巻上公一&ロジャー・ターナー
六本木ストライプスペース
開場19:00 / 開演19:30
予約2500円 / 当日3000円
英国の前衛ドラマー、パーカッショニスト、ロジャー・ターナーが10/7〜11/2日本ツアーを敢行している。27日間で18公演は、15日間14公演のクリス・ピッツィオコスには負けるが、相当ヘヴィなスケジュールに違いない。各地でくせ者ミュージシャン/ダンサーと共演するスタイルは、ドラムを叩く渡り鳥と呼んでみたい。近年毎年のように来日しているが、何故か筆者は観たことがなかった。今年こそはと思っていたが、どれも魅力的な共演者に目移りして迷っていたところ、二日前に観たヒカシューの巻上公一が共演することを知り、六本木の芋洗坂のストライプハウスギャラリーを訪れた。
⇒ロジャー・ターナー公式サイト
ギャラリーは上階にあるが、ライヴスペースは地下の何も無いホールで行われた。パイプ椅子を十数脚並べた客席の右手にターナーのドラムが置いてあるだけのシンプルなステージは、アンプやPAのない完全アコースティックライヴ。右手の小振りなドラムセットにターナーが座り、左の何も無いフロアに巻上が立つ。ターナーはスネアやタムの上にシンバルや金物類を乗せて擦ったり、細かいロールを鳴らし続けたり、シンバルを引っ掻いたり、メタルパーカッションとチンドン屋の鳴り物をあわせたようなプレイに顔もあげず黙々と専念する。その横で巻上が、ヴォイス、尺八、鳩笛、貝笛、玩具、トレーシングペーパー、その他ありとあらゆる物体を忙しそうに取っ替え引っ替え演奏する。コロコロ変わる巻上の表情を観ているだけでも可笑しいが、ターナーの真剣な表情との対比に、実験/前衛/即興音楽の包容力の大きさが証明されている気がする。
圧巻は、巻上がこの日唯一の電子機器(プリセット音源とサンプラー付きのシェイカー風玩具)を両手に持って激しくシェイクさせながら、会場の中を歩き回って奇声を上げたパートであった。ターナーが大音量のドラミングで呼応する空間は、アマゾンの密林で叫び声で呼びあう野生動物の本能が剥き出しになった野蛮ギャルドな熱情の嵐が渦巻いた。1時間強の演奏が終わったあと、強面のターナーの表情が一転して和やかになり、巻上や観客と冗談混じりに交歓する光景に、この日の演奏の充実感が漲っていた。
無手勝流
即興交歓
満足感
Roger Turner solo @ Inage Candy (2013)