東京女子医大におけるもと理事長・岩本某の大学支配を知れば知るほど、日本の組織がもつ怖ろしさを考える。トップが私腹を肥やし、みずからに従わない者を追い出し、独裁政治を敷いていた。
そしてそのトップは、ついに逮捕され、今や牢獄にある。東京女子医大は、その名声を失い、職員は減り、医学の教育研究機関として地に落ち、医療機関としても不信感をもって見られるようになった。
岩本某の独裁的な振る舞いを、当然その組織に属している人たちは目にし、聞いていたことだろう。しかし最悪の事態になるまで、岩本をおさえることはできなかった。
なぜなのかと思う。
新自由主義的経営が、政府によって導入することを促された結果、すべての学校(理事長、学長、校長・・)で、トップに権限が集中するようになった。学校については、文科省の主導による。トップダウンの経営が推奨されたのだ。
たとえば、大学では教授会の骨抜きが行われ(以前は、大学の自治は「教授会の自治」として批判されたが、今は「教授会の自治」はもはやない!)、小中高の学校では職員会議が会議ではなく、伝達のための会議へと還られた。
トップに権限が集中し、その周りにはトップにより選ばれたゴマすり野郎が脇を固めるようになった。小中高では、昔は管理職は校長、教頭のみであったが、今は一般教員のなかに階統制を導入し、平面的な組織をピラミッド型の組織へと変えた。そして管理職の評価によって給与に差別を導入するようにした。「ゴマすり」を増やそうというのだ。
トップダウンの組織は、自治体にも導入された。「自治体経営」というとき、それはトップダウンが是とされる考えとなった。
トップの専横により、その組織を破壊し、機能を麻痺させることが社会全体で増えている。トップとその周りにいる者(組織における支配者たち)に権限を集中させ、彼らに意見する者たちを排除するという方式が普及させられたからだ。
全社会的に「イエスマン」を増やすこと、それが新自由主義の考えである。
その点、「ドクターX」の、「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い」は素晴らしいと思う。ゴマすりをしない人間をたくさん生みだすことが、組織を健全に保つ秘訣である。もちろん、労働組合をつくること、御用組合ではない組合をつくることも、秘訣のひとつである。
わたしは、ゴマすり野郎は、大嫌いである。