窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

豪栄道の初優勝も-大相撲九月場所2016 14日目

2016年09月25日 | スポーツ観戦記


  大阪出身力士としては86年振りとなる大関・豪栄道の初優勝。14勝0敗の堂々たる成績での優勝にもかかわらず、今ひとつ盛り上がらない館内の雰囲気を感じたのは、恐らく僕だけではなかったろうと思います。

  2016年の大相撲九月場所14日目。去年に続き横綱白鵬が休場という場所で、全勝の豪栄道を追うのは2敗の平幕・遠藤のみ。両横綱は既に日馬富士が3敗、鶴竜は4敗。大関陣も今場所綱取りを期待された稀勢の里が4敗、琴奨菊5敗、照ノ富士に至っては9敗で既に負け越しと、白鵬のいない場所を引っ張るべき横綱・大関は燦々たる有様。そして、この日勝てば優勝の決まる豪栄道の対戦相手が、4敗とはいえ14日目にして前頭六枚目の玉鷲とあっては、場が盛り上がらないのも無理からぬことであったかもしれません。



  その豪栄道と玉鷲の一番。あっという間の電車道で寄り切り。これといった見せ場もなく、余りにも予定調和な幕切れ。とても悲願の優勝がかかった大一番とは思えませんでした。



  さらに残念だったのは最後の横綱-大関戦の二番。既に優勝が決まった後の取り組みとはいえ、通常は制限時間いっぱいで盛り上がるはずの横綱戦。それがおしゃべりに興じる観客のざわめきの中、しれっと始まりあっという間に終わり。まるで十両の取り組みを見ているかのようでした。しかも、綱取りが絶たれモチベーションを欠いたか、稀勢の里はあっという間に日馬富士に寄り切られ…。綱を目指したはずの大関の意地は微塵も感じられませんでした。



  照ノ富士にしても同じ。鶴竜にあっという間に寄り切られ、10敗目。照ノ富士は一場所休場してでも怪我の治療に専念してほしいと思うのですが、このままでは相撲人生に関わる怪我につながりかねないだけに心配です。



  今場所の収穫と言えば、関脇で10勝を挙げた高安。そしてその高安を破り12勝を挙げ、復調を印象づけた遠藤くらいでしょうか…。



  この日、十両の明生vs朝弁慶からずっと観戦していましたが、観客が大いに湧いたのは取り直しの一番となった、十両阿夢露vs宇良くらい。白鵬不在というだけで、ここまで場所が締まらなくなるものでしょうか?いないはずの白鵬の存在感が、逆説的に際立った秋場所でした。

  今場所もチケットが非常に取りにくく、相撲人気は堅調だったのだと思います。しかし、来る時の総武線はいつもより空いているように感じましたし、隣の桝席は最後まで空いていました。

  「何か違う…」そんな胸騒ぎと共に、国技館を後にしました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「よみがえり」を使っていただきました-C-habitatさんの活動模様

2016年09月21日 | リサイクル軍手の世界


  「誰もがきちんとした場所で暮らせる世界へ」をテーマに掲げ、発展途上国の貧困地域における住居建築を支援する、中央大学ボランティアサークル「C-habitat」さんの活動に弊社の「特殊紡績手袋 よみがえり」を使っていただきました。

  この7月に実際に学生さんがフィリピン・マニラ郊外のケソン市に赴き、数週間現地に滞在しながら家を建ててこられたそうです。その模様を写真で頂きましたのでご紹介したいと思います(次の写真にTwitterのリンクを貼らせていただきました。そちらでより詳しい活動の模様がご覧いただけます)。


 
  弊社は1998年からフィリピン・スービックにて工場を操業し、「特殊紡績手袋 よみがえり」もそこで生産されています。したがって、フィリピンは我々にとっても大変馴染みのあるところでもあります。

  7月のフィリピンは雨季です。暑さこそ乾季程ではないとはいえ、それなりに暑い上に、雨が降ればこのケソン市付近はたびたび洪水に見舞われるなど、インフラにすぐ影響が出ます。そんな中で、地面を掘り、柱を立て、レンガを組む作業は大変だったろうと思います。しかし、そのような中でも貧しい人々に喜んでもらうため、明るく取り組む学生さんの姿が写真から伝わってきました。そしてかなり本格的な家を作られていたことにも感心させられました。

「貴社から戴いた軍手は、作業中の大きな怪我の防止はもちろん、チーム内全員の団結力をより高めるものとなりました。」

通常の軍手に比べて持ちが良く二週間に渡る作業にも耐え抜き手を守ってくれました。洗えば繰り返し使えます


  このように言っていただけると、我々も愚直にもの作りをしてきて本当に良かったと思う次第です。現地のみんなもこれを聞いたら喜ぶと思います。



  弊社もフィリピンで貧困女性の安全なお産を支援するクリニック植林活動とお付き合いさせていただいていますが、どこの国でも同じなのは子供の屈託ない笑顔ですね。上の写真でも背景で見物している子供姿を見るとつい微笑んでしまいます。

  使えなくなった古着を再生した手袋「よみがえり」を通じ、さまざまな「よみがえり」の活動と関わらせていただく機会に恵まれました。そのことを本当に嬉しく思います。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

【ドキュメント】循環型社会の機先を制す~ものづくりを支える資源再生人【ナカノ株式会社】

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾の締めは小龍包で-京鼎樓

2016年09月17日 | 食べ歩きデータベース


  9月13日。台湾での仕事を終え、訪問先から徒歩10分位の所にあった小龍包の名店、京鼎樓に行ってきました。恵比寿にもお店があるようです。



  到着したのはまだ11時過ぎでしたが、早くも店は観光客らで賑わっていました。店頭では、ガラス越しに小龍包を包む作業を見ることができます。



  こちらが小龍包。普通の小龍包の他、烏龍茶、カニ味噌などの小龍包を頼みました。小龍包というと、火傷するほど熱い肉汁があふれ出てくるイメージがありますが、ここの小龍包は意外にも適度に加減された熱さでした。そのおかげで、口の中で十分味わいを楽しむことができました。カニ味噌は特におすすめです。

  因みに背後に映っている緑色のビンは、18天台灣生啤酒という台湾のビール。18天(18日という意味)とは、賞味期限が18日という意味で、確かに今回飲んだ台湾のビールの中で最も飲みやすく、美味しかったです。



  おつまみに頼んだ、排骨と海老とチーズの揚げ春巻き。海老とチーズの揚げ春巻きも結構おすすめ。



  台湾に来たら、やっぱり食べて帰りたい牛筋麺。本当は街中の屋台で食べたかったのですが、機会がなかったので最後にここで。

京鼎樓

台北市長春路47號

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾の初日は羊づくし-岡山羊肉壚

2016年09月17日 | 食べ歩きデータベース


  9月11日、実に12年振りの台湾。初日の晩に街でよく見かける羊肉鍋の店に行ってきました。台湾にいるとずっと中華になってしまう恐れがあったので、初日から毛色を変えてみた次第。



  肉屋に併設された、バックヤードを改装したかような店舗。到着したのは日曜の夕方6時でしたが、早くもお客さんで賑わっていました。



  こちらがメインの羊肉鍋。古の遊牧民の料理をそのまま持ってきたかのような、素朴かつ豪快な鍋です。一緒についてくるレタスに煮た羊肉を巻いて食べるらしいのですが、説明される前にレタスも煮てしまいました。骨付きの羊肉は脂身が少なく、さっぱりとしています。その他のメニューも全般的に薄味でしたので、僕は豆板醤を多用しました。



  サイドメニューも羊づくし。まずは、羊肉沙茶醤炒め。沙茶醤(サーチャージャン)というのは、蝦醤、ヤシの実、五香粉、砂糖などをピーナッツ油で炒めた、マレーシア由来の調味料のことで、台湾ではポピュラーなようです。



  羊モツ炒めに、羊胃袋炒め。いずれにしても羊の内蔵。



  台湾胡麻油素麺。その名の通り、素麺を胡麻油で和えたものですが、思ったよりも油がしつこくなく、むしろ味が薄く醤油を足して食べました。



  強烈だったのは、羊睾丸台湾胡麻油炒め。睾丸のみならず陰嚢も一緒に。これは少々厳しかったです…。

  今回は頼みませんでしたが、羊肉鍋のスープに素麺を加えた単品の麺もありました。

  羊の好き嫌いにより賛否が分かれましたが、いずれにせよ一緒に行ったメンバーに強烈な印象を残した、岡山羊肉壚でした。

岡山羊肉壚

台北市遼寧街201巷2號

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未知なるネイルの世界-第75回YMS

2016年09月16日 | YMS情報


  全く関心のなかった世界に触れることは、ひょっとすると僕個人にとって最もワクワクする体験なのかもしれません。9月14日、mass×mass関内フューチャーセンターで行われた第75回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)はまさにそのような体験でした。

  講師は2年前からYMSにもお越しいただいている鎌田みゆき様、テーマは『美しくなれるネイルアートやネイルケアの基本』でした。そう、恐らくこの日参加した女性にとっては基本、男性にとっては新鮮な知識、そして僕にとっては気づきもしなかった世界。

  そんな僕でも爪に絵を描いたり、付け爪をしたりする女性がいることは知っているのですが、最近では身だしなみの一つとしてネイルをする男性も増えてきているようです。不潔な爪は論外として、特に小指の爪だけ伸ばしている男性に嫌悪感を抱く女性は多いのだそうです。ただの切り忘れという事もあるでしょうに、良く見ているのですね。

  ネイルアートはその行為自体ストレス解消になるようなのですが、例えば高齢化社会にあって爪を切ることができないお年寄りのケアをしたり、ストレスによる噛み爪の癖を止めさせるリハビリに、スカルプチュアネイル(人工爪)を使用したりと、その活躍の場はお洒落を超えて幅広いようです。



  さて、日本におけるネイルの歴史を遡ると、飛鳥時代に顔料の一つであった赤錆を儀式的意味で口元や爪に塗る風習があったようです。その後平安時代になると、ホウセンカ(爪紅)とホオズキで爪を赤く染める風習が貴族から遊女に広まりました。それから下って江戸時代、中国から紅花が入ってきて、爪紅と紅花を混ぜたものを口紅や爪に使用していたようです。明治になると、フランスから磨爪術(まそうじゅつ)と呼ばれるネイルの技術が入ってきて、フレンチルックと呼ばれるナチュラルカラーを基本としたネイルが昭和以降広まりました。

  ネイルというと、爪をカラフルに染めるイメージがありますが、それはここ30年位の事で、現在でも基本は赤とピンクなのだそうです。赤はその人の血色を良く見せ、興奮を喚起する色でもあるので色気がでます。色彩心理の観点から見ても赤は生命力を意味する色ですが、この赤への執着は人類史に共通して見られる現象のようです。

  化粧の始まりとされるのは古代エジプトで、ミイラの爪は朱色に染められていました。これは魔術の一種と考えられています。また、ギリシャ・ローマ時代でも上流階級の化粧としてやはり赤への執着が見られました。そこで思い出したのですが、子供の頃読んだ本にもクロマニョン人の埋葬地から赤い土や赤く塗られた人骨が発見されたと書かれていました。

  次に、主なネイルのトラブルについて。

1.グリーンネイル(緑膿菌感染症)
原因:免疫力の低下など
対処法:感染中はジェルネイルをやめる

2.爪の横溝
原因:栄養失調・過剰なダイエット
対処法:栄養を摂る、保湿ケア

3.爪の縦筋
原因:主に老化と乾燥
対処法:特に爪の根元を保湿

なお保湿には爪用のオイルを使うそうです(1日5回)。



  その後、様々な種類のネイルの紹介があり、いよいよネイルを体験してみようということになりました。マニキュアなどを塗らなくても、丁寧に生皮を取り磨くだけでおじさんの爪が見違えるようにピカピカに。しかも爪という身体の極々小さな部分であるのに、こんなにも目立ち、印象が良くなるとは!「身だしなみとしてのネイル」の意味が少しわかった気がしました。



  僕もマニキュアとジェルネイルを初体験。ジェルネイルは爪の表面にジェルを塗り、紫外線を当てると固まります。マニキュアは除光液で落とせるのですが、ジェルネイルは除光液では落ちません。



  というわけで、左手の青い方はこのブログ執筆時点でまだ僕の指に残っています。趣味ではないので悪しからず…。
 
  最後になりますが、今回の記事に掲載した写真は写真家永田知之さんからご提供いただいたものです。その永田さんには、次回10月12日の第76回YMSに講師としてお越しいただく予定です。お楽しみに!

過去のセミナーレポートはこちら。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大きな3と5の差。3位争いは混沌として-日本プロ野球2016 横浜vsヤクルト21回戦

2016年09月09日 | スポーツ観戦記


  CS進出をかけ熾烈な3位争いを繰り広げる両チームの直接対決、第3ラウンド。一昨日、昨日と連勝した3位横浜は、怪我で離脱していた主力が次々と復帰し勢いを増してきた4位ヤクルトとの差を4ゲームに広げています。



  横浜は3戦目にヤクルトと相性の良い石田投手を中4日で当て、三連勝を狙います。



  台風13号の影響で心配された雨もあがり、湿度60%を超える蒸し暑い中、駆けつけた観衆27,665人。この日はビール半額というサービスもありました。



  一方、ヤクルトの先発は石川投手。



  1回は両先発とも三者凡退の立ち上がり。試合が動いたのは2回裏、まずこの回先頭の筒香選手がセンターに抜けるヒットで出塁します。



  続く宮崎選手は四球を選択し、無死二塁・一塁。



  梶谷選手はタイミングは合っていたものの、ややバットの先だったか、センターへの大飛球でアウト。しかし、続く倉本選手のライト前ヒットで一死・満塁とします。



  そしてこのところ打撃好調の戸柱選手がセンターへタイムリーヒット。まず横浜が先制します。0vs2。



  石田投手は送りバント失敗で二死となりますが、1番に返って桑原選手がさらにヒットで続き、再び満塁。



  ここで二番白崎選手は死球を受け、押し出しによる追加点。しかし、ロペス選手はセンターフライに倒れ、打者9名を費やした攻撃もここで終了。0vs3。しかし、この流れであればもう少し攻め切りたかったところでした。



  序盤の大きなヤマを迎えたのは4回表。ヤクルトは二番比屋根選手から山田選手、バレンティン選手へと続く好打順。この回は、サード白崎選手が山田選手の強烈なライナーをダイビングキャッチ。好プレーにも助けられ、石田投手は三者凡退で切り抜けます。これにより、試合の主導権は完全に横浜へ。

  石田投手は6回を86球、4安打無失点。10勝目の権利を得て降板します。しかし、結果論になってしまうのですが、この継投が試合の流れを大きく変えてしまいました。



  7回表、横浜はバレンティン選手に相性の良い加賀投手が登板。そのバレンティン投手は見事三振に打ち取りますが、続く鵜久森選手にライトへヒットを浴びます。



  横浜は勝ちパターンの継投に入り、三番手田中投手が登板。この試合で55試合目の登板、防御率1.85と極めて安定感のある投球を見せてきた田中投手ですが、この日は明らかに球が走っていませんでした。



  まず骨折から復帰した川端選手にセンターへのヒットを浴び、一死三塁・一塁。



  続く荒木選手にはライトへの二塁打を浴び、1vs3。



  さらに西田選手にも二塁打を浴びて、同点。続く坂口選手にもヒットを許します。



  横浜は四番手として、こちらも55試合目の登板、防御率2.74の須田投手に交替。



  西浦選手を討ち取り二死とするものの、代打雄平選手にはショートの頭を超える何とも不運なヒットを許し、ついに逆転、4vs3。



  8回表。横浜は抑えから中継ぎに回った山崎投手が登板。ここ数試合は球の走りが戻っていたのですが、この日は二塁打と2つの四球で二死満塁のピンチを作ると、坂口選手にタイムリーを浴び、5vs3。



  8回裏。横浜は宮崎選手の四球と梶谷選手のヒットで無死二塁・一塁のチャンスを作りますが、倉本選手のセカンドライナーに二塁走者宮崎選手が飛び出し、帰塁できず。反撃のチャンスもあえなく潰えました。



  収穫と言えば、9回表に登板したザガースキー投手が球威・制球共に良かったということぐらい。



  結局横浜は、勝たなければいけない試合を勝たなければいけない展開にもかかわらず落としてしまいました。もし勝っていれば、残り13試合で5ゲーム差となったところ、敗れたことで3ゲーム差。横浜にとっては極めて痛い敗戦でした。


繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

交渉学特別セミナーに参加しました

2016年09月07日 | 交渉アナリスト関係


  9月6日、NPO法人日本交渉協会主催の「交渉学特別セミナー―米国・英国の交渉学の教授を招聘し、最新の交渉理論、交渉教育を学ぶ特別セミナー」に参加してきました。



  講師は、ハーバード大学PON(Program on Negotiation)のアラン・ランプルゥ先生とオックスフォード大学PONのミシェル・ペカー先生。

交渉のメソッド: リーダーのコア・スキル
クリエーター情報なし
白桃書房


  講義は主に、ランプルゥ先生の著書『交渉のメソッド:リーダーのコア・スキル』(英語題“The First Move”)の要点である、「交渉を前進させるための10原則」と「あらゆる交渉で重要な3つの側面」について、名古屋市立大学大学院経済研究科教授、同協会の専務理事でもある奥村哲史先生によるポイント解説も交えて行われました。

  人は生まれ落ちた時から、何らかの交渉を日々行っています。赤ん坊が母親に空腹を知らせるために泣くことが交渉の始まりとすれば、人は本能として交渉力を備えているともいえます。しかし、それゆえか世界中で多くの交渉が半ば直感に基づいて行われているという現実もあります。しかし『交渉のメソッド:リーダーのコア・スキル』にも書かれていることですが、人は交渉スキルを学ぶことで、そうでない場合よりもより望ましい成果を得ることができます。また、交渉力は学ぶことによって誰でも上達させることができるということです。今回の「交渉を前進させるための10原則」と「あらゆる交渉で重要な3つの側面」は、そのための最も重要なポイントと言えます。



  初めに、ペカー先生より「交渉を前進させるための10原則」についての講義がありました。書くと長くなりますので、要点を下の図にまとめました(クリックすると拡大します)。



  図の青い部分、「明白なこと」と書かれている部分を上から縦に見たのが通常、直感に基づいて行われる交渉プロセスです。すなわち直観に基づきアクション→交渉参加→自分本位→結論ありき→自己主張→取り分の奪い合い→表面的な解決案→その評価→最終的な解決策の選択→合意、というプロセスになります。

  しかし、これらのことはあらゆる交渉で自明に行われることなので、交渉力を高めるには別のポイントに目を向けなければなりません。それが明白なことの前に行うべき「大切なこと」です。図のオレンジの部分がそれに該当します。これが「交渉を前進させるための10原則」であり、右側の「ポイント」欄にその要点を記載しました。

ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術
クリエーター情報なし
集英社


  以前、「第9回ネゴシエーション研究フォーラムに参加しました」でもご紹介した、ペンシルバニア大学ウォートン校のスチュアート・ダイアモンド教授の”GETTING MORE MODEL”も要点はこの10原則とほぼ同じでした。下の図は、先ほどの図に”GETTING MORE MODEL”で挙げられていた20のポイントを当てはめたものです(クリックすると拡大します)





  続いて、ランプルゥ先生より「あらゆる交渉で重要な3つの側面」についての講義がありました。3つの側面とは、「人」・「問題」・「プロセス」。あらゆる交渉の準備において、この3つを必ず考慮に入れなければならないということでした。こちらも図でまとめます。

1.人に焦点をあてる



  「人」の範囲をどこに置くかによって、交渉の結果は大きく違ってきます。講義の中では「人」の範囲を1962年のキューバ危機におけるジョン・Fケネディ大統領に例えてお話がありました。すなわち、自分はケネディ大統領自身、プリンシパルはアメリカ国民、相手はフルシチョフ書記長、実行者はアメリカ軍およびソ連軍、その場にいない人たちは地球上の人々、次世代の人たちは文字通りです。キューバ危機の回避は、ケネディとフルシチョフが誰に焦点をあてて交渉したかで得られた歴史的成果でした。以下、「問題解決」、「プロセス促進」も同様です。

2.問題解決



3.プロセス促進



  繰り返しますが、これら3つの側面は、交渉のより良い結果を生むための必須要素になります。



  さて、講義の後は、いくつか質疑応答が行われました。まず現代で良き交渉者(リーダー)として誰が挙げられるかという質問に対しては、ドイツのメルケル首相が、サーバント型であり、問題を伝える能力に長けているという点でそうであろうということでした。また、質問をしながら相手の考えを引き出しより良い成果を上げるという点では、助産師さんなどまさに良き交渉者と言えるであろうということでした。

  次に恐らく多くの人が抱くであろう、とても交渉になりそうにない、例えばテロリストのような相手にこの原則を当てはめた場合のポイントは、という質問に対しては、問題の焦点を絞ることが大切であるということでした。

  三つめは、『交渉のメソッド:リーダーのコア・スキル』でも強調されていたアクティブ・リスニング(積極的傾聴)について。良き交渉者(リーダー)とは、問題の解決策を出す人ではなく「より聴くことができる人」。お話の中でアメリカ民主党の元下院議員ハワード・ウォルプ(1939~2011)の例が挙げられました。死刑制度に反対する彼は、死刑制度を支持する人々の集会に乗り込み、自分の価値をただ押し付けるのではなくひたすら彼らの話に耳を傾け、かつ自分の理解が間違っていないか尋ねたそうです。相手の言うことを正確に理解することはそれほどまでに難しいからで、これからの交渉者(リーダー)必要なのは”Active Listening”というより、むしろ”Active Perceiving”(積極的認知)であるとさえ言えるかもしれないということでした。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2016年8月アクセスランキング

2016年09月01日 | 人気記事ランキング


  8月で43歳になりました。このブログを書き始めたのが34歳の時ですので、もう9年。今日が1,268回目の投稿になります。これからも「リサイクルライフ」をよろしくお願い申し上げます。

  さて、2016年8月にアクセスの多かった記事、トップ10です。

  一番アクセスの多かったのがトップページというのは、もっと頑張って更新しなければいけないという事なのかもしれません。次いでアクセスの多かったのは、今年も大盛況の内に終わりました、YMSのワインセミナー。いつも多大なるご協力をいただいている馬車道十番館様、横濱屋様にこの場をお借りして、改めて御礼申し上げます。

  3位は日本交渉協会が主催する、交渉アナリスト1級会員の勉強会「燮会」の記事です。

  4位「「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました」、6位「エコノミーとエコロジーの語源」、10位「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」、ずっと定番だった記事が3カ月ぶりに揃いました。そう言えば、上田さんも8月がお誕生日。おめでとうございます!

  5位、7位は野球観戦の記事。更新日が早く、しかも今シーズン圧倒的な強さで25年ぶりの優勝に突き進む広島戦の記事が7位で、後から更新した横浜vs巨人の記事が5位だったのは、僕の周りに横浜ファンが多いからかもしれません。

  9位「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(Gardens by the Bay)」、更新後わずか2日半ですが、ランクインしてきました。

1 トップページ
2 この暑さ、すっきりワインが飲みごろ-第74回YMS
3 あらためて「交渉とは何か」を考える-第29回(やわらぎ)燮会
4 「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました
5 連夜の猛攻、打線復活なるか?-日本プロ野球2016 横浜vs巨人22回戦
6 エコノミーとエコロジーの語源
7 両軍拙攻17四球、23残塁!-日本プロ野球2016 ヤクルトvs広島17回戦
8 暑い甲府の夜は冷たいビールで!-甲府地ビールフェスト2016
9 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(Gardens by the Bay)
10 久村俊英さんの超能力を目撃してきました


繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする