浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

広河隆一『福島 原発と人々』(岩波新書)

2011-08-31 14:30:52 | 日記
 福島がいったいどうなっているのか、大手メディアはほとんど報じない。あるいは事故を起こした原発の状態はどうなのか。

 今私たちは、インターネットで情報を集めるしかないような状態にある。大手メディアだけに接している人々にとって、フクシマの原発事故はもう収束し、放射能汚染も心配がないような認識なのではないか。実際原発事故の話、放射能汚染の話は、あまり出てこないようだ。


 だが、事故は全く収束していない。放射能は出続けている。フクシマを中心に放射線の線量は消えていない。汚染された食品はいまだ流通している。

 さてフォト・ジャーナリスト広河氏が、事故後福島へ行って取材したことが書かれている。構成は以下の通り。

 第一章 地震、そして事故発生
 第二章 原発作業員は何を見たか
 第三章 避難した人びと
 第四章 事故の隠蔽とメディア
 第五章 広がる放射能被害
 第六章 子どもと学校
 第七章 チェルノブイリから何を学ぶか
 第八章 これからのこと

 インターネットでは報告されている事実もあるが、全体としてマスメディアが報道していないことが多く、とても参考になる。とくに第四章はしっかりと読むべきである。この事故に関する政府、東電、マスメディアなどの隠蔽については詳細に検証しなければならないと思うが、その一部が端的に示されていて怒りが湧いてくる。

 また第七章のチェルノブイリの事例は、参照すべき事例としてきわめて重大である。「世界中の国は、放射能の事故が起こった時には、まず妊婦と子どもを避難させようとする。その当たり前のことが日本では行われなかった」、「チェルノブイリ事故から日本が学んだものは、秘密主義だけではないか」・・という指摘が重い。


 又第八章の「放射能から身を守るということ」に記されていることは事実であるが、事故の状況、放射能汚染のことなどについて、日本では自分自身の手によって情報収集したりしなければならないということ、政府も自治体もマスメディアも信用できないという日本の現実には寒気がする。

 いずれにしても、この本は読んでおくべきものである。





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