A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

クリヨウジ/灰野敬二/齋藤久師/宇川直宏etc.「チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」vol.2@六本木SuperDeluxe 2018.6.29(fri)

2018年07月04日 00時16分04秒 | 灰野敬二さんのこと


GEORAMA2017-18 presents
「チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」vol.2
【DAY1】YOJI KURI's 90th Birthday Experimental Animation Show!!


6/29(金)19時開場/19時半開演
トーク出演者:クリヨウジ、飯村隆彦、宇川直宏、土居伸彰
​ライブ:灰野敬二、齋藤久師
公式サイト



日常生活の中で、突然訳が分からない謎に満ちた過去の体験が映像や音楽をきっかけにフラッシュバックすることがある。子供の頃の夢か現実か定かでない遠い記憶の中にある混沌としたイメージは、アヴァンギャルドとアンダーグラウンドがポップカルチャーやハイアートと表裏一体だった時代の自由な風が心に残した波紋かもしれない。久里洋二の名前は知らなくてもハットを冠ったデカ鼻のキャラクターの支離滅裂なアニメーションは記憶に残っている。子供番組ではなく、小学生の頃親の目を盗んでドキドキしながらチラ見した深夜の大人向けバラエティで観たのだろう。見てはいけない秘密を覗く快感とともに脳裏に刻まれた禁断の映像。そんな薄れかけた記憶の残滓が、連綿と続く地下文化の潮流の中で突然息を吹き返す奇跡こそ、40年以上昔の自分が蘇生する超常体験であり僥倖である。

会場は音楽よりも映画/映像に興味を持つ2〜30代のアート系の客層中心に思えた。最初のパートは初期のアニメーション作品の上映会。斬新な手法による実験映像も然ることながら、付帯する音楽の面白さに耳を奪われる。60年代日本のアートシーンが如何に前衛的で実験的だったか、そして古い世代への決別を表明することが何よりもカッコいいとされていた時代への憧憬。前衛音楽のプロモーションビデオとも言える作品に、当時を知らない世代が惹かれるのは、技術的な障壁にめげず情熱とアイデアを武器に新たな領域を切り開いた先人へのリスペクトの証である。

●灰野敬二「切手の幻想」「二匹のサンマ(カラー版)」


「切手の幻想」にハーディガーディでサウンドトラックを作る。僅か6分に凝縮されたプレイは、長時間演奏の酩酊感が醍醐味だと思っていたハーディガーディの未知の可能性を露にした。「二匹のサンマ(カラー版)」はオリジナルで使われた佐良直美の「世界は二人のために」を元に灰野流の哀感と秘伝の謡を疲労。アニメーションのポップ感と灰野のダークネスが融合した異世界の映像表現を産み出した。

クリヨウジ、映画作家の飯村隆彦、Dommune主宰の宇川直宏、GEORAMA主宰の土居伸彰による「クリヨウジと実験と音楽」をテーマにしたトークに続いて上演された『1秒間24コマ』(飯村隆彦監督)は、トニー・コンラッドの『Flicker』を彷彿させる目眩させるマジカルな異端映像であった。さらにクリヨウジのエクスペリメンタルな面を開示するアニメーションが上映され会場の異世界感のレベルが上がった。

●齋藤久師「VANISH」「寄生虫の一夜」


70年代初頭に日本ではじめてのモーグシンセサイザーを手に入れた冨田勲が音楽を作ったクリヨウジのアニメーションに、冨田の孫弟子にあたる齋藤がモジュールシンセで新たな電子音楽サウンドトラックを創造。宇川直宏が言う通り、日本のアニメーションとシンセカルチャーのの歴史的アップデートと言えよう。特に「寄生虫の一夜」のブラックユーモア溢れるストーリーが奇怪な電子音で増幅される有様をリアルタイムで体験するのは魂のメタモルフォーゼであった。

アニメーション
日本カルチャー
進化論

日本のアンダーグラウンドカルチャーを掘り起こしアップデートする奇跡のイベントであった。

The Midnight Parasites (1972, 9 min) Directed by Yoji Kuri.mp4


久里洋二作品集


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