前回観戦の8月9日以降も横浜は快進撃を続け、首位ヤクルトとの直接対決を迎えるまでで8月16勝3敗。通算58勝47敗で貯金11(前回観戦時が貯金1)、4ゲーム差まで接近しました。既に巷でも言われていることですが、やはり思い出すのが1997年のシーズンです。この年の横浜は8月に球団記録となる20勝6敗を挙げ、僕が24歳の誕生日を迎えた前後に当時も首位のヤクルトに2.5ゲーム差まで肉薄しました。しかし、9月頭の首位攻防戦でノーヒットノーランを含む3連敗を喫し、そこで力尽きてしまいました。
【引用:Sportsnavi】
そのような状況で前日に行われた直接対決の初戦は、ヤクルトが横浜の右の柱である大貫投手を6回に攻略し、6vs3で勝ちました。得点差以上に力でねじ伏せられた印象です。そう、首位ヤクルトがここでやるべきことは勢いに乗り、かつ消化試合数が5試合少ない横浜を完膚なきまでに叩き、挑戦する意欲を挫くことです。当然それが分かっているので、この日もヤクルトは目下3冠王へ邁進する村上選手に復調の兆しを見せる山田選手に加え、外国人を3人配置するという攻撃型オーダーで臨んできました。
横浜スタジアムは観衆32,426人の満員御礼。ファンもこの一戦をいかに重く見ていたかが分かります。
両チームの先発は横浜が石田投手、ヤクルトが小川投手。横浜勝利の条件として、石田投手が最低6回まで試合を作ることと、立ち上がりに不安のある小川投手に対し、序盤早打ちで助けないことが欠かせないと戦前考えていました。
その石田投手の立ち上がり。無失点で切り抜けはしたものの、山田選手、村上選手に連続ヒットを許し、球数も22球を要する不安な船出。
この流れでますます横浜打線がいかに小川投手の立ち上がりを揺さぶれるかが重要になってきたわけですが、その横浜はまず先頭の桑原選手が幸先よくヒットで出塁。
つづく楠本選手の3球三振はいただけませんでしたが、三番佐野選手の時に桑原選手が盗塁を決めると、
佐野選手がセンター前にヒットを放ち、鮮やかに1点を先制。
牧選手はセンターフライに倒れるも6球投げさせ、つづく宮崎選手は5球投げさせて四球。さらにソト選手も6球投げさせて四球と、ここまでは良い展開。返す返すも悔やまれるのはここで小川投手を攻めきれなかったことです。結局、初回の横浜は1点止まり。
2回表。ヤクルトは一死から内山選手が7球目をセカンドゴロ。ところがこの遊撃手真正面のゴロを守備に定評のある柴田選手がまさかのトンネル。これさえなければ、8番で終えることができていただけにもったいなかったです。結果的に、1点で終わった横浜の攻撃に続き、これもヤクルトに完全に流れを引き渡す要因になったと思います。蟻の一穴、小さなミスから大きな流れが変わることがあります。
さらに良くなかったのが2回裏の横浜の攻撃。8番からの下位打線だったとはいえ、わずか5球で終わってしまったのです。これが制球に苦労していた小川投手を立ち直らせてしまいました。
そして3回表。先頭塩見選手の強烈な打球を三塁手宮崎選手がジャンピングキャッチ。ここまでは何とか横浜も堪えていたのですが、つづく途中加入でまだ本塁打のないギブレハン選手に来日第1号となる本塁打を浴びてしまいます。ギブレハン選手はこの日、5打数4安打(うち3本塁打)+死球と、5打数5安打(うち2本塁打)+1敬遠の村上選手と並び、信じられないような大活躍でした。
つづく山田選手の打球は詰まったのですが、レフト前に落ちるヒット。さらに盗塁を決め、一死二塁。村上選手は申告敬遠で一死二塁一塁。サンタナ選手は打ち取ったのですが、オスナ選手に四球を与え、二死満塁。
そして内山選手にセンター前へ弾き返され、走者2人が生還。3vs0。これだけも十分でしたが、さらに悪いのは8番長岡選手に四球を与え、結局次の回もまた先頭打者からという局面を作り出してしまったことです。しかも石田選手はわずか3回で72球。これだけ悪いリズムを作り出せば、後の回に起こったことはおまけのようなもので、これ以降横浜は総崩れとなります。ヤクルトのスコアボードには3回以降、3、4、2、0、5、0と数字が並び、まるで電話番号。村上選手の史上最年少150号到達のメモリアルを含む7本塁打、23安打、16得点。横浜投手陣が雪崩のように崩壊したこともありますが、最後まで手を緩めなかったヤクルトもさすが王者の王者たる所以です。最近はデータ重視の風潮から「試合に『流れ』は存在しない」という意見もあるようですが、僕は必ずあると信じていますし、軽視してはならない要素だとさえ思っています。「善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞の山に転ずるが如き者は、勢なり」です。
4回表、横浜は二番手としてガゼルマン投手が来日初登板。2軍でも打ち込まれる試合が続いていたのでどうかと思いましたが、結果は1本塁打を含む4安打3失点。しかし、安打は不運なものもありましたし、思っていたより球は走っているようでした。制球も来日前に言われていたほど悪くはないようです。お世辞にも良いとは言えませんが、ビハインドの場面で投げさせられる目途はついたのではないかと思います。というより、9月に28試合という過密日程が待ち受けており、投げてもらわなければ困る台所事情があるのですが。
なお余談になりますが、マンガ「キン肉マン」にガゼルマンという超人が登場することから、登板時はアニメ版のOPテーマ「キン肉マン GO FIGHT!」にのっての登場でした。残念ながら初登板は「見事に転ん」でしまいましたが、次回期待しています。
5回表は、中川虎大投手。8月に入ってからの登板はいずれも無失点とビハインドの場面ながら好投を見せてくれていました。ただ、三試合連続登板だったのが仇となったのか、二死満塁から村上選手にタイムリーを浴び二失点。しかし、つづく6回はオスナ選手にヒットこそ許したものの、下位打線ながら後続を断ちました。
初回以降、横浜ファン唯一の盛り上がりは6回裏出た牧選手の2ラン。しかしすでに9vs3。
7回表になると、今度は、同じく三連投の宮國投手がメッタ打ちに遭います。
まず一死からギブレハン選手にこの日2本目となるホームラン。
続く山田選手は二塁打。
村上選手、タイムリー。
サンタナ選手、2ラン。
挙句は今シーズンまだ1本塁打の内山選手にまで、二者連続となる本塁打。
なおも止まらず、長岡選手にヒット。
小川投手の代打、2021年ドラフト2位の新人丸山選手にもヒットを浴び、1イニング打者10人に対して7安打5失点、3本塁打とまるで打撃投手のような内容に終わりました。もはや数えても仕方ありませんが、14vs3。横浜スタジアムに通って44年、初めて途中で帰ろうかと思いました。
7回裏、横浜は桑原選手のタイムリーで1点を返します。8回表は8月25日に中継ぎに回ってから好投を見せてきた坂本投手。ただし、彼も三連投。
その坂本投手、ギブレハン選手にこの試合3本目第3号、村上選手にもこの試合2本目の第48号を浴びます。これでヤクルトは7本塁打(日本記録は9本塁打)。村上選手は本塁打2位の丸選手に24本差、すなわち二倍の差をつけました。2013年にヤクルトのバレンティン選手がシーズン60本の日本記録を樹立した時でさえ、2位のブランコ選手とは19本差でした。いかに村上選手が群を抜いているかが分かります。因みにこの時点でヤクルトは残り28試合を残していますので、このペースを最後まで持続できればバレンティン選手の記録を抜くことになります。
横浜の救いは、9回表に平田投手がヤクルト打線をこの試合初めて三者凡退に討ち取ったことです。
追い上げる2位チームを16vs4という圧倒的大差で退ける、まさに横綱相撲のヤクルト。一方の横浜はこの翌日の試合も5vs4で敗れ、3タテ4連敗という最悪の結果。しかし、28日の内容を見る限りまだ立て直せる可能性はあると感じました。今日(8月30日)からの中日戦、応援しています!
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした