灰野敬二 生誕記念公演 ~不失者
不失者 灰野敬二 / 亀川千代 / Ryosuke Kiyasu
記憶にある限りでは、国内での不失者公演は2013年11月21日六本木SuperDeluxe以来。昨年10月17日に同じくSuperDeluxeで開催されたRed Bull Music Academyのイベントに不失者名義で出演したが、主催者の要望でそう名乗っただけで、別メンバーのセッションユニットだった。1年半ぶりの不失者ワンマンライヴが5月3日灰野の誕生日に開催された。毎年恒例の灰野生誕記念公演にバンドとしての不失者が出演するのは初めて。
(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
立見も出て盛況の会場には、例年に比べ女性客が多い印象を受けた。ボッチ客が大半を占め、静寂に包まれることの多い客席だが、グループ客の会話もそこここで聴こえ、ちょっとした解放感が漂う。トレードマークのお香に代わって、この日はアロマオイルを焚いており、いつもの濃厚な異世界感も薄い気がした。しかし開演時間15分押しで揃いのロングヘアーの三人がステージに登場すると、これから始まる秘技に備えて会場の空気がピーンと張るのを肌で感じた。
乱数に従って強弱をつけるような不定形のドラムと重低音ベースの呟きが並走する。ギターの弦をスライドバーが滑り、非メロのリフが吐き出される。三者はそれぞれの世界に閉じこもるかのように、絡み合わない交歓が続く。それぞれ譜面を覗き込み、時折灰野が身振りで指示を出す様子を見て、これが気分任せの即興ではなく、細かく譜面に描かれたコンポジションであることを思い知る。余りに禁欲的な自己コントロールには余分な熱がない。
冒頭の曲で「意味を持つことが出来ない深さへ導いてあげる」と歌われた通り、演奏が進むにつれてバンドと観客が共に際限のない深みに降りてゆく。息をするのも躊躇われる冷徹さを突き破ったのは、へヴィロックビートの「暗号」の精神解放エナジーだった。短い休憩を挟み、今度は天上へ導くヘヴンリーな30分超の「ここ」に酩酊。再び禁欲の世界に回帰して、アンコールを切り裂くハードコア演奏で終了。のべ3時間半に亘る魂の旅路だった。
明らかに1年半前とは桁違いの鍛錬ぶりを見せつけたワンマン公演を体験して、改めて感じたのは「THIS IS DIFFERENT」ということ。他の何者とも違う唯一無二のロック。「違う」ということは大きな武器でありパワーでもあるが、それを貫き通すためには透徹した意志の力が必要であろう。この三人はすでに「違い」の深みの底に辿り着いたのだろうか?
失われざる者よ
私を深みに
連れてって
<灰野敬二 LIVE SCHEDULE>
5月6日(水)新宿NINE SPICES 21:15~22:00
JAM FES2015
5月16日(土)Helsingor, Denmark
Click Festival
5月21日 (木) 六本木SuperDeluxe
マハンニャワ 2 DAYS:インプロ!!!!!~センヤワ with 内橋和久 と セッション仲間
出演:マハンニャワ(センヤワ with 内橋和久)/灰野敬二/山川冬樹/大野由美子/吉田達也/小山田圭吾
5月22日(金)高円寺 Mission's
Koenji Mission's 8th Anniversary!!【ROCK】
ACT灰野敬二/鳥を見た/ゴイゾン/Lakka and more..!
5月29日 (金) 六本木Super Deluxe
灰野+石橋 / 勝井+ユザーン two drums & two flutes
出演:灰野敬二 + 石橋英子 two drums & two flutes duo/勝井祐二 + ユザーン violin & tabla duo
<灰野敬二 -experimental mixture- TOUR2015>
※企画・制作お還りなさい
7月3日(金)高松 SOUND SPACE RIZIN'
Opening Act / ピクニック・ディスコ、and more
7月4日(土)岡山 GYPSY ROSE
Support DJ / ichirota
Opening Act / -△misumi-
7月5日(日)和歌山 Bar No.11
DJ / FUYURI、ICR、KATAGIRI
Live / the birth for nil
7月6日(月)京都 Urbanguild
Live / 和田晋侍、数えきれない、もぐらが一周するまで
Time Painting / 仙石彬人
8月21日(金)代官山 晴れたら空に豆まいて
-特別企画- 勅使川原三郎×灰野敬二×MERZBOW
出演■勅使川原三郎・灰野敬二・MERZBOW