中島岳志の本ははじめて読んだ。なかなか良い本である。よく調べている。といっても、血盟団員の「公判記録」を主な資料としているから、文献の渉猟にはあまり困らなかったのではないかと思う。問題は、それらの公判記録に記されている事実や彼らの「思い」をどのように整理し、構成していくかである。それがうまくいっているから、読み進めることができたといえよう。
学ぶことができたことを、箇条書きで記しておく。
血盟団員の多くは、煩悶青年であったということである。自らの生の行方と、彼らが生きた時期と場所、そこは吹き荒れる貧困と格差社会があった。正義感を抱いた青年が、何を考えたか、そしてどう行動しようとしたかが、よくわかる。
その彼らの信条として、日蓮宗があった。この時代の、いわゆる「右翼」や「国家改造」を志向する人々は、その多くが日蓮宗に帰依していた。なぜか。
彼らの思い込みは、しかし、空回りに終わらざるをえなかった。天皇と民衆の間に、「君側の奸」が存在し、彼らが諸悪の根源であり、彼らを芟除すれば問題は解決するというのは、当たり前だが幻想である。国家機構を科学的に認識せずに、きわめて主観的に捉えている。
権藤成卿の思想は、共産主義的であることがわかった。
日本神話-国学ー天皇制イデオロギーという思想的連関は、血盟団の思想の中に大きな位置を占めていない。日本神話-国学ー天皇制イデオロギーという連関は、体制的なものであることが想像できる。
以上