとっては致命的なプロ
ジェクトとなる。そんなコマイ話は置いておいて、これが世界的に展開されれば、”太陽の道
プロジェクト”、つまり、贈与経済社会=社会主義社会段階へ向かう道であり、持続可能な社
会を実現する1つのプロジェクトであると再確認しておけばよいだろう。



さて、インディエゴゴ社のこの提案をみてみよう――道路自体が太陽光で発電し、高速インタ
ーネット回線に接続することで、刻刻と変化する要求にリアルタイムで対応して道路に「情報」
を表示しつつ、雪道では除雪し、駐車場では自動車を充電し、さらには家庭用の発電所の役割
まで担うという「スマート道路」とでも言うべき道路が「Solar Roadways」です――と紹介され
ているが、全く同じ意見だ。

この「ソーラー道路」はトラック(約113トン)の重さにも耐えることができる、太陽電池
パネルのモジュール式舗装システム。
これらの「太陽道路パネル」は、太陽の下で、道路、駐
車場、車道、歩道、自転車道、遊び場...文字通りあらゆる面に設置することができる。
車道
や駐車場を経由して接続した家庭や企業に電力を供給することができる。この
全国的なシステ
ムで、国全体(http://solarroadways.com/numbers.shtml)として使用することでクリーンな
再生可能エネルギーを作り出すことができる。
電源ケーブルとデータケーブルを接続の「ホー
ム」し、道路の凍結・除雪を自動的に行うこともできる、さらに、道路の照明器、信号機や表
示灯(器)の電源を供給したできる。勿論、道路の脇に設置した充電スタンドにも供給出来る
というわけだ。

 



”ビバ!デジタル革命渦論”でいうところの“シームレス”であり、業界のボードレスであり
送電設備の”ダウンサイジング”や、通信線のワイヤレス化というイレージング”をさせるだ
ろう。一時は、有効利用されない地方の”政治道路"もソーラーパネルとして役立つというわけ
だから、先行開発投資整備することは喫緊の課題となるのろう。"サンロード・プロジェクト"
を実行できない世界各国の政府・行政は遅れを取ることになるだろう。これぞ、”ビバ!サン・
ロード
”だ。

 

 

 

 

  


前作の『独立器官』のテーマ、永遠のテーマといってもいいだろうが性的関係の謎めいた― "ハル
キ・ワールドの樹海”に踏み入れ迷うことになる。ここで語られる性器などの直喩・暗喩に読者は
しばし面を喰らい、頭の中の"常識"(使い慣れた堆積した分厚い残滓)がミキシングされることに
なる。ここは恐れずに?楽しくスロー・リードしてみよう。
 

  それから机の抽斗をひとつひとつ開けて、中に入っているものを細かく調べた。いちばん上
 の抽斗には細々とした文房具や、何かの記念品のようなものが、仕切りの中に収められていた。
 二番目の抽斗には主に現在使っている学科のノートが、三番目の抽斗(いちばん深い抽斗だ)
 には様々な書類や、古いノートや試験の答案が入っていた。ほとんどは学校の勉強に関するも
 のか、あるいはサッカーの部活動に関する資料だ。大事なものは何もない。期待していた日記
 や手紙のようなものは見当たらなかった。一枚の写真すらない。それはシェエラザードにはい
 ささか不自然なことに思えた。この人は学校の勉強とサッカー以外に、個人的な営みというも
 のを持たないのだろうか? それともそういうものは簡単に他人の目につかない他のところに、
 大事に仕舞い込まれているのだろうか?
 
  それでも彼の机の前に座り、ノートに書かれた彼の筆跡を目で追っているだけで、シェエラ

 ザードは胸がいっぱいになった。このままでは自分がおかしくなってしまうかもしれない。彼
 女は興奮を冷ますために椅子から立ち上がり、床に腰を下ろした。そして天井を見上げた。あ
 たりは相変わらずひっそりとしていた。物音ひとつしない。そのようにして彼女は、水底にい
 るやつめうなぎに自分を同化することになったのだ。

 「ただ彼の部屋に入って、いろんなものに手を触れて、あとはじっとしていただけなの?」と
  羽原は言った。
 
 「いいえ、それだけじゃない」とシェエラザードは言った。「私は彼の持ちものが何か欲しか
 った。彼が日常的に使ったり身につけたりしているものをうちに持ち帰りたかった。でもそれ
 は大事なものであってはならなかった。大事なものであれば、なくなったことがすぐにわかっ
 てしまうでしょう。だから彼の鉛筆を一本だけ盗むことにした」
 「鉛筆一本だけ?」
 「そう。使いかけの鉛筆。でもただ盗むだけではいけないと思った。だってそれだとただの空
 き巣狙いになってしまうじやない。それが私であることの意味がなくなってしまう。私は言う
 なれば『愛の盗賊―なのだから」
 
  愛の盗賊、と羽原は思った。まるで無声映画のタイトルみたいだ。
 
 「だからそのかわりに何かを、そこにしるしとして後に残していこうと思った。私がそこに存
 在したことの証として。それがただの窃盗ではなく、交換であったことの声明として。でも何
 を置いていけばいいのか、適当な品物が頭に浮かばなかった。ナップザックや服のポケットの
 中をさらってみたけど、しるしになりそうなものは何ひとつ見つからなかった。本当は何か用
 意してくればよかったんだけど、前もってそんなことは思いつかなかったから……。仕方ない
 からタンポンをひとつ置いていくことにした。もちろんまだ使っていない、パッケージに入っ
 たままのものよ。生理が近かったから、用意して持っていたの。それを彼の机の一番下の抽斗
 の、いちばん奥の、見つかりにくいところに置いていくことにした。そしてそれは私をとても
 興奮させた。彼の抽斗の奥に私のタンポンがこっそり入っているということがね。たぶんあま
 りに興奮したからだと思うけど、そのあとすぐに生理が始まってしまった」

  鉛筆とタンポン、と羽原は思った。日誌にそう書いておくべきかもしれない。「愛の盗賊
 鉛筆とタンポン」。何のことだかきっと誰にも理解できないだろう
 「そのとき彼の家の中には、せいぜい十五分くらいしかいなかったと思う。人の家に勝手に上
 がり込むなんて生まれて初めてのことだったし、おうちの人が急に帰ってきたりするんじゃな
 いかとずっとどきどきしていたし、そんなに長い時間はそこにいられなかった。私はあたりの
 様子をうかがってから、こっそりとその家を出て、ドアにまた鍵をかけ、鍵を玄関マットの下
 の同じ場所に戻した。そして学校に行った。彼の使いかけの鉛筆を大事に持って」
  シェエラザードはそのまましばらく□を閉ざしていた。時間を遡り、そこにあったいろんな
 ものごとをひとつひとつ現認しているようだった。

 「それから一週間ばかり、私はこれまでになく満ち足りた気持ちで日々を送ることができた」 
 とシェエラザードは言った。「彼の鉛筆を使ってノートにあてもなく字を書いた。その匂いを
 嗅いだり、それにキスしたり、頬をつけたり、指でこすったりした。ときどき舌をからめてし
 ゃぶったりもした。書いていれば鉛筆がだんだん短くなっていくし、もちろんそれはつらいこ
 とだったけど、でもそうしないわけにはいかなかった。短くなって使えなくなったら、また新
 しいものを取りに行けばいい。私はそう思った。彼の机のペン立てには、使いかけの鉛筆がま
 だたくさんあった。そして彼はそれが一本減ったことも知らない。机の拍斗の奥に私のタンポ
 ンが入っていることもたぶん知らない。そう思うと私はすごく興奮した。腰がむずむずするよ
 うな不思議な感覚があった。私はそれを抑えるために、机の下で膝をごしごしすりあわせなく
 てはならなかった。たとえ現実の生活で、彼が私に目をくれなくても、私の存在になんかほと
 んど気づいていなかったとしても、それでちっともかまわないと思った。私は彼の知らないう
 ちに、彼の一部をこっそりと手に入れているんだから」
 
 「なんだか呪術的な儀式みたいだ」と羽原は言った。
 
 「そう、ある意味ではそれは呪術的なおこないだったかもしれない。あとになってたまたまそ
 の手の本を読んでいて、思い当たることがあった。でもそのときはまだ高校生だったし、そこ
 まで深いことは考えなかった。私はただ自分の欲望に押し流されていただけ。そんなことをし
 ていると今に命取りになる。もし空き巣に入っている現場を見つかったりしたら、学校も退学
 処分になるだろうし、その話が広まったら、この町に住むことだってむずかしくなるかもしれ
 ない。私は自分に何度もそう言い聞かせた。でも駄目だった。私は頭がまともに働かない状態
 になっていたんだと思う」

  彼女は十日後に再び学校を休み、彼の家に足を向けた。午前十一時。前と同じように玄関マ
 ットの下から鍵を取り出し、家の中に入った。そして二階に上がった。彼の部屋はやはり隙な
 く整頓され、ベッドはぴたりとメイクされていた。シェエラザードは使いかけの長い鉛筆をと
 りあえず一本手に入れ、それを自分のペン入れに大事に仕舞った。それからおそるおそる彼の
 ベッドに身を横たえてみた。スカートの裾を整え、両手を揃えて胸に置き、天井を見上げた。
 このベッドで毎晩彼が眠っているのだ。そう思うと心臓の鼓動が急速に高まり、まともに呼吸
 ができなくなった。空気が肺の中までしっかりと入っていかない。喉がひりひりと渇いて、息
 をするたびに痛む。





  
  シェエラザードはあきらめてベッドから起き上がり、ベッドカバーを引っ張って乱れを直し、
 それからまたこの前と同じように床に腰を下ろした。そして天井を見七げた。ベッドに横にな
 ったりするのはまだ早すぎる、と彼女は自分に言い聞かせた。それは私にはあまりにも刺激が
 強すぎる。
  シェエラザードは今回、半時間ばかりその部屋の中にいた。彼のノートを抽斗から出して一
 通り目を通した。彼の書いた読書感想文も読んだ。夏目漱石の『こころ』について書いたもの
 だ。それは夏休みの課題図書だった。いかにも成績の優秀な生徒らしい、丁寧な美しい字で原
 稿用紙に書かれていて、見たところ誤字脱字もなかった。評価は「優」になっていた。当然だ。
 こんな素敵な字で文章を書かれたら、どんな先生だって、たとえ内容をまったく読まなくても、
 黙って優をあげてしまいたくなるだろう。
  それからシェエラザードは洋服ダンスの抽斗を開け、中に入っているものを順番に見ていっ
 た。彼の下着や靴下。シャツ、ズボン。サッカー用のウェア。どれも几帳面にきれいに折りた
 たまれていた。汚れが残ったり、擦り切れたりしている衣服はひとつもなかった。

  どれも清潔に管理されている。彼がたたむのだろうか。それとも母親がそうするのだろうか。
 たぶん母親だろう。彼女は毎日彼のためにそういうことができる母親に、強い嫉妬を覚えた。
  シェエラザードは抽斗に鼻を突っ込むようにして、ひとつひとつの衣服の匂いを嗅いでいっ
 た。丁寧に洗濯され、しっかりと太陽に干された衣服の匂いがした。無地のグレーのTシャツ
 を一枚抽斗から取り出し、それを広げ、顔をつけた。わきの下に彼の汗の匂いがしないかと思
 って。しかし匂いはなかった。それでも長いあいだ彼女はそのシャツにしっかりと顔をつけて、
 鼻から息を吸い込んでいた。彼女はそのシャツを手に入れたいと思った。しかしそれはおそら
 く危険すぎる。すべての衣服がこれほど几帳面に整理され、管理されているのだ。彼は(ある
 いは彼の母親は)抽斗の中のTシャツの数を細かく記憶しているかもしれない。一枚少なくな
 っていたら、ちょっとした騒ぎが持ち上がることだろう。

  シェエラザードは結局そのシャツを持って行くことをあきらめた。元通りきれいにたたみな
 おし、抽斗の中に戻した。用心深くならなくてはいけない。危険を冒すわけにはいかない。シ
 ェエラザードは今回は鉛筆のほかに、抽斗の奥に見つけたサッカーボールをかたどった小さな
 バッジを持って行くことにした。小学校時代に入っていた少年チームのものらしかった。古い
 ものだし、とくに大事なものにも見えない。なくなっても彼はおそらく気がつかないだろう。
 あるいは気がつくまでに時間がかかるだろう。ついでに、いちばん下の抽斗の奥にこのあいだ
 隠しておいたタンポンがまだあるかどうか、確かめてみた。それはまだそこにあった。
 

 

                                 村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEY Vol.2

                                         この項つづく
 

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デジタル砂時計

2014年06月07日 | 新弥生時代

 

 

●史上最大の作戦から70年

 



昨夜は、ノルマンディー上陸作戦(Invasion of Normandy)は、第二次世界大戦中の1944年6月6日
に連合軍によって行われたナチス・ドイツ占領下の北西ヨーロッパへの侵攻作戦が行われてから70
周年記念日だという。なお、上陸からパリ解放までの作戦全体の正式名称は「オーバーロード作戦
Operation Overlord、大領主の意)」という。この作戦は、
最終的に二百万人近い兵員がドーバー
海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディー海岸に上陸した。現在に至るまで最大規
模の上陸作戦である。
本作戦は夜間の落下傘部隊の降下から始まり、続いて上陸予定地への空襲と
艦砲射撃、早朝からの上陸用舟艇による敵前上陸が行われた。上陸作戦に続くノルマンディー地方
の制圧にはドイツ軍の必死の抵抗により2ヶ月以上要したという。さて、映画『史上最大の作戦
は中学生か高校生のどこかの歳で観ている。大変な戦闘であることぐらいの印象しか残っていない
が映画音楽はしっかりと残っている、郷愁を伴い。

 

 

●夢の燃料電池が実現する?

水素と酸素から電気エネルギーを作り出す水素–酸素燃料電池は、廃棄物として水しか排出しないこ
とから、クリーンな次世代発電デバイスとして期待されていたが、電極触媒に高価な希少白金を使
用するため大きなハードルだった。自然界では、水素酵素(ヒドロゲナーゼ)が常温常圧の温和な
条件で水素から電子を取り出すことができれば、その能力は白金をはるかに凌ぎ、ヒドロゲナーゼ
は酸素に不安定である弱点をもっていた。




ところが、4日九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の小江誠司教授らの研究グ
ループが、燃料電池のアノード(上図:燃料電池の概略図。水素を活性化する電極をアノード、酸
素を活性化する電極をカソードと言う。電子はアノードからカソードに流れる)として一般に使用
されている白金触媒の能力をはるかに超える水素酵素(ヒドロゲナーゼ(左下図:自然界に存在す
る水素を活性化する酵素(ヒドロゲナーゼ)の活性中心の構造。ニッケル原子(Ni)と鉄原子(Fe)
がシステイン残基(Cys)のイオウ原子(S)によって架橋され2核構造をしている。X は、休止状
態では水分子(H2O)、水酸化物イオン(OH–)、またはオキソイオン(O2–)であり、活性化状態で
はヒドリドイオン(H–)と考えられている))S-77電極の開発に成功したことを公表。

 

今回、研究グループは、阿蘇山のJ疆酷な環境で生息するヒドロゲナーゼ S-77の酵素は、酸素に安
定で、燃料電池のアノード触媒として白金をはるかに超えること発見する。具体的
には、ヒドロゲ
ナーヤ S-77は白金に比べ、質量活性で637倍、電流密度で1.8倍、電
力密度で1.8倍の能力
を持つが、この酵素
と白金の水素を活性化(切断)するメカニズムが根本的に異なっているという
また、酵素耐性ヒドロゲナーゼの固体高分子燃料電池(PEFC)のアノード触媒への応用は世界初だ。



●水素酵素と白金の活性化の違い


 

以上、今夜のところでは、実用化のための課題が見えないので何とも言えないので、残件扱いとしておく。

 

 

  

 

  羽原がシェエラザードと初めて会ったのは四ヶ月前だ。羽原は北関東の地方小都市にある
 「ハウス」に送られ、近くに住む彼女が「連絡係」として羽原の世話をすることになった。彼
 女の役目は外に出ることのできない羽原のために、食料品や様々な雑貨の買い物をし、それを
 「ハウス」に運ぶことだった。読みたい本や雑誌、聴きたいCDなどを彼の希望に応じて買っ
 てきてくれたりもした。映画のDVDを適当に見つくろって持ってきてくれることもあった
 
 (その選択の基準は羽原には今ひとつ呑み込めなかったのだが)。
 
  そしてシェエラザードは、羽原がそこに落ち着いた翌週から、ほとんど自明のこととして彼
 をベッドに誘った。避妊具も最初から用意されていた。そういうのもあるいは彼女に指示され
 た「支援活動」のひとつなのかもしれない。いずれにせよそれは一連のものごとの流れの中で
 滑らかに、戸惑いもためらいもなく相手から持ち出されたことであり、彼もその手順にあえて
 逆らいはしなかった。誘われるままにベッドに入り、事態の筋道もよくわからないままにシェ
 エラザードの身体を抱いた。
 
  彼女とのセックスは情熱的と呼べるほどのものではなかったが、かといって終始実務的とい
 うのでもなかった。たとえそれが与えられた(あるいは強く示唆された)役目として始められ
 たことであったにせよ、ある時点から彼女はその行為に――たぶん部分的であるにせよ――そ
 れなりの喜びを見いだせるようになったらしかった。彼女の肉体が見せる反応の微妙な変化か
 ら、羽原はそのことを感じとったし、それを少なからず嬉しくも思った。なんといっても彼は
 檻に入れられた荒ぶれた動物ではなく、微妙な感情を具えた一個の人間なのだから。性欲を処 
 理することだけを目的とした性行為は、ある程度必要なこととはいえ、さして心愉しいもので
 はない。とはいえシェエラザードが彼との性行為のどの部分までを自分の職務と見なし、どこ
 からを個人的な領域に属する行動と見なしているのか、その分け目を見定めることが羽原には
 できなかった。
 
  セックスのことだけではない。彼女が羽原のためにやってくれるすべての日常的おこないの、
 どこまでが決められた職務であり、どこからが個人的な好意から発したものなのか(だいたい
 それが好意と呼べるものなのかどうか)、羽原には判断できない。いろんな側面において、シ
 ェエラザードは感情や意図の読み取りにくい女だった。たとえば彼女はだいたいいつもシンプ
 ルな素材の、飾りのない下着をつけていた。普通の三十代の主婦が日常的に身につけるであろ
 う――それまで三十代の主婦と交際した経験を持たない羽原にはあくまで推測するしかないわ
 けだが――種類のものだ。どこかの量販店のセールで買ってきたような品だ。しかし日によっ
 てひどく凝ったデザインの、男を誘うような下着を身につけてくることもあった。どこで買っ
 てくるのかは知らないが、それらはどう見ても高級品のようだった。美しい絹や、精緻なレー
 スや、深い色を使ったデリケートなものだった。そのような極端なまでの落差がいったいどの
 ような目的や事情から生まれるのか、羽原にはさっぱり理解できなかった。
 
  もうひとつ彼を戸惑わせたのは、シェエラザードとの性行為と、彼女の語る物語とが分かち
 がたく繋がり、一対になっているという事実だった。どちらかひとつだけを単体として抜き出
 すことはできなかった。とくに心を惹かれているのでもない相手との、さほど情熱的とも言え
 ない肉体関係に、このようなかたちで自分が深く結びつけられている――あるいはしっかり縫
 いつけられている――というのは、羽原がかつて経験したことのない状況だったし、それは彼
 に軽い混乱をもたらした。
 「十代の頃のことだけど」とある日、シェエラザードはベッドの中で打ち明けるように言った。
 「私はときどきよその家に空き巣に入っていたの」

  羽原は、彼女の話がおおかたの場合そうであるように―――適切な感想を口にすることがで
 きなかった。

 「あなたは空き巣に入ったことってある?」
 「ないと思う」と羽原は乾いた声で言った。
 「あれって、一度やるとけっこうクセになるみたい」
 「でも違法行為だ」
 「そのとおりよ。見つかれば警察に逮捕される。家宅侵入プラス窃盗(あるいは窃盗未遂)と
 いうのは、けっこうな重罪なのよ。でもね、まずいとはわかっていても、病みつきになってし
 まう」

  羽原は黙って話の続きを待った。 
 
 「他人の留守宅に入っていちばん素敵なのは、なんといっても静かなことね。なぜかはわから 
 ないけど、本当にひっそりしているのよ。そこは世界中でいちばん静かな場所かもしれない。
 そんな気がした。そんなしんとした中で、一人で床に腰を下ろしてただじっとしていると、自
 分がやつめうなぎだった頃に自然に立ち戻ることができた」とシェエラザードは言った。「そ
 れは素敵な気分だった。私の前世がやつめうなぎだったっていう話は前にしたわよね、たし
 か?」

 「聞いている」

 「あれと同じなの。私は水底の石に吸盤でぴたりと吸い付いて、尻尾を上にして、ゆらゆらと
 水に揺れている。まわりの水草と同じように。あたりは本当に静かで、物音は何ひとつ聞こえ
 ない。それとも私には耳がついていないのかもしれない。晴れた日には水面から光が、矢のよ
 うにまっすぐ差し込んでくる。その光はときどきプリズムのようにきらきらと割れる。いろん
 な色や形の魚たちが頭上をゆっくりと通り過ぎていく。そして私は何も考えていない。という
 か、やつめうなぎ的な考えしか持っていない。その考えは曇ってはいるけれど、それでいてと
 ても清潔なの。透明ではないけれど、それでいて不純なものはひとつも混じっていない。私は
 私でありながら、私ではない.そしてそういう気持ちの中にいるのは、何かしらとても素晴ら
 しいことなの」 




  シェエラザードが初めて他人の家に侵入したのは、高校二年生のときだった。彼女は地元の
 公立高校の、同じクラスの男の子に恋をしていた。サッカーの選手で、背が高く、成績もよか
 った。とくにハンサムとは言えないが、清潔そうで、ひどく感じがよかった。しかしそれは、
 女子高校生の恋がおおかたそうであるように、報われない恋だった。彼はどうやらクラスの他
 の女の子に好意を持っているようだったし、シェエラザードには目もくれなかった。話しかけ
 られたこともなかったし、彼女が同じクラスにいることにすら気がついていなかったかもしれ
 ない。でも彼女はどうしてもその男の子をあきらめることができなかった。彼の姿を見ている
 と呼吸が苦しくなり、時々ほとんど吐きそうにさえなった。なんとかしないとそのままでは頭
 がおかしくなってしまいそうだった。でも彼に愛の告白をするなんて論外だった。そんなこと
 をしてもうまくいくわけがない。
 
  ある日シェエラザードは無断で学校を休み、その男の子の家に行った。彼の家はシェエラザ
 ードの家から歩いて十五分ほどの距離にあった。彼の家には父親がいない。セメント会社に勤
 めていた父親は、数年前に高速道路の交通事故で亡くなっていた。母親は隣の市の公立中学校
 で国語の教師をしていた。妹は中学生だ。だから昼のあいだ、家は無人になっているはずだ。
 彼女はそのような家庭状況を前もって調べ上げていた。
  玄関のドアにはもちろん鍵がかかっていた。シェエラザードはためしに玄関のマットの下を
 探してみた。鍵はそこに見つかった。のんびりとした地方都市の住宅街で、犯罪みたいなもの
 もほとんどない。だから人々は戸締まりにあまり気を遺わない。鍵を持ち忘れた家族のために、
 玄関マットの下か、近くの植木鉢の下に鍵が隠してあることが多い。


 
  念のためにベルを嗚らし、しばらく待って応答がないことを確かめ、また近所の人々の目が
 ないことを確認してから、シェエラザードは鍵を使って中に入った。そして内側から鍵をかけ
 た。靴を脱ぎ、それをビニール袋に入れ、背負っていたナップザックに入れた。それから足音
 を忍ばせて二階に上がった。




  彼の部屋は思ったとおり二階にあった。小さな木製のベッドは乱れなく整えられている。本
 の詰まった本棚と洋服ダンス、勉強机。本箱の上にはミニコンポと何枚かのCDが置かれてい
 る。壁にはバルセロナのサッカー・チームのカレンダーがあり、チーム・ペナントのようなも
 のがかかっているが、他には装飾らしいものは何ひとつない。写真も絵も飾られていない。た
 だクリーム色の壁があるだけだ。窓には白いカーテンがかかっている。部屋の中はきれいに片
 付けられ、整頓されている。出しっ放しの本もなければ、脱ぎっぱなしの服もない。机の上の
 文具もすべて所定の位置に置かれている。部屋の主の几帳面な性格をよく表している。それと
 も母親が日々丹念に片付けているのかもしれない。その両方かもしれない。そのことはシェエ
 ラザードを緊張させた。もしその部屋がだらしなく散らかっていれば、彼女がそれを多少乱し
 たところで誰も気がつかないだろう。そうであってくれればよかったのに、とシェエラザード
 は思った。とても注意深くならなくてはならない。でもそれと同時に、その部屋が清潔で簡素
 で、乱れなく整頓されていることは、彼女を少なからず喜ばせもした。いかにも彼らしい。

  シェエラザードは勉強机の椅子に腰を下ろし、しばらくそこでただじっとしていた。「彼は
 毎日この椅子に座って勉強しているのだ」、そう考えると心臓がどきどきした。彼女は机の上
 の文具を順番に手に取り、手の中で撫でまわし、匂いを嗅ぎ、口づけした。鉛筆や鋏や物差し
 やホッチキスや卓上カレンダーや、そんなもの何もかもに。それが彼の持ちものであるという
 だけで、普通なら何ということもない品物がなぜか輝かしく見えた。
 


 
                   村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEY Vol.2

                                     この項つづく



 


●デジタル砂時計

デザインの説明ではシャワータイマーだが、いろんなシーンを考えると”デジタルタイマ”とした
方が広がりを持つように想ったが、どうだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

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その後のへーリオスⅢ

2014年06月06日 | 環境工学システム論

 

 

●その後のヘーリオス Ⅲ

  コキノダイナス(赤鬼)


今夜は、大勢赤鬼の家に集まり酒盛りにおしゃべりがてんこ盛り状態になっている。それじゃや、

話の中に入ってみよう。お邪魔しまします!


 観測をはじめて120年になる最悪の大洪水に見舞われたバルカン半島ですが、セルビアは 
 東日本大震災の直後、2億円を超える寄付が寄せられ、メッセージも一緒に送られてきました。
 洪水は大量の機雷と不発弾が一緒に流失しその被害が懸念されていますよ。と、ベゴニアがし
 ゃべと、万年書生気質のアルマイティが珍しく、顔を上げ、そういえばコロラド州西部の奥地
 で巨大な土砂崩豪雨により発生し、行方不明者3名がでているしね。世界の平均気温の上昇の
 影響と考えられている異常現象が多発しているよ。と鉛筆がわりに目刺し変えて酒を呑みほし
 スモール・トークを入れると、茶碗に酒をつぎながら、それはそれとして、ヨーロッパの中央
 銀行)が、マイナス金利にする思い切った金融緩和策を発表したが、どう思っているのか聞か
 せてアルマティはん? そうですね、アベノミクスも参考にしての話ですが、有効需要の掘り
 起こしですが、「移民と失業」の背景をよく押さえておく必要があると思いますが、これは直
 関係なさそうな話ですが。





 アルチュール・ランボーが詩を捨て、中東やアフリカ交易していた、晩年滞在していたアデ
 (イエメンの港町、現在首都)時代のランボーの写真が発見されたというが、奴隷商人の時

 から数え約百年。欧州で働く多くの移民の"奴隷労働"状態が放置されたままだとも言われて

 るから、人権問題に敏感だが、反面、武器輸出は続く限り、この"三角貿易"の図式も残ったま
 まに
あり、それが怨嗟や格差拡大を助長する"歪な有効需要"を生み出すだろうと、そんな風に
 考えて
いますと、付け加え、とは言え、"デジタル革命”のハイテク効果もあり、ミス・リー
 ドがな
ければ、いずれは是正されだろうと喋った。「ここはみどりの穴ぼこ/川の流れが歌を
 うたい/銀のぼろを狂おしく岸辺の草にからませる/傲然と立つ山の峰からは太陽が輝き/光
 
によって泡立っている小さな谷間だ・・・」だったでしょうか、『Le Dormeur du val  谷間に眠
 る
男』は。とベゴニアが割り込むと、向かい側に座っているカミラが肯き、バック・チャンネ
 ル。
それを見たコキノダイナスは、席に近寄り酒を注ぎながら、里山のバイオマス運動で頑張
 っているんやねと切り出すと、どうして知っているのかと照れ笑いながら聞くので、市の広報
 でインタビューされていたやないかと応じると、バイオマス発電の後継者がいなくて困ってい
 るんだがと話し、もう吞めんようになったと愚痴るように喋りながら注がれた茶碗酒を一気に
 吞み干した。

 カミラのアバター 

 そこのへーリオスちゃんは興味ないのかなぁ?と急に話を振られたヘーリオスは、興味はある
 のですが、いま抱えている"太陽の道"プロジェクトの仕事が手がいっぱいです。そうね、中途
 半端に加わると無責任になりますよねとベゴニアが言うと、それは、それとして、カミラさん
 と話を続けてもらうとして、"太陽の道"プロジェクトの話というか、研究成果をみんなに話し
 てくれませんか?えぇ~、それじゃ順序はばらばらになるますが、まず、東日本大震災で息を
 吹き消した、メガソーラーの、それもその推進役を果たした孫正義が社長のソフトバンクエナ
 ジのメガソーラーの発電状況で気がついたことをすお話させていただきます。



 ソフトバンクは全国で15カ所、稼働中9カ所、予定は6カ所で、稼働中トータルで67.4メガ
 ワット、計画トータルは177.1メガワットで総導入量は244.5メガワットと約7万2千世帯分の
 規模です。グラフ(上図)は、昨年の10月28日から今年6月6日にかけての累積発電量と一日
 当たりの発電量のグラフで、大きく変わっているのは今年2月1日より鳥取米子のソーラパー
 クが稼働したためですが、この2つの期間の一日の発電量の平均値と標準偏差、ばらつきです
 ね。それと変動係数、つまり標準偏差÷平均値×100%試算したものですが、前半変動係数が、
 201.6%、後半は90.1%と累積発電量が大きくなると変動係数が比例するのかと考えいましたが
 以外に少ない前半の方が変動が2倍程度大きくなっています。
 

  へーリオス(舳離雄)のアバター

 変動を押さえるには電力貯蔵設備、え~っと、蓄電池が必要だというわけねとベゴニアが尋ねると、そう
 ですがと応えると、細かなことは一旦、おくといして、カラミも絡むんやけど再生可能エネルギーというや
 つは現状どうなっているかとコキノダイナスと矢継ぎ早に質問すると、いままで静かに議論を聞いていた
 プロンシャスが、それじゃわたしの方から話そうと喋りはじめた。 

 

 ドイツに本部を置くエネルギー専門家団体「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(RE
 N21)の「自然エネルギー世界白書2014」の情報では、 2013年末の世界の再生可能エネルギー
 発電容量は、2012年から8.3%増加して1,560GWとなり、再生可能エネルギーは、現在、世界の
 発電電力量の22%以上に達した。2013年1年間で、再生可能エネルギーは世界の発電容量の増
 加量(正味)の56%以上だということです。太陽光はそのなかでも、2013年は初めて、世界全
 体での太陽光発電の新規導入量が風力発電の新規導入量を上回り、世界全体での太陽光発電へ
 の投資額が2012年に比べて約22%減少したが、発電設備の新規導入量は27%以上増加していま
 す。

  ベゴニア(秋海棠)のアバター

 とりわけ、2013年の日本の太陽光発電の新規導入量は6.9GWで、累積導入量は13.6GWとなった。
 2013年は固定買取価格制度を追い風に導入量を増やし、累積導入量は、昨年よりひとつランク
 をあげ世界4位。中国の2013年の新規導入量は12.9GWで、累積導入量で19.9GWとなり、ドイツ
 についで2位です。また、再生可能エネルギーの成長を促す支援政策を採用する新興国は95カ
 国に達し、2005年のわずか15カ国から6倍に成長した。再生可能エネルギー支援政策が後退、
 あるいは見通しが不確実になる、過去に遡って支援を縮小させるといった事例が見られる欧州
 や米国の一部とは異なり、新興国でのこうした傾向は対照的である。雇用においても、2013年
 には世界中で約650万人が直接あるいは間接的に再生可能エネルギー分野で働いていると推計さ
 れています。

 

 プロンシャスのアバター 


 再生可能エネルギーは、2012年の世界の最終エネルギー消費のうち19%を供給し、2013年も増
 加し続け、この2012年の世界の最終エネルギー消費のうち、10%は「現代的な再生可能エネル
 ギー」であるが、残りの9%は減少しつつある「伝統的なバイオマス」によるもので「現代的
 な再生可能エネルギー」とは、太陽光や風力、地熱、バイオマスボイラーなど現代技術を用い
 た効率の高い再生可能エネルギー利用をさします。「伝統的なバイオマス」は、薪や炭などを
 用いた効率の悪いバイオマス利用のあり方を指しています。ここで、中国、アメリカ合衆国、
 ブラジル、カナダ、そしてドイツは、依然として再生可能エネルギーの累積の発電設備容量で
 上位の座を保っていますが、中国での再生可能エネルギーの発電設備の新規導入量が、化石燃
 料や 原子力による発電設備の新規導入量を初めて上回っています。


 この報告書では、2013年の世界の再生可能エネルギーによる発電と燃料への投資額は少なくと
 も2494億米ドルだが、2012年の投資額と比べて14%減、2011年の記録的な投資額と比べると23
 %減少していますが、
REN21の議長であるアルソロス・ゼルボスは「世界の再生可能エネルギ
 ーに対する認識は大きく変化した。問題はもはや、全ての人がエネルギーを手にした再生可能
 エネルギー100%の未来を実現するために、どのようにしたら現在の導入ペースを最大限加速
 できるだろうか、というものに変わってきた。これを実現するためには、現在の考え方を変え
 なければならない。現状の寄せ集めの政策や取り組みを継続するだけでは、もはや不十分だ」

 と話しています。

 


 そこの「再生可能

エネルギー100%の未来を実現するために、どのようにしたら現在の導入ペ
 ースを最大限加速
できるだろうか」というところでね、ヘーリオスが提案している「ポスト・
 メガソーラ」「変換効率25%超時代」やねと酔いが回った顔したカラミが、ポンと肩をたたき
 酒を注ぎにきている。「もうこれ以上は呑めませんが」と扱い困った顔をしている。面白いこ
 とに昨年、東芝が米国サンパワー社から単結晶パネルを供給を受けバックコンタクトといって
 陽極側を受光面にして効率を上げたことが大きいくモジュールで変換効率20.1%と他社を出し
 抜き、2020年のロードマップの20.0%をクリアしトップ踊りでたが、今年に入り売れ筋ランキ
 ングでもトップになっていますと、アバターは補足し、6月4日にオリックスが三重県津市の
 ゴルフ場跡地に、太陽光パネルの直流出力約51MWのメガソーラーの建設を発表していると言い
 終えた。

 アルマティのアバター

 
 そこで、25%超は実現可能かというと、パナソニック(三洋電機)では実験室段階だけれど
 24.6%を実現しているからそれも近いうちクリアー出来てしまうのではと思うよと付け加えた。
 ところで、最近の新規考案というのはどうなっているのとベゴニアは尋ねた。変換効率ではな
 いが、シャープから化合物系太陽電池の製造法(特開2014-093399「化合物薄膜太陽電池およ
 びその製造方法」)、簡単に言うと(1)厚塗りを簡単に行い(2)乾燥後の残留応力をなく
 すために(3)分割パターニングするというもの、これはプロセス技術に熟知していなければ
 わからないでしょう(下図参照)。ところで、大容量の蓄電装置やシステムにいいアイデアが
 みつかりましたか?

 

 リチウムイオン電池や、硫黄ナトリウム電池などの電池類については激しい技術開発競争にあ
 りますが、ここ
は、太陽光発電と熱電変換素子(ペチェ素子)などを組み合わせる方法につい
 て考えてみました。ヒントになったのは東芝の「特開2014-99510 太陽光発電機」ですが、簡
 単に言うと単結晶シリコン系は温度依存性で上昇すると再結合が起き出力低下を起こすため、
 太陽電池セルの熱を回収し、貯蔵し、放出する。常温(20℃)以上~百℃以下の範囲で融点を
 持ち、過冷却をもつ硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、エリスリトールなどの潜
 熱蓄熱材を使うというものです。過冷却を有する潜熱蓄熱材とは、融点以下の温度でも固化せ
 ずに液体で準安定に存在する物質をさします。蓄熱材は30℃以上90℃以下の範囲で融点をもち
 かつ融点から30℃以上で過冷却状態をもつものです。



 もうひとつの新規考案(特開2014-074397「次世代電力貯蔵システム及び次世代電力貯蔵方法」)
 は、再生可能エネルギーや夜間の余剰電力を活用して電力を貯蔵し、ピーク電力時に貯蔵電力
 を供給する電力貯蔵システムとして、圧縮空気や液圧等の圧力エネルギーを利用した電力貯蔵
 システムが提案されていますが、地上・地下に大規模な高圧液体アキュムレータ配置するため、
 構造が大きくなり、製造コスト高で、作動媒体の空気は密度が低く、貯蔵容器から圧縮空気を
 取り出すと、圧縮空気の圧力エネルギーが急峻低下し、安定した電力が供給できなという問題
 があります。また、揚水発電システムも提案も同様の問題を抱えています。大容量のバックア
 ップ蓄電装置を使わず、低コストで長寿命であり、安全で信頼性が高い次世代電力貯蔵システ
 ムと次世代電力貯蔵方法として、蓄電装置からの出力電力を利用しパルス電流を発生させ、こ
 の電流を超臨界流体発生器に供給しながら高圧作動流体供給源から高圧作動流体を超臨界流体
 発生器に供給し超臨界流体を発生させ、回転式流体機械で膨張させて得た機械エネルギーで発
 電機を駆動することで安定した電力供給させようという提案がなされています。



 なお、超臨界流体発生器ではアーク放電で、導電水から発生した超臨界水は温度が、6百℃~
 8百℃の時に350bar前後の超臨界圧となり、この超臨界水が回転式流体機械で爆発的に膨張
 し、発生した爆発圧力はロータリピストンの回転方向において10平方cm当り1千Kg前後
 にも達し、エネルギー効率が高くなり、小型高性能となるとしてあります。そこで、作動流体
 には、導電水の他に、単純な水、炭酸ガス、水と炭酸ガスの混合流体、水とアセトン(50%:
 50%の比率)の混合流体、導電水とアセトン(50%:50%の比率)の混合流体などの作
  動流体を用いても可能だと書かれていますが、これについては、別の専門家に相談してみない
 とわかりませんが、大がかりなシステム装置になりそうです。
 


JP 2008-301630 A 太陽熱と地下放熱との温度差を利用した発電蓄電システム


 そのことを踏まえても回転摺動部などがあり簡素にしたいということで、水などの熱媒体の
 循環ポンプを1つもって。地上と地下の蓄熱タンクを往復循環させるだけで、日中の太陽光
 パネルを冷却させ発電効率を高めながら、蓄熱材に放熱させその温度差を熱電変換素子で電
 力変換させ、夜間には蓄熱材と外気温との温度差を逆に電力変換させるというシステム考え
 てみましたがいかがでしょうかと。言い終えてヘーリオスはその場で黙り込んでいた。しば
 らくして、それは面白と他の全員は賛同し、酒を吞みながらあれやこれやとめいめいが雑談
 し、懇親を深めた。

                                    この項了




                                
                                    



 

 

 

  

 

  セックスが終わると、二人は横になったまま話をした。とはいっても話すのは専ら彼女の方
 で、羽原はそれに適当に相づちを打ったり、たまに何か短い質問をするだけだった。そして時
 計の針が四時半を指すと、シェエラザードは話が途中であってもそこで切り上げ(なぜかいつ
 も話が佳境に入ったところでその時刻がやってきた)、ベッドを出て、床に散らばった服を集
 めて着込み、帰り支度をした。夕食の支度をしなくてはならないから、と彼女は言った。

  羽原は玄関口で彼女を見送り、ドアにまたチェーン錠をかけ、汚れた青い小型車が去って行
 くのをカーテンの隙間から見ていた。六時になると冷蔵庫の中の食材を使って簡単な食事を作
 り、一人で食べた。しばらくコックをしていたこともあり、彼にとって食事を作ることはまっ
 たく苦痛ではない。食事のときにペリエを飲み(アルコールは一切口にしない)、そのあとは
 コーヒーを飲みながらDVDの映画を見るか、本を読むかした(彼は読むのにできるだけ時間
 がかかり、何度も読みかえす必要がある本を好んだ)。他にこれといってすることもない。話
 をする相手もいない。電話をかける相手もいない。コンピュータは持っていないから、インタ
 ―・ネットにアクセスすることはできない。新聞もとっていないし、テレビ番組も見ない(そ
 れ
にはもっともな理由がある)。もちろん外に出ることもできない。もし何らかの事情で、シ
 ェ
エラザードがもうここを訪れることができなくなったら、彼は外界との連絡を―切絶たれ、
 文字通り陸の孤島に一人で取り残されてしまうことになる。

  でもそのような可能性は羽原をさして不安にはさせなかった。それはおれが自分一人の力で
 処理しなくてはならない状況だ。むずかしい状況だが、なんとかそれを切り抜けていくだろう。
 おれは一人で孤島にいるわけではない、と羽原は思った。そうではなく、おれ自身が孤島なの
 だ。一人でいることに彼はもともと慣れていた。彼の神経は一人きりになってもそれほど簡単
 には折れない。羽原の心を乱していたのは、そうなったらもうシェエラザードとベッドの中で
 話ができなくなるということだった。もっと端的に言えば、彼女の語ってくれる物語の続きが
 聞けなくなることだった。

 「ハウス」に落ち着いてからしばらくして、羽原は髭を伸ばし始めた。もともと髭は濃い方だ。
 顔の印象を変えるという目的ももちろんあったが、それだけではない。髭を伸ばし始めた主な
 理由は、なにしろ手持ちぶさただったからだ。髭があれば、しょっちゅう顎やもみあげや鼻の
 下に手をやって、その感触を楽しむこともできた。鋏や剃刀を使って形を整えることで時間を
 潰すこともできた。これまでそんなことには気づかなかったけれど、髭を伸ばしているだけで
 意外に退屈が紛れるものなのだ。

 「私の前世はやつめうなぎだったの」とあるときシェエラザードはベッドの中で言った。とて
 もあっさりと、「北極点はずっと北の方にある」と告げるみたいにこともなげに。やつめうな
 ぎがどんな格好をしたどんな生き物なのか、羽原はまったく知識を持だなかった。
  だからとくにそれに対して感想は述べなかった。
 「やつめうなぎがどうやって鱒を食べるか知っている?」と彼女は尋ねた。
 いや、知らない、と羽原は言った。やつめうなぎが鱒を食べるなんていうこと自体初耳だっ
 た。

 「やつめうなぎには顎がないの。そこが普通のうなぎとは大きく違っている」
 「普通のうなぎには顎があったっけ?」
 「鰻をちゃんと見たことないの?」とあきれたように女は言った。
 「ときどき食べるけど、顎まではなかなか見る機会はない」
 「今度どこかでよく見てみるといいわ。水族館とかに行って。普通のうなぎには顎もあるし、
 ちゃんとした歯もついている。でもね、やつめうなぎには顎がまったくないの。そのかわり目
 が吸盤みたいになっている。その吸盤で河や湖の底の石にくっついて、逆さになってゆらゆら
 と揺れているの。水草みたいに」

  羽原は水底でたくさんのやつめうなぎが水草のように揺れているところを想像した。それは
 なんとなく現実離れした光景だった。とはいえ現実が往々にして現実離れしていることを羽原
 は知っていた。

 「やつめうなぎは実際に水草にまぎれて暮らしているの。そこにこっそり身を隠している。そ
 して頭上を鱒が通りかかると、するすると上っていってそのお腹に吸い付くの。吸盤でね。そ 
 して蛭みたいに鱒にぴったりくっついて寄生生活を送る。吸盤の内側には歯のついた舌のよう
 なものがあって、それをやすりのようにごしごしと使って魚の体に穴を開け、ちょっとずつ肉
 を食べるの」
 「あまり鱒になりたくないな」と羽原は言った。
 「ローマ時代にはやつめうなぎの養殖池がほうぼうにあって、言うことをきかない生意気な奴
 隷たちが生きたままそこに投げ込まれ、やつめうなぎたちの餌にされたということだけど」

  ローマ時代の奴隷にもなりたくない、と羽原は思った。もちろんどんな時代の奴隷にだって
 なりたくないけれど。

 「小学生の頃、水族館で初めてやつめうなぎを見て、その生態の説明文を読んだとき、私の前
 世はこれだったんだって、はっと気がついたの」とシェエラザードは言った。「というのは、
 私にははっきりとした記憶があるの。水底で石に吸い付いて、水草にまぎれてゆらゆら揺れて
 いたり、上を通り過ぎていく太った鱒を眺めたりしていた記憶が」
 「鱒を誓った覚えはない?」
 「それはない」
 「よかった」と羽原は言った。「やつめうなぎだった頃について覚えているのはそれだけ?
 ゆらゆら水底で揺れていたことだけ?」
 「前世のことって、全部すらすらと思い出せるわけじやないから」と彼女は言った。「うまく
 いけば、何かの拍子にそのほんの一部だけが思い出せる。あくまで突発的に、小さな覗き穴か
 ら壁の向こうを覗くみたいにね。そこにある光景のほんの一画しか見ることはできない。あな
 たは自分の前世のことが何か思い出せる?」

 「何も思い出せない」と羽原は言った。正直なところ前世のことを思い出したいという気持ち
 もなかった。今ここにある現実だけで手一杯だ。

 「でも湖の底にいるのはなかなか悪くなかったな。□で石にぎゆっと吸い付いて、逆さになっ
 て、上を通り過ぎる魚たちを見ているの。すごく大きなすっぽんも見たことがある。下から見
 上げているとそれは、『スター・ウオーズ』に出てくる悪い宇宙船みたいに暗くて巨大だった。
 嘴の長くて鋭い大きな白い鳥たちが、殺し屋のように魚たちを襲っていた。鳥たちは水底か

 ら見ると、青空を流れる雲のようにしか見えなかった。私たちは深いところで水草の中に隠れ
 ていたから、鳥たちからは安全だったけれど」





 「君にはそういう光景が見えるんだ」

 「とてもありありと」とシェエラザードは言った。「そこにあった光とか、水の流れの感触と
 か。そのとき自分が考えていたことまで思い出せる。ときにはその光景に入っていくこともで
 きる」

 「考えていたこと?」
 「そう」
 「君はそこで何かを考えていたんだ」
 「もちろん」
 「やつめうなぎはどんなことを考えるんだろう?」
 「やつめうなぎは、とてもやつめうなぎ的なことを考えるのよ。やつめうなぎ的な主題を、や
 つめうなぎ的な文脈で。でもそれを私たちの言葉に置き換えることはできない。それは水中に
 あるもののための考えだから。赤ん坊として胎内にいたときと同じよ。そこに考えがあること
 はわかるんだけど、その考えをこの地上の言葉で表すことはできない。そうでしょ?」
 「ひょっとして君は、胎内にいたときのことを思い出せるの?」と羽原は驚いて言った。
 「もちろん」とシェエラザードはこともなげに言った。そして彼の胸の上で首を僅かに傾げた
 「あなたは思い出せないの?」
  
  思い出せないと羽原は言った。
 「じゃあ、いつかその話をしてあげる。私が胎児だった頃の話を」
  羽原はその日の日誌には「シェエラザード、やつめうなぎ、前世」と記録しておいた。もし
 他人がそれを目にすることがあっても、何のことだかわけがわからないだろう。


 
                   村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEYVol.2)

                                   この項つづく



 

今日、マイ・ピーシをハンズフリー化し、音楽や電話通信を行えるようにした。ところで、デジ
タル化で大き
なレコードジャケットが消えたように、取扱説明書も細かい字(英語と中国語の2
つ)でかかれているため
に、ちゃんと速く理解するには、これが障害となる。これで明日からは
トイレに入っても50メートル以内なら、綺麗に音楽(繊細な音質に拘らなければの話)を聞き
くこともできると納得する。"ビバ!デジタル革命渦論"だ。
 

 

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びっくり!全方位カメラ

2014年06月05日 | デジタル革命渦論

 





【全方位撮像カメラ時代】




鹿肉カレーと全方位映像時代』の具体化が始まっている。この程、フランスの会社の「360cam」は、
防水カメラを販売した。3つの魚眼レンズを搭載し、水平360度、垂直300度の撮影が可能にして、ほ
ぼ全天球に近い撮影できるカメラを世界初で開発販売。解像度について、写真が4096×2048、動画が
2048×1024となっている。専用アプリをダウンロードしてWi-Fiに接続すれば、ビデオのストリーミン
グも可能になる。現在のものはHDだが、4Kにグレードアップも可能だろう。勿論、防犯カメラに
応用可能。CMビデオを観る。これは凄い!

 




●グーグル操縦不用カーを公開

先日、米Googleは、最新版の自動運転カーを披露した。2人乗りタイプとなり、ダッシュボードにス
テアリングホイールやブレーキやアクセルペダルなどを取り外し、上には周囲360度をチェックするセ
ンサーを搭載されている。安全のため、最高時速は25キロまでに制限されているとのこと。まさに、
イレージング!内燃機関からモーターへ! 有人運転から無人運転へ! "ビバ!デジタル革命渦論”

 

 e-Cool

● 土の中でビールを冷やす?!

土に埋めてビールを冷やしてくれるアイデア装置。ハンドル部分を回すと、土の中で冷やされていた
ビール缶が、地上まで上がってくる。1度に最大24個まで冷やすことができて、電気を必要としないの
で、地球に優しいとか。

【超々臨界火力発電とは】 

三井物産は4日、マレーシア政府百%出資のファンドと共同事業会社を設立し、マレーシアで超々臨
界石炭火力発電所を建設・運営すると発表(総事業費は約33億ドル)。
マレー半島のヌグリスンビ
ラン州ジマ地区に出力2千メガワットの発電所を建設し、2018年11月に1号機、2019年5月に2号機
の商業運転を開始する予定。電力は25年契約でマレーシア国営電力に供給する。設計・調達・建設はI
HI、東芝、韓国の現代エンジニアリングと現代建設からなるコンソーシアムが担当。日本製機器を
活用した高い発電効率の最新鋭の超々臨界圧発電技術の導入。

しかし、これだけではさっぱり分からないということでネット検索を行う。この背景には、1970年代
のオイルショック以降に大型石炭火力が建設されてきたが、耐用年数に伴う更新や大幅な改修の時期
あるが、この対策として先進超々臨界圧火力発電(以下「A-USC」)が研究開発されてきたといのだ。
その特徴は、(1)現在最新の石炭火力よりも二酸化排出量の10~15%削減が期待できる。(2)従来
630℃程度が限界といわれていた蒸気温度を700℃まで向上、これにより、主蒸気圧力35MPa、主蒸気温
度700℃、再熱蒸気温度720℃/720℃の二段再熱蒸気条件のA-USCプラントでは、46%以上の送電端効率
が期待できるというもの。ここでも日本がトップランナーに位置するという。
 

これに対して、(1) 700℃以上の蒸気に耐えられる材料の開発、(2)信頼性、経済性を同時に達成
するためのシステムと構造上の工夫が課題であったが

 

 ※参考 特開2014-080651 ニッケル-鉄基合金

 

 

 

  

妻の不貞を見て女性不信となったシャフリヤール王が、国の若い女性と一夜を過ごしては殺してい
たのを止
めさせる為、大臣の娘シャハラザード(シェヘラザード、شهرزاد)が自ら王の元に嫁ぐ。
そしてシャハラザードは
千夜に渡って毎夜王に話をしては気を紛らわさせ、終に殺すのを止めさせ
たという物語が主軸となっている。
話が佳境に入った所で「続きはまた明日」とシャハラザードが
打ち切る為、王は次の話が聞きたくて別の女性
に伽をさせるのを思い留まり、それが千夜続いたと
いうが、この大臣の娘シャハラザード(シェエラザード)と名付けたのか分からずじまいに、イン
トロ部分を読み進めることとなる。

  羽原と一度性交するたびに、彼女はひとつ興味深い、不思議な話を聞かせてくれた。『千夜
 一
夜物語』の王妃シェエラザードと同じように。もちろんお話とは違って、夜が明けたら彼女
 の
首を刎ねようというようなつもりは羽原には毛頭ない(だいたい彼女が朝まで彼の隣にいた
 こ
とは一度もなかった)。彼女はただ白分かそうしたいから、羽原のために話をしてくれたの
 だ。
ずっと一人で家にこもっていなくてはならない羽原を慰めるつもりもあったのだろう。し
 かし
それだけではなく、というかおそらくはそれ以上に、ベッドの中で男性と親密に話をする
 行為
そのものが彼女は好きだったのだろう――とりわけ性行為を終えたあとの二人きりの気怠
 い時
間に―――と羽原は推測した。



 
  羽原はその女をシェエラザードと名付けた。彼女の前ではその名前は口にしなかったが、毎
 
日つけている小さな日誌には、彼女がやってきた日には、「シェエラザード」とボールペンで
 メモしておいた。そしてその日彼女が語ってくれた話の内容も簡単に―――あとで誰かに読ま
 れても意味がわからない程度に―――記録しておいた。
  彼女の語る話が実際にあったことなのか、まったくの創作なのか、それとも部分的に事実で
 部分的に作り話なのか、羽原にはわからない。その違いを見分けることは不可能だった。そこ
 では現実と推測、観察と夢想が分かちがたく入り乱れているらしかった。だから羽原はその真
 偽をいちいち気にかけることなく、ただ無心に彼女の話に耳を傾けることにした。本当であれ
 嘘であれ、あるいはそのややこしい斑であれ、その違いが今の自分にどれはどの意味を持つと
 いうのだ?
 
  何はともあれ、シェエラザードは相手の心を惹きつける話術を心得ていた。どんな種類の話
 であれ、彼女が話すとそれは特別な物語になった。口調や、間の取り方や、話の進め方、すべ
 てが完璧だった。彼女は聴き手に興味を抱かせ、意地悪くじらせ、考えさせ推測させ、そのあ
 とで聴き手の求めるものを的確に与えた。その心憎いまでの技巧は、たとえ一時的であるにせ
 よ、聴き手にまわりの現実を忘れさせてくれた。しがみつくように残ったいやな記憶の断片を、
 あるいはできれば忘れてしまいたい心配事を、濡れた雑巾で黒板を拭うようにきれいに消し去
 ってくれた。それだけでもう十分ではないか、と羽原は思った。というか、それこそが何にも
 増して今の羽原の求めていることだった。

  シェエラザードは三十五歳、羽原より四歳年上で、基本的には専業主婦で(看護師の資格
 持ち、ときどき必要に応じて仕事に呼ばれるようだったが)、小学生の子供が二人いた。夫は
 普通の会社に勤めている。家はここから車で二十分ほどのところにある。少なくともそれが彼
 女が羽原に教えてくれた、自らについての情報の(ほとんど)すべてだった。それが偽りのな
 い事実なのかどうか、もちろん羽原に確かめようはない。とはいえそれを疑わなくてはならな
 い理由もとくに見当たらない。名前は教えてもらえなかった。私の名前なんてべつに知る必要
 もないでしょう、とシェエラザードは言った。たしかにそのとおりだ。彼女は彼にとってはあ
 くまで「シェエラザード」であり、それでとりあえず不便はなかった。 女も羽原の名前――
 ―もちろんそれを知っているはずだが-を呼んだことはない。それを目にすることが不吉で不
 適切なおこないであるかのように、彼女は慎重に彼の名前を迂回した。
  
  シェエラザードの外見は、どのようなひいき目で見ても、『千夜一夜物語』に出てくる美貌
 の王妃とは似ても似つかなかった。彼女は身体のあちこちに(まるで隙間をパテで埋めるみた
 いに)贅肉が付着し始めた地方都市在住の主婦で、見るところ中年の領域に着実に歩を進めつ
 つあった。顎がいくぶん厚くなり、目の脇にはくたびれた皺が刻まれていた。髪型も服装も化
 粧も、おざなりとまではいかずとも、さして感心できる代物ではない。顔立ち自体は決して悪
 くはないのだが、そこには焦点のようなものが見当たらず、とりとめのない印象しか人に与え
 なかった。通りですれ違っても、エレベーターで乗り合わせても、大方の人は彼女に目を留め
 ないだろう。あるいは彼女も十年前は生き生きとした可愛い娘だったのかもしれない。何人か
 の男たちは振り返って彼女を見たかもしれない。しかしもしそうであったとしても、そのよう
 な日々はどこかの時点で既に幕を下ろしていた。そしてその幕がもう一度持ち上がる気配は、
 今のところ見受けられなかった。

 

 



  シェエラザードは週に二度のペースで「ハウス」を訪れた。曜日は決まっていないが、週末
 にやってくることはなかった。おそらく週末は家族と過ごす必要があるのだろう。姿を見せる
 一時間前に必ず電話がかかってきた。彼女は近所のスーパーマーケットで食品の買い物をし、
 それを車に積んでやってきた。マツダの青い小型車だ。古いモデルで、リア・バンパーに目立
 つへこみがあり、ホイールは汚れで真っ黒になっている。彼女は車を「ハウス」の駐車スペー
 スに停め、ハッチバックの扉を開けて買い物袋を出し、両手にそれを抱えてドアベルを押した。
 羽原は覗き穴から相手を確認し、ロックを解錠し、チェーン錠を外し、ドアを開けた。彼女は
 そのまま台所に行って、持参した食品を仕分けして冷蔵庫にしまった。そして次に来るときの
 買い物リストを作った。有能な主婦であるらしく、仕事はいかにも手際よく、動きに無駄がな
 かった。用事を片付けている間はほとんど目をきかず、生真面目な顔を崩さなかった。

 



 
  彼女がその作業を終えると、どちらが言い出すともなく、まるで目に見えない海流に運ばれ
 るように、二人は自然に寝室へと移動した。シェエラザードはそこで無言のまま手早く着衣を
 脱ぎ、羽原と一緒にベッドに入った。二人はほとんど口もきかずに抱き合い、まるで与えられ
 た課題を協力してこなすように、一通りの手順を踏んで性交した。生理期間中であれば、彼女
 は手を使ってその目的を果たした。その手際のよい、いくぶん事務的な手つきは、彼女が看護
 師の資格を持っていることを彼に思い出させた。

         
                  村上春樹 著『シェエラザード』(MONKEY Vol.2)

                                  この項つづく


 


「曾根崎・大阪北小学校ありがとう会」の出欠状が届いたので、竹馬の友にきみは出席しないかの
問い合わせの電話を入れたが繋がらず、ファックスもしてみたがその返事もなかった。何となくこ
ころがざわつき、落ち着きをなくしている。それで、来週の土日のどちらかに自宅まで車で行くこ
とにしたが、歯も痛いので気鬱な夜を過す。ここらで気持ちを切り替えないとね。

 

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失敗しない解凍術と自衛論

2014年06月03日 | 時事書評

 



●日々の最新商品考

里山資本主義異論Ⅱ』で、ジムの自動販売機から消えて半年過ぎたが、キリンよりリ
ニューアルされ販売されているという。係員に確認することにしよう、と。そんなこと
を書いたが、一旦、自動販売から消えていたが先月の中旬ごろから1レーンだけれど販
売されていたので、早速、ルームランナーで消費する。ところが、今回はぺットボトル
が二種類あるなかの円筒形で、
グリップしやすい螺旋状の凹凸に成型されているから嬉
しいし、機能性も満足なのだが握ったときの感触が特に気に入る(類似の他社のスポー
ツドリンクケーシングは既に存在していた、商品は忘れたが、エル・スポーツで昨年販
売されていたがいまは中止)。爆発的に売れなくても良いから、これからも長く販売し
て欲しい商品だと思っている。楊貴妃が愛したライチ、千三年を経てわたし(たち)も
それを味わっている。そんな爽快な浪漫を感じながら今日も汗を流している。



  

いままで、夕食前にサントリーウイスキーの角瓶をぐい飲みに注ぎ飲んでいるスタイル
が変わり
そうだ。サントリーからアサヒ、それも、ブラックニッカのリッチブレンド。
口当たりというよりか、香
り高い、例えると、ほのかなカルメラの匂いを伴いながら喉
元を過ぎり、暫くの間、コナラの溢れ日が心地よい道をゆっくりと独りで散策している
あるいは、クレタの海原でサングラス越しに浴びながら潮騒を聴き独りビーチチェアで
寛いでいるというイメージに暫し様酔っているという感じだ。このときはリッチブレン
ドは冷やさず、或いは氷を入れず単純にストレートで飲み干すだけだ(十勝チーズ6P
などあれば
なお結構)。

 

この2、3日、2時、3時と睡眠時間が乱れている。寝られないから、お酒を寝酒とする悪循環に
あるというわけで、昼から、ライト・コロンの「アクアムスク」が空になった序でに、近くのドラッグ
ストアで「新キャベジンコーワS」と「アリナミン7ゼロ」を調達に出る。「新キャベジンコーワS」は
荒れて痛んだ胃の粘膜を修復し、正常な状態に整えるキャベジン本来の効きめに加え、胃の
運動を促進する生薬成分ソウジュツを加えることで、弱ってきた胃を元気にしていく胃腸薬とい
うメーカ側の説明だが、主成分は、ビタミンU(S-メチルメチオニン (S-methylmethionine)
ビタミンUはメチオニン誘導体である。塩化メチルメチオニンスルホニウム(MMSC)。
戦後アメリカでガーネット・チェニーらによりキャベツの絞り汁より発見された。その
ためキャベジンとも呼ばれ、興和の同名の薬品他、様々な胃腸薬の成分となっている。
水溶性の化合物であり、熱に弱い。胃酸の分泌を抑え、胃粘膜の修復を助けて胃潰瘍を
防止する作用がある。潰瘍を意味する英語ulcerの頭文字をとってビタミンUと命名され
たたというほどだが、生体にとって必須な栄養成分ではないことから正式なビタミンで
はない(アブラナ科の植物に特に多く含まれる)。さて、
この2つの医薬品はこれからも
長く付き合いつづけてくだろう。

      

「アリナミン7ゼロ」の方はビタミンB1が主成分。ただ糖分をゼロに配合し、シトラス系の芳香
成分(精油)が極微量含まれている?そこで、シトラス系とはレモンやオレンジ、ライ
ムなどのフレッシュな柑橘系の爽やかな香り。「ひと息ついて、栄養補給したい。糖類
やカロリーが気になる」というニーズ応え開発された。
糖類ゼロ、7つの有効成分、シ
トラスの香りで爽やかな飲み心地の百ミリ㍑ドリンク剤。ここは目をつぶり1本飲む。
そして、最後に買い物である、ボリューム感のあるムスクノートをメインに、ジャスミ
ン・ミュゲ・ローズ等のフローラルノートで石ケンらしいフレッシュさ、さらにウッデ
ィ、アンバーノートが全体を引き立てる、マンダム社の「シャワーフレッシュ アクア
ムスク」を手に入れ帰ってくる。ムスクノートが好み?いや、バレンシアオレンジノー
トが本命だが適当なものがないのでつくってもいいのだが、いかんせん時間が足りませ
ね。誰か時を止めて下さぁ~~~い。

           

●冷凍食品の解凍術から自衛権まで

「あさイチ」の番組放送で、火を加えずに食べたい刺身などの場合は、氷水に入れて解
凍する方法で「氷水」「風」「流水」の3択問題がだされ「
氷水解凍」が正解でおいし
くし仕上がるという。その根拠は、
食材は「-3~0℃」の温度帯で溶け出す。そこで
氷水解凍だと1℃前後の温度をキープした状態で解凍できます。この方法だとムダに温
度を上げて食材にダメージを与えないという(
氷水解凍、風をあてて解凍、流水解凍の
それぞれの方法で、ドリップ量の流出を比較すると、氷水解凍はほとんどドリップがな
いという)。これを観て腑に落とすことがあった。そこで、国民国家の個別、集団の自
衛論についてネット検索していたら、ダイヤモンドオンラインの高橋洋一氏の『俗論を
撃つ!』をヒットした。彼のマクロ経済(経済成長)論についてはほぼ異論はない。因
みに、「現在のインフレは金融政策の効果 懸念は1997年型に近づく消費税増税の影響」
の論考が同シリーズの下表のグラフで開示されている。

例えば「消費税増税は過去2回ある。一回目は消費税の創設時の1989年、二回目は3%
から5%に引き上げた1997年だ。景気動向指数でみて、一回目の89年は景気にさほど影
響を与えなかったが、二回目の97年は景気が落ち込んだ。しかし、それでも、経済政策
には効果ラグがあるので、その効果がはっきりわかるのは、少なくとも6ヵ月くらいの
期間を経ないとわからない。実際、89年も97年も半年間くらいは似たような動きだった
」(下図)と解説しているが、「
もし、本当に97年のようになったら、どうしたらいい
だろか。金融緩和には2年程度の効果ラグがあるので、もう間に合わない。となると財
政政策になる。
ただし、公共事業は、すでに供給制約の壁にぶち当たっている。このた
め、予算の執行状況について、執行時期や規模の具体的な数値目標を定める方針だ。た
だ、目先の供給制約はいかんともしがたく、目標を定めたところで、どうにもならない
むしろ、目標あわせの小細工を誘発しかねず、建設資材価格の急騰すら招きかねない。
となると、財政政策の対応は、従来のような公共事業の積み増しでは対応できない」と
し、減税・給付金のような「バラマキ」によって有効需要創出に制約のないものにしな
ければいけない。はたして、その用意が今の政権内にあるのだろうか。と、結んでいる
が、ミクロの経済主体とどうかみ合わせるかが焦点になるとみるわたし(たち)とここ
でクロス・オーバーするというわけだ。

さて、彼の政治政策論についてのコメントは、"TPP合コン論"のようのように疑問符
がつく。そして、同上シリーズの「「個別」「集団」の区別は世界の非常識 集団的自
衛権の基礎知識」についても同様である。つまり、
個別的か集団的か」という問いが国
際的に通じない-ついでにいえば、憲法前文で「いづれの国家も、自国のことのみに専念して
他国を無視してはならない」とも書かれている。個別的自衛権のみを主張するのは、この理念
からも反している」(下表参照)と主張しているが、これはこれで正論であるから問題ないが、「
集団」とは何かの対象定義が実は鵺で曖昧な問題を孕んでいる。

 

 

何故か? 集団自衛の対象事例数を仮に次の式のように表現しよう。

ΣC=αN(αN-1)    式(1)

ここで、Cは事例選択数、α=(N+β)/Nとする。Nは、国民国家、民族国家、連
邦国家(アメリカ合衆国を想定)を含めた数(欧州共同体は除外)。βは非国家、半国
家である 。Nを195として、βを仮にNの10%程度と考えて計算すれば、2.3885466257
899308826251688701297e+496となり膨大だ。もっとも、政府は集団自衛権は米国を対象
としているから2国間が対象だから、多国籍軍といっても米国政府新派諸国にすぎない。
仮に非国家の難民(例えば、台湾や北朝鮮の亡命勤労者)を人道的救済に派遣した政府
船舶や航空機が攻撃されそれを自衛する行為などは、国際的な国家連合機関(国連)の
法規などに照らし併せても自衛権として正当(正義)であるが、強国による集団的な(
火力兵器行
使のハードパワーのようなものとTPPのようなソフト・パワーでもおなじ
で)戦略
的思考行使は歴史的な経験を踏まえ慎重を要することは自明だ。もっとも、こ
んなことを主張しているのは、世界でもわたしぐらいだろう。そして、粘り強い合意形
成が前提となることも同様だ。いまの安倍政権のように前呑めり状態(背景はできると
しても)は危険だと思う。そのことだけは高橋洋一氏と共有できるものだと思うが、「
あさイチ」の解凍術の「ドリップ量の流出を比較試験結果」をヒントに始まった"集団自
衛権"(武力行使をともなう)の補考は、すべてを懐疑せよ!と帰結することになった。

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天晴れ、英樹。

2014年06月02日 | 日々草々

 

 

 

米男子ゴルフ:メモリアル・トーナメント最終ラウンドが行われ、3位で出た松山英樹は通
算 13アンダーの275で並んだケビン・ナ(米国)とのプレーオフを制して米ツアー初優勝を
飾った。日本選手による制覇は2008年5月の今田竜二以来4人目22歳での優勝は最年少
なった。優勝賞金116万6千ドル(約1億1,380万円)を獲得した(この最年少というのがい
いですね。それだけ選手層が厚いことを裏付けているのでは?)。ところで、先日のプロ
テニスプレイヤーの錦織圭の優勝といい、最近のスポーツ界での日本男子の活躍が目に付く
ようになっている。先回のプロ野球メジャーリーグのダルビッシュ有は、8回無失点の快投
で防御率2・08になったが、ヤンキース所属の田中将大(2.06)に次ぐ2位と日本の二人が
トップを競っている。このほか、スキー、フィギア・スケート、卓球、バトミントン、水泳
とやれば出来るんですね。この勢いでブラジルワールドカップも波に乗り制覇できるかも知
れない。




ところで、サッカーワールドカップ開催地のブラジルの料理ってどんなものがあるのだろう
か?

ウィキペディアによると、ブラジルの国民は、インディオ、ポルトガル系、アフリカ系、イタリア系、ドイ
ツ系、アラブ人(主にシリア、レバノン)、そして日系を主体とするアジア系などの混血人種で構成さ
れているため、地方の違いの保存で特徴づけられたブラジルの料理形式を生み出したと説明され
ている(下表参照)。 

●ブラジルの5大料理区分

北 部 アクレ、アマゾナス、アマパー、トカンティンス、パラー、ロンドニア、ロライマの各州が北部と定義される。文化的に、アマゾン盆地は魚や、キャッサバ、ヤム芋、ラッカセイといった根菜、加えて椰子の実や熱帯の果物を常食にするインディオや彼らとポルトガル人の混血の末裔が多数住んでいる。この地方の料理は、インディオの影響が濃い。 代表的な料理としてはカルル・ド・パラが挙げられる。それは干しエビ、オクラ、タマネギ、トマト、コリアンダー、デンデ油(アブラヤシの果肉から採る油)を一緒に入れる料理である。
北東部 アラゴアス、セアラ、セルジッペ、バイーア、パライバ、ピアウイ、ペルナンブーコ、マラニョン、リオグランデ・ド・ノルチの各州が北東部と定義される。この地域は、おもに放牧が行われている乾燥した内陸部から豊穣な海岸沿いの平地まであり、サトウキビやカカオが重要な農作物である。バイーア州では、プランテーションに連れてこられたアフリカ系の影響を受けたアフロ・バイーア料理が有名である。現地の食材を利用して、アフリカ、インド、ポルトガルの料理を融合させたものである。有名な料理はヴァタパやムケッカであり、どちらも魚介類とパームオイルを使用する。その他の沿岸地域では、アフリカ系からの料理の影響は小さいが、魚や貝、トロピカルフルーツが多く使用される。乾燥した内陸部では、干し肉、米、豆類、ヤギ、キャッサバ、トウモロコシの粉が使われる。
中西部 ゴイアス、マットグロッソ、同スルの各州と連邦直轄区が中西部と定義される。おもに乾燥したサバンナや草原、そして北部の森に覆われた地域からなっている。パンタナルと呼ばれている狩りと釣りの名所は、この中西部にある。広大な放牧地から供給される牛肉と豚肉、それに魚がメニューの中心であり、大豆や米、トウモロコシ、キャッサバも常食される。
南東部 エスピリトサント、サンパウロ、ミナスジェライス、リオデジャネイロの各州は南東部と定義される。またこの地域はブラジルの工業地帯の中心であり、ブラジル料理といわれて思いつく、有名な料理の発祥地でもある。 ミナスジェライス州では、トウモロコシ、豚肉、豆類、そして地元で作られる柔らかいチーズが主な食材である。リオとサンパウロでは、バイーア州の郷土料理であり、豆と肉を煮込んで作るフェイジョアーダ・コンプレッタが有名で、水曜日や土曜日の昼食に供される。また、アロス・イ・フェイジャン(米と豆の料理)も良く食べられている。伝統的に使われる豆は地域ごとに違いがあり、リオでは黒豆、赤豆と白豆がサンパウロで、そしてミナスジェライスでは、黒豆か赤豆が食べられている。サンパウロの有名な料理としては、ヴィラド・エ・パウリスタが挙げられる。これは米とキャッサバ粉をまぶした豆、煮込んだキャベツ、そして豚肉の盛り合わせである。 サンパウロでは、ヨーロッパや北米からの移住者の影響は大きく、料理にも影響を与えている。大部分はイタリアからだが、ポルトガル、スペインや日本からも多く移住している。またその他のヨーロッパや中東からの移住者も多い。この街ではありとあらゆる料理を目にすることが出来る。
南 部 サンタカタリーナ、パラナ、リオグランデ・ド・スルの各州は南部と定義される。 ガウーショと呼ばれていた人々が、日干しや塩漬けにされた干し肉とシュラスコと呼ばれる焼肉料理を作り出し、これらは南部の有名な料理である。ヨーロッパからの移住者が多く、小麦粉を中心とした食生活が定着し、ワイン、レタスなどの葉野菜、それに乳製品をブラジル人の食生活に紹介した。移住当初はじゃがいもが入手困難だったが、甘みのあるキャッサバを手に入れ、代用品として使うことを覚えた。


ブラジルには国民食であるフェイジョアーダ・コンプレッタ (feijoada completa) は三百年以
上も前から、黒豆、豚肉、それにキャッサバを用いられ料理されてきた。アフリカから連れ
てきた奴隷に食べさせることのできる豚の耳や足、尻尾、それに豆にキャッサバの粉のよう
な安価な食材を使って作られたのがその始まりである。それ以来、ブラジルの全ての地域で
食べられるようになり百種類以上の作り方があるという。

   

黒豆とはどんなものだろうか? フェイジャン(feijão)と呼ばれる豆は毎日食べられ、色々
な形や色、大きさの物がある。黒豆(feijão preto)をブラジル人の最も愛する豆と考える人
もいるとか。でも市場では、黒豆だけでなく、赤、白、茶、そしてピンク色の豆を売ってい
るとある。また、キャッサバは、トウダイグサ目トウダイグサ科イモノキ属の熱帯低木。マ
ニオク、マンジョカとも呼ばれ、その芋はタピオカの原料で、世界中の熱帯にて栽培される。
また、タピオカ (tapioca) は、トウダイグサ科のキャッサバの根茎から製造したデンプン
で、菓子の材料や料理のとろみ付けに用いられる他、つなぎとしても用いられる。紙の強度
を上げるための薬剤の原料として使用されている。

 

 

 

 ブラジル料理で肉料理といえば、シュラスコというらしい。シュラスコ(ブラジルポルト
ガル語:churrasco、シュハスコとも)は、鉄串に牛肉や豚肉、鶏肉を刺し通し、荒塩(岩
塩)をふって、炭火でじっくり焼いたブラジルをはじめとする南米の肉料理。ブラジルポル
トガル語ではシュハスコと発音される。日本ではブラジルのものが知られているが、隣接す
るスペイン語圏では「チュラスコ」又は「アサード」と呼ばれ、アルゼンチン、ウルグア
イ、ボリビアなどでも供される肉料理でもあると、解説されているが、日本で言う焼き鳥の
肉の串焼きといった料理(下写真)。

シュラスコを供するレストランを「シュハスカリア」(churrascaria) と呼び。牛を中心とし
た肉(中には鶏のハツなども含まれる)の様々な部位を串刺しし、ギャルソン(もしくはシ
ュハスケイロ、牧童の格好をしている場合はガウーショ)と呼ばれる男性ウエイターが串ご
と客席に運び、目の前で食べたい量を切り分けるという供し方が特徴。ウエイターが持って
くる串は肉類だけではなく、エビやパイナップル焼きバナナなどもある。
シュハスカリアの
中には食べ放題(Rodizio、ホジージオ)で供される店もあり、サラダバーなども併設してい
る(バイキング形式のようなものか?)。テーブルにはバナナやファリーニャ(キャッサバ
粉のフライ)、米飯、パンに加え「食べ残し用の皿」も置かれる。加えてひっきりなしにウ
エイターが様々な部位の肉を持ってきて聞いてくるので、大食漢でもない限りある程度自分
の腹具合と相談しながら食べることになる。
なお、ブラジルのシュハスカリアでは基本的に
時間制限はなく、昼に来て夕方に帰る客なども多い。またブラジルでは牛肉に関しては充実
しており、非常に贅沢という。したがって食べ損ねて冷たくなった肉も皿ごと取り替えてく
れ、Bem Passado(ベン・パッサード、英語で言うウェルダン)、Mal Passado(マウ・パッ
サード、レア)などの焼き加減や、脂身の多い少ないなど、肉の好みが人によって違うので
客はみなその希望を言えばその通りにしてくれるという。
 

 

ところで、南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置する世界最大級の熱帯性湿地のパンタナルが
ある。名前の由来は、ポルトガル語の「pantano」(沼地を意味する)である。水文学、地質
学、生態学の側面においてパンタナールは特異な性質を持ち、ブラジルのマットグロッソ州
とマットグロッソ・ド・スル州に所属し、一部がボリビアとパラグアイにまたがる。総面積
195,000平方キロメートル、そのうち1,878平方キロメートルが2000年に「パンタナル自然保
護地域」としてUNESCOの世界遺産に登録され、ラムサール条約の登録地である。雨季の間、
パンタナルの80%以上が水没し地球上で最も水量が多い平原と化す。この周辺で、ワニ肉が
養されワニのソーセージ料理が食べられているというニュースを見たことがあるが定かで
い。

  

今夜は、ブラジルワールドサッカー大会前と言うことで、ブラジルを知るために、まずは食べることか
らアプローチしてみた。

 

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託されたスカッシュ・ラケット

2014年06月01日 | デジタル革命渦論

 

 




【目がテン! 近頃のロボット技術】

町内の清掃ボランティア作業を終え、シャワーを浴びテレビを観ていると「所の目がテン」
と言う番組で、福島第一原発で活躍したという、砂利や瓦礫の上でも走行が可能で、テレメ
トリー
型ストリートビュー・ロボットが紹介されていた(所ジョージが、25の機能を備えた
アシスタントロボットの開発を計画している古
田貴之千葉工業大学・未来ロボット技術研究
センター長がゲスト出演し「世界唯一の性能を
持つロボットを開発に成功した」と紹介)。
所ジョージは「どんな所でも行けるのがすごいね」と話していた。下写真の最新型の災害対
応移動ロボットが登場。水陸両用で、階段を登る姿を披露。

 

それによれば、古田貴之センター長は「鉄腕アトムがきっかけだった」がこの仕事を選んだ
理由で「世の中に喜ばれるロボットを作りたい」と語った。発明事例として
「脚のついたイ
ス型ロボット」の原型を開発し、斜体の下に取り付けたセンサーで障害物を避けて進み、真
横に動くこともできる。歩道や街灯などにセンサーを設置し、自動で動ける計画も進んでい
る。なかでも、
車いすロボットがスタジオに登場し、俳優のユージが試乗し、コントローラ
ーを用いて軽々と操作してみせたほか、センサーが障害物を認識し、ぶつからない様に考え
て自動で移動する
未来の自動車ロボットは、脚のそれぞれが人工知能を持ち、環境に合わせ
動き回ることができ、車体の中にある頭脳のようなロボットで8本脚の動きをまとめ、昆虫
や動物のような動きができる(ギリシャ神話で出てくる人獣像のようなもの?)。古田貴之
所長は「環境にもやさしい」ことをアッピールし「人が乗れるサイズの乗り物も作っている」
と語っている(下図は最新ロボット開発のもとになった新規考案例)。クルージャパンは、
世界トップランナーであることはこの番組からも窺い知ることができるぞ!と感心した次第
(『復活 ジャパン・アズ・ナンバーワン』)。

 

 
特開2007-185761 歩行体                  特開2011-246123 車 

 

特開2011-059020 
三次元姿勢推定装置、三次元姿勢推定方法及び三次元姿勢推定プログラム

 

なお、千葉工業大学未来ロボット技術研究センターは、未来の社会・生活・文化を形成する
要素として不可欠なロボット技術-次世代を担うキーテクノロジーを研究開発するために必
要な人材が集まり、2003年6月にfuRoを設立。アスリートロボットとも言われる、高い運動性
能を持つ小型ヒューマノイド「morphシリーズ」、未来の乗用車のプロトタイプ「Hallucig-
enia01」とその後継機「HallucII」、操縦システム「Hull」「WINDロボットシステム」、可
搬重量世界最大級の大型二足歩行ロボット「core」などの研究開発を行ってきており、
従来
の概念を超えた未来機械を創造し、人類のための新たなライフスタイルを提案、実現するし
ている。巻頭の「
f-palette」(写真をクリック)は、fuRoが千葉工業大学未来ロボティクス
学科の1年生の授業「体験演習」のために開発したオリジナルキットだという。電子工作初
心者の方から研究レベルまで、幅広く使っていただける仕様になっているから、将来、ロボ
ット研究開発に従事したい方がコンタクトをとれば入手できるかもしれない。




●パワーコンディショナ 変換効率99パーセント時代
 
 
富士電機は、「エネルギー関連事業」の拡大に向け、コア技術であるパワー半導体、パワーエレクト
ロニクスを駆使し、メガソーラー発電における課題として、日射量の減少や温度上昇による電圧低下
と、それに伴う変換効率低下などの対策に、パワーコンディショナの昇圧回路搭載による電力損失を
解決したパワーコンディショナを販売開始。(1)昇圧回路にオールSiCモジュールを採用すること
で、スイッチング損失と導通損失を大幅に低減。業界最高のパワーコンディショナ変換効率
98.8%を実現し、従来機種:98.5%より0.3%↑。(2)さらに、
オールSiCモジュールを採
用することで回路を小型化(従来機種に比べて盤のサイズを20%縮小)。これにより収納盤
を分割することなく輸送でき、施工に係わるコストを削減できる。(3)また、
屋内型て業
界最大の出力容量1000kWを実現。大容量化により、中小容量のパワーコンディショナを複数
台設置する場合と比べて、トランスや空調などパワーコンディショナに必要な周辺機器の台
数を減らしコストを削減できるとのこと。



もっとも、耐久性、堅牢性などの劣化減衰データがないので、ここでは総合評価できないが、
後 1.2%で百%になるというから太陽光発電システムの一角は技術制圧できたことになり、
残りの最優先課題のモジュール変換効率25%超を達成すれば、原発フリー時代の扉を開放
できる(下図、新規考案をクリック)。
 
 


特開2014-086600 半導体装置、半導体装置の製造方法および半導体装置の制御方法


●急成長を続ける長寿命型発光ダイオード照明

 

オプテックス(滋賀県)は、中規模以上の駐車場向けLED照明発売。寿命は何と!5万時間
(連続点灯で5.7年、10時間/日として、13.7年)。中規模(駐車台数15台程度)以上の屋
外月極駐車場、時間貸駐車場、店舗駐車場などパーキング専用のLED照明で
、駐車場の規模
に応じて選べる2タイプあり、消費電力は6,000lmタイプが59W、11,000lmタイプが110W。
発光効率は100lm/W、LED寿命は5万時間。配光は汎用性の高い100°サークルを採用。販売
開始は6月4日。夜間の駐車場や道路などに設置されている「常夜灯」は、防犯や安全性の
確保に繋がると共に、駐車場管理者にはLEDによる維持管理費の削減や省エネ効果に貢献。
今回発売するLED照明は、スリムな外観で、設置もポール用、壁付用と取付環境によって対
応できるという。

  特開2012-174663 調光照明装置および調光照明システム

 




●植物工場の支援もクラウドサービスにお任せを!

日立製作所は、植物工場内の生育環境のデータや栽培設備の制御データを収集し、リアルタ
イムで見える化するとともに、生育環境や栽培設備を遠隔で制御する「植物工場生産支援ク
ラウドサービス」を開発、本日より提供開始する。
同サービスは、植物の生育環境を制御す
ることで、生産する植物の高品質化と生産性の向上を図り、生産管理や経営視点での意思決
定を支援するという。価格は標準構成で月額1万8,000円。この背景に、日本では、農業従事
者の減少、食料自給率の低下などが重要な社会的課題と認識されており、世界的には、急激
な人口増加や異常気象による不作などでの食糧危機が懸念されている。このような背景のも
と、野菜などの植物の計画的な生産を実現するため、施設内で植物の生育環境を適正に制御
する植物工場での生産が拡大しており、植物の生育状況や栽培設備の稼働状況を遠隔で監視
するなど、管理の効率化や、各種のデータ分析による生産の高度化などを実現するサービス
に応えるという


アゴニスト巡礼の明日』などで植物工場についてブログ掲載してきたけれど、これで本格
的な実用段階にある。日立製作所でも下図のこの管理制御システムの開発研究がなされてき
た。ここでもLED技術や情報通信技術といった"デジタル革命渦論"の応用展開が急テンポ
で伸長していることがうかがえるというわけだが、以前にも提案したが、消費者参加型"植
物工場"アプリの付加開発を願う。


特開2012-183021 植生制御装置、植物育成システム

 

 

  

  

渡会は、僕にエンディング・ノートの未使用の高価なスカッシュ・ラケットを託し、あっけなく―
それは決して他人に計り知れぬ深淵を抱え、そして、ブラック・ホールに飲み込まれるように―他
界してしまう。そして「彼は間違ったボートに繋がれていたのだ」と、奥歯を噛めうめくように死
の意味付けを-
すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わ
っているという命題に応えるかのように-
僕は腑に落とす。読み終えて、蕭々とした結末、宿命に
絞り出したかのような、しかし自然に一涙が頬を蔦って落ちた。蓋し名作。




 「普段は七十キロを超えていた人ですから、半分以下の体重になっていたのです。潮が引いた
 海岸の岩場のように、あばら骨が浮かび上がっていました。目を背けたくなるような姿でした。
 それは僕に昔記録映画で見た、ナチの強制収容所から救出されたばかりの、ユダヤ人の囚人の
 痩せ衰えた姿を思い出させました」
  強制収容所。そう、彼はある意味では正しい予見を持っていたのだ。自分とはいったいなに
 ものなのだろう、最近になってよくそう考えるんです

  青年は言った。「医学的に言えば、直接の死因は心不全です。心臓が血液を送り出す力を失
 ってしまったのです。でも僕に言わせれば、それは恋する心がもたらした死です。文字通りの
 恋煩いです。僕は何度も彼女に電話をかけ、事情を説明してお願いしました。まさに平身低頭
 して懇願したんです。一度でいいから、ほんの短い時間でもいいから、渡会さんに会いにきて
 いただけませんか。このままでは先生はとても生命がもたないでしょう。でも彼女はやってき
 ませんでした。もちろんその女性が目の前に姿を見せたら、先生が死なずにすんだとまでは思
 いません。先生は既に死ぬ覚悟を決めていました。でもひょっとしたら、そこで奇跡のような
 何かが起こったかもしれません。あるいは先生はもっと違う気持ちを抱いて死んでいけたかも
 しれません。それとも彼女の姿は先生をただ混乱させただけかもしれません。それは先生の心
 を余計に苦しめることになったかもしれません。そのへんはよくわかりません。正直言って、
 この件に関して僕にはよくわからないことばかりです。でもわかっていることがただひとつあ
 ります。それは恋するあまり食べ物が喉を通らなくなり、それで実際に命を落とした人なんて
 世間にはまずいないということです。そう思いませんか?」
 
  僕は同意した。たしかにそんな話は他に耳にしたことがない。そういう意味では渡会さんは
 きっと特別な人だったのだろう。僕がそう言うと、後藤青年は両手で韻を覆い、しばらくのあ
 いだ声を出さずに泣いた。彼は渡会医師のことが心から好きだったようだ。慰めてやりたかっ
 たが、実際に僕にできることは何もなかった。少しあとで彼は泣きやみ、ズボンのポケットか
 ら清潔な白いハンカチを出して涙を拭った。
 
 「申し訳ありません。つまらないところをお見せしました」
 
  誰かのために泣くのはつまらないことじゃないと僕は言った。とくに亡くなった大事な人の
 ためであれば。後藤青年は僕に礼を言った。「ありがとうございます。そう言っていただける
 と、少し救われます」




  彼はテーブルの下からスカッシュ・ラケットのケースを取って、僕に差し出した。ケースの
 中にはブラックナイトの新製品が入っていた。高級品だ。
 「これを渡会先生から預かりました。予約通販で注文されていたのですが、届いたときには先
 生にはもうスカッシュをするような気力はなくなっていました。谷村さんに差し上げてくれと
 頼まれました。先生は最期に近くなって、唐突に一時的に意識を取り戻されたみたいに、必要
 なことをいくつか私に言い残しました。このラケットのこともそのひとつです。もしよろしけ
 ればお使いになって下さい」

  僕は礼を言ってラケットを受け取った。そしてクリニックはどうなったのかと尋ねてみた。
 「とりあえず休業中ですが、早晩閉鎖するか、あるいは居抜きの形で売却することになると思
 います」と彼は言った。「もちろん事務の引き継ぎもありますし、僕もまだしばらくはお手伝
 いをさせていただくことになりますが、その後のことはまだ決めていません。僕にも少しばか
 り心の整理が必要です。今のところ、まともにものが考えられないような状態が続いています」
  その青年がショックから立ち直り、これからの人生をうまく生きていくことを僕は願った。
 
  別れ際に彼は言った。
 
 「谷村さん、厚かましいようですが、ひとつ僕からお願いがあります。どうか渡会先生のこと
 をいつまでも覚えていてあげて下さい。先生はどこまでも純粋な心を持った方でした。そして
 僕は思うのですが、僕らが死んだ人に対してできることといえば、少しでも長くその人のこと
 を記憶しておくくらいです。でもそれは□で言うほど簡単ではありません。誰にでもお願いで
 きることではありません」

  そのとおりだと僕は言った。死んだ誰かのことを長く記憶しているのは、人が思うほど容易
 いことではない。できるだけ彼のことを思い出すように努める。僕はそう約束した。渡会医師
 の心が実際にどこまでも純粋であったのかどうか、それは僕には判断しかねるところだが、彼
 がある意味、普通ではない人物であったのは確かなことだし、記憶しておくだけの意味はある
 だろう。そして我々は握手をして別れた。
  そのようなわけで、言うなれば渡会医師のことを忘れないために、僕はこの文章を書いてい
 る。僕にとっては文章にして残しておくことが、何かを忘れないための最も有効な手段だから
 だ。関係者に迷惑をかけないために、名前や場所は少しずつ変えてあるが、出来事自体はほぼ 
 そのとおり、実際にあったことだ。後藤青年がどこかでこの文章を読んでくれればと思う。
 
  渡会医師に関して、もうひとつよく覚えていることがある。どのような流れでそんな話にな
 ったのか、今となっては思い出せないのだが、あるとき彼は僕に向かって女性全般についてひ
 とつの見解を□にした。
  すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている
 というのが渡会の個人的意見だった。どんな嘘をどこでどのようにつくか、それは人によって
 少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なことで嘘
 をつく。大事でないことでももちろん嘘はつくけれど、それはそれとして、いちばん大事なと
 ころで嘘をつくことをためらわない。そしてそのときほとんどの女性は顔色ひとつ、声音ひと
 つ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっている
 ことだからだ。だからこそ嘘をつくことによって、彼女たちの美しい良心が痛んだり、彼女た
 ちの安らかな眠りが損なわれたりするようなことは-特殊な例外を別にすれば―――まず起こ
 らない。
  彼にしては珍しくきっぱりした口調だったので、そのときのことはよく記憶している。僕も
 渡会氏のその意見には、基本的に賛同せざるを得ないわけだが、そこに含まれた具体的なニユ
 アンスはいくぶん違っているかもしれない。たぶん僕と彼はそれぞれ異なった、個別的なと登
 攀ルートを辿って、あまり心楽しくもない同じ山頂にたどり着いたということになるのだろう。

  彼は死を前にして、自分のその見解が間違っていなかったことを、おそらくは歓びもなく確
 認していたに違いない。言うまでもないことだが、僕は渡会医師をとても気の毒に思う。彼の
 死を心から悼む。食を断ち、飢餓に苛まれて死んでいくのはずいぶん覚悟のいったことだろう。
 肉体的にも精神的にも、その苦しみは察するに余りある。しかし同時に、自らの存在をゼロに
 近づけてしまいたいと望むほど深く一人の女性を――それがどんな女性であったかはさておき
 ――彼が愛せたということを僕はある意味、羨ましく思わなくもない。もしそうしようと思え
 ば、彼はこれまでどおりの技巧的な人生を継続し、まっとうすることだってできたのだ。同時
 に何人もの女性たちと気軽に交際し、芳醇なピノ・ノワールのグラスを傾け、居間のグランド・
 ピアノで『マイ・ウェイ』を弾き、都会の片隅で心地良い情事を楽しみ続けることもできたの
 だ。にもかかわらず彼は食べ物も喉を通らなくなるほど痛切な恋に落ち、まったく新しい
 世界に足を踏み入れ、今まで見たこともない光景を目にし、その結果自らを死に向けて追い立
 てることになった。後藤青年の言葉を借りるなら、無に近接させていくことになった。どちら
 の人生が彼にとって真の意味で幸福だったのか、あるいは本物であったのか、僕には判断でき
 ない,その年の九月から十一月にかけて渡会医師の辿った運命は、後藤青年にとってそうであ
 るのと同じように、僕にとってもやはりわからないことだらけなのだ。



MY WAY - PIANO-Version by Gundolf-G Quast, Germany 
 

  僕はまだスカッシュを続けているが、渡会が亡くなったあと、引っ越しをしたせいもあって 
 ジムを変えた。新しいジムではだいたい専属のパートナーを相手にすることにしている。料金
 はかかるが、その方が気楽といえば気楽だ。渡会医師からもらったラケットはほとんど使って
 いない。僕には少し軽すぎるという理由もある。そしてその軽さを手に感じると、どうしても 
 痩せ衰えた彼の身体を思い浮かべてしまうことになる。

  彼女の心が動けば、私の心もそれにつれて引っ張られます。ワープで繋がった二艘のボート
 
のように。綱を切ろうと思っても、それを切れるだけの刃物がどこにもないのです

  彼は間違ったボートに繋がれていたのだと、我々はあとになって思う。しかしそんなに簡単

 に言い切ってしまえることだろうか? 思うのだが、その女性が(おそらくは)独立した器官
 を用いて嘘をついていたのと同じように、もちろん意味あいはいくぶん違うにせよ、渡会医師
 もまた独立した器官を用いて恋をしていたのだ。それは本人の意思ではどうすることもできな
 い他律的な作用だった。あとになって第三者が彼らのおこないをしたり顔であげつらい、哀し
 げに首を振るのは容易い。しかし僕らの人生を高みに押し上げ、谷底に突き落とし、心を戸惑
 わせ、美しい幻を見せ、時には死にまで追い込んでいくそのような器官の介入がなければ、僕
 らの人生はきっとずいぶん素っ気ないものになることだろう。あるいは単なる技巧の羅列に終
 
わってしまうことだろう。

  自ら選んだ死の間際に渡会が何を考え、思いなしていたのか、もちろん知るすべもない。し
 かしその深い苦悩と苦痛の中にあっても、たとえ一時的にではあるにせよ、僕に未使用のスカ

 ッシユ・ラケットを遺すことを伝えるだけの意識は戻せたようだ。あるいは彼は何かしらのメ
 ッセージをそれに託したのかもしれない。自分がなにものであるか、末期近くになって彼には
 答えらしきものが見えてきたのかもしれない。そして渡会医師はそのことを僕に伝えたかった
 のかもしれない。そういう気もする。

                   村上春樹 著『独立器官』(文藝春秋 2014年 3月号)

                                     この項了



 

 

 

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