窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

大貫3安打11奪三振、宮﨑初盗塁!-日本プロ野球2023 横浜vs巨人23回戦

2023年09月26日 | スポーツ観戦記


 前回観戦時の試合前はまだ強い日差しが降り注いでいたのですが、気がつけばだいぶ夕暮れが早く、そして涼しくなりました。日中こそまだ気温が上がりますが、確実に秋の訪れを感じます。

 さて、今シーズン最後になるかもしれませんが、9月25日、横浜スタジアムに横浜vs巨人23回戦の観戦に行ってきました。

 この試合前時点で3位の横浜は2位広島と2ゲーム差、そして4位巨人とも2ゲーム差。残り7試合となってCS進出をかけた争いが熾烈になってきています。しかし横浜は2日前の中日戦に敗れ、前日の対巨人は今永投手を先発させながら6vs0となす術もなく、2位を伺うどころかこの直接対決の行方次第では3位すら危うくなる状況に追い込まれています。



 それだけに極めて重要な一戦となったこの試合の先発を担ったのは、ここまで3勝4敗の大貫投手。長く勝ち星から遠ざかっていますが、前回登板した対阪神戦では、勝ち星こそつかなかったものの、6回1安打7奪三振、3四球、自責点0の好投を見せました(ただし死球2)。その立ち上がりは、長野選手、門脇選手を連続三振、坂本選手を2球でサードゴロに討ち取るなど、上々でした。全体的に、145㎞前後のストレートに非常に力があったのと、外に逃げるスライダーが素晴らしかったように感じました。



 一方、巨人の先発は5勝4敗のメンデス投手。前回8月13日の対戦では、6回わずか2安打、8三振、1点に封じ込まれました。



 そのメンデス投手に対し、先頭の大田選手がいきなり初球をレフト前に弾き返します。前日零封され、とにかく先制点が欲しい中、球場が大いに盛り上がります。



 この日はソト選手を欠き、さらに攻撃力の低下したオーダーで、三浦監督としてもやはり先制点を重視していたのでしょう。初回から桑原選手は犠打の構え。ところが、あえなくキャッチャーフライ。続く佐野選手は8球粘ったものの、フルカウントからショートゴロ。牧選手もセンターフライに倒れ、無得点。何となく「今日もか…」という雰囲気が漂います。



 大貫投手は2回表、二死から丸選手、秋広選手に連続安打を浴び、二塁・一塁のピンチを迎えますが、吉川選手をセンターフライに討ち取り、この回も無失点。



 2回裏。先頭の宮﨑選手が、ひょっとしたらホームランかと思わせるレフトポール際へのファウルの後、造作もなく右方向に打ち返して出塁。



 下位打線に向かう局面でしたが、ここでもやはり6番伊藤捕手に犠打の指示。伊藤捕手が確実にこれを決め、一死二塁。



 知野選手は150㎞を超えるストレートで押してくるメンデス投手の前に三振に倒れますが、続くルーキー林選手が、初球の外角低め153㎞のストレートをセンター前に落とします。少し浅かったですが、一塁走者の宮﨑選手も必死に走りました。こうしてもぎ取った1点が、結果的には決勝点となりました。

 その後は大貫投手とメンデス投手による締まった投手戦が展開されます。3回表は、投手からの打順ながら2三振を含む三者凡退。



 4回表は二死から大城選手に安打を許し、続く丸選手にはストレートの四球を与え、二塁・一塁のピンチを迎えます。しかし、秋広選手の痛烈な打球をピッチャーライナーでここも無失点。一方、メンデス投手も5回4安打4奪三振2四球2失点でしたから、及第点の投球だったと言えるでしょう。



 4回裏。四球で出塁した宮﨑選手が、伊藤選手の空振りによるアシストがあったとはいえ、まさかの盗塁。宮﨑選手、プロ初盗塁を記録しました。



 先に継投に動いたのは巨人。6回裏からルーキー船迫投手が登板します。



 その船迫投手に対し、二死から伊藤捕手が左中間を抜く二塁打で出塁。継投によって試合が動く局面かと思われたのですが、続く知野選手が見逃し三振。



 すると逆に7回表、好投を続けていた大貫投手が先頭の大城選手にフルカウントから四球を与えてしまいます。その大城選手に巨人は代走重信選手を送ります。



 続く丸選手は、この日11個目となる、それも三球三振で切って取りますが、次の秋広選手の打席で重信選手が盗塁成功。



 その秋広選手にも四球を与え、一死二塁・一塁のピンチ。ここまでで投球数はちょうど100球。



 好投を続けていても、スタミナがまだあるように見えても、何故か100球を境に突如崩れることの多い印象のある大貫投手。そのイメージもあながち間違いではないのか、横浜ベンチはここで躊躇なく大貫投手に代え、力のある伊勢投手を投入します。とはいえ、大貫投手は6回3/1で100球3安打11奪三振3四球無失点と素晴らしい内容でした。この試合は偏に大貫投手の好投の賜物と思います。一方、巨人は秋広選手に代走増田選手を送ります。



 その伊勢投手は、チームとしてよくやられている印象のある吉川投手をファーストゴロに討ち取り、まず二死三塁・二塁とします。すると巨人は船迫投手に代え、代打梶谷選手を送ります。これに対し、横浜は梶谷選手と相性の良いエスコバー投手を投入。1点勝負にかける意思を示します。すると今度は巨人が左投手に代わったということで、代打の代打としてウォーカー選手を送ります。



 そのウォーカー選手にエスコバー投手は155㎞、155㎞のストレートで押し、最後は内角足元に落ちるスライダー。これをウォーカー選手ハーフスイングで三球三振。1発のある最後まで気の抜けない巨人打線とは言え、この7回表の1点をめぐる攻防を制した横浜が、一歩勝利に近づきました。



 8回表は4番手ウェンデルケン投手が登板。1安打と申告敬遠で二死二塁・一塁の局面とはなったものの、全体としてはしっかりと抑えました。



 そして9回表は昨季楽天から移籍し、今シーズンは途中から山崎投手に代わる抑えとなり、安定した活躍を見せている森原投手が登板。丸選手、岸田選手、吉川選手を全く危なげなく三者凡退に切って取り試合終了。しかし、森原投手はこの試合で足を痛めたようで、気がかりです。

 とにかく、これでこの日試合のなかった広島に1.5ゲーム差、巨人とは3ゲーム差となりました。翌日はここまで15勝を挙げ勝利数のトップを独走する東投手と、9勝のうち実に4勝が横浜という山﨑伊織投手との投げ合いです。横浜打線にはぜひやられっ放しではない、攻略の工夫を見せて欲しいところです。

 因みに僕の今シーズンの観戦成績は甲子園の1試合(阪神vs中日)を除き、2勝4敗でした(昨年はCS1試合を含め、4勝4敗)。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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日本の歴史から見る統合型交渉のヒントー第61回燮(やわらぎ)会

2023年09月25日 | 交渉アナリスト関係


 2023年9月22日、品川区の文化コミュニティ施設「きゅりあん」とオンラインとのハイブリッドで第61回燮会が開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。生憎の天候で会場参加者は少なめでしたが、その分オンラインで全国から大勢の1級会員にご参加いただきました。

 今回も第60回に続き三部構成で行われました。第Ⅰ部は9ヶ月ぶりとなる「第21回交渉理論研究」。テーマは、「統合型交渉の理論(1)-テンプレート設計/評価」。2018年3月の第1回から5年半、ようやく統合型交渉の理論に入りました。



 一定の価値を分配する分配型交渉と比べ、価値を増大させ分配する統合型交渉は定性的に語られることが多く、定量的な理論で説明されることはほとんどありません。H.ライファの“Negotiation Analysis: The Science and Art of Collaborative Decision Making”では、交渉テーブルに載せられる全ての論点の価値を「望ましさ(desirability)」という単位に換算した「テンプレート」を用いて、価値交換によるパイの増大を定量的に表します。





 テンプレートによる定量評価は、当該交渉以外の最善の選択肢、いわゆる「BATNA」についても行います。こうすることで得られた値が当該交渉を続けるか、立ち去るかの留保点となり、自分が作成したテンプレートによる価値の評価が妥当なものかをチェックすることもできます。各論点の価値の総和がBATNAの値を上回っていれば「交渉」を選択することになりますので、その値が交渉の出発点となります。テンプレートの利点は自分の中の曖昧な価値を数値化することで明確にできるということです。

 テンプレートは交渉相手も作成します。とりわけ、交渉の論点はお互いに事前交渉(ブレインストーミング)を行うことで抽出します。そして双方作成したテンプレートを持ち寄り、自分にとって高く、相手にとって低い価値(あるいは自分にとって低く、相手にとって高い価値)を交換(「不等価交換」)することにとって、価値の総和を大きくしていきます。



 こうしたテンプレートはあくまで理論上のもので、実際の交渉で作成されることはほとんどないかもしれませんが、ハーバード大学のライファだけでなく、スタンフォード大学のマーガレット A.ニールのような心理学から交渉にアプローチしている学者でも、統合型交渉に際してテンプレートを作成することを勧めています(彼女はテンプレートを「論点・価値マトリックス」と呼んでいます)。

 ここでは、ニールが著書『スタンフォード&ノースウエスタン大学教授の交渉戦略教室 あなたが望む以上の成果が得られる!』の中で紹介している「『かっこいい車を買う』論点・価値マトリックス」を題材に、それで価値交換を行った場合のシミュレーションを紹介しました。今回はお話しだけでしたが、いずれロールプレイ・シミュレーションでみなさんにもテンプレート作成およびそれによる価値交換を体験していただける機会を設けられればと思っています。





 第Ⅱ部は、篠原祥さんによる、恒例の「実践的交渉戦術と実例」。今回取り上げられたのは、D.マルホトラ、M.ベイザーマン著、『交渉の達人 ──ハーバード流を学ぶ』より、「条件付き契約」と呼ばれるケースの紹介でした。



 「条件付き契約」は、「交渉アナリストニュースレター2019年5月号」で紹介した「ピタ―ド戦術」のひとつ、「コンティンジェンシー契約」と同じです。これは不確定な要素に対して相手が絶対に自信を表明する時、それを逆手に取ることでリスクを回避する方法で、相手の「偽りの創造戦術」を見抜く上でも有効ですが、①情報の非対称性があり相手の方が絶対的に情報優位である場合は機能しない、②「空手形」にならないよう、曖昧な部分について双方の見解を明確にしておく必要があるなど、いくつか注意点があります。



 第Ⅲ部は、同じく1級会員田口泰規さんよる発表。テーマは、「日本の歴史から見る統合型交渉のヒント~調和・融合の世界から~」です。

 出雲市出身で弁護士の田口さんは、司法試験勉強中に老荘、禅、易経などを読み始め、東洋思想との出会いがあったそうです。その後は仕事の傍ら武道の先生にも師事されています。交渉術との出会いは2011年だそうですが、統合型交渉という考え方の中に、東洋思想、武道との共通点を見出されたそうです。こうしたお考えの下、2021年には独立し、円満解決を目指す法律事務所maruを開設されています。

 さて、交渉理論は主にアメリカを中心として構築されたものです。したがって、その内容は多かれ少なかれアメリカの文化や慣習、価値観の影響を受けています。もちろん全体としては普遍的に有用なものですが、部分においては確かに日本人に適用するには多少のアレンジが必要なのではないかと思われる場合もあります。何故なら、理論の運用に際して、我々は無意識に東洋的精神風土の影響を受けるためです。

 交渉理論に限らず、有史以来、我々は外来の文化や思想の影響を受け続けてきました。しかし、その過程で行われてきたのは、今回のタイトルにある「調和と融合」です。交渉理論の中でも「統合型交渉」はとりわけ日本人にとって馴染みやすいものだと思われますが、それでも我々にとっての統合型交渉に調和、融合させていく過程は必要でしょう。そのために、今回は、田口さんが日本の歴史の中から統合型交渉の調和・融合のヒントとなる事例をご紹介いただきました。

1.国譲り神話~幽顕分任の神勅

 記紀に登場する「国譲り神話」とは、天津神(天照大御神)が国津神(大国主命)から葦原中国の国譲りを受ける説話です。712年に『古事記』、720年に『日本書紀』を編纂した大和朝廷は天津神の系譜とされます。つまり、この神話は大和による出雲支配の話なのですが、征服者側の記紀であるにも拘らず、「国譲り」という形をとっているところが興味深い点です。中国の歴代王朝が実質は簒奪であっても「禅譲」という形式をとったのと似ているかもしれません。

 ただ、禅譲とも違うのは、この「国譲り」の過程で、天照大御神は①大国主命が住む「天日隅宮(後の出雲大社)」を「天照大神の住居と同じように、柱は高く太い木を用い、板は厚く広くして築く」こと、②第二子の天穂日命を大国主に仕えさせること、③顕界は天照の子孫が治め、幽界は大国主が治めること(「幽顕分任」)、つまり政治と祭祀を分離して祭祀は出雲に任せることを申し出たという点です。実際、2000年の発掘調査では、高さ48mあったと推定される巨大柱の遺構が発見されています。

 つまり、統合的解決のヒントとして、

①話自体が破壊・征服ではなく統合・融合の物語である。
②異次元の解決(「土地」の支配権の分配から「幽界/顕界」という別次元の分配を行った)
③互敬・互譲であり、一方的支配ではない。
④どちらが勝ったか(勝ち方、負け方をデザインする)

といった要素が「国譲り神話」に見られます。

2.丁未の乱~十七条憲法

 538年に仏教が伝来すると、587年、仏教の礼拝を巡って崇仏派の蘇我氏と排仏派の物部氏との間で武力衝突が起こります(丁未の乱)。この結果、物部氏が敗れ、本格的に仏教信仰が始まります。蘇我氏とともに崇仏派だった聖徳太子が日本初の官寺、四天王寺を建立したのは593年のことです。604年には、聖徳太子が日本初の成文法、十七条憲法を制定。その中で、「篤く三宝を敬へ(2条)」と外来の仏教を信奉することを布告します。

 ところが、そのわずか3年後(607年)、推古天皇が「神祇禮祭の詔」を発します。簡単に言えば、「私の治世に至り、どうして天地の神々の祭りを怠ることができようか。どうか群臣たちも心を尽くして天地の神々を拝することに努めるように」というお触れです。つまり、従来の神々に仏教がとって代わるのではなく、仏と共に神々をも敬うようにということです。実際、その後の日本では神道と仏教が融合して独特の信仰体系として再構成されていきます(神仏習合)。

 さらに、「十七条憲法」に見られる統合的解決のヒントを見ていきましょう。

1条
和(やわらぎ)を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。人にはそれぞれつきあいというものがあるが、この世に理想的な人格者というのは少ないものだ。それゆえ、とかく君主や父に従わなかったり、身近の人々と仲たがいを起こしたりする。しかし、上司と下僚がにこやかに仲むつまじく論じ合えれば、おのずから事は筋道にかない、どんな事でも成就するであろう。」

10条
「心に憤りを抱いたり、それを顔に表したりすることをやめ、人が自分と違ったことをしても、それを怒らないようにせよ。人の心はさまざまでお互いに相譲れないものをもっている。相手がよいと思うことを自分はよくないと思ったり、自分がよいことだと思っても相手がそれをよくないと思うことがあるものだ。自分が聖人で相手が愚人だと決まっているわけではない。ともに凡夫なのだ。是非の理をだれが定めることができよう。お互いに賢人でもあり、愚人でもあるのは、端のない鐶のようなものだ。それゆえ、相手が怒ったら、むしろ自分が過失を犯しているのではないかと反省せよ。自分ひとりが、そのほうが正しいと思っても、衆人の意見を尊重し、その行うところに従うがよい。」

※訳文はこちらから引用させていただきました。


① 「和(やわらぎ)」という理念。統合に向かう原理(例えば上の神仏(儒)習合やクリスマスの習慣)
② 多様性、相容れなさの容認。価値判断の保留(人の違うことを怒らざれ)。
③ ともに凡夫、ともに賢愚(交渉相手に向かう心構え。あなどらない)。

3.喧嘩両成敗

 645年、大化の改新、672年、壬申の乱を経て日本は唐の制度を取り入れて中央集権化を進めていきます。701年には唐の律令を参考に「大宝律令」が施行されます。しかし、日本の律令は定着することなく、平安時代に入ると形骸化していきます。やがては公家法、寺社法、武家法などが乱立していくこととなりました(中世法)。戦国時代に入ると、各地の守護大名や戦国大名の間で分国法が制定されていきます。分国法に見られる大きな特色の一つが「喧嘩両成敗」です。

 それまでの中世法においては、例えば南北朝時代の法諺に「獄前の死人、訴えなくんば検断なし(牢獄の前に死体が転がっていても、訴える者がいなければ捜査は始まらない)」というように、自力救済色の強いものでした(例えば、曽我兄弟の仇討ち)。これに対し、「喧嘩両成敗」は、自力救済を否定し、領主に裁判権を委ねさせるものです。

 例えば、『今川仮名目録』8条は、次のようになっています。

喧嘩におよぶ輩は理非を論ぜず双方とも死罪に處すべきである。はたまた、相手から喧嘩を仕掛けられても堪忍してこらえ、その結果疵を受けるにおよんだ場合、喧嘩の原因を作ったことは非難すべきであるが、とりあえず穏便に振る舞ったことは道理にしたがった幸運として罪を免ぜられるべきである

※訳文はこちらから引用させていただきました。

 また『甲州法度之次第』17条にも「喧嘩の事是非におよばず成敗加ふべし。但し取り懸るとも雖も 堪忍せしむるの輩に於いては罪科に処すべからず」と、同様の記述があります。

 喧嘩両成敗は、現在でも慣習として根強く残っているのではないでしょうか?喧嘩両成敗に見る統合的解決のヒントとしては、

① 「衡平」、「均衡」のバリエーション。普遍的原理を定め、優劣をつけず、痛み分けを指向する。
② 抑止効果(本当に両成敗することが目的ではない)

4.山岡鉄舟の西郷隆盛との談判~江戸城無血開城~無刀流

 有名な江戸城無血開城は西郷隆盛と勝海舟との会談によって実現したと一般に理解されていますが、実際は剣豪山岡鉄舟と西郷との駿府における会談で事実上決せられたと言われています。

 1867年、徳川慶喜は大政奉還を行い、朝廷への恭順の意思を示します。しかし、朝廷側はこれを信用せず、討幕軍は駿府城まで迫ります。慶喜は恭順の意を伝えるため、山岡鉄舟に駿府行きを命じました。駿府に入った鉄舟が討幕軍の陣営の中を丸腰で「朝敵徳川慶喜家来、山岡鉄太郎まかり通る」と大音声で呼ばわって歩いて行ったというのは、鉄舟の胆力を示すエピソードとして有名です。

 西郷と面会した鉄舟は、慶喜の恭順の意向を取り次ぐ条件として、以下の5つを提示します。

①江戸城の明け渡し
②城中の兵を向島へ移す
③兵器引き渡し
④軍艦引き渡し
⑤慶喜を備前池田家に預り

 しかし、鉄舟はこの内最後の条件を拒否しました。西郷は、これは朝命であると脅しましたが、鉄舟は「もし島津公が同じ立場であったなら、あなたは受け入れられないはずだ」と反論しました。西郷はこの鉄舟の忠義心に心を動かされたと言われています。結局、慶喜は水戸藩謹慎となり、江戸城無血開城が実現しました。

 この山岡鉄舟から学べる統合的解決のヒントは、次のようなものが挙げられます。

①捨て身、真心一身(誠実であること)

 鉄舟の遺した歌に、「まこころの ひとつ心の こころより 萬のことは なり出にけむ」というものがあります。全ては自分の真心から成就するのだという意味です。西郷との交渉で圧倒的に弱い立場にあった鉄舟が、西郷の条件を全て呑んで妥協していたとしたら、慶喜の運命は変わっていたかもしれませんし、江戸は戦渦に巻き込まれていたかもしれません。また、その混乱に乗じた列強の介入を招き、日本の運命すら変わっていた可能性があります。

②相手の信頼を得る。

 この時、鉄舟と西郷は初対面でしたが、二人の間の信頼関係は生涯にわたり続きました。明治6年、西郷たっての依頼で、鉄舟は明治天皇の侍従(教育係)となります。逆に明治7年、西南戦争前、西郷を説得するため、新政府は鉄舟を西郷の下に派遣しました。この信頼関係も、両者が持つ「忠義」と「至誠」いう強い価値観で結びついたからこそ築かれたものでしょう。

③ 無刀流剣術、自然の勝

 1885年、鉄舟は49歳で一刀正伝無刀流を開きます。鉄舟の有名な言葉に「無刀とは何ぞや。心の外に刀なきなり。敵と相対する時、刀に依らずして心を打つ。是を無刀という」というものがあります。最終的な局面では、小手先のテクニックではなく心が大切になるということです。また、「無刀」とは、勝負を争わず、自然の勝ちを実現するということです。交渉も争い(相対的勝利)ではなく、争いを超越したところで勝ちをなす(絶対的勝利)という点で目指す境地は同じだと言えるでしょう。

 今回田口さんが挙げられた4つの歴史的エピソードから、皆さんは何を感じ取られたでしょうか?

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2年ぶり秋の日本酒会

2023年09月20日 | ワイン・日本酒・ビール

 
 9月19日、長年お世話になっている「ほっこり酒処 千」さんでの「秋の日本酒会」に参加させていただきました。まだ秋と呼ぶには蒸し暑い日が続いていますが、キレのある夏酒とはまた違った、秋らしい旨味を楽しめるお酒と、それに合ったお料理を堪能しました。

 早速始めましょう。初めは、左から「秋茄子と万願寺唐辛子の煮浸し」、「トマトとチーズマリネ」、「かに味噌豆腐」です。



 合わせるのは、山形県米沢市、新藤酒造店の「別誂 雅山流(がざんりゅう) 純米吟醸 紅葉」。ボトルも秋らしいですね。米の旨味とまろやかで厚みのある甘みを感じますが、余韻は短く、飽きずに飲めます。特に茄子の煮浸しには良く合いました。



 続いて「わらさの刺身」、「しめ鯖」、「さんまの串焼き」。



 登場したのは、ブランデーのようなユニークなボトルの、京都伏見、藤岡酒造「蒼空(そうくう)純米生酒・美山錦」。先ほどの雅山流より米感は薄れますが、より甘みが強く、特にしめ鯖やさんまのような青身魚と良く合いました。



 三皿目は一転して洋風です。「手ごねハンバーグ」に「海老フライ」。「ほっこり酒処 千」さんのハンバーグは隠れた(?)逸品。



 これにどんなお酒を合わせてくるのだろうと思っていると、何とにごり酒が出てきました。和歌山県海南市、平和酒造の「平和どぶろく 弐ノ濁」。焼酎で使われる白麹で醸造されており、ヨーグルトのような甘みと酸味がなるほど洋食と合うなと思います。度数も9%なので、甘酒のように飲めます。



 続いて洋食に見えますが、「秋鮭 濃厚豆乳クリームチーズ煮」。ホワイトシチューとも粕汁とも違う、和様折衷の味わい。



 イメージですが、スパークリングワインのボトルのようなお洒落なエチケットの、新潟県南魚沼市、高千代酒造「59Takachiyo CHAPTER X 純米吟醸 AI-IPPON 無調整 生原酒」。2023年の新酒限定品。微発泡の爽やかな口当たり、フルーティな香りにしっかりと余韻の残る甘味は、単体で楽しめるお酒ですが、やはり濃厚でクリーミーな上の料理ととても良く合いました。



 デザートも秋なので巨峰とナシ。



 デザートにもお酒を。福井県吉田郡永平寺町、黒龍酒造「黒龍 貴醸酒」。仕込み水の代わりにアルコールを使うことで、本来アルコールに分解されるはずの糖分が残り、非常に甘く、コクのあるお酒に仕上がっています。結果として、ナシとも良く合いました。



 最後にご紹介するのは、新潟県新潟市、峰乃白梅酒蔵「菱湖 純米ドライ NEW NIIGATA DRY」。フルーティな辛口、飲みやすいので量が行けます。

ほっこり酒処千

神奈川県横浜市神奈川区西神奈川1-8-11



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脱税はコスパ最悪ー第155回YMS

2023年09月14日 | YMS情報


 冒頭のタイトルは僕が言ったのではなく、今回のセミナーの結言です。

 9月13日、「夢・あいホール」にて第155回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。



 今回の講師はエンリベル株式会社代表取締役、中尾俊貴様。東京国税局ご出身の中尾様より、「税務調査セミナー」と題して、どんな会社が国税局や税務署から狙われるのか、どうやって不正がバレるのか、税務調査対策はどうすればいいのかなど企業経営者にとってためになるお話をいただきました。

 早速ですが、国税局から狙われる会社とは、どういう会社なのでしょう?大きく分けると3つあり、

① 決算書に異常な数値が見られる(例えば粗利が不自然な変化をしている)場合
② 申告書の計算の誤りや記載されている取引先の内容などに不審な点が見られる場合
③ 退職者や経理担当者からの密告があった場合

だそうです。巷間信じられているような、国税が不正を把握していながらあえて泳がせておくというようなことはないとのこと。

 そして税務調査を受けた法人の内、何割の法人が誤りを指摘されているか?実に80%にも及ぶそうです。指摘するのが役目ですから当然と言えば当然かもしれません。そして査察が告発した場合、ほぼ100%有罪になるそうです。不正が指摘された場合の追徴課税の平均金額は570万円(個人事業主で250万円)。

 税理士に帳簿を作ってもらっているにも拘らず、80%もの確率で指摘が起こるのは、税法の解釈に幅があるためです。そしてよくある節税商品には、中尾さんからみるとかなり危険なものが多いとのこと。

 次に税務調査の基本的な流れです。事前調査→内観調査→日程調整→実地調査→銀行調査→反面調査→交渉→調査まとめ→調査終了という流れで進み、平均2カ月ほどかかります。この内、「実地調査」は2日間で、

・1日目
AM 概況聴取、社内現況確認
PM 帳簿書類調査、宿題
・2日目
AM 前日の宿題聴取、帳簿書類調査
PM 帳簿書類調査、まとめ

という流れで行われます。社長へのヒアリングは主に初日に行われます。

 さて、税務調査における「不正」とは、一言で言えば二重帳簿のような「隠蔽、仮装」行為を指します。帳簿の誤りは、意図的に収入の一部を帳簿に記載していなかったというような場合が「不正」で、管理不足で誤って計上が漏れていたような場合は「申告漏れ」になります。両者の違いは意図的だったか否かで、追徴課税の率に大きな差が出ます(30%と10%)。しかしながら、実際には現金収入の計上が漏れていた場合は、ほぼ確実に不正として認定されるそうです。

 また、税務調査は帳簿の確認だけとは限りません。様々な角度から不正に繋がる有形無形の証拠が調べられます。今回のセミナーでは、そのいくつかの具体的な事例が挙げられ、非常に興味深いものでした。

 こうした財務会計上のリスクは故意でなくとも病気と同じように経時的に進行していくものだそうです。だからこそ早期の対処が重要で、中尾さんの会社では税務リスクを事前診断するサービスを提供しているそうです。

 脱税など不正が疑われる場合は、最大7年までさかのぼって調べられます。その結果多額の追徴課税される代償は大きく、結局のところ割に合いません。つまり、冒頭に述べたように「脱税はコスパ最悪」というのが今回の結びでした。いつもより質疑応答の時間が長く設けられたのですが、次々と挙がる質問のため時間の長さが感じられることはありませんでした。参加された皆さんの関心の高さがうかがわれました。



繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

過去のセミナーレポートはこちら
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第2回大阪交流会―第154回YMS

2023年09月06日 | YMS情報


 2022年9月5日、昨年8月の第141回YMSヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)以来2度目となる大阪交流会を開催しました。今回も、地域ポータルサイト 「オオサカジン」の「大阪の社長インタビュー」で取り上げられた社長の皆さまとYMSとの合同セミナー&交流会となりました。



 第1部のセミナーですが、主催者であるジェイ・ライン株式会社の本社会議室にて行われました。



 講師は、株式会社FCEトレーニング・カンパニー執行役員の松村聖也様。「7つの習慣ⓇBusiness Ownership研修体験会~当事者意識を向上させる3つの要素とは?~」と題し、1996年に日本でも一世を風靡し、未だに最もよく読まれているビジネス書の一つであるスティーブン・R・コヴィー著、『7つの習慣』のフレームワークを用いた、「内側から変わる」、「主体性を発揮する」組織づくりの2日間研修の概要と、その一端に触れる体験会が行われました。



1.当事者意識意とは?



 そもそも「当事者意識」とは何でしょう?辞書によれば「自分が関わる仕事や物事を『自分の物』と捉えて取り組む姿勢」だそうです。しかし、それは「一人一人が好き勝手に仕事を進める」こととどのように違うのでしょう?独り善がりではない、真の当事者意識を生み出すには、以下の3つの要素が必要になります。

①先に大切なのは、「あり方」
②その上で、「価値観」に共感する
③さらに「体系化」で加速

 つまり、当事者意識とは知識やテクニックではなく、個人の「あり方」の問題ですが、さらに個人が所属する組織が共有する価値観に共感していることが、単なる独善的な行動との違いになります。

当事者意識を持った人材を育成するには、

1.テクニカルスキル…専門分野の仕事を進めるにあたって必要な知識、スキル、テクニック
2.(セルフ)マネジメントスキル…コミュニケーション、PDCA、報連相など分野に関わらず必要なスキル
3.(セルフ)リーダーシップマネジメント…理念、ビジョンの体現者。仕事に対してのあり方。

の3つの層に働きかけることが必要ですが、多くの企業は1.にのみアプローチし、2.にアプローチしているところは少なく、まして3.にまで踏み込んでいるとことはほとんどないそうです。それが構成員一人一人が当事者意識を持った組織がなかなか生まれないことに一因となっているのでしょう。

2.パラダイムとは?



 そして組織の価値観を浸透させ、効率よく人材育成していくためには、組織の価値観を整理してフレームワーク化することが必要です。しかし、この作業には非常に長い時間がかかります。ある企業では、この作業だけで3年を費やしたとか。そこでどんな企業にも適用でき、効果が実証された既存のフレームワークを利用するというのも方法の一つです。そのようなフレームワークとして、『7つの習慣』の「SEE-DO-GETサイクル」があります。SEE-DO-GETサイクルは、人にはぞれぞれ「物の見方、考え方(SEE)」があり、それに基づいて「行動を起こし(DO)」、行動することによって「結果を得る(GET)」と考えます。つまり、良い結果を得るには、その根本にある物の見方、考え方(これをパラダイムと言います)をまず見詰め直す必要があるのです。



 パラダイムには、①人によって違う、②間違ってしまうこともある、③自分の行動を制限してしまう、④変えることができる(パラダイムシフト)といった特徴があり、今回は私たちがいかに先入観や思い込みに囚われているか、そしてそれが自分の行動を制約しているかに気づき、またそれは変えることができるものであることを体験するいくつかのワークを行いました。スティーブン・R・コヴィーは次のように言っています、

「人生において小さな変化を起こしたいのであれば、私たちの態度や行動に対し働きかければよい。しかし、劇的な変化を望むなら、土台となるパラダイムを変えなくてはならない」

3.第1の習慣:「主体性を発揮する」とは?

 今回は7つの習慣の体験セミナーですので、7つある習慣の内の第1の習慣、「主体性を発揮する」にだけ触れました。

 「主体性」とは、「どのような状況に置かれても、価値観に基づき反応を選択する」ことを言います。これと正反対の行動は「状況によって起きた感情や気分で反応すること」で、これを「反応性」と言います。人は外部から刺激を受けると、それに伴って何らかの感情が生起します。しかし、その感情に対してどのように反応するかを選択することもできるのです。主体的な人は、自身の価値観に基づき、どう反応するかを自ら選択します。自分で選択するのですから、その責任も自分にあると考えます。これが7つある習慣の内の第一に位置付けられているということは、それだけ反応的ではなく主体的に生きることが重要だからなのでしょう。

4.やりっ放しで終わらせないために



 最後に、どんなに良いトレーニングを受けたとしても、そこで終わりでは何にもなりません。学んだことが日常業務の中でも浸透し、文化として定着しなければなりません。そのために、研修をデザインするにあたっては、ただ「誰に対してどのような内容を行うのか」を考えるだけでなく、「研修が終わった後どうするか」というフォローアップや定着アプローチを初めから考えておく必要があります。さらには、「何のために研修を実施するのか」その目的を言語化し、対象者に対して事前通知し、合意を得ておく必要があります。



 セミナー終了後は、場所を移して懇親会が行われました。横浜と大阪、初対面とは思えないほど盛り上がり、楽しく有意義な夜を過ごすことができました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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2023年8月アクセスランキング

2023年09月01日 | 人気記事ランキング


 写真は今日ようやく訪れることにできた、数年前からずっと気になっていた平河町にあるソラノイロの6種類のチャーシュー醤油麺です。

 本日2023年9月1日は関東大震災から100年です。ちょうどお昼だったため火災による被害が大きかった東京に比べ、地盤の弱い横浜は家屋の倒壊による被害が大きかったと聞いています。当時16歳だった、当社の創業者である祖父も10人いた弟妹の内6人を亡くしたそうです。その50年後に自分が生まれ、今日までさらに50年、平和にラーメンが食べられる奇跡に感謝しなければなりませんね。また、当時わずか6年で東京が奇跡ともいえる復興を成し遂げたことを思うと、今日の我々は先人から学ぶべきものがあるのではないかと思います。

 さて、2023年8月にアクセスの多かった記事、トップ10です。まず定番記事ですが、8月も残ったのは、

4位:「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(23ヶ月連続)
8位:「初めてのスカイバーカウンター-日本プロ野球2019 横浜vs中日10回戦」(6ヶ月連続)
10位:「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」(39ヶ月連続)

5位:「この界隈で人気の焼き鳥屋さんのようです-吾一 堂山店」(3ヶ月連続)

でした。

 YMS関連の記事、2位:「帰ってきた、本来の夏ワインセミナー―第153回YMS」が個別記事でトップになり、どういうわけか「検定ごっこ」の9位:「カテゴリー(ナカノ株式会社検定)」が、これを作った2011年5月以来、初めてトップ10に入りました。一体何があったのでしょうか?

 8月は飲食関連の記事が多くランクインしました(そういう投稿が多かったこともあるのですが)。みなさん楽しく食べて飲んで、町がもっと活気づくと良いなと思います。

1 トップページ
2 帰ってきた、本来の夏ワインセミナー―第153回YMS
3 羊肉よう出る!ージンギスカン羊DEL(川崎)
4 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
5 この界隈で人気の焼き鳥屋さんのようです-吾一 堂山店
6 新鮮なお魚を豪快にー築地山加(相模原)
7 夏本番!創作和食と日本酒の会
8 初めてのスカイバーカウンター-日本プロ野球2019 横浜vs中日10回戦
9 カテゴリー(ナカノ株式会社検定)
10 久村俊英さんの超能力を目撃してきました

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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