『PUNCH LINE』『Show By Rock』と並ぶ今期話題のアニメ『響け!ユーフォニアム』は高校の吹奏楽部を舞台にした青春音楽アニメ。3年生の吹奏楽部部長・小笠原晴香の担当楽器はバリトンサックス、通称バリサク。部員をまとめる重責に加えでかくて重いバリサクを黙々と吹くツインテ部長の健気さに惚れてしまう。
「響け!ユーフォニアム2」晴香ソロバリサックス
⇒アニメ『輝け!ユーフォニアム』公式サイト
筆者も高校時代のブラスバンド部でバリトンサックスを担当していた(上記写真参照)。高校所有のCONN製バリサクは、ヴィンテージというよりオンボロで、鉛色にくすんだ凸凹なボディは、どう見ても配管そのものだった。学園祭用にはピカピカのYAMAHAをレンタルしたので、晴れの舞台で吹くことはなかったボロボロバリサクのことを思い出すと、愛惜しい気持ちが溢れ出す。
⇒バリトンサックス推進協議会
ただでさえ高くて重いのに、ブラバンでは影の存在に身を窶すバリサクを、堂々掲げて誇らしく吹き鳴らす勇者の王国『バリサク共和国(リパブリック)』の激烈ミュージシャン六人衆をご紹介。
●ジェリー・マリガン Gerry Mulligan (1927.4.6 - 1996.1.20)
バリサクといえばジェリー・マリガン。クール・ジャズ、ウェストコースト・ジャズの代表格で、モダンジャズの父のひとり。高2でジャズに目覚めた筆者が最初に買ったLPはご他聞に漏れず『ジェリー・マリガン・カルテット』だった。ソロパートをギターでコピーし楽譜に起こし、ブラバンの練習中に吹いていたら、先輩が「どうしたの?カッコいい!」と驚いていた。
●サヒブ・シハブ Sahib Shihab (1925.6.23 – 1989.10.24)
ジェリー・マリガンより2歳年上。本名エドマンド・グレゴリー、イスラム教に改宗してサヒブ・シハブを名乗る。ヨーロッパに滞在し、現地のミュージシャンとの共演作も多い。熱いハードバップ魂をバリサクの黒い低音で吹き捲くるスタイルは近年レアグルーヴ系でも再評価される。
●パット・パトリック Pat Patrick (1929.11.23 - 1991.12.31)
マーシャル・アレン、ジョン・ギルモアと並ぶサン・ラ・アーケストラのサックス隊の顔がバリサク担当パット・パトリック。サン・ラの個人レーベルEl Saturnからリリースしたパット・パトリック・アンド・ザ・バリトン・サキソフォン・レティニュー名義のリーダー作が日本独自CDリリースされた。ニューオリンズ/モード/バップ/スピリチュアルのアマルガムはまさにサン・ラ直系のコスモポリタニズム。
●ハミット・ブルーイット Hamit Bluiett イリノイ州ブルックリン生まれ (1940.9.16 - )
本気でフリージャズにハマった浪人時代にオリヴァー・レイクやレスター・ボウイ、チャールズ・ボボ・ショーなど所謂ロフトジャズと出会った。そこで知ったのがバリサク奏者のハミット・ブルーイット。「ロフトジャズ」という名称は四畳半フォークや地下アイドルと同様、差別的で誤解を与えるレッテルとして特にミュージシャンに嫌われるが、敢て傾向を総称すれば「ブルース感覚溢れる黒い即興音楽」と呼びたい。ブッとい低音から超音波フリークトーンまでブチ切れるブルーイットの本質もブルースに他ならない。
●マッツ・グスタフソン Mats Gustafsson (1964.10.24 - )
北欧スウェーデンから登場し、現代即興/前衛音楽を代表するリード奏者マッツ・グスタフソン。ポール・ニルセンラヴとのザ・シング、ソニック・ユースやジム・オルークなど前衛ロック、メルツバウやラッセ・マーハーグなどノイズ系、大友良英や坂田明など日本のミュージシャン、とマルチな共演スタイルで活躍する。リード楽器もマルチにこなす才人だが、最も印象的なのは肉体美を誇示するようなバリサクの豪快なプレイ。
●吉田隆一(1971 - )
中学の吹奏楽部でバリサク担当して以来、バリサクをメインに裏ジャズ街道("裏街道"ではない。念のため)を歩む異端のミュージシャン。ソロに加え"SF+フリージャズ”トリオ『blacksheep』(吉田隆一bs,後藤篤tb,スガダイローpf)や新垣隆との共演でも注目を集める。雑誌やミニコミ誌等に論考やレビューを発表するほどアニメ、SFに造詣が深い。
バリサクは
バリバリ吹いて
サクッと爽快
●でんぱ組.inc『バリ3共和国』