窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

横顔から微表情を読むには

2021年01月17日 | 表情分析


 1月16日、空気を読むを科学する研究所主催のMiXトレーニング講座を受講しました。Mixというのは、表情分析の第一人者、D.Matsumoto博士が開発した包括的微表情トレーニングメソッドのことで、これまでもベーシックなものの他、マスクをした場合の微表情を読む「Masked MiX」をご紹介してきました。



 表情を読み取る際、一般的なトレーニングのように対象が必ずしも正面を向いているとは限りません。そこで今回の「MiX Elite」は、対象が斜めや真横を向いている場合の微表情を読み取るためのトレーニング・ツールとなります。

<以下の画像は、空気を読むを科学する研究所の許可を得て掲載しております>



 トレーニングでは、7つの基本感情(悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚き)の微表情について、それぞれ正面から見た場合、斜め3/4から見た場合、真横から見た場合について、動画による解説がなされ、学習を終えたら練習に入ります。そして最終的にテストを受け、以下の基準を満たすと他のMixトレーニングと同様、認定証が授与されます。

Proficient:正解率80~89%
Expert:正解率90~94%
Master:正解率95%以上

 今回は「MiX Elite」と名前がついているだけあって、微表情の表示速度が0.06秒と、これまでのトレーニングより難易度が上がっていました(これまでのツールは0.1秒。因みに、0.5秒以下で表出する表情が「微表情」と定義されます)。それでも、正面や斜め3/4の顔であればまだついて行けます。問題は、真横の顔。真横になると表情筋の動きから得られる情報が格段に少なくなるため、戸惑いました。0.06秒で判別できるようになるには、少し時間がかかりそうです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美しく示唆的なミツバチの社会-第122回YMS

2021年01月14日 | YMS情報


 2021年1月13日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第122回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。1都3県の緊急事態宣言発令に伴い、今回は開催時間を繰り上げての開催となりました。

 11年目を迎える新年最初の講師は、オルト都市環境研究所・代表取締役の岡田信行さん。岡田さんは、都市緑化研究の仕事をされる中で、都市に花を植えることのフィードバックを得るためミツバチと関わるようになり、ミツバチの飼育を通じた「ひと・まち・環境」をつなぐ市民活動「Hama Boom Boom!」を立ち上げ、地域づくり、教育活動などを行っていらっしゃいます。ということで、今回は「ミツバチたちとマネジメント」と題してお話しいただきました。

1.なぜミツバチなのか?

 前述の通り、元々都市緑化を研究する仕事をしており、都市に花を植えることの効果についてフィードバックを必要とされていたことがミツバチと関わるようになったことの始まりだそうですが、グローバル化が進展する中、一見地球規模で人がつながるようになったように思われますが、むしろ眼前では産業と地域、自然と地域、つまり人と自然とそれが形作る地域のつながりが希薄化しているというのが現実です。人と人とが、人と自然とがつながらなくなり、私たちの身の回りの環境は、人が集まり、多少の木や花があっても、それぞれがバラバラで孤立感を深め、活力を失っています。

 こうしてバラバラになってしまった「つながり」を再生し、地域に活力を蘇らせるには、再び結びつこうとする何か地域の資源を活用した「面白いこと」が必要ではないか?そうして白羽の矢が立ったのが「ミツバチの飼育」、つまり養蜂だということです。数式的に言うと、地域に眠るa、b、c、dといった多様な資源にミツバチの飼育というxを掛け合わせる。するとxが共通因数となり、x(a+b+c+d)といった形で括れるというイメージになります。

2.養蜂は目的ではなく手段

 ミツバチの飼育は人と人とを繋げ、生産したハチミツは地域ならではの特産として、さまざまな地域の産物と結びつき、それらを活性化します。また、ハチミツを作るには花が必要であり、花を必要とする地域はその環境を保全することにもつながります。

 養蜂は大抵誰もが初心者であり、下手をすると刺される可能性があるので少し怖さを伴います。また、防護服というユニフォームを着用し、共同で作業に当たります。まさにこうした性質が、達成感、仲間意識を育くみます。

 つまり、養蜂は地域づくりに貢献すると共に、地域と共にかかわる人々も成長していく格好の媒体と言えるのです。

3.完璧に調和したミツバチの社会

 ミツバチの群れ(2群)は、あたかも大きな会社組織のようです。そこには約3万匹(内女王バチ1匹、雄バチ1,500匹、ほか働きバチ)のハチがおり、営業部、ハチミツ事業部、総務部、営繕部などのように、群れの遺伝子の継承を目的とした分業制が存在し、しかもそれらが完璧に調和しています。

 まず働きバチですが、

日齢3日ごろ:掃除
日齢7日ごろ:育児
日齢10日ごろ:巣作り
日齢14日ごろ:貯蔵
日齢20日ごろ:門番
日齢20日以降:ミツ集め

というように、経験(?)に応じて果たす役割が分かれます。働きバチの役割で我々が一番イメージしやすいのは最後の「ミツ集め」(会社で言うなら営業部)だと思いますが、この仕事は一番のベテランがこなすのですね。

 ミツを採取する範囲は半径2㎞、良く知られた8の字ダンスで営業報告を行い、どこに花があるかを共有し、採蜜の効率を上げます。5月、6月が最もミツの採れる時期で、季節の花の移り変わりと共に、ミツの色も変わります。つまり、地域のハチミツには地域の花の特性ばかりでなく、季節も反映されるのですね。

 門番は外敵の侵入に備えます。外敵が来たらまずは羽音で威嚇。次に体当たり。針で刺すのは最後の手段だそうです。ミツバチは一度針で刺すと、毒袋と共に内臓が抜けてしまい、死んでしまいます。こうした自己犠牲が起こるのは、ミツバチが個体としてではなく群れという超個体として遺伝子の継承を目的にしているためです。

 「働きバチ」というと、下っ端のようなイメージですが、実は群れの人事権を握っているのは女王バチでも雄バチでもなく、働きバチなのだそうです。例えば、女王バチも孵化した幼虫の時点では働きバチと変わりありません。しかし、働きバチがこしらえた王台と呼ばれる小部屋で産まれ、ローヤルゼリーを与えられた幼虫だけが女王バチとなることができるのです。

 雄バチの場合は、働きバチが必要な雄バチの分だけ、大きさの違う穴を作ります。女王バチは雌雄の産み分けが可能ですが、穴の大きさによって本能的に雌雄を生み分けるのだそうです。つまり、女王バチの誕生も、雄バチの誕生も働きバチが制御しているということになります。

 同じ巣に複数の女王バチが存在した場合、新旧の女王バチが女王の座をかけて争います。力が同等であった場合、旧女王バチが群れの一部を引き連れ別の巣を作ります(これを分蜂と言います)。

 良く知られているように、ミツバチの巣は、精巧なハニカム構造(正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造)をしています。その完璧な構造には驚嘆せずにはいられず、美しささえ感じます。そもそも「ハニカム」という言葉自体が、「ミツバチの櫛(=蜂の巣)」に由来します。材質は蜜蝋で、隙間をプロポリス(蜂ヤニ)で埋めます。

 雄バチの仕事は交尾のみ。針もありません。エサも働きバチから与えられて過ごしますが、冬になると用済みということで巣から追い出される運命にあります。雄バチは英語で”drone”、例の小型無人航空機「ドローン」と同じです。ブーンという音という意味の他、「のらくら者」といった意味があります。何だか可哀想ですね。



4.飼育のマネジメント

 このように奇跡とも思える、システムが完璧な調和を見せるミツバチの社会。その飼育を通じて、私たちは自然と組織を俯瞰して見るようになります。そして飼育プロジェクトを通じ、自分たちの地域社会というシステムを蘇らせ調和させる。いわばプロジェクトそのものが、調和したシステムのフラクタル(相似的)構造になっているとも言えます。

 ミツバチの飼育は1年を通じて、おおよそ以下のようなライフサイクルがあります。

3月:準備期
4月~6月:成長期(女王バチ交代もこの時に起こる)
7月~9月:成熟期(ハチの数が最も多い。外敵との争いも激しくなる)
10月~2月:衰退期(ハチの数は1/3に減る)

 養蜂で果たす人の役割は、常に巣箱のモニタリングをすることです。ハチミツを生み出すミツバチのマネージャーと言えますね。例えば巣箱、巣枠の追加を行うか、分蜂の兆候はないか、逆に群れの状態が良いので意図的に分蜂させるか、悪ければ統合させるかなど。

 よく養蜂家さんが巣枠を扱うのに煙を焚くのをご存知の方も多いのではないかと思います。なぜ煙を焚くのかと言えば、ハチが煙を吸って動きが鈍くなるからではなく、山火事が起こった際、ミツバチは別の場所へ移動するため、必要最小限のミツなどを身体にため込む準備に入り、外敵を攻撃するという優先順位が下がるためだそうです。

 ミツバチの巣にもそれぞれ個性があるそうです。それは先天的な場合もありますが、人間の扱い方によって後天的に変わる場合もあります。例えば、巣を乱暴に扱えば、ミツバチも攻撃的になるのだとか。

 ミツバチにとって、ハチミツは燃料となります。寒い時は羽を振動させ、熱を起こし、逆に暑い時は水分を扇いで巣を冷やします。飼育する人は、こうした負担をなるべくミツバチにかけず、ハチミツの生産性を上げるため気を配ります。

 手間ひまかけてできたハチミツは、遠心分離器で収穫します。僕もぜひこの作業を見てみたいですが、教育現場でもこの作業は子供の関心を惹くようです。

5.プロジェクトとSDG’s

 養蜂のプロジェクトは、SDG’sの17目標のどれに当てはまるというより、5つのP(People、 Prosperity、Planet、Peace、Partnership)をつなげるという概念そのものが非常に近いのではないかと岡田さんは考えていらっしゃいます。いわば、プロジェクトは地球規模ではなく、半径2㎞のただし目に見えやすいSDG’sの実現。上記のように、ミツバチの生態はそれ自体が奇跡的とさえ思える完璧な調和です。『サピエンス全史』の著者、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏によれば、人間と他の動物との違いは、たとえ現実でなくても想像したルールや基準、価値観に従って、大規模な集団が行動できるという点だそうです。しかし、我々の社会が「群という超個体としての遺伝子の継承」を目的とするミツバチほど調和しているようには思えません。ミツバチを凌駕する人数での協調行動をとれるのが人間だとすれば、欠けているのは協調行動をとらせる価値観だということになります。この点にこそ、このミツバチ・プロジェクトの意義があるように思いました。企業のCSR活動、引きこもりの人の自立支援、福祉施設などとの連携など、可能性はまだまだありそうです。

 我々YMSにとっても示唆に富むお話しでした。まだまだできることがありそうです。



過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最後の学生vs社会人頂上決戦-第74回Rice Bowl

2021年01月12日 | スポーツ観戦記


 2021年1月3日。アメリカンフットボールの日本一を決める、第74回Rice Bowlの観戦に東京ドームへ行ってきました。試合後に分かったことですが、学生と社会人のチャンピオンが日本一を争う形式は今回が最後なのだそうです。前回も書きましたが、社会人と学生の差は近年顕著になってきており、Rice Bowlで学生側に多く負傷者が出てしまう点も問題だと思っていましたので、これは良いことだと思います。

 さて、学生側は4年連続で関西学院大学ファイターズ。この10年で実に学生王者8度。昨シーズン、1992年からチームを率いてきた鳥内監督が退任し、また今シーズンはコロナ禍の中、社会人相手にどのようなゲーム運びをするのか注目していました。一方、社会人はブログでもご紹介した通り、7年ぶりにJapan X Bowlを制したオービック・シーガルズです。



 国歌独唱は、ソウル・シンガーのクリス・ハートさん。



 試合は関西学院K/P永田選手のキックでスタート。作戦通り、オンサイドキックでLB都賀選手がリカバー。自陣48ヤードからの攻撃開始。関西学院はファーストダウンを二度更新、オービック陣エンドゾーンまで残り10ヤードまで攻め込み1stダウン10。すると、RB前田選手が密集を抜け出し、エンドゾーン右にタッチダウン。2:31、関西学院が先制します。しかし、キックはオービックDLバイロン・ビーティ―・ジュニア選手のブロックにより失敗。



 オービックの反撃は5:38。自陣41ヤードから着実にファーストダウンを更新し、関西学院陣32ヤードからの1stダウン10。すると、QBロックレイ選手からWR野崎選手への24ヤードのパスが通り、エンドゾーン残り8ヤードまで攻め込みます。ここからRB望月選手がエンドゾーン中央に走り込み、タッチダウン。



 フィールドゴールは、オービックオフェンスにフォルス・スタートの反則があり5ヤードの罰退。しかし、練習ながら73ヤードのフィールドゴールを成功させたこともあるというK/P山崎選手にとって、これは問題にならず。オービックが7vs6と逆転。山崎選手は、この試合も再三のロングキックで関西学院のリターンを許さない活躍を見せました。



 さて、山崎選手のパントは関西学院陣エンドゾーンまで届き、タッチバック(関西学院自陣25ヤードからの攻撃)。ファーストダウンを更新しますが、その次のシリーズが阻まれ、自陣45ヤードからの4thダウン1でパント。ところが、ここでフォルス・スタートの反則があり、5ヤード罰退。すなわち、自陣40ヤードから4thダウン6のパントとなりますが、何とこれをオービックのDL平澤選手がブロック。拾い上げたボールを関西学院陣14ヤードまで持ち込みます。一転して、オービックのチャンス。20ヤード切られると、社会人同士でも防ぎきるのは中々難しいと思いますが、QBロックレイ選手らのパスが、左エンドゾーンに走り込んだTEハフ選手へ通り、タッチダウン。ゴールも決まり、8:19、14vs6。



 このままオービックに流れが行くかと思われたのですが、2Qに入ると関西学院のディフェンスが健闘しました。両者とも、ファーストダウンこそ更新するものの、次のシリーズが続きません。無得点のまま2Qも終わりに近づいた11:25、関西学院にビッグプレーが飛び出します。関西学院は自陣16ヤードから3rdダウン10、ワイルドキャットフォーメーション(QBの位置にTBが入るフォーメーション)。RB鶴留選手からボールを受け取ったRB三宅選手が左サイドを突破、何度そのまま84ヤードを走り切り、タッチダウン。



 そして関西学院は2ポイントコンバージョンにトライしますが、これは失敗。とはいえ、前半を14vs12の2点差で折り返します。



 ハーフタイムショーは、再びクリス・ハートさん。今回、コロナ対策のためか分かりませんが、関西学院大学のチアリーダーは出場しませんでした。



 前半は健闘した関西学院でしたが、後半になると地力の差が顕著になり始めます。3Q、オービックは自陣47ヤードからの1stダウン10。ここでQBロックレイ選手が放ったパスをWR野崎選手が関西学院陣30ヤード付近でキャッチ。そのまま走り切ってタッチダウン(2:33)。ゴールも決まり、21vs12と突き放します。



 4:53、先ほどのタッチダウンパスをさらに上回るビッグプレーが。オービックは関西学院陣49ヤードからの1stダウン10。センター庄島選手からのスナップをQBロックレイがキャッチすると、左サイドから走りこんできたWR西村選手にハンドオフ、大きく右サイドを突破すると、そのまま49ヤードを独走しタッチダウン。ゴールも決まり、28vs12。



 4Q開始早々、オービックは自陣45ヤードからの1stダウン10。まず、WB西村選手へのパスが通り、2ndダウン4。WR成田選手へのロングパスは失敗に終わりますが、続く3rdダウンで再びのパスはWR西村選手に通り、1stダウン更新。関西学院陣42ヤードからの1stダウン10。まず、WR水野選手へのタッチダウンパスは不成功。しかし、2ndダウンでQBロックレイ選手からのパスを関税学院陣27ヤード付近でTEホールデン・ハフ選手がキャッチ、そのまま右エンドゾーンに走り切ってタッチダウン(1:48)。ゴールも決まり、35vs12。



 関西学院最後の意地は、その後。例によってK/P山崎選手のロングキックでタッチバックとなり、関西学院は自陣25ヤードから攻撃開始。最初のWR鈴木選手へのパスは失敗しますが、次のWR梅津選手へのショートパスは成功。3rdダウン9、WR鈴木選手への23ヤードパスが通り、ファーストダウン更新。オービック陣32ヤードからの1stダウン10。WR梅津選手へのショートパスが通り、2ndダウン5。続くパスは不成功と思われましたが、オービックにホールディングの反則。これでオートマチック・ファーストダウンとなり、オービック陣36ヤードからの1stダウン10。QB奥野選手からRB三宅選手へハンドオフ、2ndダウン8。QB奥野選手のスクランブルで3rdダウン1。エンドゾーンまで残り27ヤード、どうするかと思いましたが、QB奥野選手が自ら飛び込んでファーストダウン更新。オービック陣25ヤードからの1stダウン10。まずTE小林選手へのショベルパスで5ヤード獲得。2ndダウン5、QB奥村選手からドロープレー(パスと見せかけてラン・プレーをすること)でRB鶴留選手にハンドオフ。これでファーストダウン更新、ついにエンドゾーン13ヤードまで迫ります。1stダウン10、QB奥野選手のパスは不成功。続く2ndダウン、QB奥野選手からRB前田選手にハンドオフ、前田選手はオービックDFラインの中央を突破、そのまま左エンドに走りこんでタッチダウン(6:48)。しかし、その後の2ポイント・コンバージョンは失敗、35vs18。しかし、ここまででした。



 結果、オービック・シーガルズが7年ぶり、史上最多8回目の日本一を更新しました(リクルート時代を含む)。しかし、今大会で1984年から続いた学生代表vs社会人代表の形式は終わりを告げ、新たな歴史が刻まれていくこととなります。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初の大晦日格闘技観戦②-RIZIN26(さいたまスーパーアリーナ)

2021年01月11日 | スポーツ観戦記


 (前回のつづき)そういう意味では、MMAの経験が豊富なこちらの試合は、地味なのですが見応えがありました。第9試合、カイル・アグォン選手vsクレベル・コイケ選手。両者互角の展開でしたが、1R残り1分となったところで、コイケ選手の右フックがアグォン選手の左顎を捕らえ、ダウン。そこからフロントチョークでテクニカルサブミッション(1R4分22秒)。頭が巻き込まれていたので、危なかったですね。



 第10試合の元谷友貴選手vs井上直樹選手も緊張感があって良かったです。5分3RのRIZIN MMAルール(肘あり)。プロフィールでは元谷選手170㎝に対して、井上選手173㎝とのことでしたが、それより身長差があるように見えました。元谷選手が先に仕掛け、グラウンドに持ち込んだのですが、井上選手は寝技も巧みですね。リアネイキッドチョーク(裸絞め)は井上選手、得意なのでしょうか?それにしても、今大会15カードの内4カードが61kg級であることからも分かるように、この階級は層が厚いですね。

 ここで、地上波の放送時間との関係から1時間におよぶ長い休憩に入りました。



 第11試合、MMAで日本人初の世界王者となり、長くこの世界を牽引してきた浜崎朱加vs山本美憂のスーパーアトム級タイトルマッチ。5分3R、RIZIN女子MMAルール。僕が知っている山本選手は、1991年に彼女が最年少でアマチュアレスリングの世界選手権を制した頃の話です。それから30年近くになるというのに、まだ現役を続けている。それだけでも頭が下がります。結果は、1R 1分42秒、ネックシザースからのタップアウトで浜崎選手の勝利。



 第12試合、こちらも大ベテラン五味隆典選手vs新生の皇治選手。3分3R、RIZINスタンディングバウト特別ルール、つまりパンチのみ。両選手とも少し太っているように見えましたが、エキシビジョンということで。結果は判定で五味選手の勝利。



 第13試合、今大会最注目選手の一人。プロ総合格闘技戦績13勝2敗、わずか40日前に行われたRIZIN25のフェザー級王座決定戦で斎藤裕選手に判定で敗れた朝倉未来選手。ずっと総合格闘技を見ていなかった僕でも朝倉兄弟の名前は聞いたことがあります。対するは、プロ総合格闘技戦績11勝5敗、RIZIN初参戦の弥益ドミネーター聡志選手。余談ですが、弥益選手は海城高校出身なんですね。わが母校の攻玉社と海城は、海軍予備校をルーツとしており制服も似ているので、昔から何となく親しみがありました。大学の近くでもありましたし。

 5分3R、RIZIN MMAルール(肘あり)。1R、緊張感のある攻防が続いていたのですが、残り1分でアクシデントのバッティング。これが効いたようには見えませんでしたが、その後朝倉選手の左フックで一瞬怯んだところに左ハイキック。これが強烈でした。そこへすかさず右フックで弥益選手はダウン。1R4分20秒KO、一瞬の機を逃さない朝倉選手はさすがです。わずか40日で調整も大変だったと思うのですが。一方の弥益選手、これからも見たい選手です。



 第14試合、セミファイナルですから当然ですが、こちらも注目カード。那須川天心選手vsクマンドーイ・ペットジャルーンウィット選手。那須川選手は既にボクシングへの転向を表明しており、キックの試合を観られるのもあと僅かです。3分3R、RIZIN キックボクシング特別ルール。ペットジャルーンウィット選手は、ムエタイで60勝31敗、攻撃力に定評があり、2年前、那須川選手を破ったロッタン・ジットムアンノン選手に判定で勝っているのだそうです。今回の計量では56.50kgsでしたが、ムエタイではバンタム級(53kgs以下)なので、階級を上げてきているのかもしれません。

 試合が始まってみると、確かにペットジャルーンウィット選手のロー、ミドルの蹴りは凄まじく、ビシビシと音が伝わってきます。試合後、真っ赤に腫れた那須川選手の上腕が、その威力を物語っていました。一方の那須川選手も、ミドルキックをホールドしては、的確にパンチを返します。1R中盤は激しいミドルキックの応酬。途中、ペットジャルーンウィット選手が那須川選手を投げる場面があり、注意。那須川選手の距離感を掴む上手さ、パンチのコンビネーションはさすがです。2Rには那須川選手のショートフックでペットジャルーンウィット選手がふらつく場面も。結果は3R判定で那須川選手の勝利でしたが、両者の意地がぶつかり合う激しい試合でした。



 最後の第15試合は、RIZINバンタム級タイトルマッチ。2019年8月に初めてのKO負けを喫し、RIZINバンタム級のタイトルを失った堀口恭司選手。対するは、そのタイトルを奪った朝倉海選手。堀口選手の怪我により約1年半ぶりのタイトルを賭けた再戦です。5分3R、RIZIN MMAルール(肘あり)。

 堀口選手は伝統派空手である松涛館の出身だそうですが、その影響なのかこの間合い。他の試合の写真と見比べても、この間合いの広さはやりにくいでしょうね。そして堀口選手が序盤から繰り出したカーフキック。これも伝統派の組手で良く使われる足払いに非常に近いです。1発目はまさに相手を崩す蹴りだったのですが、2発目は1発目よりステップインしてからの蹴りで、少し効いたように見えました。3発目で朝倉選手は体勢を崩し、膝をつく。朝倉選手の出足を封じるには良い牽制です。4発目は完全に斜め上から前足の脛に入りました、ダメージを与える蹴りです。これで朝倉選手が怯んだように見えました。そこへ堀口選手が遠い距離から右ストレート(これも伝統派の上段逆突きに近い)で一気に間を詰めると、右ショートフックが朝倉選手の顎を捉えダウン。倒れた朝倉選手に堀口選手がパンチを浴びせかけ、レフェリーストップ。1R2分48秒TKO、このように試合は始終堀口選手のペースでした。やはり序盤からのカーフキックが身体的にも試合のリズム的にも有効だったかなという感じです。

 前述のように、この61㎏級は良い選手がひしめき合っているようですので、今後も注目していきたいと思います。15年ぶり、それも初の生での総合格闘技観戦でしたが、良い経験をさせていただきました。このような機会をいただいた方に感謝申し上げます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初の大晦日格闘技観戦①-RIZIN26(さいたまスーパーアリーナ)

2021年01月10日 | スポーツ観戦記


 少し更新が遅くなってしまいましたが、昨年の大晦日はご縁あって「さいたまスーパーアリーナ」へ総合格闘技イベント「RIZIN26」の観戦に行ってきました。自分でやっていた空手は別として、ボクシング以外の格闘技観戦は初めてです。その上、総合格闘技はかれこれ15年位観ておらず、ほとんど知識皆無で臨みました。



 第1試合、大相撲元十両貴ノ富士のスダリオ剛選手vs長年総合格闘技界を牽引してきたミノワマン選手。5分3RのRIZIN MMAルール。190㎝、114.65kgsのスダリオ選手が浴びせかけた、この大会話題のカーフキック(伝統派空手の足払いのような技)3発でミノワマン選手を沈め、グラウンディングの状態からパンチを浴びせかけたところでレフェリーストップ。172㎝、82.70kgs、44歳のミノワマン選手、少々気の毒な気がしました。一方、まだ23歳と若いスダリオ選手はこれからが楽しみです。



 第2試合、中原太陽選手vs倉本一真選手。5分3RのRIZIN MMAルール。どちらもアマチュアレスリングから修斗という経歴の両者ですが、中原選手は4年近いブランクがあっての復帰戦ということもあってか、実力に開きがあるように感じました。序盤の中原選手のハイキックを見た時、「勝負あったかな」という気がしました。試合は1R 2分12秒、倉本選手のグラウンドキックからレフェリーストップ。特に1R残り1分30秒頃でしたか、ストレートから倒れかけた中原選手の顔面への膝はヤバかったですね。



 第3試合は地元根岸出身、良く知りませんがYouTuberとして有名らしい、シバター選手。その対戦相手は直前まで知らされていませんでしたが、キックボクサーのHIROYA選手でした。RIZIN MIXルール。試合は当初ドロー判定だったのですが、後になってからシバター選手の腕ひしぎ十字固めにHIROYA選手がタップしていたのではないかというビデオ検証で、結果として2R38秒でシバター選手の勝利となりました。180㎝、92.60kgsのシバター選手に対し、167㎝、74.80kgsのHIROYA選手。体格差もさることながら、HIROYA選手は本来65kgs以下級の選手。試合が組まれてからどれだけの調整期間があったのでしょうか?



 第4試合、浅倉カンナ選手vsあい選手。5分3RのRIZIN女子MMAルール(肘あり)。試合は終始浅倉選手のペース。小刻みなパンチを的確に当て、組んでもアマチュアレスリング世界選手権3位の実績を持つあい選手ではありましたが、浅倉選手が主導権を握っているように見えました。判定で、浅倉選手の勝利。



 第5試合、佐々木憂流迦選手vs瀧澤謙太選手。5分3RのRIZIN MMAルール(肘あり)。結果は3R判定で佐々木選手の勝利でした。グラウンドになると佐々木の方が上手であり、それに伴って瀧澤選手は相当消耗している様子でしたが、それでもフルラウンド戦い抜く気持ちの強さと、パンチやキックにはかなり見るべきものがありました。今後注目していきたい選手です。因みに、佐々木選手の「憂流迦」というのはサンスクリット語で「天狗」を意味するらしいです。



 個人的には今大会のベストマッチだったかもしれません。弱冠19歳(僕の子供と同い年です!)、小学生から単身タイに渡り、日本人として初のムエタイ2大タイトルを統一したという、驚くべき吉成名高選手。対するは、こちらも19歳、ムエタイで3冠タイトル(ライトフライ、フライ)を持つペットマライ・ペットジャルーンウィット選手。正真正銘の実力者同士の一戦。ルールもほぼムエタイの3分3R、RIZINキックボクシングルール(3ノックダウン制)。軽量級の圧倒的スピード感、接近しての肘打ちなど、まさに息をのむ緊張感です。何より吉成選手の前へのプレッシャーが圧巻でした。終始試合を支配し、ショートストレート、右肘で2度のダウンを奪うと、最後は1R2分20秒、ボディへの膝蹴りから左肘のコンビネーションでKO。いやはや、ボクシングの井上尚弥選手を彷彿とさせる、もの凄い選手がいるものです。

 どうでもいい話ですが、ペットジャルーンウィット選手と僕は鼻の形が似ています。高校生の頃、先生に陰で「タイ人」とあだ名されていた理由が分かった気がしました。



 休憩を挟み、第7試合は大ベテランの所英男選手vsリオデジャネイロ・オリンピック、アマチュアレスリング銀メダルの太田忍選手。5分3RのRIZIN MMAルール。所選手は以前、実家近くの吉野町・マルワジムに来られていたようで、何となく親しみがあります。15年位MMAを見ていない僕でも、2005年にノゲイラ選手を破ったのは憶えていますし。

 一方、MMAはデビュー戦となる太田選手。結果はさすがに経験値の差か、2R2分24秒、アームバーに対するタップとなりましたが、それでも捕まえた時の馬力、体幹の強さはさすが銀メダリストで非凡なものを感じました。これからが楽しみです。



 第8試合は、昨年8月にRIZIN初参戦、ここまで2勝1敗の萩原京平選手vsキックボクシングからMMAに転向し、デビュー戦となる平本蓮選手。5分3RのRIZIN MMAルール(肘あり)。キックボクシングで輝かしい実績を持つ平本選手でしたが、この試合は2R1分29秒、グラウンドでコーナーに追い詰めた萩原選手が、マウントポジションから平本選手にパンチを浴びせかけ、TKOとなりました。

 個人的見解ですが、格闘技は制約があるからこそ、その中で有効な技術が昇華されていくものだと思っています。その結果磨かれた高度な技術が美しく、観る者の心を惹きつけるのではないでしょうか。ですから、選手一人ひとりのベースはレスリングであってもキックであっても良いのですが、異種格闘技戦のようなものよりも、MMAはMMAとしてのルールの中で磨かれた高度な技を競い合う方が面白いと思うのです。

<つづく>

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2020年12月アクセスランキング

2021年01月05日 | 人気記事ランキング


新たな1年が始まりました。このブログも、14年目に入っております。

早速ですが2020年12月にアクセスの多かった記事トップ10をお知らせいたします。

2位:「エコノミーとエコロジーの語源」(45ヶ月連続)
4位:「仲本工事さんのお店に行ってきました-仲本家(自由が丘)」(7ヶ月連続)
5位:「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」(8ヶ月連続)
7位:「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(4ヶ月連続)
8位:「『上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会』に参加してきました」(9ヶ月連続)

 定番の5記事は12月も揃いました。先月、久しぶりに銀座へ行く用事があったのですが、上田さんのバー『TENDER』が昨年6月に閉店されたと聞き、ショックを受けました。しかし、いずれまた場所を変えて再開される予定とのことです。上田さんは僕の父と生年月日が全く同じ、いつまでもお元気で活躍していただきたいと思います。

 それ以外の記事では、4位「非常時の中、迎えた10周年‐第121回YMS」。7カ月の休止期間を経て、昨年10月に再開したYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)でしたが、再び緊急事態宣言が出されそうな雰囲気の中、今年も波乱の始まりとなりそうです。

 9位「横浜で鯨を味わい尽くす-横浜くじら(宮川町)」。横浜の飲食店は、ダイヤモンドプリンセス号の騒ぎからですから、恐らく日本で最も長く新型コロナの試練に耐え続けているのではないかと思います。既に関内駅周辺の景色も変わりつつあり、本当に心配です。

1 トップページ
2 エコノミーとエコロジーの語源
3 非常時の中、迎えた10周年‐第121回YMS
4 仲本工事さんのお店に行ってきました-仲本家(自由が丘)
5 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
6 7つの大罪-罪なたらすぱ(西新橋)
7 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
8 「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました
9 横浜で鯨を味わい尽くす-横浜くじら(宮川町)
10 やさしいアーユルヴェーダ入門-トリカトゥとギーづくり

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ナカノ株式会社】本年もよろしくお願いいたします

2021年01月04日 | リサイクル(しごと)の話


 ナカノ株式会社は、本日より2021年の営業を開始いたしました。旧年中は大変お世話になりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、例年は年始に「ニューイヤーパーティ」を開催しておりましたが、今年は新型コロナ感染拡大の報を受け中止のやむなきに至りました。年始を皆様とお会いして迎えられなかったこと、大変残念に思っております。力を合わせ、一刻も早くこの状況を克服し、晴れて皆様とお目にかかれますことを楽しみにしております。

 ということで、本年は社内に向けてではありますが、代表取締役社長中野博恭と取締役副社長窪田恭史より年頭のあいさつをオンラインで発信することから新年をスタートいたしました。

 「活かす」、「他利自得」、「Ecosophy」を社会のニュー・ノーマルに!本年も社員一同邁進してまいりますので、皆様の変わらぬご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 2021年、皆様にとって良い年となりますように!

繻るに衣袽あり、丑年生まれの窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする