窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

横浜商科大学でお話しさせていただきました③

2021年11月30日 | リサイクル(しごと)の話


 11月29日、横浜商科大学・梶文彦先生の授業「中小企業の海外進出」において、僕ほか社員4名でお話しさせていただきました。昨年は残念ながら新型コロナの影響で中止、オンライン形式ではありましたが2年振りの開催となりました。

 2017年から4回目となりますが、第3回は僕が出張で参加できなかったため、このブログでご紹介するのは3回目になります。

2017年11月27日:横浜商科大学でお話しさせていただきました
2018年11月22日:横浜商科大学でお話しさせていただきました②



 学生の皆さんには、事前にこちらの動画「循環型社会の機先を制す~ものづくりを支える資源再生人」を視聴していただき、ある程度当社に対するイメージを持っていただきました。



 その上で、僕からまず会社概要、事業概要、海外進出のきっかけ、海外事業内容、求める人材像などについてお話しさせていただきました。



 つづいて、海外進出先であるフィリピン・スービック工場の説明。この日の講義のためにスービック工場のフィリピン人スタッフが工場紹介のPVを作成してくれました。



 そして、モバイル端末で工場の現場を中継して回り、実際にフィリピンで働いている人たちの様子や職場の雰囲気などをお伝えしました。こういう点はオンライン授業の良い点ですね。新型コロナ前であればできなかったことです。



 当社には横浜商科大学の卒業生が多数在籍しており、海外を含むそれぞれの方面で重要な役割を担っています。最早学生さんから見れば親子ほども違う世代になってしまいましたが、それだからこそお伝え出来た部分もあったのではないかと思います。また、それぞれ違う部署に所属している卒業生が話をすることで、動画やプレゼンなどではお伝えしきれなかった、当社の様々な側面をリアルな話でお伝えできたのも良かったと思いました。

 過去には実際にこの授業から当社に興味を持ってくれた学生さんもいらっしゃいます。今年も貴重な機会をくださった梶文彦先生には心より感謝申し上げます。学生の皆さんの少しでもお役に立てたのでしたら、大変うれしく思います。ありがとうございました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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第17回ネゴシエーション研究フォーラムに参加しました

2021年11月26日 | 交渉アナリスト関係


 オンラインという形ではありますが、約2年ぶりとなる第17回ネゴシエーション研究フォーラムが11月25日、開催されました。

 今回は、日本交渉協会の「表情分析プラクティショナー養成オンデマンドコース」開講に伴い、特別編として日本交渉協会特別顧問、空気を読むを科学する研究所代表の清水建二先生に「交渉に使える! 表情観察・分析力向上セミナー」 と題してお話しいただきました。

 実は清水先生、過去に二度日本交渉協会でお話しいただいておりますので、表情分析とはどのようなものか、宜しければそちらもご覧ください。

第11回ネゴシエーション研究フォーラム:「微表情を交渉で活かす」
情報収集テクニック研修:「微表情・しぐさから相手の心理を見抜く」

 さて、表情を含む、姿勢やしぐさなどの非言語コミュニケーションを観察する目的は、その源にある感情を推測することで、対人コミュニケーションをより良いものにしていくことです。しかしながら、表情一つとっても人間の表情は約1万種あると言われており、これにしぐさなどの会話のシグナルが加わると、それこそ情報源は無数に存在することになります。

 その中で、表情には万国共通と言われる表情が7つ(初期の研究では6つと言われていました)あります。まずはこの7つの基本感情表情(悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚き)を手掛かりに、売買交渉や接待などの場面で表情分析がどのように活用できるのかというのが、今回の趣旨です。

 因みに、新型コロナウィルスの影響で、世界中の学校で授業のオンライン化が急速に進みました。そうした中、画面を通じた受講者の表情を読み取り、授業の質の改善に役立てていこうという研究が早くも行われています。

1.売買交渉①:お客様の「分かる」、「分からない」を「見える化」する

 今回の講義の興味深いところは、模擬交渉で実際に現れた表情の動画が見られたという点です。動画①は、お客様に商品の説明をしている際、お客様の顔に現れた表情から隠された感情を読み取り、文脈に応じた適切な対処の方法を考えるというものです。

 動画①のお客様は、眉間にしわが寄り、眉毛が下がりました。これは表情について学んでいない方でもお分かりだと思いますが、熟考の表情です。熟考は表情筋の動きとしては基本感情の「怒り」と同じです。

 つまり、この方はよく考えたいという欲求を持っている、口では「なるほど」と言っていても実はこちらの説明が理解できていない可能性があると推測できます。そうであれば、理解しているかを確認する、質問があるか聞く、ゆっくり説明するなどの対応をとることで、お客様の中の不協和を和らげることができます。

 動画①は、非常にはっきりと表情が現れたので分かりやすいものでした。しかし、現実世界ではいつもこのように分かりやすく表情が出るとは限りません。そこで動画②では、同じ人による非常に微妙な熟考表情と、そうでない表情を見比べました。このような微妙な表情を微表情と言います。通常、0.5秒以下で現れ消える表情を微表情を指しています。実はこの微表情は意図的に制御することが難しいため、本当の感情を探る手掛かりとしてより有力なものとなります。その代わり、微表情が読み取れるようになるためにはある程度訓練が必要となります。

2.売買交渉②:お客様の「懐事情」を「見える化」し、交渉の流れを変える

 動画③は、売買交渉において提示した単価に対する相手の反応です。この交渉相手からは、驚きと嫌悪の表情が読み取れました。表情の意味するところは「不快なものを取り除きたい」ということですが、交渉の文脈から判断して、価格の理由を補う、条件付き割引を提示するなどの対応が考えられます。このように、表情を文脈から判断し、どこに感情が向けられているかを推測することが、一般的に「心を読む」と言われている行為だと言えます。

 研究によれば、表情認識力の高い売り手はモノを高く売ることができるという実験結果が出ているそうです。交渉学では、ZOPA(合意可能範囲)を推測することが良い交渉結果を生むために非常に重要だと言われています。表情認識から相手の留保価格を推測することができればZOPAを推測することが可能になりますので、より良い交渉結果を生むことにつながるというわけです。

 動画④では、提示された単価に対して、口角が横に広がり、頬が持ち上がる表情が読み取れました。これは恐怖と嫌悪であり、その価格を不都合だ、排除したいと考えていると同時に切羽詰まった状況であると推測できます。つまり、価格は満足できないが、かといって合意しないわけにもいかないと感じていると考えられるので、やはり条件付き割引といった代替案を提示することなどが対応として考えられます。

 一方、動画⑤では、提示された価格に対して、口角が上がりました。これは幸福、即ち心地よい状態が続いてほしいという感情です。つまり、ほぼ間違いなくZOPAに入っており、合意は可能だと推測できます。

3.接待:表情から相手の好みを探る

 動画⑥は、同じ人が水、美味しいもの、美味しくないものの三種類の飲み物を飲み、そこに現れた表情を読み取るというものでした。水の場合の表情は、その人のベースラインだと考えることができます。人によって顔つきは様々です。初めから眉毛が下がっていたり、口角が歪んでいる人などがいます。ですから、表情を読むにあたっては、その人の普通の顔(ベースライン)を観察しておくことも大切なのです。

 3つ並んだ動画の内、ある動画では眉が上がったあと下がり、口角下がりました。これは基本感情で言えば驚き、怒り、悲しみです。つまり、障害を取り除きたいという意味があり、その飲み物を美味しくないと感じていると推測できます。そういう場合は、さりげなくその飲み物を下げたり、次回に活かしたりするといった対応ができます。味覚と表情については、美味しいものより美味しくないものの方が出やすいようです。しかし、接待を受けていてあからさまに美味しくない表情をする人はそういないでしょうから、美味しそうなふりをしたマスキングされた表情から漏出するネガティブ表情を見逃さないことです。



 さて、以上で講義は終わり、質疑応答に移りました。参加者の皆さんからチャットで質問を受け付け、それを僕と清水先生との対談形式で回答していきました。表情分析に初めて触れたという方が多かったのではないかと思いますが、核心を突いた興味深い質問が数多く寄せられ、さらに議論を深めることができたと思います。

 表情分析に興味を持たれた方は、冒頭にご紹介した「表情分析プラクティショナー養成オンデマンドコース」でさらに理解を深めていただければと思います。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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大阪と結んでの利他セミナー-第131回YMS

2021年11月11日 | YMS情報


 11月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第131回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。



 今回の講師は、YMS最多登壇(8回目)のお馴染み野原秀樹先生。インプロ(即興劇)を得意とされる野原先生の講座では、毎回歌ったり、踊ったり、芝居をしたりの連続(オンラインセミナーでさえ、「謎解き」でした)だったのですが、今回は何と「踊らない」セミナーです。

<過去の野原先生によるYMS>
第33回(2013年4月):「ドラマチックコミュニケーション~今、求められるコミュニケーションスキルとは?~
第44回(2014年3月):「『ドラマチックコミュニケーション』で非言語スキルアップ!!
第55回(2015年2月):「コミュニケーションを楽しもう!!エンジョイカード『ワイワイ』で話し上手・聞き上手
第66回(2016年1月):「インプロ(即興)で会話力を磨け!! 体感『ドラマチック・コミュニケーション』
第77回(2016年11月):「『インプロ』で楽しい時間を過ごしませんか?感度を磨いて創造しましょう!
第99回(2018年9月):「成果を創造するファシリテーションスキル
第118回(2020年7月):「オンラインでチームビルディング『謎解き』ワークを楽しもう!!



 テーマは「企業文化として根付かせたい『利他の精神』」、野原先生が展開する「利他メソッド」の概要と、今回新たな試みとして、利他メソッドを実践されている大阪の企業人の皆様とオンラインでつなぎ、生の体験談をうかがいました。平日のご多忙の中、ご参加いただいた大阪の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

 さて、さっそく野原先生より問いかけです。「利他の精神」と聞いてどのような印象を持ちましたか?

<会場の参加者より>
●最近よく聞く言葉。
●渋沢栄一の『論語と算盤』が注目されたように、古くて新しい言葉という印象。
●精神世界、宗教的イメージがある。
●日本には古くから「三方よし」の精神がある、多くの企業人が共有している精神ではないか?

 なぜ野原先生が企業に「利他の精神」を根付かせたいと考えているかと言うと、これからの時代は「人財」が企業価値を高めると考えられており、その人財づくりのために利他の精神が欠かせないためです。

 「人財」への注目は実際に近年の潮流としてあり、例えば財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスなども考慮したESG投資が拡大する中、「人的資本経営」が注目されるようになっています。人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方のことを言い、企業に人的資本の情報開示を求めるガイドラインとして、2018年に国際標準化機構より「ISO30414」が設けられています。アメリカの証券取引委員会は2020年8月に、上場企業に対し開示を義務化しました。

 また、経済産業省は2020年9月に、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」(いわゆる人材版伊藤レポート)を発表しています。同報告書は、①経営戦略と人材戦略の連動、②As-is To-beギャップの定量把握、③企業文化への定着の3つの視点と、①動的な人材ポートフォリオ、②知・経験のダイバーシティ&インクルージョン、③リスキル・学び直し、④従業員エンゲージメント、⑤時間や場所にとらわれない働き方の5つの要素から構成されています。野原先生は、④従業員エンゲージメントが、「利他の精神」を企業文化として定着させることと密接にかかわると考えています。

 では、その「利他」とは何か?辞書的な定義ではなく、野原先生が企業での実践の中で導き出したのは、

「他のために」を念頭に置き、「自分という枠を取り払い」、「自律的に」行動し、感謝と喜びを実感している状態

 簡単に言えば、①他のために何かしたいと思う心であり、②役に立てて有り難い、嬉しいと思う心であり、③他の喜びを自らの喜びとする心のことです。この「利他の精神」が土台にあって、近年注目されている心理的安全性の醸成や、エンゲージメントの向上、ウェルビーングが可能となり、結果として生産性の向上へとつながります。

 「利他の精神」を企業に文化として定着させていくための方法論が「利他メソッド」であり、何よりも①経営者の想いを言語化し伝えることから始まり、②経営層と想いを共有し、③より良い人間関係を構築していくというステップを踏みます。

 さて、このステップについて、「利他メソッド」を実践されている大阪の中小企業(製造業)のA社長に聞いてみました。

「人間の本質として、誰かのために何かをした時、必ず何かの形(感謝)でかえってくる。自分が相手に対して行動を起こしたことが報われる。このやり取りを繰り返すことで信頼関係が築かれ、距離が縮まる。そして人が自主的に動き出し、経営実績が向上する。

当社には『唯一無二』という価値観がある。会社も個人も唯一無二であろうということである。それは何かをして、相手に想いが通じて初めて可能になるもの。したがって、そのベースになるものが『利他』だと考えている。利他の精神を根付かせようと取り組み始めた当初、『管理者とは何か?』を問うてもありきたりの答えしか返ってこなかった。そこで管理者の役割を『社員の幸せを考えること』と定義し、ベクトルを合わせていった。その結果会社が劇的に変わり、笑顔があふれる企業風土になった」


 つづいて、大手生命保険会社のB支社長のお話しです。

「自分は11店舗、400人の女性営業職員を統括している。支社長の在籍年数が2年~3年という職場にあって、社員との距離を縮める方法はないか?と考え、これまでのべ1,000人の職員にバースデーカードを送り続けている。女性職員は彼ら同士でもらったカードを見せ合う。そんな時、決まり文句を書いていては気持ちが通じない。そこで、1年目は、一人一人のこれまでの行動からカスタマイズされたメッセージを送る。2年目は目標達成状況を踏まえたメッセージを送る。この効果を数値化するのは難しいかもしれないが、職員はずっとカードを持っていてくれたり、お礼の電話をくれたりする」

 そこで、同社の女性職員Cさんに、実際どう感じたのかを聞いてみました。

「自分はその400人のうちの一人。他の支社長もバースデーカードをくれる。しかし、定型文だったり、直近の仕事の話だったりすることがほとんど。しかしB支社長はこれまでの実績を見てくれる。さらに、新人を含め全員にくれる。野原先生の研修を通じ、B支社長のお話をうかがい、心の底にある思いがさらに理解できるようになった」

 YMSの参加者にも聞いてみました、Dさん。

「今はコンピュータを相手にする仕事だが、かつては50名程度の女性の中で男性一人という職場で働いていたことがある。なじむためにクッキーを焼いて持って行ったことで、ちょっとしたことで人間関係が大きく変わるという経験をしたのを思い出した。彼らとは今でも付き合いが続いている」

 再びA社長です。

「自分の会社に入った時、20年以上赤字が続いていた事業部があった。そこは雰囲気が悪く、縦割りの色が濃かった。そんな事業部のメンバーが、野原先生の研修でインプロをこなすことにより、一人一人自分の殻を破り、お互いの距離が近づくようになった。何より、一つの目標に合わせて力を合わせることを覚えた。つまり、それまで人のせいにし合っていた製造、資材、開発、営業が、自発的にお互いの問題を解決しあうようになったのである。この事業部の先月の利益率は20%を超える。職場の雰囲気が明るい。社員が幸せそうであることが嬉しい」

 YMS参加者Eさん。

「銀行に勤めていた頃、15名ほどの部下と一人一人昼食をとっていた。特に成績の悪い部下ほど密に接するよう心掛けた。こうした試みは社員のモチベーションを上げると思う」

 YMS参加者Fさん。

「自分は社長だが、まだまだ好き嫌いが出てしまう。業界自体が伝統的に上から目線の高圧的な風土。自分の会社も先代まではそうだった。それを自分なりに変えてきたが、今日の話で納得することが多かった。意識改革のためもっとやれることがあるのではないかと思っている」

 YMS参加者Gさん。

「自分は臨床心理士として、経営者に関わる立場。確かに業績の上がっていない企業は、文化として信頼関係が築けていない。しかし、企業文化は長年築かれてきたものなので、社員の認知として定着してしまっているところに変える難しさを感じる。それでも取り組んでいかなければならないと感じている」

 マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授は、「結果の質」を高めるためにはまず「関係の質」を高めよという「組織の成功循環モデル」を提唱しました。その際にカギとなるのはやはり、上記3つのステップの内最初の2つが経営者に関するものであったように、「経営者」だということができます。

 では3つのステップの最後、「より良い人間関係を作る」のに大切なことは何でしょうか?様々な意見があると思いますが、野原先生は「自己開示」であると言います。この自己開示には、自分の自己開示と相手から自己開示してもらうことの両方が含まれます。また、挨拶、共感を示す、相手に何かを依頼するといった、「自分の感情や願望を相手に伝える行為」はすべて自己開示に含まれます。相手からの自己開示も含まれるということは、この自己開示は相手の自己開示を「受け止める姿勢」とセットということになります。野原先生の言う広い意味での「自己開示」が「相互理解」につながり、「相互理解」は「コミュニケーションを活発化」し、「自発的協力行動」が生まれ、さらに「相互理解」を深める好循環を生み出します。

 この点について、さきほどのB支社長に聞いてみました。

「自律と協働まで行けていれば理想的だが、心理的安全性までは(自分たちの職場は)行っていると思う。特にコロナ禍で顔と名前が一致しないという特殊な状況の中、バースデーカードは「人となり」を伝える媒体となっている。今は集まることが難しいが、前任地では飲み会の席でカードの話題が出ることもあった。

コロナ禍で毎日朝礼ができなくなったため、毎月5分ミニ動画を作成し、発信するようにしている。例えば、『頑張らなあかん』というときは法被を着たりして、想いをビジュアル化するような工夫をしている」


 先ほどのCさん。

「B支社長の行動が相互理解として受け止められているか?全員がそうではないかもしれないが、接触回数の多い人ほど伝わっていると思う」

つまり、根気よく繰り返しが大切だということですね。

 3つのステップからさらにブレイクダウンして、「利他」を感じるための取り組みには、次のようなものがあります。

①傾聴、共感、承認→自己肯定→他者肯定
②<ここからが難しいのですが>自ら願っての行動、実践→利他の実践
③お役立ちの実感→利他の心
④感謝する、感謝される→感謝の心

 最後に、A社長に「利他」を感じるための取り組みについてうかがいました。

「幹部職員が自主的に行っている朝会がある。当社には社員が作成した43項目からなるフィロソフィーがあり、小冊子にして社員が持っているが、こちらが何を言うでもなく、社員から自発的にこのフィロソフィーから好きなものを選んで発表する活動が始まった。もう一つ、『喜びノート』と呼ばれる、人にしてもらったことを素直に語る時間がある。最初は照れくさいが非常に効果がある。

人間関係は感謝し、感謝されることから始まる。先日、とある工場の社員が母親の危篤で実家の沖縄に帰らなければならなくなった。彼の仕事を肩代わりできる社員は別工場にいたが、そこは非常に忙しい工場であった。それにもかかわらず、その工場の仲間が力を合わせて穴埋めし、そのスキルを持つ社員を快く応援に送り出した。身内の不幸から戻ってきた社員は涙を流して感謝していた。

当社で働く意義は?昔なら生活のため、収入のためだった。それが今は『恩返し』に変わった。ある社員から再び『生活のため』という声もあった。しかし、その意味は昔のそれとは違うものだった。つまり、最早会社が自分の生活と切っても切り離せないものになったという意味だったのである。我々がやっていること自体は地道なこと、しかし必ず大きな喜びとなって返ってくると信じている」


 上のGさんに教えてもらったことですが、従業員が自発的に同僚を助け、その援助が集積することにより、組織の効率や機能が高まると考える「組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)」と呼ばれる心理学の概念があるそうです。オーガン(1983)によれば、組織市民行動とは「①任意の行動であり、②公式の報酬システムによって直接、もしくは明確に承認されているものではなく、③集合的に組織の効率を促進するものである」と定義されています。利他の精神はこの組織市民行動の基底にあるものであり、利他メソッドは人間が本質的に持っている利他の精神を組織市民行動に発展させる水先案内人の役割を果たすものと言えそうです。







 さて、自分の殻を破り、関係の質を高めるため、今年に入って初めて中断していた懇親会を再開しました。

過去のセミナーレポートはこちら

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2021年10月アクセスランキング

2021年11月01日 | 人気記事ランキング


 今週11月4日で当ブログは開設後丸14年を迎え、15年目に入ります。最近は文章で書くより動画で表現する方が一般的なのかもしれませんが、文章は文章で役立つ面もあると感じています。これからもよろしくお願いいたします。

 さて、2021年10月にアクセスの多かった記事、トップ10です。10月は前半だけだったとはいえ、久しぶりに頻度よく更新したためか、10位まで比較的多くのアクセスがありました。ご覧いただきありがとうございます!

 特徴は、月半ば過ぎまで常連の中の常連、「エコノミーとエコロジーの語源」がランク外だったということです。最終的には6位に入りましたが、前月の5位からさらに順位を下げ3ヶ月連続で個別記事のトップから外れたのも初めてのことです。

常連記事の順位は以下の通り

5位:「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(2ヶ月ぶり)
6位:「エコノミーとエコロジーの語源」(54ヶ月連続)
9位:「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」(17ヶ月連続)

 個別記事として終始トップを守ったのは、第130回YMS「いつでも間に合う本気の婚活」でした。YMSとしての参加者も多かったですし、結構関心事なのかもしれません。

 3位「たらふくちゃん②ー太田町(関内)」は小さな居酒屋なのですが、結構「ファンです」という方とお会いします。隠れた名店ですね。

 6位「自分好みにカスタマイズできるフルーツサンドーFRUITMINE(馬車道)」は、たくさんの「いいね!」をいただきました。

1 トップページ
2 いつでも間に合う本気の婚活-第130回YMS
3 たらふくちゃん②ー太田町(関内)
4 APYエコツアー2021でお話しさせていただきました
5 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
6 エコノミーとエコロジーの語源
7 自分好みにカスタマイズできるフルーツサンドーFRUITMINE(馬車道)
8 移転後初の京城苑-吉田町
9 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
10 共創のための意見交換会-第50回燮(やわらぎ)会

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