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窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

「異文化対応力検定」にトライしました

2021年09月30日 | 表情分析


 昨日ご紹介した、「感情知性の基本を学ぶ」の受講に合わせ、やはりHumintellが提供している「異文化対応力検定(Intercultural Adjustment Potential Scale:ICAPS)」というテストをやってみました。

 「異文化対応力検定」とは、異文化適応と調整の成功と関連する4つの重要な心理的スキルを確実かつ有効に測定するためのテストです。長年の科学的研究により、これら4つのスキルは、文化間だけでなく、文化内における適応と調整の最も重要な予測因子の一部であることが示されています。したがって、海外に行く、異文化の人々と交流する、自分の社会や文化の中で働くなど、全般的に調整の可能性を測定するための最適なツールとなっています。

 異文化対応力検定(以下、ICAPS)は、6年かけて開発され、現在、世界中の様々な国や文化圏の人々、17,000人以上が受験しているそうです。ICAPSは、外国での生活に順応する可能性が高いか、または困難であるかを予測します。ですから、メンタルヘルスや人としての価値を測定するものではありません。

 ICAPSは、まず全体的な調整の可能性(OAP)スコアを出します。これは、他の国や文化への調整を成功させるために必要な、複合的な心理的スキルの指標です。次に、他の文化での生活への適応に関連していることがわかっている、4つの重要な心理的尺度のスコアを出します。全てのICAPSのスコア(OAPと以下の4つの尺度のスコア)の平均は50と計算され、全体の2/3が40〜60の範囲内にあります。約17%の人は60以上または40未満のスコアなので、大抵の人と比べて非常に高い、あるいは低いスコアとなります。55〜60のスコアはやや高いと見なすことができ、40〜45のスコアはやや低いと見なせます。スコアが60を超える人は、大抵の人ほど苦労せず、新しい文化に適応する可能性が非常に高くなります。また、スコアが40を下回る人は、大抵の人よりも新しい文化に適応するのが難しい可能性があります。

OAP =全体的な調整の可能性スコア
ERER =感情制御–感情安定性スコア
OPRI =開放性–硬直性スコア
FLCR =柔軟性と創造性スコア
CTSC =批判的思考と社会的誠実性スコア

 OAPを含む、上記5つの尺度は、以下のようなことを表しています。

全体的な調整の可能性(OAP)

 ICAPSの主な目的は、人が新しい文化や環境に順応することの相対的な難しさや容易さを予測することです。これを見る最善の方法が、OAPスコアを確認することです。OAPスコアは、他の尺度のスコアとは完全に独立して開発されたもので、他のスコアの平均値ではありません。

 OAPスコアが高い人が、新しい文化に適応するのに問題がないというわけではありません。ただ、大抵の人よりも困難を感じることなく適応できそうだというだけです。同様に、OAPスコアが低いということは、新しい文化に適応できないことを意味するのではなく、大抵の人よりも適応するのに苦労しそうだというだけです。

感情制御–感情安定性(ERER)

 ERERとは、自分の感情、特に否定的な感情をコントロールし、そのエネルギーを建設的な目的に向けることができる程度を指しています。それは、自分の感情経験や表現を監視および管理し、目標を達成するためにエネルギーを向ける能力です。ERERが異文化間の適応と調整にとって非常に重要である理由の1つは、適応と調整のために人が最初にやらなければならないことの1つが、その過程で生じる多くの障害に対処することであるため、そうした障害が人を感情的にするからです。昨日のブログでも取り上げた、感情反応を管理、調整する能力は、適応と調整を成功させるための鍵となります。

開放性–硬直性(OPRI)

 OPRIは、人が新しい経験、考え、感情を探究する程度を指しています。異文化間の相互作用は新しい経験と結びついているため、新しい経験への開放性は、異文化間の適応と調整に対処する全ての人にとって重要な特性です。開放性のスコアが低い人は、その反対の傾向、つまり硬直性を示します。これにより、異文化間の相互作用などの新しい経験に対処することが非常に困難になります。

柔軟性と創造性(FLCR)

 FLCRは、自分の考えや感情を新しい経験や状況に適応させることができる程度を指しています。これは、新しい経験、概念、考え方を自分のものとして吸収する能力ともいえます。FLCRは、カリスマ性、文化への適応、親しみやすさとも関連しています。柔軟性は、新しい経験を吸収し、新しい概念を学習して認知および行動のレパートリーとして内在化し、感情的にだけでなく認知的にも成長できるため、異文化間の適応と調整において重要です。創造性は、人が自分の認知的境界の外で考え、新しい適応の問題に対して新しい解決策を模索することを可能にするため、やはり異文化間の適応と調整において重要です。

批判的思考と社会的誠実性(CTSC)

 CTSCは、人が「型にとらわれず」考える、つまり創造的、ユニーク、自律的な方法で考えることができる程度を指しています。同時に、社会的規範を遵守できる程度、自分の行動が他者に与える影響を考慮する能力、柔軟性、社会の規則や慣習に対する気楽さ、他者との親交を積極的に追い求める姿勢も指しています。こうしたの特性は、異文化間の適応と調整にとって重要です。なぜなら、新しい環境で、あるいは自分とは全く違う他者と交流している間、人は規則、規範、社会的慣習を尊重し続ける必要があるからです。



 ということで、テストを受けてみました。選択式なので、すぐ終わります。終わると、5つの尺度についてのスコアと共に、各尺度についてのアドバイスが書かれたレポートがダウンロードできます。

 心理テストなどをすると大体いつもそうなのですが、これといった特徴がなく、平凡でつまらないんですよね…。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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「感情知性の基本を学ぶ」を受講しました

2021年09月29日 | 表情分析


 昨日に続き、Humintelllの「感情知性の基本を学ぶ」(ウェビナー)を受講しました。本講座は、日常生活での様々な目標を建設的に達成するため、感情を効果的に運用する能力、すなわち「感情能力」を向上させるためのガイドラインやヒントを学ぶ講座です。

 感情能力は、自分自身について読み取る能力と、他者を読み取る能力とに大別されますが、ここでは前者に焦点を当て、対人関係の改善や、ストレスの軽減(幸福感の増大)、生産性の向上に役立てることを目的としています。そのための基本として、まず感情のプロセスと感情反応の側面(感情反応性プロファイル)について理解し、感情能力を高めるため、プロファイルのどこに介入すればよいかを学びます。



 初めに、感情のプロセス(基本感情システム)について。人の行動は、文化やコンテクスト、その人の持つニーズなどの影響を受けるほか、感情の影響も受けます。その感情は、ある刺激を知覚し、それを過去の経験などと照らし合わせて評価することで引き起こされます(感情反応)。

 感情反応には個人差があります。例えば、何に敏感に反応するかも違いますし、起こった感情にどのようなラベリングをするか、いつするか、そしてその程度も様々です。その他、感情反応の速さ、強さ、持続時間、回復時間も異なります。これら感情反応の速さ、強さ、持続時間、回復時間を曲線で表すと、釣鐘型の曲線で表すことができ、D.Matsumoto博士はこれを「感情プロファイルの火山」(下図)と呼んでいます。つまり、これらプロファイルの個人差により、山の形は異なってくるわけです。



 例えば、反応の強さが強く、かつ持続時間が短ければ、山はより高く険しい形となるでしょう。逆に反応速度が長く、回復時間も長ければ、山は富士山のような広い裾野をもった形になるでしょう。

 続いて、感情能力を向上させることについてです。反応には「リアクティング(reacting)」と「レスポンディング(responding)」とがあります。どちらも「反応」と訳されますが、異なる概念です。リアクティングは、何を言うかや何をするかを無意識の衝動に制御させる反応のことをいい、レスポンディングは、何を言うか、何をするか、どのようにするかについて、代替案を考えさせる反応のことをいいます。「感情能力を向上させる」とは、感情反応をリアクティングからレスポンディングに変えることであり、それは感情プロファイルを理解し、それぞれのプロファイルに適切に介入することによって実現されます。それぞれの介入のポイントを「感情プロファイルの火山」に当てはめてみると、下図のようにあらわすことができます。



 即ち、感情能力を向上させる方法は、以下の4つになり、それらを四象限にまとめたものが下図になります。

・状況を調整する
・感情の気づきを早める
・回復時間を短縮する
・プロセスを内面化する



 この内、第四象限の「プロセスを内面化する」は、第一象限から第三象限までの方法を自分のものとして血肉化することですから、以下では第一象限から第三象限までについて説明します。

Ⅰ. 状況を調整する

 介入のポイントは「反応速度」の部分で、刺激に対する感情反応を遅らせることです。



 そのためには、感情的になる状況を分析し、状況を生み出している感情への気づきを深めます。それにより状況をより建設的に選択したり、自分が感情的になることについて想定(期待)を調整することができるようになります。

Ⅱ.感情の気づきを早める

 介入のポイントは、「反応の強さ」を抑えることです。



 ここで達成したいことは、感情的な時に生じる身体的変化を意識的に知覚する能力を向上させることです。それには、①日常生活から過剰な刺激を減らす、②混沌の中に秩序を見出す、③感情について想起する練習をする、の三つの方法があります。

Ⅲ.回復時間を短縮する

 介入のポイントは、「反応の持続時間と回復時間」です。つまり、身体が生理学的ベースラインに戻る回復時間を短縮する能力を向上させます。



 そのための方法として、①呼吸の制御、②感情のラベリング、③思考の記録の三つがあります。フォーカシングやマインドフル瞑想、日記をつけることなどがこれに当たるでしょう。

 以上、感情能力を向上させる4つの方法の内、3つについて見てきましたが、これらすべてに共通する最小公分母、つまり感情スキルを向上させるための、最も基本的かつ初歩的な単位は、「呼吸を改善すること」なのだそうです。近年流行りの呼吸法ですが、科学の見地からも想像以上に重視されているようですね。呼吸法については、以前このブログでも少し触れたことがあります。

 一口に感情反応といっても、それらはいくつかの感情プロファイルに分類することができ、それぞれに対して適切なアプローチの仕方があるという今回のお話は、感情能力を向上させるためのアプローチを系統的に整理することができ、それゆえに自分にとって適切な「山の形」を効率的に形作るのに役立つと思いました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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「脅威の評価と非言語行動入門」を受講しました

2021年09月28日 | 表情分析


 昨年、「危険行動検知トレーニング」という、Humintellが提供する暴力やテロなどの危険行為を起こす兆候を表情から検知するトレーニング(ウェビナー)を受講しました。

 このブログでも何回かご紹介していますが、Humintellは表情分析の第一人者、D.Matsumoto博士の会社で、最先端の行動科学を現実世界の実践経験と結びつけ、個人から得られるより正確な情報をより迅速に活用し、嘘と真実を評価し、敵意や疑わしい行動の兆候を検知し、他者に影響を与えるスキルを教えているトレーニングや、調査研究、コンサルテーションを行っています。科学者が提供するトレーニングですので、エビデンスに基づいているのが特徴です。

 今回の内容は、例えば空港やイベント会場などで危険行動をとろうとしている人物を見分け、危険を未然に防ぐかというものです。差し迫った脅威の兆候がどのような言語、非言語行動に現れるか?昨年の「危険行動検知トレーニング」は、表情から脅威の兆候を読み取るため、危険な表情を識別するためのトレーニングでした。

 身も蓋もないことのように聞こえるかもしれませんが、脅威といっても様々なであり、今回取り上げられることが全てに当てはまるものではありません。また、本トレーニングで扱った内容で、全ての脅威が防げるわけでもありません。人間行動はそんな単純ではないということは、心に留めておくべきかと思います。



上の図は脅威のプロセスを表したものです。右の「関与」、「離脱」は実際の危険が起こった後のことになりますので、脅威の評価はそれより川上(左側)のプロセスで行われることになります。評価にあたって必要なことは、①危険行動の根底にある動機と反応に焦点を当てること、②誰がするかではなく、何をするかに焦点を当てる(行動に焦点を当てる)こと、③観察の大切さです。

 危険行動の兆候に影響を及ぼす「脅威」には、①動機、②虚偽、③コンテクストへの反応という3つの特徴があります。動機とは、危険行動とその意図には理由があるということ、虚偽とは、(例えば空港の保安検査場などで)危険人物は嘘をつく必要が生じること、コンテクストへの反応とは、状況を変えたり、他人(あるいは自分自身)に危害を加えるための反応を言います。

 危険行動の兆候を発見するため、これら3つの特徴にアプローチします。そのために、①動機に対しては、悪意を持った人物に「普遍的に」当てはまる、根底にある心理学的構成概念を認識すること、②虚偽に対しては、真実を話す人と嘘をついている人を区別する、普遍的な心理学的構成概念を認識すること、③コンテクストへの反応に対しては、状況を変える、自身や他人に危害を加えるといった、コンテクストへの反応に関して、「普遍的に」当てはまる、根底にある心理学的構成概念を認識することが必要になります。

 動機には多面的な性格があります。キリスト教における7つの大罪に、「憤怒」、「暴食」、「強欲」、「嫉妬」、「怠惰」、「色欲」、「傲慢」というのがありますが、例えば敵意の動機は憎悪ばかりとは限りません。同じように、嘘をつく動機も捕まることに対する恐怖だけとは限りません。

 次に、危険行動の兆候を発見するため、言語行動(言葉、言語的特徴、文法的特徴)、非言語行動(表情、声、身体動作、ジェスチャー)に目を向けます。因みに表情、声、身体動作、ジェスチャーといった非言語行動については、5年ぐらい前に読んだMatsumoto博士の” Nonverbal Communication: Science and Applications”に様々な研究と事例が掲載されています。また、最近ではテクノロジーの発達により、歩き方や凝視、床反力計や圧力センサー、熱分析なども行われています。
   


 Matsumoto博士らは、時代、文化、言語を超えて危険行動の動機として、怒り(Anger)、軽蔑(Contempt)、嫌悪(Disgust)の3つの感情があること、それらの感情が言語、非言語行動に現れることを明らかにしています(ANCODI仮説)。2014年にMatsumoto博士らが行った研究によると、グループAのリーダーが行った、敵対するグループBに対する煽動的スピーチを調べた結果、グループAによる暴力行動が起こる12ヶ月前から6ヶ月前は変化が観られなかったものの、6ヶ月前から3ヶ月前において怒り、軽蔑、嫌悪が有意に増加しているということが分かっています。

 ANCODIつまり、怒り、軽蔑、嫌悪感情は、怒りや不当な扱いを受けている感覚、道徳的優位性の誇示、相手の間化、汚染物との同一視などの形で、レトリックで表現されます。

 例えば、下は2011年4月7日に掲載された、カダフィ大佐の息子、サイフ・アル=イスラームの発言。

 私は奴らをネズミと呼んでいる。NATOとフランスを通じてリビアを支配するなどあり得ない。ネズミどもは、自分たちを非常に誇りに思っている。奴らは何者でもない、今奴らはエリゼ宮殿、ダウニング街10番地、オバマに招待されているが、国民は奴らを支持していない。いつの日か、私の言ったことを思い出すだろう。ネズミどもがこの国を支配することは決してない。奴らは反逆者だ。わが国民を爆撃するため、ヨーロッパ人、アメリカ人、その他の連中と手を組んでいるのだ。

 こちらは、2016年6月1日に起きたUCLA銃撃事件の容疑者マイナク・サーカーの発言です。

 UCLA教授、ウィリアム・クラッグは、みなが教授と考えるような人物ではない。彼は非常に病んでいる。私はUCLAに入学してくる新入生皆に、この男から離れるよう促している…私の名前は、マイナク・サーカー。この男の博士課程の学生だった。我々は個人として違っていた。彼は私のコードを全て巧みに盗み、他の生徒に与えた。彼には本当にうんざりした。あなたの敵は私の敵だ。だが、あなたの友達は、もっと害を及ぼす可能性がある。信用している人に注意しろ。この病める男から離れるんだ

 次に、行動の異常に気づくためには、比較対象としてその人のベースラインを理解しなければなりません。ベースラインとは、「あるコンテクストで生じる『典型的』行動」のことを言います。ベースラインには環境的なものと個人に属するものとがあります。ベースラインの観察は難しく、普段から身の回りの地域社会、家族、友人などを観察し、訓練する必要があります。

 Matsumoto博士らは、2014年の研究で、差し迫った攻撃に先行して軽蔑や嫌悪を伴った怒りの表情が現れる可能性を明らかにしています。因みに暴力行為は、他に目的(例えば金品を奪う)があって身体的攻撃はあくまで二義的なものである「道具的暴力」と、敵対的反応による「反応的暴力」とに分けられます。

 最後に、冒頭でも述べましたが、あらゆる脅威を予測できる万能薬はありません。今回述べた方法も、そもそもベースラインを発見すること自体が困難ですし、予測される行動も絶対ではありません。しかしながら、状況を認識する能力は科学的知見に基づいてある程度訓練することはできます。絶対でないから無駄というのではなく、限界をわきまえた上で活用していくことが重要と言えるでしょう。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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D.Matsumoto博士の第2回微表情分析入門セミナー

2021年04月10日 | 表情分析


 4月10日、空気を読むを科学する研究所主催、表情分析の第一人者D.Matsumoto博士の「表情とウソの心理学オンラインセミナー」をオンラインで受講しました。Matsumoto博士による日米を結んでの講義は、昨年9月26日に続き2回目です。

 前回同様、講義は質疑応答形式で行われ、以下に要点をまとめさせていただきます。

1.微表情(micro or subtle expressions)からどのようにウソを推測するのでしょうか?

 まず微表情とは何かを定義する必要がある。一般的には0.5秒以下の短い時間に現れる感情表情で、人が隠そうとしている、または抑えようとしている感情が抑えられなくなって漏出する表情を言う。付け加えるなら、感情には思考が伴う。したがって、漏出した感情だけでなく、そこには関連する思考も存在すると考えるべきである。

 しかし、抑制感情と嘘とは別の物である。いかなる非言語的手掛かりを以ても、それだけで嘘と結論付けるべきではない。ところが、多くの人は確証バイアス(注)によってそう結論付けがちである。非言語的手掛かりの裏には複数の感情や思考が混在している可能性があり、それが嘘であるとは限らない。したがって、非言語的手掛かりを発端として、ターゲットを絞り会話を深堀していく必要がある。その方法も、状況と目的によって異なる。

注:仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。

 確かに微表情の多くは嘘を隠しているが、そうでない場合もある。とはいえ、他の非言語手掛かりに比べ、微表情の方が嘘の確率が高いという研究データ。そういう意味で、微表情は強力なツールとなりうる。

2.会話相手の微表情をずっと観察し続けることは大変です。効率的に相手の微表情を見つける方法はありますか?

 観察は確かに負担のかかることであり、急にできるようになるものでもない。会話中に微表情を観察できるようになるには経験と訓練を要するので、初めから欲張らないことである。スキルアップのコツは、インタビューの仕方を工夫することである。なぜなら、微表情は相手が何かを隠そうとしているのであり、インタビューはそれを探るための方法だからである。しかし、会話中に微表情が出るかどうかは、会話が核心を突いたトピックについて触れていなければ出てこない。したがって、いかに核心を突いたトピックに迫れるかの戦術に習熟する必要がある。

3.微表情を発現しやすくする質問はありますか?

 私は”Funnel Approach”という手法を用いている。簡単に言えば、funnel(じょうご)のように、広い間口から核心を突いた質問へと会話を掘り下げていく手法である。初めは、オープンエンドに「何でもいいから教えて」と質問する。観察しながら、いくつか出てくるホットスポット(注)を見つける。ホットスポットを見つけたら、そこから深堀していく。その結果、何でもないことだったという場合もあるし、ウソだったという場合もある。

注:局地的に(何らかの活動が)活発であったりする地点のこと。

例:空港での検問→恐れの表情が見えた→何かあったの?→車のランプ消し忘れた、あるいは家のストーブ消し忘れた→恐れの表情の原因は危険なものではなかった。

上記の例からも分かるように、空港の検問で恐れの表情が見えたことを以て、嘘をついているとか、犯罪を企んでいると結論付けないことである。

 文化差を問わず、一般的に人は沈黙を恐れる。それを逆手に取り、質問者にとって、ゆっくり話したり沈黙したりすることが武器になる。そうやって観察する余裕を持たせる。大事なポイントを見つけたら、トリアージ(優先度を決定して選別すること)しないといけない。

 オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンのどちらが、微表情が出やすいかは状況によって異なる。ただし、クローズドクエスチョンの場合、自分の知りたい答えに限定されてしまう欠点がある。

4.微表情以外にどんな非言語サインがウソを推測する上で有効ですか?

 あらゆる非言語的手掛かりが有効であると言えるが、現実にはあらゆる手掛かりを同時に駆使するのは無理である。優先順位をつけるとすれば、表情、その次にジェスチャー。とくにジェスチャーではシュラッグが役立つ。シュラッグには肩のシュラッグ(shoulder shrug)、顔のシュラッグ(face shrug)、手のシュラッグ(hand shrug)の三種類がある。日本人は、シュラッグは欧米人がするものと思いがちだが、意外と普遍的しぐさである。日本人でも小さくは出る(特に博士はこのマイクロ・シュラッグを観察している)。



5.AI を用いた自動表情分析アプリの信頼性や活用法についてご意見をお聞かせ下さい。

 AIを使った表情アプリで、今のところ妥当性(信頼性ではない)を持ったものは存在しない(注)。アメリカ政府の依頼で博士が調査した3大アプリの確度は50%程度(つまり偶然レベル)であった。開発側が妥当性の尺度としているのはほぼ静止画である。しかし、現実には静止画のようなはっきりした表情が出ることはほとんどない。そこまで見抜けるアプリは今のところない。したがって、今でも人間を訓練することが必要。特に微表情の場合はそう言える。

注:妥当性とは、測定しようとしている心理的特性や行動を、どの程度的確に捉えているかを評価するための概念のこと、信頼性とは、測定の正確性、一貫性のことを言う。

6.Zoom などのオンライン越しのコミュニケーションにおいて表情の果たす役割は何だと考えますか?

 オンラインコミュニケーションであっても表情が果たす役割は同じである。ただ、対面でないことで微表情やその他の非言語手掛かりを得る機会は少なくなると言える。また、回線状況によりタイミングがずれるということもある。対面の方が慎重なコミュニケーションが図れる。

7.マスクで覆われた表情の読みとりのコツを教えて下さい。

 まず、マスクをしているから無理だと思わないこと。見えないのは口だけである。口元が隠れていても、例えばドゥシェンヌ・スマイルはAU12が動くので分かる。通常表情について訓練を積んでいるのであれば、マスクをしていても対応できる。また対面であれば、表情以外の手がかりも得られる。



ここからは、参加者との質疑応答に移りました(質問は原文ママ)。

Q1.AIによる微表情分析の妥当性は低いということだが、微表情じゃなく、ある程度の持続時間を持った表情の分析も妥当性が低いのでしょうか?

 開発者は、マクロ表情であれば妥当性は高いという。しかし、どういう分析をしたのかによって結果は異なる。例えば、自然な動画で測ったのか、典型的な前面の顔で測ったのか?リアルな表情だったか、様々な人種だったか、様々な角度だったか、こうした複数の側面で検証したのか?このレベルになると微表情について、妥当性はほぼないというのが現状である。

Q2.嘘をつくときに出やすいマイクロエックスプレッションのベスト3はなんでしょうか?7つのうちで。

 ない。なぜなら、その人の隠そうとしている内容、考えは様々だからである。同じような感情に対しても別の表情が出る可能性がある。

Q3.作られた表情は非対称とおっしゃっていましたが、作られた表情すべて非対称となるのでしょうか?

 意識して作っているのであれば、ほぼ非対称である。しかし、同じことを長年繰り返していれば対称に近づく可能性がある。

Q4.微表情の発見にインタビューの方法を学ぶ必要があるとおしゃっていましたがどのように学べばよいですか?

 日本では分からないが、アメリカには販売の交渉戦略や警察の尋問戦略などを学べるコースがある。非言語は全てに応用できるが、どこに応用できるかについては、インタビュースキルを身につける必要がある。

Q5.日本人とアメリカ人とのmicroexpressionsの違いはありますか?

 ない。

Q6.日本人は表情を読む力高いからマスク着用率が高いとききましたが、微表情を読み取る能力に世界に差はありますか?

 日本人が表情を読む力が高いことを示すデータはない。むしろ普通の表情を読み取る確度は、日本人は低いとさえ言える。その他の非言語を含むと文化差は認められていない。

Q7.環境によって微表情の出やすさは変わるのでしょうか?自分(被質問者の自宅)、屋外、取調室(密室)など。

 個人差による。コンテクストだけで変わるとは言えない。しいて言えば、ハイステークス(リスクの高い)のコンテクストとローステークスのコンテクストとでは差が出やすい。

Q8.臨床心理士として仕事をしています。自閉スペクトラム(Autism)の方の、苦痛をキャッチしづらくて困っています。自覚されていない、あるいは表情と心理の解離があるなど、発達特性のあるかたの微表情の出方は異なりますか? 

 表情を出すタイミングは変わらない。自閉症の人でも感情システムは同じである。ただ、何が感情を引き起こすかのトリガーが違うのである。健常者とは異なる要因で感情が引き起こされる可能性がある。

Q9.サイコパス(反社会性病質者)の表情と普通の方の表情とで何か違いはありますか?

 Q8.と同じである。サイコパスは感情がないのではない、トリガーが違うのである。

最後にMatsumoto先生より、

「土曜の朝にもかかわらず10名のFACSコーダーを含む、15名もの参加者のまじめな姿勢に驚嘆しました。おかげで、拙い日本語ながらも普段の講演より深い話ができた。これからも勉強を頑張ってください」

とのメッセージをいただきました。



 最後に、D.Matsumoto博士のMiXトレーニングの紹介と、空気を読むを科学する研究所の「表情心理分析コース(嘘検知編)」の紹介がありました。MiXトレーニングについては、過去にいくつかブログでもご紹介していますので、そちらをご覧ください。

【過去のMiXトレーニングの記事】
MiXトレーニングを体験しました
マスクの上から表情を読むには
危険行動検知トレーニングを受講しました
横顔から微表情を読むには

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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横顔から微表情を読むには

2021年01月17日 | 表情分析


 1月16日、空気を読むを科学する研究所主催のMiXトレーニング講座を受講しました。Mixというのは、表情分析の第一人者、D.Matsumoto博士が開発した包括的微表情トレーニングメソッドのことで、これまでもベーシックなものの他、マスクをした場合の微表情を読む「Masked MiX」をご紹介してきました。



 表情を読み取る際、一般的なトレーニングのように対象が必ずしも正面を向いているとは限りません。そこで今回の「MiX Elite」は、対象が斜めや真横を向いている場合の微表情を読み取るためのトレーニング・ツールとなります。

<以下の画像は、空気を読むを科学する研究所の許可を得て掲載しております>



 トレーニングでは、7つの基本感情(悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚き)の微表情について、それぞれ正面から見た場合、斜め3/4から見た場合、真横から見た場合について、動画による解説がなされ、学習を終えたら練習に入ります。そして最終的にテストを受け、以下の基準を満たすと他のMixトレーニングと同様、認定証が授与されます。

Proficient:正解率80~89%
Expert:正解率90~94%
Master:正解率95%以上

 今回は「MiX Elite」と名前がついているだけあって、微表情の表示速度が0.06秒と、これまでのトレーニングより難易度が上がっていました(これまでのツールは0.1秒。因みに、0.5秒以下で表出する表情が「微表情」と定義されます)。それでも、正面や斜め3/4の顔であればまだついて行けます。問題は、真横の顔。真横になると表情筋の動きから得られる情報が格段に少なくなるため、戸惑いました。0.06秒で判別できるようになるには、少し時間がかかりそうです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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危険行動検知トレーニングを受講しました

2020年11月30日 | 表情分析


 11月28日、空気を読むを科学する研究所の講座で、危険行動検知(基礎)のトレーニングを受講しました。

 危険行動検知トレーニングとは、暴力やテロなどの危険行為を起こす兆候を表情から検知するトレーニングのことです。C.ダーウィンは『連合的習慣の原理』(1872)の中で、表情は身体に行動を事前に教えることで、人に行動の準備をさせる働きがあると述べています。また、表情分析のパイオニアであるP.エクマンは、危険行動の予兆は表情から読み取ることができると主張しました。エクマン博士をモデルにした2009年のTVドラマ『ライ・トゥ・ミー 嘘は真実を語る』でも群衆の中から危険表情を察知する場面が登場します。しかし、具体的にどのような表情から読み取れるのかを明らかにしなかったため、それに対する反論もあるようです。



 一方、このところ当ブログでも取り上げている、表情分析の第一人者D.マツモトは、2014年の論文の中で、実際に暴行を受けた警察官や大学生が、偶然の一致やステレオタイプに拠るのではなく、暴行の直前の表情について共通した表情を記憶していたことを明らかにしました。今回受けた危険行動を目論む個人を特定するためのトレーニングは、以前ご紹介したMiXトレーニングと同様、マツモト博士のHumintellが提供しているアプリケーション(D3 Basic)を使用しました。

基礎編は以下のような構成になっています。

事前テスト:静止画像20枚
練習セクション:静止画像40枚
事後テスト:静止画像20枚

各画像について、それが危険表情かそうでないかを1秒で判断します。



 危険表情には、抑制された怒りの表情と、衝動的な怒りの表情とがあり、それぞれ特徴が異なります。また、画像には怒りの表情の他、怒りと混同しやすい軽蔑や嫌悪表情、笑みなどとの混合表情も含まれています。完全な危険表情(もはや手遅れ)と衝動的な危険表情の予兆との境界線、さらに抑制された危険表情の境界線を判断するのが難しいと思いました。同アプリにはさらにAdvancedバージョンもあります。

 MiXと同様、事後テストで一定のスコアを超えると、認定証がもらえます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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D.Matsumoto博士の微表情分析入門セミナーを受講しました

2020年09月26日 | 表情分析


 9月26日、空気を読むを科学する研究所主催、表情分析の第一人者であるD.Matsumoto博士の微表情分析イントロダクションセミナーをオンラインで受講しました。これもZOOMの恩恵、日米を結んでMatsumoto博士の講演を拝聴できる貴重な機会でした。

 講演は質疑応答形式で行われました。以下にその要点をまとめさせていただきます。

Q.表情を観察することは、声や身体など他のボディーランゲージに比べ、どんな点で優れているか?

 非言語の分野は、それぞれのチャネルがバラバラに研究されている。しかしながら、本来非言語によるコミュニケーションは包括的なものである(Matsumoto博士はこれをトータル・コミュニケーション・パッケージ:TCPと呼んでいる)。それでも近年は複数のチャネルを研究する動きが増えており、特に嘘をついている場合の各チャネルの貢献度は、

・顔:70%
・声・ジェスチャー:それぞれ10%
・その他:10%

という研究結果が出ている。このように、非言語コミュニケーションにおける表情の貢献度は非常に高い。但し、表情が全てでないということを認識しておく必要がある。

Q.万国共通の表情にはどんな種類があるか?

 人種、性別、年齢、文化を超え普遍的とされる表情は7つある(悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚き)。これ以外に、準普遍的とされる表情に、羞恥、恥、罪悪感、畏れ、誇りなどがある。7つの普遍的表情が顔のみであるのに対し、準普遍的表情には顔以外の要素が加わる。これは進化論的な考え方から説明できる。即ち、人間はコミュニケーションを取るにあたり、近くで読み取れる感情表現と遠くからでも読み取れる感情表現が必要だったはずであり、普遍的表情は前者に、準普遍的表情は後者にあたると考えられる。

 7つの普遍的表情は、7つの感情しか表現できないという意味ではない。例えば“angry(怒り)”にも”furious(激怒)”、 “annoyed(イライラした)”、“indignant(憤慨する)”など、シノニム(同義語)が数多くある。7つの基本感情はこれらの感情の範囲を代表的に表しているのである。

Q.万国共通の表情を支持する研究と指示しない研究があるが、こうした研究結果の違いはなぜ生じるのか?

 基本感情表情の普遍性を主張したエクマン理論は、感情心理学の世界で概ね70%支持されている。数多くの批判もあるが、その批判の内容を精査する必要がある。普遍的表情の研究には、

① 自然に顔に出せる状況であるか(作られた表情でないか)
② きちんと計測されているか

この二点が重要である。これらが満たされていなければ、確かに文化差が生じる。例えば、(Mastumoto博士が)基本感情表情の普遍性を確かめた2004年アテネオリンピック・パラリンピックの柔道競技における研究では、上記の条件を満たすためにメダリストの最終戦(決勝戦と三位決定戦)の勝負がついた瞬間に絞って計測を行った。それ以外の状況では文化差などの要因が入り込む余地があるためである(※)。

 したがって、方法論や条件を無視し、結果だけを見て批判するのは妥当ではない。上記のアテネオリンピック・パラリンピックの研究にも多くの批判があるが、今のところ同一の方法論で結果を比較したものは見当たらない。

※個人的な話をしますと、僕も空手をやっていた経験から、当初Matsumoto博士の論文を読んだ際、本当にそうなのだろうかという疑問がありました。そこで、2016年に空手の世界大会の映像を元に分析を行ったことがあります(そこでは、世界チャンピオンに輝いた日本人選手がいわゆる「ドゥシェンヌ・スマイル」を見せたのは、測定開始からおよそ18分後のことでした)。しかし、その分析に使用したのは表彰式の映像でした。つまり、Mastumoto博士の研究とは異なり、初めから文化差の入り込む余地がある条件で分析し、起こるべくして文化差の存在を見出していたのです。今回お話を伺って腑に落ちました。



Q.日本人の表情について、アメリカ人と比べ特徴的な点はあるか?

 どの国でも共通する点と異なる点があり、それはコンテクストによる。例えば会議の場では確かに日米間に違いが生じるが、その後のレセプションでは同じメンバーで共通の表情が生じたりするのである。脳には表情に関する共通のシステムがあるが、(文化の影響を受け)使い方が異なるだけなのである。何に対して感情的になるかも個人によって異なる。どの国にも「我々はこうである」というステレオタイプがある。例えば日本人は「日本人はアメリカ人に比べゼスチャーが少ない」というステレオタイプを多くの人が持っているが、(Matsumoto博士が)日本人を対象に3分間のプレゼンテーションで計測したところ、何と200回ものゼスチャーを行っていたのである。もちろん、表現が大きい小さいの違いはあるが、「日本人はジェスチャーが少ない」ということではない。リアリティとイデオロギーを混同しないことである。

Q.微表情 (micro expressions)と微細表情(subtle expressions)の違いは?

 微表情は0.5秒以下という速さの違い。一方、微細表情は顔面筋の動き、強度(FACSではAまたはB)、部分的か否かといった違いである。したがって、微細表情は0.5秒から4秒ほどの幅がある(抑制されていない表情である)。かつて、微表情は0.2秒以下と言われていた。しかし、昔のフィルムによる計測では厳密に0.2秒以下であったかというと疑わしい。「抑制された感情の漏出」という微表情の定義から分類するならば、現在では0.5秒以下であると考えられる。

Q.微表情の観察はどんな場面で活かされているか?

 表に出ていない相手の思考や感情をより良く汲み取り、理解するために有効である。その使い方は、場面や役割によって異なる。その適用範囲は広いが、Mastumoto博士の会社Humintellでは、マッチングアプリ、刑事事件弁護士、ポーカーなどの依頼は受けないようにしているという(※)。

※博士もおっしゃっていたことですが、表情分析の世界は足を踏み入れるほど、その奥の深さに圧倒されることになります。表情分析表面的に習得しただけで万能視するのは、あたかもプールで泳げるというだけで、大海原の水平線の向こう側まで泳いでいけると過信するようなものだと思います。

Q.微表情からどのようにウソを推測するのか?

 微表情はあくまで抑制感情の漏出であって、「ウソ」の表出ではない。そういう考え方はむしろしない方が良い。見えたことをどう解釈するかが重要で、しかも本当のことはあくまで本人しか分からないということを心得るべきである。例えば、空港で状況と合致しない「恐怖」の微表情を見せた不審人物がいたとする。彼は単に駐車場に止めた車のランプを消し忘れたかもしれないことが不安だったのかもしれない。恐怖の微表情を見せたからと言って、武器を持っているかもしれないと短絡的に判断すべきではない。

 ただ、人は関心を持ってくれる人に本音を吐露しやすいという性質がある。(前の質問と重なるが)相手を理解し、より良いコミュニケーションのために微表情の観察は有効である。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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マスクの上から表情を読むには

2020年09月24日 | 表情分析


 9月24日、前月に続き空気を読むを科学する研究所主催のMiXトレーニング講座を受講しました。Mixというのは、表情分析の第一人者、D.Matsumoto博士が開発した包括的微表情トレーニングメソッドのことです。



 新型コロナウィルスの流行により、世界中の人たちがマスクを着用することが最早日常になってしまった昨今、「マスクをしているので、話し相手の表情が見えない」という声をよく耳にします。そのような世相を反映してか、今回は「マスクを着用している場合の表情を読む」トレーニングを受けました。

<以下の画像は、空気を読むを科学する研究所の許可を得て掲載しております>



 具体的にマスクの上からどう表情を読むのかといいますと、マスクで覆われていない顔面上部から判断するのです。顔の表情は主に、眉や目の周りの筋肉(顔面上部)の動きと頬から口の周りの筋肉(顔面下部)の動きから読み取ります。しかし、マスクで覆われている場合、顔面下部の動きは基本的に読み取ることができません。

 表情には、7つの基本感情を表す全人類に普遍的な表情があることは、過去に当ブログでもご説明しました。悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚きの7つです。この内マスクがあるために読み取りにくいのは、つくり笑い(いわゆる「目が笑っていない」というやつです)、軽蔑、嫌悪(上唇を上げるパターン)です。この点は個人的にも想像できました。経験上、口元から情報を得ている場合が多かったためです。しかし、それ以外の表情については思いの外、顔面上部の動きからだけでも推測できました。

 一通りの解説を経て、前回同様アプリケーション「Mix」を使ったトレーニングに移ります。通常、0.5秒以下(かつては0.2秒以下)の短い時間で現れる表情を「微表情(Microexpressions)」と言いますが、トレーニングは0.2秒と0.1秒の設定で行いました。やはり、顔全面のトレーニングよりはハードルが上がります。顔面上部からも結構読めるのだということを実感すると同時に、今まで結構顔面下部にお世話になっていた自分に気づきました。



 因みに、7つの基本感情の内、今回は6つを読み取るテストを行い、以下の条件を満たすと「Masked Mix」の認定証が発行されます。この基準は前回も同様です。

Proficient: 0.2秒以下で、正答率80%以上
Expert: 0.1秒以下で正答率90%以上
Master: 0.1秒以下で正答率95%以上

 前回のテストもまだMasterには至っていないので、そちらも含めMaster目指して精進していきたいと思います。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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MiXトレーニングを体験しました

2020年08月16日 | 表情分析


 8月15日、空気を読むを科学する研究所主催のMiXトレーニング講座を受講しました。Mixというのは、表情分析の第一人者、D.Matsumoto博士が開発した包括的微表情トレーニングメソッドのことです。ZOOMを使ったオンライン形式で行われました。

<以下の画像は、空気を読むを科学する研究所の許可を得て掲載しております>



 いわゆる7つの基本感情について、微表情のプレテストを行い、その後、各表情についての解説と表情の裏にある感情が持つ役割と対処法について講義がありました。テストはいつ始まったのか分からず最初の動きを見落としたり(繰り返しはできません)、ボタンを押し間違えたりと散々でしたが、講義中に行ったMiXを活用してのトレーニングは何度も繰り返し動作を確認することができて良かったです。間違えやすい表情を比較した解説もあり、改めてじっくり取り組んでみようと思いました。



 一通りトレーニングを終えた後、最終テストを行います。0.2秒以下の微表情で一定のスコアを満たすとHumintell(Matsumoto氏の会社)より認定証が発行されます。



 無事認定証をいただくことができましたが、経験者として少々情けない結果だったのは反省点です。講義の中では、「交渉に現れる微表情とその判断、対応」が特に興味深いものでした。この分野は今後より深めていけたらと思います。

※なお、このトレーニングは比較的短期間で上達するようです。僕も翌日には0.1秒の設定で9割を超えることができました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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FACSマニュアルについて

2020年07月12日 | 表情分析


 4月から時間を見て少しずつ「FACSマニュアル」を読み進めていたのですが、約500頁にも及ぶマニュアル、ようやく通読することができました。読み終えた感覚としては、表情分析の奥の深さ、道程の遠さに呆然といったところです。

 「FACSマニュアル」は、FACS(顔面動作符号化システム)における顔面動作を特定するコード(AU)を解説したものです。構成としては、顔面上部、顔面下部(上下の動作・水平の動作・斜めの動作・環状の動作)に分かれ、それぞれの領域に該当するAUと複数のAUの組み合わせについて説明がなされます。

 内容は、最初に該当する顔面領域の筋肉の構造とAUとの関係について説明がなされます。そして各AUについては、①外見の変化、②当該AUの作り方、③強度採点の順で説明されます。「強度」というのは、そのAUが動いた程度のことで、A~Eの5段階で評価されます。基本動作としてのAUは全部で27個あります。

 その他、当該AUの強度を変化させるような他のAUとの組み合わせについてや、同時に起こるはずのないAU(例えば、顔を左右同時に向けることはできない)なども取り上げられます。各章の終わりには、登場したAUの識別を練習するための画像と動画があります。

 続いてAD(アクション・ディスクリプター)についての解説。AU(アクション・ユニット)ほど動作の筋的基盤が特定されていない動きをADといいます。さらに、AUと共起し、AUの解釈を助ける補完的コード。ADもこれに含まれますが、全部で28個あります。例えばAU31(歯を食いしばる)といったもの。

 さらに、目と頭の位置のコードが25個あります。実際に表情をコード化する時、対象が常に正面を向いているとは限りません。頭と目の位置はAUの強度に影響を及ぼす場合があります。例えば、頭を上げながら目を下げていると、あたかも目を閉じている(AU43A)かのように見えてしまうことがあるというように。

 一通りコードの解説が終わると、実際にコード化する時の採点ステップについて説明がなされます。さらに上級テクニックとして、発話中の採点の方法、顔の片側だけあるいは左右非対称のAUの採点の方法なども解説されます。

 これだけでもマスターするには途方もない時間と実践の積み重ねを要することは容易に想像できます。ところが、さらにこの「FACSマニュアル」とは別に、分析者のための「インベスティゲーター・ガイド」というこれまた180頁超のガイドブックもあるのです。しかし、この3ヶ月というもの、(画像や動画に登場する)70年代風アメリカ人の顔を嫌というほど見過ぎて少々疲れてしまいました。「インベスティゲーター・ガイド」についてはまたの機会にしたいと思います。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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