A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【灰野敬二ライヴ情報】3月2日(火) 渋谷・公園通りクラシックス『事 ある 事』 ギター  と  ギター ~ 灰野敬二、内橋和久

2021年02月11日 22時58分20秒 | 灰野敬二さんのこと


2021年3月2日(火)  東京 渋谷 公園通りクラシックス
『事 ある 事』
ギター と ギター ~ 灰野敬二、内橋和久

19:00 open / 19:30 start
前売り 3,000円 当日 3,500円 1ドリンク別

灰野敬二 (guitar)
内橋和久 (guitar)

予約受付中!
公園通りクラシックス  03-6310-8871
http://koendoriclassics.com/

[Profile]
灰野敬二 Keiji Haino


1952年5月3日千葉県生まれ。アントナン・アルトーに触発され演劇を志すが、ザ・ドアーズに遭遇し音楽に転向。ブラインド・レモン・ジェファーソンをはじめとする初期ブルースのほか、ヨーロッパ中世音楽から内外の歌謡曲まで幅広い音楽を検証し吸収。1970年、エドガー・アラン・ポーの詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始、ギター、パーカッションを独習する。1978年にロックバンド「不失者」を結成。1983年から87年にかけて療養のため活動休止。1988年に復帰して以来、ソロのほか不失者、滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリン、静寂、なぞらない、The Hardy Rocksなどのグループ、experimental mixture名義でのDJ、他ジャンルとのコラボレーションなど多様な形態で国際的に活動を展開。ギター、パーカッション、ハーディ・ガーディ、各種管弦楽器、各地の民間楽器、DJ機器などの性能を独自の演奏技術で極限まで引き出しパフォーマンスを行なう。200点を超える音源を発表し、確認されただけでも1,800回以上のライブ・パフォーマンスを行なっている。
http://www.fushitsusha.com/

CTM 2021: »Authority is Alive« by Keiji Haino & The Observatory



内橋和久 Kazuhisa Uchihashi


イノセントレコード主宰。即興トリオ、アルタードステイツ主宰。1983年頃から即興を中心とした音楽に取り組み始め、国内外の様々な音楽家と共演。映画やダンス、演劇などの音楽も手掛け、音楽家同士の交流、切磋琢磨を促す[場]を積極的に作り出し、即興ワークショップ、フェスティヴァル・ビヨンド・イノセンスを開催。
近年はこれらの活動と併行して歌に取り組む。即興音楽家とポップミュージシャンの交流の必要性を説く。
NPOビヨンドイノセンスを立ち上げ、大阪でオルタナティヴ・スペースBRIDGEを運営したことでも知られる。ベルリン在住
http://www.innocentrecord.com/

PEG LIVE #004 即興と作曲の間 内橋和久 2019/02/10


ギタリスト
ギターが二本
事 と 事

●ロスト・アラーフ
インタビュー公開中
ロスト・アラーフは〈本物〉を探求していた――髙橋廣行が語る激闘の70~74年
灰野敬二、ロスト・アラーフを語る「三里塚で石を投げられたことがオレの宝」

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『ルース・ワイス / 我らは宇宙の火花であり、我ら自身の炎となる』~伝説のビート詩人とウェストコースト・アンダーグラウンド・ジャズの邂逅。

2021年02月11日 01時37分49秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


ruth weiss / we are sparks in the universe to our own fire

Text by 剛田武 Takeshi Goda
DL/CD : Edgetone EDT4217

Set 1
ruth weiss – poetry
doug lynner – serge synthesizer (the mystery serge)
hal davis – wooden log

Set 2
ruth weiss – poetry
rent romus – alto, soprano saxophones, flutes
doug o’connor – double bass
hal davis – wooden log

1. 90 – set one
2. BYPASS LINZ – set one
3. silly city – set one
4. 18th DAY – set one
5. re: ELECTION — fact or fiction – set one
6. 2018 THE CIRCUS IS IN TOWN – set one
7. looming above its neighbors – set one
8. FORTY – FIRST DAY THE RETURN – set one
9. CHI CHI CHI – set one
10. 90 – set two
11. BYPASS LINZ – set two
12. silly city – set two
13. 18th DAY – set two
14. re: ELECTION — fact or fiction – set two
15. 2018 THE CIRCUS IS IN TOWN – set two
16. looming above its neighbors – set two
17. FORTY – FIRST DAY THE RETURN – set two
18. CHI CHI CHI – set two

executive producer rent romus;
all poems by ruth weiss, music tracks 1-9 by doug lynner, 10-18 by rent romus, doug o’conner, hall davis
recorded by michael zelner november 18, 2018 at simm series outsound presents outsound.org musicians union hall local 6 san francisco
mixed/mastered by john finkbeiner at new, improved recording

‘ruth weiss the beat goddess’ www.ruthweissfilm.com

Bandcamp
Edgetone Records Official Site

ビート・ジェネレーションの女神と辺境インプロヴァイザーの出会いが生んだ自由なジャズ・ポエトリー

ジャズとポエトリー・リーディングの組み合わせによるコンサートやレコーディングは現在でもしばしば行われている。両者のコラボレーションがポピュラーになったのは50年代半ばのアメリカのビート・ジェネレーションの影響だと言われる。そんなオリジネーターの一人が1928年6月24日生まれのビート詩人、ルース・ワイス(小文字でruth weissと綴る)である。1949年にシカゴのアーティスト・コミュニティ・ハウスに住んで詩作に励んでいたワイスは、ある日友人の誘いで階下で行われていたジャズ・セッションに参加することになり、実験的にポエトリーとジャズのコラボレーションを始めた。1952年にサンフランシスコへ移り、ストリート・ミュージシャンと共演したり、毎週水曜日にザ・セラーというクラブでジャズとポエトリーのジャム・セッションを開催するなどして、ジャック・ケルアックやニール・キャサディ等と共にサンフランシスコのビート・カルチャーの中心的存在となる。それ以来21世紀に至るまで、詩作だけでなく脚本家、パフォーマー、アーティストとしてウェストコーストのアート・シーンで活動を続けてきた。トレードマークの鮮やかな髪は1948年の反戦映画『緑色の髪の少年 (The Boy with Green Hair)』へのトリビュートだという。彼女のユニークな生涯は2020年にドキュメンタリー映画『ruth weiss, the beat goddess』として公開されている。

ruth weiss, the beat goddess Documentary Official Trailer


レント・ロムスは2013年に開催されたアーサー・ブライス・ベネフィット・コンサートでジョージ・ラッセルの紹介で初めてルース・ワイスに会った。彼女がビート・ジェネレーションの創始者の一人であり、アンダーグラウンド・カルチャーのイノベーターであることを知り、2014年にサンフランシスコでワイスとエレクトロニクス奏者ダグ・リナーの共演コンサートを企画した。2015年にワイスの誘いでロムスも彼女のレギュラー・カルテットに参加して、2020年3月までステージを共にすることになった。即興音楽の現在進行形を追求するだけでなく、自分のルーツであるフィンランドの血や、アメリカ各地の地下・辺境文化の歴史に敬意を払うレント・ロムスと、アメリカのアンダーグラウンド社会で生きる非遵法者の若者たちを総称するビート世代のオリジネーター、ルース・ワイスの出会いは必然だったと言えるだろう。

本作は2018年11月18日にサンフランシスコでロムスが企画したOutsound presents SIMMシリーズにおけるライヴ・レコーディングである。英語が母国語ではない日本人にとっては、英語のポエトリー・リーディングはハードルが高いと思われるかもしれないが、音楽が伴うと表情が格段に豊かになり、例えばラップと同様にひとつの音楽表現として自然に楽しめる。また、ワイスのポエトリーは中学生でもわかりそうな平易な単語・表現が多く、明朗で訛りのない語り口のおかげもあって、英語の歌に馴染んだリスナーなら多少は聞きとれると思う。だから詩全体の意味が分からなくてもイメージを広げることができる。CDのカバーカードにワイスがお気に入りのタイプライター(ジャケット写真参照)で綴った詩の原文が掲載されているので、読みながら聴くのもいいかもしれない。ワイスの詩には、既存の価値に異を唱えるビート精神が息づいている。拙い訳ではあるが、例えばこんな感じである:

re: ELECTION — fact or fiction
dump trump
his platform rotting wood
his band plays on
while the timbers crash

選挙について—事実か虚構か
捨て台詞*を吐く
朽木の演壇で
彼のバンドが演奏する
倒木の随(まにま)に

*trump:”切り札”と前大統領名をかけている

ワイスの提案で、コンサートは、同じ詩をふたつの異なる編成で披露する2部構成のプログラムとなった。“シンセサイザーマン”の異名を取るダグ・リナーのエレクトロニクスと、ハル・デイヴィスのくり抜いた丸太のパーカッションが荒涼とした音風景を描く前半(set one)は、時代を一人で生き抜いてきたワイスの心の中の孤独を強く感じさせる。レント・ロムスのサックス、ダグ・オコーナーのウッド・ベース、そしてハル・デイヴィスのパーカッションがレトロな味わいの即興ジャズを奏でる後半(set two)は、50年代にサンフランシスコのコーヒーショップで繰り広げられたビート詩人とジャズメンのジャム・セッションを彷彿とさせ、仲間と共に自由な表現を追求しながら90年の人生を歩んできたワイスの歓びに満ちている。1938年のヨーロッパ旅行の話から2018年アメリカ合衆国中間選挙まで、伝説のビート詩人ルース・ワイスの遍歴と思想を綴ったポエトリーが、ロムスたちのインプロヴィゼーションと見事に絡み合い、二つの異なる視点からアメリカのカウンターカルチャーの歴史を俯瞰する壮大なオーラル・ストーリーが描かれている。

ワイスは2019年に脳卒中を患ったが、2020年3月、コロナ禍でカリフォルニアがロックダウンされる直前に開催されたシネクエスト映画祭授賞式に出演できるまで回復した。しかし92歳の誕生日の1か月後の2020年7月末に再度脳卒中の発作に襲われて帰らぬ人となってしまった。このアルバムのタイトルは、ワイスが91歳の誕生日に書いた最後の詩の最後の行から取ったという。ワイスが本作の完成を見るまで生きられなかったことは残念だが、彼女のスピリットは燃える炎となって音楽の中に生き続けている。(2021年2月4日記)
初出:JazzTokyo #274

ビート世代
辺境ジャズの
生みの親

ruth weiss, Doug Lynner and Hal Davis at the 13th Annual Outsound New Music Summit
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