窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

4年ぶり地方開催です-第52回燮(やわらぎ)会

2022年02月18日 | 交渉アナリスト関係


 2022年2月17日、4年ぶり3回目の開催となる(2020年九州大会は中止)、第52回燮会が長野県飯山市より行われました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会で、地方大会はまだオンライン研修が一般的でなかった2017年に地方会員の皆様との交流を目的に始まりました。

【過去の地方大会については、こちらをご覧ください】
第33回燮会(九州大会)
第39回燮会(金沢大会)



 ただ生憎、飯山市は例年にも増しての大雪。さらに新型コロナの蔓延防止等重点措置の影響も相俟って、残念ながら直前にオンラインのみの開催となりました。上の写真は前日に北陸新幹線から撮影した飯山市の様子です。翌日の開催当日はさらに猛吹雪でした。



 代わりに、今回のナビゲータをしてくださった1級会員の山中さんが、飯山の魅力を伝えるスライドを用意してくださいました。個人的には雪が解け、山菜の豊富な5月頃にぜひ行ってみたいと思いました。新幹線で東京から1時間47分、意外と近いです。



 第二部は、「コンセンサス・ゲーム」をやりました。コンセンサス・ゲームというのは、ある問題解決の課題に対して、個人およびグループで検討を行い、コンセンサス(合意)を得た結論を導き出すというゲームです。「三人寄れば文殊の知恵」と言いますが、一般的に個人より集団で考えた方がより創造的な解決ができるということを体感するゲームになります(一方、「グループ・シンク(集団浅慮)」と呼ばれる逆の現象もあります)。個人的には14年前にやったことがあるのですが、すっかり忘れてしまっていました。



 課題は、砂漠の真ん中で遭難したグループが生き残るために使えるアイテムの中からどれを選ぶかというもの。選定理由も含めて議論します。やってみた感想ですが、本当に自分では考えもしなかった視点や気づきが得られ、様々な視点から物事を見る、そのために協力することの大切さを感じました。また、話し合っているうちに、本当に自分たちが遭難しているかのような没入感が楽しかったです。

 結果は、どのチームも個人成績よりグループ成績の方が優れていました。主催者のお一人である加藤さんが結論としてお話しされていたように、交渉力も「対話によって双方にとってより良い解決策を創造する力、またそれによって他者との信頼関係を築く力」と言い換えることができます。またそのために大切なのが、「自分も相手も尊重し、提案を相手が受け取りやすくする」、アサーティブ・コミュニケーションではないかということでした。

 次回、第53回燮会は3月18日(金)開催の予定です。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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身近にあるリスクとその管理―第134回YMS

2022年02月14日 | YMS情報


 2022年2月9日、mass×mass関内フューチャーセンターにて第134回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。神奈川県の蔓延防止等重点措置により懇親会は中止となりました。

 さて、今回から『刑事塾』3回シリーズです。その第1回目は、ベストブレイン株式会社の堀尚弘様より、「リスク管理の課題とヒント」と題してお話しいただきました。

【これまでのYMS×刑事塾】
第58回YMS「刑事塾:ビジネスで役立つウソや人間心理の見抜き方」
第94回YMS「元刑事が教えるウソ〔人間心理〕の見抜き方〜実践編 人狼ゲームで見抜く〜」
第126回YMS「サイバー犯罪担当元刑事が教える「SNS調査術」~ネット情報を駆使して人や会社の本質を見抜く」

 堀さんは警視庁に入られ、長く公安部におられました。少なくとも我々の世代であれば誰もが知る大型経済事件やテロ事件に関わってこられました。退官後起業され20年になるそうです。

 我々企業人の身近に潜む様々なリスクの中で、今回は以下の点についてお話しいただきました。

1.社員・職場関係のリスク
2.業務・取引関係のリスク
3.両者に重なるリスク

 生々しい事例が数多く登場しましたが、ここに書くこともできませんので以下ではお話しの要点をまとめたいと思います。



1.社員・職場関係のリスクについて

 業務以外の個人飛行についての教訓(ある有名企業幹部の事例)。

 本人の証言に合理性はあるのか?
 誰が第三者的に判断するのか(本人の一方的証言のみで判断してよいのか)
 「性弱説」(注)を持って見直す必要

注:人は基本的に悪いことを積極的にしようと考えているわけではないが、非常に脆く弱い存在であり、状況や環境によっては悪いことをしてしまう(つまり魔が差すこともある)ものであるという認識のこと。

 被害者の泣き寝入りがあってはならない、会社の問題として捉えなければ大きなリスクに発展する可能性がある。
 加害者の「覚えていない」は通用しない(実際、裁判所は被害者の証言をもって有罪判決を下しました)

2.業務・取引関係のリスクについて

【社内】
 通報制度は密告とは違う、社員を守る行為である
 社内コミュニケーション(特に上司と部下の)委縮の解消
→部下に「相談しても大丈夫」と感じさせる「3つの一言」(良い所の気づき、存在を感じさせる、失敗しても頭ごなしに怒鳴らない)
 相談、ヒアリングのスキルを上げる(上手な相談は拡散する。また、不正を正当化する行為に対する牽制にもなるなど、複数の効果が期待される)
 ヒアリングは取り調べではない。難しく考える必要がないが、思い込みに注意。
 世間話→確認・査定→締めのプロセスを辿る。各段階で相手の反応を観察、裏にある感情を探る
 会社が変わるという期待感が醸成された段階で、「兆候アンケート」を実施(リスク管理に取り組んだポジティブな成果として、社員の定着率が上がったということがあった)。

【社外】
 増加する悪質クレーム、カスタマーハラスメント、炎上
 本社総務の警察OBが顧客を反社と決めつけたことが火に油を注ぎ、大事件に発展したことがあった

※「反社」の定義は曖昧
指定暴力団・・・法令で認定要件が具体的に決まっている
非指定暴力団・・・法令で認定要件
反社会的勢力・・・・法令で決まっていない

 過剰な特別扱いしない、異常な相手の理解や共感を求めない
→ただし、本当に悪質なクレーマーは稀なケース
 公平・公正な手続きを踏む
 無理難題が通じないことを気づかせる
 大切なのは道義的謝罪(「謝ってはいけない」というのは誤り)→事実・要求の確認(挙証責任(注)を意識)→締め括り(氏名、連絡先の確認)

注:訴訟上、ある事実の存否が確定されない場合、そのことによって一方の当事者が受ける不利益な負担のこと。民事訴訟では事項により原告と被告とに分配され、刑事訴訟では原則として検察官が負う。証明責任、立証責任ともいう。

 対応を中断する基準を定めておく。場合によっては警察を呼んでも良い
 悪人はアイコンタクトが優れている 同調と豹変で相手を疲弊させる

【ケーススタディ】
※以下のようなケースへの対応
「誠意を見せろ!」
「以前は良かった、差別か?」
「分かったんだな?」
「土下座しろ!」

※逆に言ってはいけないこと
炎上ワード:差別、政治、衛生に関するもの
地雷ワード:誤解を招いたとしたら 「~としたら…」

 知識不足がトラブルに発展することもある、早めにアドバイザーに相談することも必要。

3.両者に重なるリスクについて(リスク管理のポイント)

 違和感の有無をチェックする
 登記、名刺、話し方 客観性のある違和感に要注意
 アドバイザーは必要
 企業防衛指針の3つのレベル(すぐやめろ 注意しろ 経過観察しろ)
 普段どう予防するか(リスクオタクのマニュアルは役に立たない)
 最悪事態(注)にいかにダメージを最小化するか、収束時、どう信用回復に努めるかを考える
 4つの責任を意識

予見(想定)
回避(対処)
説明(記録)
社会的責任(法的責任とは違う)

 2つの成果(効率性とポジティブ/ネガティブな効果)の効率的な獲得を目指す
 誹謗中傷はスルーが一番
 相手担当者に問題がある場合、その上司との関係を作る

注:起きてはならない事態にあってはならない原因が指摘される事態のこと。



 日頃中小企業に身を置いていると、「そんなことが本当にあるのか?」と思うような驚くべきことが日常で現実に起きていることに気づかされます。ただ、事例の根底にある様々な要素に目を向けると、決して我々も無関係なことではないと思いました。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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第2回燮読書会に参加しました

2022年02月07日 | 交渉アナリスト関係


 2月1日、第2回燮読書会に参加しました。オンラインでの開催で、今回も東京、神奈川、岐阜、石川、長野など各地から参加がありました。

 さて、第2回はローレンス・E.サスカインド著、『ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則』(ダイヤモンド社、2015年)の後半です(前半については、前回の記事をご覧ください)。

第4章:交渉相手の勝利宣言を思い描け-自分にとって最高の条件を、相手に納得してもらう
第5章:交渉にファシリテーションを活用せよ-自分の立場を守り、合意が崩れないようにする
第6章:組織の交渉力を高める-常に交渉を有利に進められる企業になるには? 

 今回もファシリテーターの波戸岡さんがサマリー資料を作って下さいました。お忙しい中、本当にありがとうございます。



 これを元に、早速ブレイクアウト・ルームに分かれてディスカッションを行いました。

・アメリカでは、調停者がビジネスとして成り立っている。この点は日本と違う。
・大企業では確かに内部交渉に多大な労力がかかる。
・嘘を嘘であると指摘することが本当に良いことなのか?
・全体として内容がとりとめもない。

等々、様々な感想が飛び交いました。ここでのディスカッションの良い点は、参加者が持つ様々な交渉経験を共有できることです。

 つづいて、今回の範囲に関連する交渉理論面の補足を行いました。今回のトピックは、

・対立する利害関係者間の調整プロセスをいかに構造化するか?

 激しく対立する交渉を進めるのに、中立的第三者による調停を提案している交渉の本は数多くあります。また、具体例として単一交渉草案(SNT)のような手法が取り上げられることもあります。しかし、具体的に調停者がどのようなプロセスを辿って対立する利害関係者を交渉テーブルに着けたのか、あるいは合意に結び付けたのかを構造的に説明したものは、今のところ出会えていません。

 そこで、今回はL.キーニーの1994年の論文” Creating Policy Alternatives Using Stakeholder Values”より、キーニーらが”PrOACT”と呼ばれる意思決定フレームワークを用いて、いかにして対立する利害関係者を交渉テーブルに着かせたのかについて、お話ししました。



 なお、論文中ではキーニーが”PrOACT”を使用したとは明示されていません。しかし、その内容が”PrOACT”のプロセスに即したものであること、キーニー自身が”PrOACT”の提唱者の一人であることなどから、キーニーが”PrOACT”を用いたと考えても差し支えないと思っています。“PrOACT”については、「第42回燮会」で採り上げました。また、「交渉アナリストニュースレター 2020年2月号~8月号」でも採り上げておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。

2020年2月号
2020年4月号
2020年6月号
2020年8月号

 キーニーらが中立的第三者として手掛けたのは、1991年、東マレーシア・サバ州に残る原生林「マリアウ・ベイシン」で発見された石炭鉱脈の開発をめぐり、その予備調査をどのように行うかというものでした。彼らが優れていたのは、考えられる全ての利害関係者の代表を意思決定プロセスに参加させ、“PrOACT”に則って各利害関係者の持つ関心を深く洗い出し、誰ものけ者にすることのない代替案を創出する下地を整えたことです。

 もちろん、全ての利害関係者を参加させることが常に正解とは限りません。1996年、北アイルランド和平交渉にあたり、調停者のジョージ・ミッチェルはあえて過激な右派と左派を外すことによって大多数の中道連合を形成し、和平を実現させました。しかし、ミッチェルとキーニーのアプローチで共通しているのは、対立する利害関係者に共同作業を行わせ、そのコミュニケーションの過程で、共同で問題を解決しようという雰囲気を作り上げたことです。この点が、今回のポイントになります。

 個人的な話ですが、僕は仕事でサバ州を訪れたこともあるので、その意味でもこの論文は興味深いものでした。

 第2回も参加された皆さんからは、

・書籍の内容をきっかけに皆さんの体験が共有できて良い
・交渉の書籍を読むこと自体が良い
・自分では気づかない交渉の方法が得られる
・もう少し読む範囲を分けても良い

といった感想が寄せられました。

 第3回は2022年4月開催予定、本も2冊目に入り最近翻訳が出されたばかりの、この本が選ばれました。



繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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2022年1月アクセスランキング

2022年02月01日 | 人気記事ランキング


 今日から2月。今年の冬は寒いですが、今月は豪雪の日本海側に行く予定があります。雪に不慣れな横浜育ちなので、雪国に行くのにどんな服装をしていけばよいのか思案しています。聞けば今年は大雪らしいです。

 さて2021年1月にアクセスの多かった記事、トップ10です。

 意外にも長かったのですが、久しぶりに「エコノミーとエコロジーの語源」が昨年6月以来、個別記事のトップに立ちました。1月も更新が少なくて済みません、そのせいかトップ10は比較的日頃からアクセスの多い記事で占められたようです。常連の3記事は以下の通り。

2位:「エコノミーとエコロジーの語源」(57ヶ月連続)
3位:「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」(20ヶ月連続)
6位:「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(4ヶ月連続)

 かつての定番、8位:「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました」は、昨年8月以来の復帰となりました。

 そして、何があったのか分かりませんが、以下の2つの記事が12月に続き2カ月連続のランクイン。

4位:「マツコデラックスさんの筆跡」
7位:「仲本工事さんのお店に行ってきました-仲本家(自由が丘)」

 当月の記事としては、5位「第133回YMS」の記事に多くのアクセスがありました。

1 トップページ
2 エコノミーとエコロジーの語源
3 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
4 マツコデラックスさんの筆跡
5 最強のメンタルトレーニングは「感謝」-第133回YMS
6 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
7 仲本工事さんのお店に行ってきました-仲本家(自由が丘)
8 「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました
9 2021年12月アクセスランキングー本年もよろしくお願いいたします。
10 葉巻とお酒のマリアージュを楽しむ会

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