浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「私たちは資本主義の奴隷になるべきではない」

2014-04-02 08:09:21 | 読書
 『現代思想』4月号は、現在の若者が置かれている困難な状況が記されている。久しぶりに、特集の論文その他をすべて読み終えた。その過程で誤植が多いことが判明したが、それは置いておこう。

 山口恵子の「「東京」に出ざるをえない若者たち」は、青森県の青年たちの労働と生活を記したものだ。一度も正社員にならず、職場を転々とする。「労働力流動化政策」により翻弄される若者たち。ハードな仕事、低賃金、放置される労災、「細切れ雇用」・・・・しかしそういう状況であっても、彼らの故郷や実家は、その困難を和らげてくれる。だが、親はなくなり、世代が変わり、実家が永続的にその支えとなるわけがない。実家が支えるという「日本型福祉」は、もうもたなくなっている。

 山口は、末尾に近いところでこう記す。

都市近郊部の労働者の外側に、より不利な条件で地方から(および海外から)の労働者が動員される。周縁化された労働者であればあるほど、政策や景気の変動がダイレクトに転嫁され、労働と生活の不安定化が加速していく。構造的な地域間格差のなかでの使い勝手のよい労働力のプール地としての周辺、という位置づけは再生産される続けているようにみえる。
 
 そして「私たちは資本主義の奴隷になるべきではない」が、文の末尾に記される。

 中西新太郎の「グローバル競争時代の能力論・人材養成論と内面統治の国家主義」も、若者たちの内面まで統治しようとする暴力的なあり方が示される。

 たとえば相互抑圧的な、個人個人の「共感動員」が強制される、「感動」の強制的共感。それを表現しているかどうかにより審判されるという現実。

 出口はあるのか、と叫び出したくなるほどだ。

 大串潤児の「歴史教科書問題考察の原点」は、もう一度家永教科書裁判の再検証を行うことを要請している。実はボクは、家永裁判の訴訟関係の本が、書棚に並んでいるのだ。歴史教育が、戦前並みに国民教化の手段とされようとしているとき、戦後の知的営為により獲得されてきた、ボクたちの地歩を確認するためにも。

 矢野眞和「教育家族の逆接」は、日本人の意識状態が示される。私立大学はとてもカネがかかる、それはボクは「不当」であると思っているのだが、国民はそれを「不当」とは思っていないようだ。「子どもの教育は親の責任」というイデオロギー。これがあまりに強固で、だからこそ、日本の教育が、OECD加盟国のなかで極端に私費が多い、という状況に国民は何ら疑問を持たないのである。

 いや、日本国民は、ほとんど、どんなことにも疑問を抱かずに生きていくのだ。

 そのほか、今月号は読ませる論文が多い。日本は、本当に山のように課題がある。それらの課題を、あきらめることなく、ひとつひとつ解決していく、そういう気概が求められている。

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より鮮明に

2014-04-02 07:52:30 | 政治
 今日の『中日新聞』2面に、「武器輸出を解禁」、「「日本製」で戦闘 道開く」という記事が載っている。「武器輸出三原則」を撤廃し、「防衛装備移転三原則」に変えるというのである。「防衛装備」という、ごまかしの文言をつかい、本質をぼかすという常套手段がすけてみえる。つまり「武器などの軍需品を輸出する際の三原則」というものである。

 日本には「防衛産業」という、これまた本質をぼかす文言がつかわれているが、実際の「軍需産業」がある。三菱重工業やIHI(旧石川島播磨重工)などであるが、要するに「武器輸出三原則」の撤廃の理由は、これら軍需産業の要請に応じたということである。

 ボクは以前『朝雲新聞』を購読していた。自衛隊の新聞でもある。その頃米ソの緊張がゆるみ、日本の「防衛費」(軍事費)が減らされていた。そこで軍需産業は、「これでは日本の軍事技術が劣化してしまう」という危機感を煽っていた。そこで軍需産業は、軍需品の輸出を可能にするように、政府へ働きかけていた。

 この「武器輸出三原則」撤廃、つまり軍需品の輸出は、もちろんアメリカによる日本の技術をかすめ取ろうという意志もあるが、日本の軍需産業の意志でもあるのだ。

 まさに『中日新聞』が指摘するように、「「日本製」で戦闘」が行われるようになるのである。

 安倍政権は、50年近く掲げてきた原則を、いとも簡単に捨ててしまうのだ。まさに大企業のための政治である。

 安倍政権の姿勢が、より鮮明になってきているのだが、人々は関心も持たずに日々を過ごす。
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